取得費加算の特例の期限は3年10か月|相続税を納めた人へ
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士相続税を納めた方が相続した不動産を売る場合、納めた相続税の一部を売却時の税金の計算に使えます。
これが「相続税額の取得費加算の特例」です。
使えるのは、相続開始から3年10か月以内に売った場合に限られます。
この記事は、相続税の申告を済ませ、これから福岡市の実家や土地を売ろうとしている相続人に向けて書きました。
取り上げるのは、特例を使える人の条件、期限の数え方、空き家の3,000万円控除との選び方の3つです。
2. 期限の3年10か月はいつから数えるのか
3. 空き家の3,000万円控除とはどちらを選ぶのか
4. 福岡市では、どこに何を出すのか
5. 期限までに、何から手をつけるか
取得費加算の特例は誰が使えるのか
使えるのは、相続や遺贈で財産を取得し、その相続で相続税を納めた人だけです。
相続税がかからなかった場合、加算する相続税額そのものが無いため、この特例は使えません。
福岡市の実家を相続しても、基礎控除の範囲に収まって申告が不要だった方は対象から外れます。
逆に相続税を納めたのであれば、売る財産は土地でも建物でも株式でも構いません。
ただし加算できるのは、納めた相続税の全額ではありません。
売った財産の相続税評価額が、その人の課税価格に占める割合に応じた金額です。
実家1軒だけを相続して相続税を納め、その実家を売るのであれば、納めた相続税の大半が加算の対象に入ります。
預金や有価証券も一緒に相続したなら、対象になるのは実家の評価額の割合ぶんだけです。
加算できる金額の目安
相続財産が福岡市内の実家1軒と預金で、納めた相続税が400万円だったとします。
そのうち実家の評価額に対応する分が250万円なら、取得費に250万円を足せます。
売却価格が3,000万円、取得費と譲渡費用の合計が400万円だとすると、譲渡所得は2,600万円です。
ここから250万円を引くと、課税される所得は2,350万円まで下がります。
長期譲渡所得の税率は20.315%なので、税額はおよそ528万円から477万円に変わります。
差は約51万円で、この価格帯の仲介手数料のおよそ半分にあたる金額です。
なお加算できる額は、その売却で出た譲渡益が上限になります。
売って損が出た場合は、加算するものがありません。
期限の3年10か月はいつから数えるのか
期限は、相続開始の日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。
言い換えると、相続開始から3年10か月ということになります。
相続税の申告期限が、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内と決まっているからです。
そこに3年を足した日が、この特例の締切になります。
具体的に日付を入れてみます。
2024年6月10日に相続が始まった場合、相続税の申告期限は2025年4月10日です。
そこから3年後の2028年4月10日が、売却の期限になります。
相続税の申告書を書いたときの日付をそのまま使えるので、自分で計算できる数字です。
この期限は「売り出しを始める日」ではない
期限で見るのは、売り出しを始めた日ではなく、売却そのものが完了した日です。
買主が見つかるまでの期間と、契約から引き渡しまでの期間は、この3年10か月の内側に収まっていなければなりません。
期限まで残り半年という状態から動き出すと、価格を下げて買主を急いで探すことになります。
特例で減らせる税額より、値下げした額のほうが大きくなっては本末転倒です。
相続税の申告が終わった時点で、売るかどうかを一度決めておくと、この逆算が効きます。
空き家の3,000万円控除とはどちらを選ぶのか
先に確かめるのは空き家の3,000万円特別控除で、要件を満たさないときに取得費加算へ回すのが順番です。
相続した家を売るときには、この「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除」も使えます。
この2つは、同じ譲渡について重ねて使えません。
どちらか一方を選ぶことになります。
減らせる額だけを比べると、上限3,000万円の控除のほうが大きく出る場面が多くなります。
