リースバックの家賃が払えない|滞納から明渡しまでの順番
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士リースバックで自宅を売り、いま家賃を払って住み続けている方に向けた記事です。
結論から書くと、家賃を1か月滞納しただけで、その日に家から出されることはありません。
貸主が明渡しを実現するには、催告・契約の解除・明渡しの請求・強制執行という順番を踏む必要があるからです。
ただし、支払わないまま放置すれば、最後は明渡しに行き着きます。
この記事では、その順番と、途中で止めるためにできることを書きました。
2. 滞納から明渡しまでは、どんな順番で進みますか?
3. 「何か月滞納したら退去」という決まりはありますか?
4. 滞納が無くても、期間で終わる契約はありますか?
5. 払えなくなる前に、できることは何ですか?
6. 福岡市で、契約前に何を確かめ、どこに相談しますか?
7. まとめと、次にすること
リースバックの家賃を滞納すると、すぐに追い出されますか?
すぐには追い出されません。
リースバックのあとに払っているのは賃料であり、住宅ローンの返済ではないからです。
住宅ローンなら、滞納が続くと期限の利益を失い、競売の申立てへ進みます。
賃料の場合、貸主が取れる手段は建物の明渡しですが、そこには裁判所の手続きが要ります。
ローンの滞納から競売までの流れは任意売却とは|住宅ローン滞納・競売を避ける方法にまとめました。
この記事で扱うのは、あくまで売却後の賃料のほうです。
家賃を1か月滞納した時点で起きること
まず届くのは、支払いを求める書面か電話です。
家賃債務保証の会社が付いている契約では、その会社から連絡が来ることもあります。
保証会社が貸主に立て替えた場合、支払う相手が保証会社に変わるだけで、支払う義務は消えません。
ここで「今月は遅れるが、いつなら払えるか」を伝えられるかどうか。
連絡が取れない状態が続くと、貸主は話し合いでの解決をあきらめて、次の段階へ進みます。
逆に、支払いの見通しを伝えて実際にその通りに入金していれば、契約の解除まで進む理由が乏しくなります。
貸主が自分で鍵を替えることはできません
裁判所の手続きを経ずに、貸主が鍵を交換したり、荷物を運び出したりすることは認められていません。
借りている人が住んでいる建物を、貸す側の判断だけで空にする行為だからです。
国土交通省は、賃料の滞納と明渡しをめぐる相談の対応例を冊子にまとめて公表しています。
玄関の鍵を無断で交換する、荷物を勝手に運び出すといった行為が、これにあたります。
もし同じことをされたら、その場で応じずに、公的な窓口へ相談してください。
滞納から明渡しまでは、どんな順番で進みますか?
催告、契約の解除、明渡しの請求、強制執行という4つの段階を順に進みます。
1つ飛ばして先へ行くことはできません。
| 段階 | やること | この時点で家は |
|---|---|---|
| 1 催告 | 期間を決めて支払いを求める | 住んだまま |
| 2 解除 | 賃貸借契約を終わらせる | 住んだまま |
| 3 明渡しの請求 | 裁判所に明渡しを求める | 住んだまま |
| 4 強制執行 | 判決にもとづいて執行する | 退去になる |
実際に家を出ることになるのは、4つ目まで進んだときだけです。
1つ目|支払いの催告
貸主が、期間を決めて滞納分の支払いを求めます。
民法は、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に支払われないときに解除できると定めています。
この「相当の期間」が何日なのかは、法律に書かれていません。
届いた書面に何日までと書かれているかを、その場で確かめてください。
内容証明郵便で届くこともあります。
受け取りを拒んでも、滞納が消えるわけではありません。
むしろ、話し合いの余地がある最後の段階なので、ここで連絡を返してください。
2つ目|賃貸借契約の解除
催告した期間を過ぎても支払いがないと、貸主は契約を解除する意思表示をします。
解除された時点で、住み続ける根拠になっていた契約が無くなります。
ただし、解除されたその日に出ていく義務が生じるわけではありません。
建物に住んでいる人を実際に退去させるには、次の段階が要るからです。
解除の通知が届いた段階でも、滞納分をまとめて支払い、貸主が受け取れば、話し合いで元に戻せることもあります。
3つ目|明渡しを求める訴え
貸主が裁判所に、建物を明け渡すよう求める訴えを起こします。
ここで初めて、第三者である裁判所が関わる形です。
審理では、滞納した金額と期間、支払う意思や能力、これまでのやりとりが見られます。
借りている側にも、事情を述べる機会があります。
判決が出るまでには、数か月かかるのが通常です。
訴えが起こされたあとでも、分割で支払う内容の和解が成立して、住み続けられることがあります。
4つ目|強制執行
明渡しを命じる判決が確定し、それでも出ていかない場合の最後の段階です。
裁判所の執行官が現地に来て、日を決めたうえで建物を明け渡させます。
家財の運び出しや保管の費用は、原則として借りている側の負担になります。
滞納した家賃に加えて、この費用まで積み上がる形です。
だからこそ、1つ目や2つ目の段階で手を打つほど、負担は小さく済みます。
「何か月滞納したら退去」という決まりはありますか?
