天神・博多の事業用賃貸の動向|建て替えで仲介はどこに出るか
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士この記事は、店舗・事務所の賃貸仲介を経験した営業職の方に向けて書いています。
福岡でテナント仲介を続けるか、エージェント(業務委託)として働くかを比べるとき、まず気になるのは「仕事がどこにあるか」でしょう。
天神と博多駅のまわりでは、福岡市の施策でビルの建て替えが続いています。
この記事では、建て替えのどの段階で仲介の相談が生まれるのかを、4つの場面に分けて整理しました。
後半では、テナント仲介の担当者が押さえておきたい市の公表ページと、都市計画の調べ方もまとめました。
テナント仲介そのものの仕事内容や、住居の賃貸との違いはテナント仲介の仕事内容とは?にまとめています。
2. 建て替えで退去するテナントは、どう動きますか?
3. 新しいビルへの入居と、空いたフロアの募集は、仲介の仕事になりますか?
4. 建て替えの区域の外では、どんな相談が出ますか?
5. テナント仲介の担当者は、どの情報源を押さえればよいですか?
6. おもいで不動産のテナント賃貸エージェントは、この動きにどう関わりますか?
天神・博多のビル建て替えで、テナント仲介の仕事はどこに生まれますか?
建て替えに伴う仲介の相談は、取り壊すビルからの移転、新しいビルへの入居、移ったあとの空きフロア、区域の外の中小ビルという4つの場面に出ます。
1棟の建て替えで、この4つが順に、ときには同時に動き出す。
4つの場面の全体像
場面ごとに、誰が相談の主になり、仲介が何を担うかを並べると次のとおりです。
| 場面 | 相談の主 | 仲介が担うこと |
|---|---|---|
| 取り壊すビルからの移転 | 退去するテナント | 仮移転先・移転先の提案と条件の交渉 |
| 新しいビルへの入居 | 入居を考える事業者 | 借りる側に立った比較と条件の詰め |
| 移ったあとの空きフロア | 既存ビルのオーナー様 | 募集条件の提案と次のテナント探し |
| 区域の外の中小ビル | 店舗・小さな事務所の事業者 | 物件の提案と内見のご案内 |
表の右の列は、当社のテナント(事業用)の賃貸エージェントが担う範囲とも重なります。
時期で見ると、何が変わるか
福岡市の公表では、天神ビッグバンは2026年末に一つの区切りを迎えるとされています。
天神ビッグバンボーナスの対象は、感染症対策に取り組んで2026年12月31日までに竣工予定のビルなどです。
一方で市は、2030年代までの建て替えも見込んでいます。
位置図には、段階的・連鎖的な建て替えとしてボーナスの認定に向けて検討中の計画も3つ載っています。
博多コネクティッドのボーナスは、2028年12月31日までに竣工予定のビルが対象。
天神と博多駅周辺では、制度の区切りの年が違います。
どちらの区域の相談かで、移転が出やすい時期の見当も変わってくるでしょう。
建て替えで退去するテナントは、どう動きますか?
取り壊すビルのテナントは、建て替えのあいだだけ別の場所に移る「仮移転」か、そのまま別のビルへ移る「本移転」かを選ぶことになります。
選んだ側によって、探す物件も契約の組み立ても別物です。
仮移転か、本移転か
新しいビルに戻るつもりの事業者は、数年だけ使える場所を探します。
戻らないと決めた事業者は、長く使う前提で立地や広さを選び直すはずです。
同じ「移転先を探してほしい」という相談でも、前提がまったく違います。
最初の面談で、戻る予定の有無と、新しいビルの竣工の見込みを確かめておくと、提案の外れが減るでしょう。
市の位置図には、福岡中央郵便局とイオンショッパーズ福岡の「段階連鎖建替えプロジェクト」も載っています。
段階的・連鎖的に進む計画なら、移転の時期が街区ごとにずれることも考えられるでしょう。
公表された計画の名前と範囲を知っておけば、相談が来る前に周辺の空きを調べ始められます。
仮移転の相談で確かめること
仮移転の物件探しで前に出てくるのは、ふつうの移転とは別の項目です。
- 使う期間と、新しいビルの竣工が遅れたときの延ばし方
- 期間を区切った契約(定期建物賃貸借など)が合うかどうか
- 内装にかける費用と、退去時の原状回復の範囲
- 取引先やお客様に知らせる住所が、何回変わるか
数年で出る場所に内装費をかけすぎると、事業者の負担が重くなります。
そのため、居抜きの区画や内装が残った事務所が候補に上がることも考えられます。
オーナー様の側から見ると、期間が決まった入居をどこまで受けるかは物件ごとの判断です。
貸す側・借りる側の両方の事情を聞いて、期間と条件のすり合わせをするのが仲介の役目になります。
新しいビルへの入居と、空いたフロアの募集は、仲介の仕事になりますか?
なります。
ただし、新しいビルの入居は窓口が限られやすく、仲介の手が入りやすいのは、移ったあとに空く既存ビルのフロアのほうです。
新しいビルの入居は、借りる側に立つ
一般に、新しく建つ大きなビルのテナント募集は、ビルを建てた事業者の担当部署や、指名された仲介会社が担う例が多く見られます。
福岡市も、ボーナスの認定ビルへテナントを優先して紹介する仕組みを、インセンティブの一つに挙げています。
そのため、エージェントが新しいビルに関わる道は、主に借りる側の事業者の相談を受ける形になるでしょう。
新しいビルと既存ビルの条件を並べて比べ、移るかどうかの判断材料を事業者にそろえる。
貸す側の窓口に入れなくても、この役割は残ります。
入居の時期に合わせて、いまのビルの解約予告の期限を逆算するのも、借りる側の仲介の仕事です。
移ったあとに空くフロアと、玉突きの移転
新しいビルへの移転が決まると、元のフロアにも次のテナント募集が出ます。
元のビルのオーナー様にとっては、思っていなかった時期に空室を抱える事態です。
賃料を据え置くか、フリーレントを付けるか、区画を分けて小さく貸すか。
募集の条件をオーナー様と一緒に考える相談は、ここで生まれます。
空いたフロアに入るのは、別のビルから広さや立地を変えたい事業者かもしれません。
その事業者が出たあとにも、また空きが出ます。
1件の移転が別の移転を呼ぶ玉突きの動きを追えるかどうかで、拾える相談の数は変わってくるはずです。
建て替えの区域の外では、どんな相談が出ますか?
