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売却の基本公開 2026.09.14

雨漏りを隠して売却したら|裁判になった3件の結論

野上俊彦執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
野上俊彦執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士

雨漏りの跡がある家を、そのことを告げずに売ったらどうなるのか。

公表されている判決を読むと、結論は2つに分かれています。

隠していたと認められた売主は、慰謝料の支払いを命じられました。

一方で、買主の請求がすべて退けられた判決もあります。

この記事では、裁判所名・判決日・結論まで示して3件を紹介します。

そのうえで、福岡市で売る前にやっておくことをまとめました。

雨漏りや水回りの不具合がある家を売ろうとしていて、告知書にどこまで書くかで迷っている売主に向けた記事です。

目次1. 雨漏りを告げずに売ったら、どうなりますか
2. 実際の判決では、いくら認められましたか
3. 「知らなかった」で通りますか
4. 告知書には、どこまで書けばよいですか
5. 福岡市で売るとき、何から手を付けますか

雨漏りを告げずに売ったら、どうなりますか

買主から損害賠償や契約の解除を求められ、裁判で一部が認められた例があります。

争点になるのは、買主が知っていれば買わなかったと言える事情を、売主が伝えていたかどうかです。

ここで争いになると、引渡しのあとに値引きで話をつけることはできません。

訴訟になれば、判決までの時間と弁護士費用が売主の側にも乗ります。

買主が求めてくるのは4つです

2020年4月1日に施行された改正民法で、買主が売主に求められることが整理されました。

  • 契約どおりの状態にすること(修補や代替物の引渡し)
  • 代金の減額
  • 損害賠償
  • 契約の解除

改正前は「瑕疵担保責任」と呼ばれ、いまは「契約不適合責任」という名前に変わっています。

下で紹介する3件のうち2件は改正前の判決ですが、条文の呼び名が違うだけで、判断の芯は変わりません。

出典:法務省 民法の一部を改正する法律

隠していた売主には、1年の期間制限が効きません

民法566条は、買主が不適合を知ってから1年以内に通知しなければ請求できない、と定めています。

売主の側から見れば、引渡しから何年も経ってから蒸し返される心配が小さくなる条文です。

ただし、この条文にはただし書きがあります。

売主が引渡しの時に不適合を知っていたとき、または重大な過失によって知らなかったときは、この期間制限が使えません。

つまり、隠して売った売主だけが、この盾を失う形になっています。

出典:e-Gov法令検索 民法

値引きの交渉で収まる場面と、収まらない場面

引渡し前に伝えていれば、雨漏りは価格の話に収まります。

買主は修理の見積もりを取り、その分を差し引いた金額で買うかどうかを自分で決められるからです。

ところが引渡し後に発覚すると、買主は「聞いていれば買わなかった」と主張してきます。

そこからは金額の交渉ではなく、契約を続けるかどうかの争いに変わります。

売主にとっていちばん高くつくのが、この切り替わりです。

実際の判決では、いくら認められましたか

金額まで確認できたのは、慰謝料40万円を認めた1件です。

残る2件は、一方が売主と媒介業者の双方に対する一部認容、もう一方が買主の請求の棄却でした。

3件とも、一般財団法人 不動産適正取引推進機構(RETIO)の判例紹介で公表されているものです。

まとめサイトや他社の解説ではなく、判決を紹介した原典だけを読んで書いています。

雨漏り履歴を隠したとして慰謝料40万円(東京地裁 令和2年2月26日)

中古マンションの買主が、売主業者と媒介業者が雨漏りの履歴を故意に隠したとして争った事案です。

買主は、売買契約の錯誤無効などを主張しています。

東京地方裁判所は令和2年2月26日、売主業者の説明義務違反を認め、慰謝料40万円を認容しました。

認められたのは慰謝料で、契約そのものが取り消されたわけではありません。

金額だけ見れば小さく見えますが、ここに訴訟の期間と弁護士費用が別に乗ります。

出典:RETIO 122号 判例紹介

売主と仲介会社の双方が責任を問われた例(東京地裁 平成21年2月5日)

