事故物件を告げずに売ったら|心理的瑕疵をめぐる2つの判決
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士過去に人が亡くなった家を、そのことを告げずに売るとどうなるのか。
裁判所は、心理的な抵抗も「瑕疵」に含まれるという判断を重ねてきました。
告げなかった売主に対して、契約の解除と違約金が認められた判決もあります。
この記事では、公表されている2つの判決を、裁判所名・判決日・結論まで示して紹介します。
福岡市で売却を考えていて、言うべきかどうかで迷っている売主に向けた記事です。
2. 心理的な抵抗も「瑕疵」に入るのですか
3. 6年前の自殺でも契約が解除された例はありますか
4. 賠償が売買代金の1%にとどまった例もありますか
5. 何年前なら言わなくてよいのですか
6. 先に言うと、いくら下がりますか
7. 福岡市で売るとき、当社が先に確かめること
8. 迷ったときは誰に相談しますか
人の死を告げずに売ったら、どうなりますか
買主から契約の解除や損害賠償を求められ、裁判で認められた例があります。
争点になるのは、買主が知っていれば買わなかったと言える事情を、売主が伝えていたかどうかです。
ここで争いになると、値引きの交渉では収まりません。
解除が認められれば代金を返したうえに、違約金の支払いまで命じられる場合があります。
そこへ訴訟の時間と費用が上乗せされます。
心理的な抵抗も「瑕疵」に入るのですか
裁判所は、物理的な壊れだけでなく、心理的な欠陥も瑕疵に含まれるという判断を重ねてきました。
この考え方は、1989年の横浜地方裁判所の判決の時点で示されています。
建物そのものが問題なく使えても、住む人が心理的に受け入れられないなら、目的に沿った物件ではないという理屈です。
国土交通省も2021年10月に、人の死の告知についてのガイドラインを出しました。
ただしガイドラインは、裁判の結論をあらかじめ決めるものではありません。
6年前の自殺でも契約が解除された例はありますか
横浜地方裁判所は1989年(平成元年)9月7日、中古マンションの買主による契約解除と違約金の請求を認めました。
6年前にベランダで自殺があったことを、売主が告げていなかった事案です。
売買代金は3,200万円で、買主は家族と住むために購入していました。
売主は、事件のあとも家族が平穏に暮らしていたこと、6年以上前の出来事であることを理由に、告げる義務は無いと主張しています。
裁判所はその主張を採らず、家族で住む目的の買主なら、知っていれば買わなかったと判断しています。
6年という時間は、特別に長い期間とは見られませんでした。
賠償が売買代金の1%にとどまった例もありますか
同じ心理的瑕疵でも、認められた賠償が売買代金の1%にとどまった判決があります。
東京地方裁判所は2009年(平成21年)6月26日、2億2千万円で買った土地と建物について、220万円の賠償を認めました。
買主が求めていたのは4,400万円で、認められたのはその20分の1です。
この物件では、前の所有者の娘が居室で睡眠薬を大量に飲み、運ばれた病院で約2週間後に亡くなっています。
裁判所は隠れた瑕疵にあたると認めたうえで、建物の中で亡くなったわけではないことなどから、程度は軽いと見ました。
買主が事実を知ったのは購入したあとで、近隣の住民から聞いたものでした。
何年前なら言わなくてよいのですか
売買については、何年たてば告げなくてよいという線が、法律にもガイドラインにも置かれていません。
ガイドラインが「おおむね3年」と書いているのは賃貸借の取引で、売買はその対象に入っていません。
上の2つの判決を並べると、年数だけで結論が決まらないことが分かります。
6年前の自殺で契約が解除された事案があり、一方で賠償が代金の1%に絞られた事案もあります。
違いを生んだのは、買主が何のために買ったか、どこで亡くなったか、近隣にどれだけ記憶が残っているかといった中身です。
期間や死因にかかわらず、買主から聞かれたときは答える必要があります。
告知の期間の考え方は、告知義務はいつまで必要かの記事でも整理しました。
先に言うと、いくら下がりますか
下がり幅は物件ごとに違います。
当社が福岡市内で扱った昭和57年築の分譲マンションでは、相場感が2,200〜2,400万円のところ、1,560万円で買取が成立しました。
お父様が部屋で亡くなり、約1か月後に発見されて特殊清掃を行った物件です。
売主が県外にお住まいで、早く現金化したいというご希望だったため、一般には売り出さず買取に絞っています。
このとき当社は不動産業者5社に声をかけ、条件を競わせて一番良い会社に買っていただきました。
1社だけに聞いて決めていたら、この金額にはなっていません。
事情を正直にお伝えしたうえで、一般のお客様に買っていただいた例もあります。
進め方は事故物件・訳あり物件の売却のページにまとめています。
福岡市で売るとき、当社が先に確かめること
当社がまず確かめるのは、いつ・どこで・どのように亡くなったか、そして特殊清掃を行ったかどうかの4点です。
そのうえで、告知書に書く文言を売主と一緒に作ります。
書きすぎても書かなすぎても、あとで争いのもとになるためです。
福岡市内の水準は区ごとに差があるので、福岡市の売却相場で近い条件の価格帯を先に見ておきます。
相続した家で事情が分からないときは、除籍謄本などをたどる作業が先に入ります。
そのとき集める書類は売却に必要な書類のページにまとめました。
媒介契約を結ぶ前には、告知の内容をどこまで広告に出すかも決めておきます。
契約の種類ごとの違いは媒介契約の種類のページで確かめてください。
迷ったときは誰に相談しますか
売るかどうかの判断と、告知書の内容づくりは、宅地建物取引業者に相談できます。
当社の15分無料相談は、お名前を出さずに事情だけをうかがう形でもかまいません。
隠したまま売るより、先に出して価格と買主を選び直すほうが、あとで解除や賠償を求められる事態を避けられます。
個別の事案で請求が通るかどうかは、この記事では判断できません。
過去の判決は、同じ事情の事案に同じ結論が出ることを示すものではないためです。
賠償や解除の見通しについては、弁護士か司法書士にご相談ください。