取得費加算で足せるのは、納めた相続税のうち売った財産に対応する分までだからです。
ただし空き家の控除には、取得費加算には無い要件が並びます。
建物が1981年5月31日以前に建てられていること、マンションなどの区分所有建物でないこと、売却代金が1億円以下であることなどです。
相続してから売るまでの間、人に貸したり誰かが住んだりしていないことも要件に入ります。
相続人が3人以上でその家と敷地を取得した場合、令和6年1月1日以後の譲渡では控除の上限が1人あたり2,000万円に下がります。
要件を1つでも満たさなければ、3,000万円の控除は使えず、残るのは取得費加算だけです。
| 比べるところ | 取得費加算の特例 | 空き家の3,000万円控除 |
|---|---|---|
| 使える人 | 相続税を納めた人 | 相続税を納めていなくても使える |
| 売却の期限 | 相続開始から3年10か月 | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日 |
| 減らせる額 | 納めた相続税のうち売った財産に対応する分 | 最大3,000万円(相続人3人以上は1人2,000万円) |
| 建物の要件 | なし | 1981年5月31日以前の建築で、区分所有建物でないこと |
| 市区町村の書類 | 不要 | 被相続人居住用家屋等確認書が要る |
期限が先に来るのはどちらか
2つの特例は、期限の数え方も違います。
空き家の控除は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。
年末で切られるので、相続が3月以降に始まった年は、空き家の控除の期限のほうが先に来ます。
先ほどの2024年6月10日の例なら、空き家の控除は2027年12月31日で締め切られます。
もう一方の期限より、4か月ほど早い日付です。
どちらを選ぶか決めかねている段階では、早いほうの期限に合わせて動くと選択肢が残ります。
加えて、空き家の控除そのものが令和9年12月31日までの譲渡に適用される制度です。
福岡市では、どこに何を出すのか
取得費加算の特例を使うには、確定申告書に相続税の申告書の写しなどを添えて提出します。
相続税の申告書を出す先は、亡くなった方の住所地を受け持つ税務署です。
亡くなった方が福岡市博多区に住んでいた場合、提出先は博多税務署になります。
博多税務署があるのは東区馬出で、JR吉塚駅から歩いて3分ほどの場所です。
博多区の物件でも税務署は東区にあるので、区役所と同じ場所だと思って向かうと行き違いになります。
一方、空き家の3,000万円控除を選ぶ場合は、福岡市が交付する「被相続人居住用家屋等確認書」が別に要ります。
窓口は福岡市役所(中央区天神)の住宅都市みどり局住宅部住宅計画課です。
福岡市の案内では、申請書の受理から交付までに1週間から10日ほどかかるとされています。
確定申告の直前にまとめて動くと、この日数がそのまま遅れになります。
売却の話が具体的になった時点で、市の窓口に必要書類を確かめてください。
期限までに、何から手をつけるか
最初にやることは、相続税の申告書を手元に出して、相続開始の日を確かめることです。
そこから3年10か月を数えれば、売却の締切が決まります。
次にやるのは、売る家が空き家の3,000万円控除の要件に当てはまるかどうかの確認です。
当てはまるなら、どちらの特例で税額が小さくなるかを税理士に確認したうえで売り出します。
当てはまらないなら、取得費加算だけを前提に手取りを試算します。
購入時の契約書が見つからないときは、取得費が不明な実家の売却、概算5%の注意点もあわせてご覧ください。
税額と手取りの目安は手取りの試算で確かめられます。
売り出しから引き渡しまでにかかる期間は、物件の種類と価格の付け方しだいです。
福岡市の価格帯は博多区の相場のページに、取引の中央値を載せています。
空き家のまま置いている実家の売り方は、福岡市の空き家売却のページにまとめました。
期限まで1年を切っている場合は、相続した不動産の売却のページから、残り期間に合わせた進め方をご相談ください。
当社は福岡市博多区吉塚で、相続した不動産の売却をお手伝いしています。
税額の判断そのものは税理士の領域ですが、期限から逆算した売却の段取りは当社で組めます。