宅建業者の媒介で土地建物を買った人が、建物に雨漏り等があったとして起こした裁判です。

買主は、売主に瑕疵担保責任を、媒介業者に不法行為または債務不履行に基づく損害賠償を求めています。

東京地方裁判所は平成21年2月5日、売主と媒介業者の双方について請求の一部を認めました。

ここが、売主だけの問題では終わらないことを示した1件。

隠して売ると、頼んだ仲介会社まで一緒に法廷に立つことになります。

当社が査定の段階で不具合をしつこくうかがうのは、この形を避けるためです。

出典:RETIO 77号 判例紹介

買主の請求が退けられた例(東京地裁 令和元年10月29日)

中古マンションの買主が、共用部分である外壁のひび割れから専有部分へ雨漏りしたとして、売主に費用の負担を求めた事案です。

東京地方裁判所は令和元年10月29日、買主の請求を退けています。

外壁のひび割れは瑕疵に当たらないと判断されました。

あわせて、売主業者が雨漏りの原因を外壁にあると認識していたとは認められない、とされています。

買主が訴えれば結論が出るという話ではなく、売主が知っていたかどうかが分かれ目になっています。

出典:RETIO 123号 判例紹介

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「知らなかった」で通りますか

通るかどうかを決めるのは、知らなかったという説明に無理がないかどうかです。

3件を並べると、売主が知っていた、または知り得た状況だったかどうかが結論を左右しています。

令和元年の判決で買主が負けたのは、売主が原因を認識していたと認められなかったからです。

逆に令和2年の判決では、履歴を故意に隠したと判断されています。

修理の記録が残っていると、知らなかったとは言いにくい

雨漏りは、天井のしみ・壁紙の浮き・屋根や樋の補修という形で記録が残ります。

火災保険を使って直した家なら、保険会社にも請求の記録が残っているはずです。

リフォーム会社の見積書や領収書も、あとから出てくる書類の一つ。

買主が引渡し後に調べれば、こうした記録は買主の側からも見つかります。

売主が忘れていても、書類のほうは忘れてくれません。

台風のあとに一度でも業者を呼んだ家

福岡市は毎年の台風と梅雨で、屋根や外壁に手を入れた家が少なくありません。

「あのとき直したから、いまは漏っていない」という状態が、いちばん判断に迷うところ。

直っていても、雨漏りがあった事実のほうは消えません。

当社は、直した年・工事した会社・どこを直したかを、そのまま告知書に書いていただいています。

直したことまで書けば、買主にとっては不安ではなく安心の材料に変わります。

相続した実家は、知らなくても済みますか

相続した実家は、売主自身が住んでいなかったぶん、知らない不具合の出やすい物件です。

それでも「相続だから知らない」で終わらせず、分かる範囲を調べてから書く形をとります。

売りに出す前に確かめておきたいのは3つ。

  • 天井と壁紙を部屋ごとに見て、しみや浮きがあれば写真に撮る
  • 親御さんの書類の中から、屋根や外壁の工事の見積書・領収書を探す
  • 近くにお住まいだった親族に、雨漏りの話を聞いたことがないか確かめる