期間で決まる法律上の決まりはありません。
解除できるかどうかは、滞納した月数ではなく、その事案ごとに判断されるからです。
ですから、当社は「◯か月で退去になります」というご説明をしていません。
数字を言えば分かりやすくなりますが、その数字が守ってくれるわけではないからです。
契約書に「◯か月分の滞納で解除できる」と書いてあるとき
賃貸借契約書には、解除できる場合を並べた条項が置かれているのが普通です。
そこに滞納の月数が書かれていることもあります。
これは契約で決めた解除の条件であって、その月数に達した瞬間に退去が確定するものではありません。
解除が有効かどうかは、争いになれば裁判所が判断します。
契約書の月数は、貸主が動き出す目安と読んでおいてください。
見られるのは期間ではなく、信頼関係が壊れたかどうか
建物の賃貸借では、滞納があっても、貸主と借主の信頼関係が壊れたと言えるかどうかで解除の可否が判断されます。
国土交通省の事例集も、滞納の期間だけでなく、支払う能力と意思を含めて見る形で書かれています。
つまり、同じ3か月の滞納でも、連絡を返して少しずつ入れている場合と、音信不通の場合とでは扱いが別です。
払えないこと自体より、放置することのほうが重く働く、と考えてください。
金額の一部でも入れ、いつまでにいくら払うかを書面で伝えておく。
これが、いちばん費用のかからない防ぎ方です。
滞納が無くても、期間で終わる契約はありますか?
定期借家の契約なら、滞納が1円も無くても、期間が満了した時点で終わります。
これは滞納の話とはまったく別の経路で、退去に行き着く道です。
家賃を払い続けられるかを心配している方が、そもそも見落としやすいところ。
普通借家と定期借家は、契約書のどこで見分けますか
定期借家では、契約書とは別に、更新が無いことを説明した書面が渡されます。
この書面が無いまま結ばれた場合、更新が無いという定めのほうが無効になります。
つまり、手元に書面が2枚あるかどうかが見分け方です。
契約書1枚だけを差し出されて「定期借家です」と言われたら、その場で説明の書面を求めてください。
年数と契約の種類の見分け方はリースバックで何年住める?定期借家と普通借家の違いに詳しく書きました。
定期借家なら、期間満了の通知が届きます
契約期間が1年以上の定期借家では、貸主は期間満了の1年前から6か月前までのあいだに、終了する旨を通知しなければなりません。
この通知をしないと、貸主は終了を借主に主張できない仕組みです。
手元の郵便を見返して、この通知が来ていないかを確かめてください。
届いていたなら、残りの期間のあいだに次の住まいを決める必要があります。
届いていないなら、まだ時間があるということ。
払えなくなる前に、できることは何ですか?
