事故物件は誰が買う?福岡市で実際に買った人の理由
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士事故物件になってしまった家にも、買う人は実在します。
当社は福岡市中央区の相続マンションで、事故があって査定額が下がった物件を、売出価格に近い価格で契約まで進めました。
この記事は、身内の死や事故のあった家について「もう誰も買わないのでは」と思っている売主に向けて書いています。
買う人がどんな理由で手を挙げるのかを先に知っておくと、値段の下げ方も売り方の選び方も変わってきます。
ただし、どんな事故物件にも買い手がつくわけではありません。
当社の実務で買い手が見つからなかった領域は、この記事の後半ではっきり線を引いて書きます。
2. 買う人は、どんな理由で買っているのですか?
3. 職業で「買う人」を決めつけてよいですか?
4. 受け止め方が人によって違うことに、公的な裏づけはありますか?
5. 福岡市では、なぜ価格を理由に買う人がいるのですか?
6. 買い手がつかない事故物件はありますか?
7. 「◯%が抵抗を感じる」という数字は当てになりますか?
8. 買う人に届けるために、売主は何をしますか?
9. まず何をすればよいですか?
事故物件を買う人は、本当にいますか?
当社が扱った事故物件には、実際に買主がついています。
福岡市中央区の相続マンションは、県外にお住まいの相続人からお預かりした物件でした。
事故があったため査定額は通常の相場より下がりましたが、さまざまな買主候補を探して、売出価格に近い価格で契約に至っています。
もう1件、佐賀県で全焼した実家をお預かりしたこともあります。
他社からは「取り扱い不可」「お金を支払って手放す」と言われた状態でした。
当社は一般市場に出して買主を探す判断をし、売り出しから1か月以内に買主が見つかっています。
火災と人の死は別の話です。
それでも共通しているのは、他社が扱えないと判断した物件にも買う人がいた、という点でした。
どちらも当社が実際に扱った案件で、売却事例のページに経緯を載せています。
買う人は、どんな理由で買っているのですか?
理由は1つではなく、当社が見てきた範囲では大きく4つに分かれます。
下の表は、その4つを買主の判断の形で並べたものです。
| 買う理由 | 買主の判断 |
|---|---|
| 受け止め方が違う | 死を身近に見てきた経験があり、事故そのものを重く受け取らない |
| 価格を最優先する | 事故物件だから買うのではなく、その価格でその立地が買えるから買う |
| 賃貸や投資に回す | 自分が住まないため、家賃に対する利回りが上がるほうを取る |
| 建て替えて使う | 建物を壊して土地として使うので、室内の履歴が判断に残らない |
4つとも「事故物件だから買う」という動機ではありません。
買主にとっては、価格と立地と使い道を並べたうえでの、ふつうの損得の判断です。
売主にとって、ここが分かれ目になります。
買う理由が4通りあるということは、物件を届ける先も4通りあるということだからです。
職業で「買う人」を決めつけてよいですか?
決めつけないでください。
当社のお客様では、医療や介護の仕事をされている方が買われることが、確かに多くあります。
死を日常的に見ている仕事なので、受け止め方が一般の方と違うという実感を私たちは持っています。
ただし、これは当社が見てきた傾向にすぎません。
「看護師なら事故物件を買う」という書き方を、当社はしないことにしています。
理由は2つ。
1つは、読んだご本人に失礼だからです。
どんな仕事に就いているかで、住まいに何を求めるかが決まるわけではありません。
もう1つは、売主に誤った期待を持たせてしまうからです。
「その職業の人を探せば売れる」と思い込むと、価格や売り方の見直しが後回しになります。
当社が買主候補に声を掛けるときも、職業では絞りません。
受け止め方が人によって違うことに、公的な裏づけはありますか?
国土交通省のガイドラインが、その裏づけになります。
「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」は、人の死の種類によって告げるべき範囲を分けています。
老衰や持病による自然死、それに日常生活の中で起きた不慮の死は、原則として告げなくてよい扱いです。
ただし、これらであっても特殊清掃が行われた場合は、告げる対象に入ります。
ここで注目したいのは、国が「人が亡くなった」という事実を一律に扱っていない点です。
扱いを分けているのは、買主の受け止め方が中身によって変わるという前提が、公的な文書の側にあるからでしょう。
売主にとっては、この線引きが値段以前の出発点になります。
自分の物件がどちらに当たるかで、伝え方も買主の反応も変わってくるためです。
福岡市では、なぜ価格を理由に買う人がいるのですか?