ここまでやって何も出てこなければ、調べた範囲と結果をそのまま告知書に書きます。

調べた過程が残っていることが、知り得なかったという説明を支えてくれます。

判断に迷ったら、書く側に倒す

書いて失うのは、値引きを求められたときの金額だけ。

書かずに失うときは、契約の解除と賠償と訴訟費用が同時に来ます。

どちらに倒すかで迷ったら、書く側を選んでください。

個別の事情で判断がつかないときは、弁護士や司法書士に相談したうえで決める形が確実です。

告知書には、どこまで書けばよいですか

いつ・どこで・どうなったか・直したかどうか、の4点を書きます。

告知書は、正式には物件状況等報告書と呼ばれる書面です。

売主が記入して買主に渡すもので、不動産会社が作る重要事項説明書とは別に用意します。

当社は媒介契約のあとにこの書面をお預けして、思い出せる範囲で埋めていただいています。

書く欄と、書き方の例

雨漏りの欄に必要なのは、次の4行だけ。

項目書き方の例
時期2019年9月ごろ
場所2階北側の洋室の天井
状況台風のあと、雨のたびにしみが出た
対応屋根の板金を交換。以後しみは出ていない

この4行があれば、買主は自分で判断できます。

思い出せない部分は、思い出せないと書いてください。

作り話で埋めるほうが、あとで重い問題になる。

必要な書類の一覧は売却に必要な書類にまとめてあります。

書いた部分は、責任の対象から外せます

事前に告知して契約書に記載しておけば、その部分は責任の対象外にできます。

お客様から当社がいちばん多く受ける質問が、「知っている不具合は伝えないといけませんか」です。

答えはいつも同じで、必ずお伝えくださいとお願いしています。

当社では、契約不適合責任を負う期間を引渡しから3か月とするのを標準にしています。

期間を区切れるのも、何を告げたかがはっきりしているからです。

直してから売るか、そのまま書いて売るか

直してから売るほうが有利に見えますが、工事の費用をそのまま売却価格に乗せられるとは限りません。

屋根や外壁の工事は金額が大きく、仕上げの好みが買主と合わないこともあります。

当社は、いま漏っているなら止める工事だけを、止まっているならそのまま書く形をおすすめしています。

住宅設備が壊れている場合の考え方は、住宅設備が壊れていても不動産は売れる?直す前の判断にまとめました。

福岡市で売るとき、何から手を付けますか

査定に出す前に、雨漏りの記録を家の中から集めるところから始めてください。

保険の請求書・工事の見積書・領収書・写真の4つがあれば、告知書はほぼ埋まります。

集めてから査定に出すと、価格の根拠のほうも具体的になります。

福岡市の戸建ては2年で1,241件が動いています

当社が集計している国土交通省の取引価格情報では、福岡市7区の戸建ての取引は2年間で1,241件でした。

内訳は東区280件、早良区232件、西区222件、南区218件、城南区146件、博多区87件、中央区56件。

件数が多いのは、住宅地が広がる東区・早良区・西区の3区です。

戸建ての中央値は東区3,550万円、中央区6,250万円で、区によって2倍近い開きがあります。

集計の対象期間は2024年第2四半期から2026年第1四半期まで。

中央値は参考値で、同じ区でも築年数と土地の広さで金額は動きます。

区ごとの相場は福岡市の売却相場で確認できます。

40万円は、戸建ての中央値の約1%にあたります

先ほどの慰謝料40万円を、東区の戸建ての中央値3,550万円と並べると約1%です。

金額だけなら、値引きの交渉で動く幅に収まります。

それでも隠さないほうがよいのは、失うものが金額だけではないからです。

訴訟になれば引渡しから何年も先まで終わらず、その間ずっと相手方として名前が残ります。

戸建ての売却で当社が見ている点は、福岡市の戸建て売却にまとめてあります。

次にやること

まず無料査定に出して、いまの価格の見当をつけてください。

雨漏りの記録は、査定の依頼と一緒にお渡しいただくと話が早く進みます。

売却の全体像は売却の流れに11のステップでまとめてあります。

言うべきかどうかで迷っている段階なら、15分無料相談でその一点だけをお聞きください。

訴訟や賠償の見通しといった個別の法律判断については、弁護士・司法書士にご相談ください。

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この記事の目次1. 雨漏りを告げずに売ったら、どうなりますか
2. 実際の判決では、いくら認められましたか
3. 「知らなかった」で通りますか
4. 告知書には、どこまで書けばよいですか
5. 福岡市で売るとき、何から手を付けますか
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