手は3つ。
- 貸主に家賃の見直しを相談する
- 買い戻す、または別の住まいへ移る
- これから契約するなら、別の売り方と並べて比べる
どれも、滞納が始まる前のほうが選びやすい手です。
家賃の見直しを貸主に相談する
借地借家法は、近隣の家賃と比べて不相当になったときに、賃料の減額を請求できると定めています。
ただし、リースバックの家賃は売却代金と利回りから決まるため、周辺の相場家賃より高くなることがあります。
この場合、相場と比べて不相当と言えるかどうかは、簡単には決まりません。
それでも、支払いが苦しいことを早く伝えておけば、支払日をずらすなどの相談には応じてもらえることがあります。
黙って遅れるのと、先に伝えて遅れるのとでは、信頼関係の見られ方が変わります。
出典:e-Gov 借地借家法
買い戻す、または住み替える
買い戻しの取り決めが契約に入っているなら、その条件と期限を確かめてください。
買い戻し価格は売却価格より高くなるのが一般的で、資金の見通しが立たないまま期限だけ過ぎることがあります。
住み替えを選ぶ場合、家賃の安い住まいへ移れば、毎月の支出はそこで止まります。
福岡市7区の相場と、区役所などの手続き窓口は福岡市の売却相場と福岡市7区の手続き窓口ガイドにまとめました。
住み替え先の家賃と、いまの家賃を並べて比べるところから始めてください。
これから契約するなら、別の売り方と並べて比べる
まだ契約していない方は、ここがいちばん効きます。
当社では、仲介で売った場合の想定価格、買取価格、リースバックの条件を並べてお出ししています。
たとえば当社のある博多区では、2LDK系のマンションの中央値が2,600万円、3LDK系が2,700万円でした。
2024年第2四半期から2026年第1四半期までのマンションの取引951件を集計した値です。
提示された売却価格がこれより大きく低いなら、その差は将来の家賃で取り返せる性質のものではありません。
区ごとの数字は福岡市博多区の相場で確かめられます。
3つの売り方の違いは仲介・買取・リースバックの比較に並べました。
福岡市で、契約前に何を確かめ、どこに相談しますか?
確かめるのは家賃と契約期間、相談先は福岡県の宅建業の窓口です。
家賃は、会社が告げる20項目に入っています
2026年10月1日から、リースバックを扱う会社は、賃貸借の内容も告げる義務を負いました。
売買の4項目と賃貸借の16項目、合わせて20項目です。
家賃の額と支払時期、契約期間と更新の有無は、その中に入っています。
故意に告げなければ、宅建業法47条1号に触れます。
20項目の一覧はリースバックの告知20項目|業者が説明すべきことの一覧に並べました。
ただし、算定根拠の説明は義務ではありません
家賃をどう計算したかを説明することは、ガイドラインでは「対応することが望ましい事項」に置かれています。
義務ではないので、示されないこと自体は違反になりません。
義務でないことと、聞いてはいけないことは別です。
聞き方と、相場との突き合わせ方はリースバックの家賃の算定根拠は聞ける?相場との確かめ方に書きました。
福岡市からの相談先
宅建業に関する相談窓口は、福岡県 建築都市部 建築指導課の宅建業係です。
場所は福岡市博多区東公園7-7、電話は092-643-3718、受付は平日8時30分から17時15分まで。
契約する前でも相談できます。
すでに滞納が始まっていて、貸主とのやりとりで困っている場合は、法律の相談窓口のほうが向きます。
まとめと、次にすること
この記事の要点は4つです。
- 1か月の滞納で、その日に家から出されることはない
- 明渡しには、催告・解除・請求・強制執行という4段階が要る
- 「◯か月で退去」という決まりは無く、信頼関係が壊れたかどうかで見られる
- 定期借家なら、滞納が無くても期間の満了で終わる
いま支払いが苦しい方は、まず貸主か保証会社に連絡を返し、いつまでにいくら払えるかを伝えてください。
あわせて、手元の契約書で期間と契約の種類を確かめておく。
これから契約する方は、提示された売却価格と家賃を、ほかの売り方と並べてから決めてください。
当社では、リースバックを含む3つの方法を同時に試算し、手取り額と引渡し時期を並べてご覧いただけます。
いまの相場を知りたい方は無料査定から、条件を整理するところからでしたら15分無料相談をお使いください。
どちらも、契約に進まないという結論で構いません。
