テナント仲介の仕事内容とは?住居の賃貸仲介との違い
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士この記事は、住居の賃貸仲介や事業用の仲介を経験した営業職の方に向けて書いています。
テナント仲介に移るか、エージェント(業務委託)として働くかを比べている方が、判断の材料にできるように整理しました。
店舗・事務所の賃貸仲介は、同じ「賃貸」でも住居とは別の分野です。
相手が事業者になり、確かめる項目も契約の条件も変わります。
後半では、福岡市で事業用の賃貸に起きていることと、当社のテナント(事業用)の賃貸エージェントが担う範囲を書きます。
2. テナント仲介では、物件のどこを見るのですか?
3. 居抜き物件は、どう扱えばよいですか?
4. 天神ビッグバン・博多コネクティッドで、福岡の事業用賃貸に何が起きていますか?
5. おもいで不動産のテナント賃貸エージェントは、どこまでを担いますか?
テナント仲介と住居の賃貸仲介は、何が違うのですか?
いちばんの違いは、借りる人が「暮らす場所」ではなく「商売の場所」を探している点です。
そのため、相手・物件・決め手の3つが住居とは入れ替わります。
相手は個人ではなく、事業者とビルオーナー
借りる側は、飲食店や物販の店主、事務所を移したい会社、倉庫を探す事業者などです。
個人で開業する方もいれば、出店の担当者が社内の決裁を通して動く会社もあります。
貸す側は、ビルのオーナー様や、その委託を受けた管理会社です。
住居では入居者の暮らしやすさを一緒に考えますが、事業用では相手の事業計画に沿って話を進めます。
「この場所で売上が立つか」「この広さで人が入るか」という問いに、物件側の事実で答える仕事になります。
入居の審査で見られるところも、住居とは別物です。
法人なら会社の決算や事業の内容、個人の開業なら事業計画や資金の準備を、オーナー様が確かめたがる場面は少なくありません。
住居の仲介で培った「相手の事情を聞き出す力」は、そのまま生きる部分です。
扱う物件と、決め手になるもの
扱うのは、路面店・ビルの空中階の店舗、事務所のワンフロアや小割りの区画、倉庫などです。
住居では間取り・駅からの距離・家賃が決め手になりやすいでしょう。
事業用では、人通り、看板を出せるか、電気やガスの容量、営業時間の制限、搬入経路などが加わります。
飲食店なら、排気・給排水・厨房の位置が分からないと話が前に進みません。
事務所なら、床の荷重やOAフロア、空調の運転時間、入館の管理方法を聞かれることがあります。
一般に、決まるまでの期間も住居より長くなりがちです。
出店の判断・資金の準備・内装の見積もりを並行して進めるため、1件を何か月か追い続けることも珍しくありません。
テナント仲介では、物件のどこを見るのですか?
住居の賃貸ではあまり意識しない「その用途で使えるか」と「出るときにいくらかかるか」を、最初に確かめます。
具体的には、用途地域・建物の用途、原状回復の範囲、保証金とフリーレントの条件です。
用途地域と建物の用途
用途地域は都市計画で定められ、地域ごとに建てられる建物の用途が建築基準法で制限されています。
国土交通省によると、用途地域は住居・商業・工業など13種類あります。
同じ「店舗」でも、地域によっては床面積や階数に制限がかかる点は見落とせません。
もう1つは、建物そのものがどの用途で建てられ、届け出られているかです。
たとえば事務所として使っていた区画を飲食店に変えると、建築基準法上の「用途変更」に当たる場合があります。
2019年6月の改正で、特殊建築物への用途変更で確認申請が要る規模は、100㎡超から200㎡超に引き上げられました。
ただし、確認申請が要らない規模でも、建築基準法や消防法の基準に合わせる義務は残ります。
「申請が要らないから何でもできる」と事業者に伝えてしまうと、あとで工事のやり直しにつながりかねません。
出典:国土交通省 用途規制
原状回復とスケルトン返し
住居の原状回復には、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」があります。
このガイドラインは民間の賃貸住宅を対象にしたもので、経年変化や通常の使用による損耗は賃借人の負担にしない考え方を示したものです。
法的な拘束力は無く、契約の内容が基本になるという位置づけです。
店舗・事務所の賃貸借は、このガイドラインの対象ではありません。
事業用では、契約書の特約で原状回復の範囲を決めるのが一般的な実務です。
内装や設備をすべて撤去し、躯体だけの状態で返す「スケルトン返し」は、事業用ではよく見かける条件です。
退去時の工事をオーナー様の指定業者で行う、と定めている例もあります。
契約前にこの範囲を事業者が理解していないと、退去の段階で費用の見込みが大きく外れることになるでしょう。
保証金・償却・フリーレント
事業用では、敷金の代わりに「保証金」という名前で預かる例が多く見られます。
住居の敷金より高めに設定されることが多く、退去時に一定の額を差し引く「償却」の取り決めが付くこともあります。
呼び方や返し方は物件ごとに違うため、契約書で中身を1つずつ確かめるしかありません。
フリーレントは、入居からしばらくの間の賃料を免除する条件です。
内装工事の期間に賃料が発生しないようにする目的で、交渉に上がりやすい項目といえます。
ただ、途中で解約したときに免除分を払う取り決めが付く例もあるので、条件の全体を事業者に伝える必要があります。
賃料を下げるか、フリーレントを延ばすか、保証金を軽くするか。
オーナー様にとって受け入れやすい組み合わせは物件ごとに違い、その落としどころを探るのがテナント仲介の交渉の中心です。
居抜き物件は、どう扱えばよいですか?
