売却年の固定資産税の日割り精算|福岡市の起算日と納期
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士福岡市で自宅や実家を売る売主が、契約書の条文でつまずきやすいのが「固定資産税等の精算」の一行です。
結論から言うと、引渡し年の固定資産税は、1月1日に所有していた売主に1年分が課税されます。
買主と日割りで分けるのは、法律の決まりではなく売買の商慣習です。
つまり、精算するかどうか、どの日を起算日にするかは、売主と買主の合意で決まります。
もう一つ見落としやすいのが、精算金を受け取ったあとに届く納付書です。
福岡市の納期は4月・7月・12月・翌年2月の年4回なので、年度の途中で引き渡しても第3期と第4期の納付書は売主あてに届きます。
この記事で説明するのは、精算の考え方、起算日による金額の差、福岡市の納期に合わせた注意点、受け取った精算金の税務上の扱いです。
2. 日割りの精算は法律で決まっているのですか
3. 起算日が1月1日か4月1日かで、精算額はどれくらい変わるのですか
4. 精算金を受け取ったあと、固定資産税は誰が納めるのですか
5. 1月から4月上旬の引渡しは、どの年度の税額で精算するのですか
6. 受け取った精算金に、税金はかかりますか
7. 契約前に確かめる4つのこと
引渡し年の固定資産税は、売主と買主のどちらが納めるのですか
その年度の固定資産税を市に納める義務があるのは、1月1日時点の所有者、つまり売主です。
福岡市は、毎年1月1日を「賦課期日」として、その日に土地・家屋・償却資産を所有している人に課税すると説明しています。
年の途中で売っても、その年度の納税義務者は変わりません。
登記の名義が1月1日時点で売主のままなら、実際の所有者が動いていても納税義務者は売主のほうです。
福岡市の税率は、固定資産税が1.4%、市街化区域内の土地と家屋にかかる都市計画税が0.3%です。
市街化調整区域にある土地なら都市計画税はかからないので、精算の対象は固定資産税だけになります。
契約書に「固定資産税等」と書いてあるとき、その「等」が都市計画税を指しているかどうかを読んでください。
出典:福岡市 都市計画税
日割りの精算は法律で決まっているのですか
日割りの精算を義務づけた法律はなく、売買契約の当事者どうしで決める商慣習です。
福岡市も、固定資産税は「いつからいつまで」の期間に対応する税ではなく、年税額を4期に分けて納めるものだと説明しています。
期間に対応する税ではないので、市が売主と買主に分けて課税し直すことはありません。
それでも実務で精算するのは、引渡し後の期間ぶんまで売主が負担するのは公平でない、という考え方が売買の慣行として定着しているからです。
裏を返せば、契約書に精算の条項が無ければ、買主に負担してもらう根拠もありません。
当社が売主から売却を預かるときは、精算の対象・起算日・端数の扱いを契約書の条文で必ず確認します。
起算日が1月1日か4月1日かで、精算額はどれくらい変わるのですか
年税額12万円の家を9月1日に引き渡す場合、買主の負担は起算日1月1日なら40,109円、4月1日なら69,698円です。
同じ物件・同じ引渡し日でも、差は29,589円になります。
起算日が1月1日なら、精算の対象期間は1月1日から12月31日まで。
9月1日から12月31日までの122日ぶんが買主の負担で、12万円を365日で割って122日をかけると40,109円です。
起算日が4月1日の場合、対象期間は4月1日から翌年3月31日まで。
買主の負担は9月1日から翌年3月31日までの212日ぶんに増え、69,698円になります。
当社が福岡市で扱う売買契約では、1月1日を起算日にするのが一般的です。
関西では4月1日を起算日にする慣行があるため、県外の買主や県外の仲介会社が入る取引では、起算日をどちらにするかを最初に確認します。
引渡し日そのものを売主と買主のどちらの負担にするかも、決めておく項目です。
年税額12万円なら1日ぶんは約329円で、金額は小さいものの、精算書の作り直しはここから起きます。
精算金を受け取ったあと、固定資産税は誰が納めるのですか
納めるのは、精算金を受け取った売主です。
福岡市の固定資産税・都市計画税は、4月・7月・12月・翌年2月の年4回に分けて納めます。
納税義務者が1月1日の所有者から動かないため、4期すべての納付書が売主あてに届きます。
引渡しが9月でも、12月と翌年2月の納付書は止まりません。
買主から受け取った精算金は、この残りの納付に充てるお金だと考えてください。
納付書を置いたままにすると延滞金がつき、督促を受けるのは売主です。
口座振替にしている売主なら、引渡し後の第3期と第4期も同じ口座から引き落とされます。
福岡市は年末と年明けに2期分が残る納期なので、秋に引き渡した売主ほど、精算が済んだあとで納付書を受け取ることになりがちです。
出典:福岡市 納期内納付と滞納
1月から4月上旬の引渡しは、どの年度の税額で精算するのですか
起算日を1月1日にすると、1月から3月の引渡しでも、その年の1月1日を賦課期日とする年度の税額を使うことになります。
ところが、その税額が分かるのは納税通知書が届く4月以降です。
福岡市の納税通知書は4月上旬に発送され、令和8年度は4月7日でした。
4月1日に引き渡しても、その年度の正しい税額はまだ手元にありません。
前年度の税額で精算して再精算しないと決めるなら、その一行を契約書に入れておきます。
3年ごとの評価替えに当たる年や、住宅用地の特例が外れる年は、前年度と税額が変わることもあります。
差額が出たときに精算し直すのかどうかを、契約前に買主と決めてください。
確定したあとの税額は、区役所の窓口で公課証明書を取れば分かります。
区役所の場所と持ち物は、福岡市7区の手続き窓口ガイドで確かめてください。
受け取った精算金に、税金はかかりますか
買主から受け取った未経過分の固定資産税相当額は、譲渡所得の収入金額に含めて申告します。
国税庁は、売主に納税義務がある未経過分を買主が負担した場合、その額は実質的に売買代金の一部にあたるという扱いを示しています。
売買代金と別の名目で受け取ったお金でも、税金の計算では売却価格に足す扱い。
年税額12万円のうち40,109円を受け取ったなら、その40,109円も収入金額に入ります。
金額が小さくても、決済のときに渡される精算書は確定申告まで保管してください。
売却で手元にいくら残るかは、不動産売却の手取りの計算方法と手取りの試算で確かめられます。
契約前に確かめる4つのこと
精算でもめるのは、条文を読まないまま決済日を迎えたときです。
売主が契約前に確かめるのは、次の4点です。
- 精算の対象に都市計画税が入っているか
- 起算日が1月1日か4月1日か
- 引渡し日を売主と買主のどちらの負担にするか
- 年度の税額が確定したあとに精算し直すのか
この4点は口約束では残らないので、売買契約書の条項として書いてもらいます。
精算が出てくるのは、売却の流れの11段階のうち、いちばん最後の決済・引渡しです。
当社は契約書の条文を売主と一緒に読み、精算の起算日と端数の扱いをその場で確認します。
売ったあとに手元にいくら残るかを先に知りたい売主は、無料査定からご相談ください。