福岡市の中心部は、少し下がって初めて手が届く価格帯だからです。
当社が国土交通省の取引価格情報を集計したところ、中央区の3LDK系マンションの中央値は4,200万円でした。
集計したのは2024年第2四半期から2026年第1四半期までの取引で、専有面積は70㎡が目安になります。
下がり幅に決まった相場はありませんが、仮に1割下がったとすると3,780万円です。
これは同じ中央区の2LDK系マンションの中央値3,750万円と、ほぼ同じ水準にあたります。
2LDKの予算で3LDKに手が届く、と言い換えると分かりやすいかもしれません。
だから当社には、事故物件だから買うのではなく、その価格でその立地が買えるから買う、という方が来られます。
区ごとの中央値は福岡市中央区の相場のページに載せています。
下がり幅そのものの考え方は事故物件はいくら下がる?にまとめました。
買い手がつかない事故物件はありますか?
殺人事件のあった物件には、当社の実務で買い手がついていません。
ここは「価格を下げれば売れる」という話に乗りません。
買取であっても、当社が扱った範囲では成立していない領域です。
事故物件の買取価格は相場の3〜5割になることが多いのですが、殺人事件はこの目安の外にあります。
割合の話にならない、というのが正確な言い方でしょう。
ですから当社は、最初のご相談でまず死因と経緯をうかがいます。
そこを飛ばして「事故物件」とひとくくりにすると、売主に持てない見通しを渡すことになるからです。
買取そのものの進め方は福岡市の事故物件は買取で手放せる?に書いています。
「◯%が抵抗を感じる」という数字は当てになりますか?
当てにしないでください。
「500人に聞いたところ、何割が抵抗を感じた」といった数字が、検索結果にはよく出てきます。
出どころをたどると、その多くは事故物件を買い取る会社が自社で行った調査でした。
第三者が検証できる形になっていないため、当社はこうした数字を記事に書きません。
国土交通省の検討会の資料も一通り確かめましたが、消費者へのアンケートは含まれていませんでした。
買主の受け止め方について公的に確かめられるのは、先ほどのガイドラインの線引きまでです。
数字がないことは、買う人がいないことを意味しません。
当社が見ているのは統計ではなく、実際に契約に至った1件ずつです。
買う人に届けるために、売主は何をしますか?
死因と経緯の整理、隠さずに出すこと、売り方を1本に決めないことの3つです。
1つ目は、死因と経緯を正確に整理すること。
いつ、どこで、何が起きて、特殊清掃を入れたかどうかを書き出します。
ここが定まらないと、買主候補への説明が相手ごとにぶれます。
2つ目は、隠さずに出すこと。
売買の告知に期間の定めはないので、黙って売っても後から契約解除や損害賠償の話になります。
詳しくは事故物件の告知義務はいつまで?にまとめました。
3つ目は、売り方を最初から1本に決めないこと。
一般市場に出す、投資として買う人に当たる、買取で確実に手放す。
この3つを並行して走らせると、買う理由の違う人に同時に届きます。
すでに売り出していて反響が止まっているなら、原因の切り分け方を事故物件が売れない原因は3つに書きました。
当社は仲介と買取の両方を扱うので、反応を見ながら途中で切り替えられます。
それぞれの進め方は事故物件・訳あり物件の売却と福岡市の不動産買取のページをご覧ください。
まず何をすればよいですか?
死因と経緯を、分かる範囲で書き出すところから始めてください。
分からない部分があっても構いません。
相続で引き継いだ家では、ご本人も経緯を知らないことがふつうにあります。
そのうえで価格の見当をつけたいなら、無料査定をご利用ください。
売るかどうかから迷っているなら、15分の無料相談で話を聞くだけでも構いません。
「誰も買わない」と思ったまま何年も置いておくより、買う人の顔を一度見てから決めるほうが、選べる道は多く残ります。
