取得費が不明な実家の売却、概算5%の注意点
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士親から相続した実家を売ろうとして、購入時の契約書を探しても見つからない。
そんな相談を、当社は福岡市の相続案件でよく受けます。
契約書が無いこと自体は、売却の妨げにはなりません。
ただし税金の計算では、契約書の有無が結果を大きく左右します。
取得費を証明できないと「概算取得費」という売却価格の5%だけを取得費とみなす扱いになり、譲渡所得税が本来より大幅に増えることがあるからです。
この記事は、購入時の資料が見当たらない実家を相続し、これから売却を検討している方に向けて書きました。
取り上げるのは、概算取得費が使われたときの税額の変化、実額を証明できる資料、そして相続ならではの負担軽減策の3つです。
2. 概算取得費を使うと、税額はどれくらい増えるのか
3. 実額の取得費を証明できる資料には何があるか
4. 相続した不動産には「取得費加算の特例」もある
5. 福岡市で実家を相続したとき、資料はどこで確認できるか
6. 資料が見つからないときの進め方
取得費が分からないと、なぜ税額が増えるのか
不動産を売って利益が出ると、譲渡所得税がかかります。
この利益(譲渡所得)は「売却価格 − 取得費 − 譲渡費用」で計算します。
取得費とは、その不動産を買ったときにかかった金額です。
建物の購入代金や仲介手数料、登記費用などが含まれます。
ここが証明できないと、実際に買った金額がいくらであっても使えません。
国税庁が認めているのが、取得費が分からない場合に「売却価格の5%」を取得費とみなす扱いです。
これを概算取得費の特例と呼びます。
実際の取得費が売却価格の5%を下回る場合も、同じように概算取得費を使うことができます。
概算取得費を使うと、税額はどれくらい増えるのか
数字にすると、差は歴然です。
実家を3,000万円で売却し、親が実際に支払った購入代金が2,000万円だったと仮定します。
取得費を実額の2,000万円で申告できれば、譲渡所得は1,000万円です。
所有期間が5年を超える長期譲渡として計算すると、税率は20.315%なので税額は約203万円になります。
ところが契約書が見つからず、概算取得費(3,000万円の5%=150万円)しか使えなかったとします。
その場合の譲渡所得は2,850万円まで膨らみ、税額は約579万円です。
同じ物件、同じ売却価格でも、証明できる資料の有無だけで税額が376万円ほど違ってきます。
売却価格の1割を超える差になるため、資料を探す手間をかける価値は十分にあります。
実額の取得費を証明できる資料には何があるか
「契約書がもう無い」と諦める前に確かめたいのが、次の資料です。
まず、不動産会社との間で交わした重要事項説明書です。
契約書と一緒に保管されていることが多く、購入代金が記載されています。
次に、住宅ローンを組んでいた場合の金銭消費貸借契約書です。
借入額から、おおよその購入代金を逆算できます。
法務局で取得できる登記事項証明書にも、抵当権設定登記があれば借入額の記載が残ります。
通帳の出金記録や振込明細も有力な資料です。
購入代金・仲介手数料・登記費用の支払いが、時期と金額の両方から裏付けになります。
新築で購入した場合は、工事請負契約書や分譲時のパンフレットが手がかりになることもあります。
固定資産税の精算書が残っていれば、引き渡し時期を裏付ける材料です。
これらは1つだけでなく、複数を組み合わせて金額の妥当性を示すほど、実額として認められやすくなります。
親の家財を整理する際は、契約書だけでなく、こうした資料もあわせて探してください。
相続した不動産には「取得費加算の特例」もある
相続で受け継いだ不動産を売る場合、もう1つ知っておきたい制度があります。
相続税を支払っていれば、その一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」です。
加算できる金額は、相続税額のうち、売った不動産に対応する部分です。
取得費が増えれば、その分だけ譲渡所得が減り、税額も下がります。
ただし適用には期限があり、相続開始から3年10か月以内に売却する必要があります。
相続登記が済んでいなくても、この期限は変わりません。
取得費が不明な物件ほど、実額の証明と合わせてこの特例も検討する価値があります。
出典:国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
福岡市で実家を相続したとき、資料はどこで確認できるか
登記事項証明書は、物件の所在地を管轄する法務局で取得できます。
福岡市内でも、管轄する法務局・支局は区ごとに別です。
相続登記が済んでいない場合は、まず登記の手続きと並行して資料を集めることになります。
当社では、福岡市7区それぞれの手続き窓口を一覧で案内しています。
どこに何を確認しに行けばよいか迷ったときの参考にしてください。
資料が見つからないときの進め方
資料を探しても見つからない場合は、概算取得費での申告を前提に、売却価格や時期を検討することになります。
税額の目安は、手取りの試算で売却価格を入力するだけで確認できます。
手取り額を事前に確認しておくことは、査定を依頼するかどうかの判断材料です。
取得費の証明は、売却活動と並行して進めても間に合います。
まずは物件の状態と概算の税額を把握し、それから資料探しに時間をかけるかどうかを判断してください。
当社では、相続した不動産の売却について、資料の探し方の相談もあわせて無料査定から受け付けています。