区域の外にある中小のビルや路面店では、新しいビルの条件が合わない事業者や、建て替えで場所を失った店舗の相談が出ます。
大きな建て替えの陰で、件数としてはこちらが中心になることもあるでしょう。
新しいビルに合わない事業者の受け皿
新しいビルは、広さの単位や入居の審査、内装の決まりが事業者に合わないことがあります。
小さな事務所や、路面で看板を出したい店舗は、周辺の既存ビルや通り沿いの区画を探すことになるでしょう。
こうした地域のビルは、管理会社やオーナー様との日ごろのやり取りが物件情報の入口になります。
当社が歓迎する経験に「天神・博多のビルオーナー様・管理会社とのつながり」を挙げているのは、このためです。
周辺のビルのオーナー様からの相談
周りに新しいビルが建つと、既存ビルのオーナー様は、自分のビルの貸し方を見直す必要に迫られます。
同じ賃料のままで入居が続くのか、用途を変えたほうが借り手が付くのか。
事務所の区画を店舗に変えるなら、用途地域や建物の用途を確かめる手間も増えます。
こうした相談は、すぐに成約にならなくても、次の空室が出たときの募集につながります。
オーナー様に募集条件を提案できる担当者は、空室が出る前から声がかかる立場になれるはずです。
テナント仲介の担当者は、どの情報源を押さえればよいですか?
まず押さえたいのは、福岡市が出している天神ビッグバン・博多コネクティッドの公表ページと、都市計画の情報です。
どちらも無料で見られ、計画の名前・範囲・時期を一次情報で確かめられます。
市の公表ページと関連資料
福岡市の天神ビッグバンのページには、進捗のほか、関連資料やプレスリリースをまとめた一覧があります。
そこに年ごとに並ぶのは、計画概要の公表、着工、竣工、テナント決定といったリリースです。
計画概要が公表された段階で、取り壊すビルと時期の見当が付きます。
竣工やテナント決定のリリースは、元のフロアが空く合図として読めるでしょう。
博多コネクティッドのページにも、認定ビルの情報が載っています。
2026年6月3日には、博多新三井ビル建替計画が博多コネクティッドボーナスとグリーンボーナスの同時認定を初めて受けたと紹介されています。
どちらも、住宅都市みどり局の都心創生課が窓口です。
都市計画の情報と、地区計画の計画書
福岡市は「福岡市Webまっぷ」の都市計画情報マップで、用途地域や高度地区などを地図から調べられるようにしています。
ただし市は、土地・建物の取引や建築確認申請などでは、来庁して窓口の図面で確かめるよう案内しています。
地図は下調べに使い、契約に関わる確認は窓口で行う、という使い分けです。
天神・博多駅周辺には、再開発等促進区を定めた地区計画がいくつもあります。
市の一覧に並ぶのは、天神明治通り地区、天神一丁目地区、博多駅中央街地区、博多駅前三丁目地区などです。
各地区の計画書・計画図はPDFで読め、地区計画の区域では工事の着手の30日前までの届出が要ると市は示しています。
計画書を読んでおけば、事業者に「その場所で何が建ち、何ができるか」を説明するときの裏付けになるでしょう。
おもいで不動産のテナント賃貸エージェントは、この動きにどう関わりますか?
当社のテナント(事業用)の賃貸エージェントは、こうした移転・出店の相談から条件の交渉までを担い、役所調査と書類は当社が引き受けます。
働き方は業務委託・専業で、福岡県内(主戦場は福岡市)が対象です。
エージェントと当社の分け方
エージェントが担うのは、事業者の方の出店・移転の相談、物件の提案と内見のご案内、条件の交渉です。
居抜き物件の造作の調整、オーナー様への募集条件の提案、ご自身での集客も含みます。
当社は、用途地域・建物の用途の役所調査、重要事項説明書・賃貸借契約書の作成、レインズ・物件情報の確認、広告表示のチェックを担います。
重要事項説明を行うのも、当社の宅地建物取引士です。
上で書いた都市計画の窓口での確認も、当社の役所調査の範囲です。
エージェントは当社の従業者名簿に載り、従業者証明書をお渡しします。
会社の名前で仲介する仕組みは不動産エージェント(業務委託)とは?で詳しく説明しています。
応募の条件と、面談でお見せするもの
応募の条件は、店舗・事務所など事業用の賃貸仲介の実務経験です。
事業用の仲介会社での営業、ビル管理会社でのテナント募集、出店する側の店舗開発の経験も含めます。
宅地建物取引士の資格は歓迎で、必須ではありません。
お金の流れは、当社からの業務委託料と、エージェントからの月額のサポート利用料の2つです。
率と月額の金額は、面談で契約書と一緒にお見せします。
初期費用・加盟金・中途解約の違約金はありません。
報酬の考え方を詳しく知りたい方は、不動産エージェントの報酬の仕組みをご覧ください。
詳しい条件はテナント(事業用)の賃貸エージェントの募集に、制度の全体とよくある質問はエージェント募集に載せています。
応募は応募フォームから受け付けています。