居抜き物件は、前のテナントが残した内装や設備を、次のテナントが引き継いで使う物件です。
開業の費用と期間を抑えられる反面、賃貸借とは別の取引である「造作譲渡」が絡むため、関係者と取り決めが増えます。
造作譲渡は、誰と誰の取引か
一般に、造作譲渡は退去するテナントと、入居するテナントのあいだの売買として行われます。
賃貸借の当事者であるオーナー様とは、別の取引です。
そのため、オーナー様が居抜きでの引き継ぎを認めているかを、最初に確かめる必要があります。
次のテナントが退去するときに、引き継いだ造作も含めて原状回復を求められる契約もあります。
「前のテナントが付けたものだから」と思っていると、退去の費用の見込みが崩れかねません。
居抜きで確かめること
居抜きで確かめたい項目を一般的な実務から並べると、次のとおりです。
- 譲渡の対象になる造作・設備の一覧と、その所有者
- リース品が混ざっていないか(リース会社の物は譲渡できない)
- 厨房機器・空調・給排水の動作と、修理の履歴
- 同じ業種で使えるか、業種を変えても使えるか
- 退去時の原状回復に、引き継いだ造作が含まれるか
飲食店を開くには、一般に保健所の営業許可が要ります。
残された厨房の設備がその基準に合うかどうかも、事業者と一緒に早めに確かめたい項目です。
飲食店の居抜きは、同じ業態なら早く開業できる一方、業態を変えると撤去と工事がかえって増えることもあります。
事業者が期待する「安く早く」が本当に成り立つのかを、物件の事実で示すのが仲介の役目です。
天神ビッグバン・博多コネクティッドで、福岡の事業用賃貸に何が起きていますか?
福岡市の都心では、天神と博多駅のまわりで、古いビルから新しいビルへの建て替えが続いています。
新しいビルへの移転が決まると、元のフロアにも次のテナントの募集が出るため、事業用の賃貸の動きにつながります。
天神ビッグバン
福岡市によると、天神ビッグバンは2015年2月に始動しました。
対象は天神交差点から半径約500メートル(約80ヘクタール)の区域です。
航空法の高さ制限の緩和や市独自の容積率緩和を使い、耐震性の高いビルへの建て替えを誘導しています。
2026年3月末までに85棟が竣工し、2026年末までに約90棟、2030年代までに約120棟の建て替えが予定されています。
博多コネクティッド
博多コネクティッドは2019年1月に始まった、博多駅の活力と賑わいを周辺へつなげる取り組みです。
対象は、博多駅から半径約500メートル(約80ヘクタール)の範囲。
2026年3月末の時点で30棟が竣工し、2028年末までに約35棟の建て替えが予定されています。
博多コネクティッドのボーナス制度は、2028年12月31日までに竣工予定のビルが対象です。
建て替えのあいだは、取り壊すビルのテナントが周辺へ移ることも考えられます。
天神と博多の両方で移転・出店・空いたフロアの募集が重なるのは、事業用の賃貸に携わる者にとって案件の生まれやすい環境といえるでしょう。
おもいで不動産のテナント賃貸エージェントは、どこまでを担いますか?
当社のテナント(事業用)の賃貸エージェントは、事業者の方の相談から条件の交渉までを担い、書類と調査は当社が引き受けます。
働き方は業務委託・専業で、福岡県内(主戦場は福岡市)が対象です。
エージェントが担うこと
- 事業者の方の出店・移転の相談
- 物件の提案と内見のご案内
- 賃料・保証金・フリーレントなど条件の交渉
- 居抜き物件の造作の調整
- オーナー様への募集条件の提案
- ご自身での集客
お客様との関係づくりと条件の詰めに、時間を使える形にしています。
どのお客様を、いつ、どう追いかけるかは、エージェントご自身が決めます。
一方で、用途の確認や契約書の条文で迷ったときに、ひとりで抱え込まずに当社へ相談できるのが、この形の利点です。
当社が担うこと
- 重要事項説明書・賃貸借契約書の作成
- 重要事項説明の実施(当社の宅地建物取引士が行います)
- 用途地域・建物の用途の役所調査
- レインズ・物件情報の確認
- 広告表示のチェック
- クレーム・紛争対応
上で書いた用途地域や建物の用途の確認は、事業用でいちばん手間のかかる部分です。
重要事項説明も当社の宅地建物取引士が行うため、資格をお持ちでない方も応募できます。
媒介契約の当事者は当社で、エージェントは当社の従業者名簿に載り、従業者証明書をお渡しします。
応募の条件と、お金の流れ
応募の条件は、店舗・事務所など事業用の賃貸仲介の実務経験です。
事業用の仲介会社での営業のほか、ビル管理会社でのテナント募集や、出店する側の店舗開発の経験も含めます。
宅地建物取引士の資格、飲食店の居抜き物件の経験、天神・博多のビルオーナー様や管理会社とのつながりは歓迎します。
住居の賃貸仲介だけの経験の方は、住居の賃貸エージェントの職種をご覧ください。
お金の流れは2つです。
当社からは、成約した賃貸借で当社が受け取る仲介手数料に応じて、業務委託料をお支払いします。
エージェントからいただくのは、月額のサポート利用料です。
率と月額の金額は、面談で契約書と一緒にお見せします。
初期費用・加盟金・中途解約の違約金はありません。
募集は3職種で各1名、合わせて3名までです。
専任の宅地建物取引士1名につき従業者5名という法令上の上限があり、当社は代表1名の体制だからです。
詳しい条件はテナント(事業用)の賃貸エージェントの募集に、制度の全体とよくある質問はエージェント募集にまとめています。
応募は応募フォームから受け付けています。
