オフィス移転の仲介の流れ|解約予告と二重家賃の考え方
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士この記事は、事務所や店舗の賃貸仲介を経験した営業職の方に向けて書いています。
テナント仲介を続けるか、エージェント(業務委託)として働くかを比べるときに、オフィス移転の案件をどう進めるかを確かめる材料にしてください。
オフィス移転では、事業者が物件を選んでから入居するまでに、いくつもの判断が順番に並びます。
仲介の担当者がその順番を知っていれば、事業者より一歩先に日程を引けます。
テナント仲介そのものの仕事内容や、住居の賃貸との違いはテナント仲介の仕事内容とは?にまとめました。
2. 移転の検討と物件選びでは、何から決めますか?
3. 解約予告の期間と二重家賃は、どう考えればよいですか?
4. 申込みから契約、内装工事までに何が起きますか?
5. 移転の前後に、仲介の担当者は何を先回りして用意しますか?
6. 福岡でオフィス移転の仲介をする場合、当社のエージェントは何を担いますか?
オフィス移転の仲介は、どんな流れで進みますか?
オフィス移転は、検討・物件選び・申込み・契約・内装工事・移転・旧事務所の原状回復という7つの段階で進みます。
仲介が関わるのは物件選びと契約だけではなく、前後の段階の日程づくりまで含まれます。
7つの段階と、仲介が動くところ
段階ごとに、事業者が決めることと仲介の担当者が動くことを並べると次のとおりです。
| 段階 | 事業者が決めること | 仲介が動くこと |
|---|---|---|
| 検討 | 移る理由・時期・予算 | いまの契約の解約条項を一緒に読む |
| 物件選び | エリア・広さ・設備 | 候補の提案と内見のご案内 |
| 申込み | 候補の1つに絞る | 申込みと審査の書類をそろえる |
| 契約 | 条件の最終判断 | 賃料・保証金・入居日の交渉 |
| 内装工事 | レイアウトと工事の発注 | 工事の範囲と日程をオーナー様と詰める |
| 移転 | 引っ越しと社内の手続き | 鍵の受け渡しと入居日の調整 |
| 原状回復 | 旧事務所の明け渡し | 工事の範囲と保証金の精算の確認 |
表の右の列のうち、契約書と重要事項説明の作成は、当社では会社が担う部分です。
期間を決めるのは、解約予告と内装工事
移転にかかる期間は、会社の規模よりも、いまの事務所の解約予告の期間と内装工事の大きさで決まりやすい。
解約を申し入れた日から契約が終わる日までが、新しい事務所に移るための持ち時間になります。
その持ち時間の中に、物件選び・契約・内装工事・引っ越し・旧事務所の原状回復を収めなければなりません。
社内の決裁に時間がかかる会社なら、申込みから契約までの間も長めに見ておくと日程が崩れにくくなります。
最初の面談で「いつまでに移りたいか」より先に「いまの契約はいつ終えられるか」を確かめる。
この順番を守るだけで、日程の組み直しはぐっと減るはずです。
移転の検討と物件選びでは、何から決めますか?
最初に決めるのは、移る理由と譲れない条件です。
理由が言葉になっていないと、内見の回数が増えても候補が絞れません。
移る理由を、条件の言葉に置き換える
オフィス移転の理由には、人が増えて手狭になった、逆に広さを持て余している、採用のために立地を変えたい、といったものがあります。
理由ごとに、優先する条件は入れ替わります。
人が増えるなら、何人まで入れるかと、増えたときに隣の区画を借り増せるかが前に出るでしょう。
採用が理由なら、駅からの距離や建物の新しさを重く見る事業者もいるはずです。
仲介の担当者は、理由を聞いたうえで「広さ・立地・賃料・設備」のうちどれを動かせるかを確かめます。
動かせない条件が1つに決まると、提案の外れが目に見えて減る。
候補を比べるときに並べて見せるもの
候補が2〜3件に絞れたら、賃料だけでなく、移ってから出ていくまでにかかる費用の全体を並べて見せます。
- 賃料・共益費と、フリーレントの有無
- 保証金(敷金)の額と、退去時に差し引かれる取り決め
- 空調の運転時間と、時間外の空調にかかる費用
- 床の配線(OAフロア)と、電気の容量
- 退去時の原状回復の範囲
表に並べると、賃料が安い物件ほど退去時の負担が重い、という逆転が見えることもあります。
借りる側の事業者にとっては、この比較表がそのまま社内の決裁の資料になるでしょう。
解約予告の期間と二重家賃は、どう考えればよいですか?
解約予告の期間は法律で一律に決まるものではなく、いまの賃貸借契約書に何と書いてあるかで決まります。
予告の期間が長いほど、新旧の家賃が重なる期間(いわゆる二重家賃)も伸びやすくなります。
いまの契約書の解約条項を、最初に読む
事業用の賃貸借契約では、住居より長い解約予告の期間が定められている例が見られるのが実情です。
そのため、移転の相談を受けたら、まずいまの契約書を見せていただき、予告の期間と申し入れの方法を確かめます。
書面での通知を求める契約なら、口頭で伝えただけでは足りないでしょう。
契約が定期建物賃貸借(定期借家)なら、中途解約できるかどうか自体が契約の定め次第になることも。
国土交通省のQ&Aによると、法律で借主からの中途解約が認められるのは居住用の建物に限られます。
床面積200平方メートル未満で、転勤や療養などやむを得ない事情がある場合です。
事務所はこれに当たらないため、中途解約の特約が無い定期借家では、期間の途中で出られないことも考えられます。
いずれも契約ごとに中身が違うので、断定はせず、契約書の文言をそのまま事業者と一緒に読むのが仲介の役目です。
新旧の家賃が重なる期間を縮める手
二重家賃をゼロにするのは難しくても、重なる期間を縮める手はいくつかあります。
- 新しい事務所の賃料の発生日を、内装工事が終わる頃に合わせられないかオーナー様に相談する
- フリーレントの期間を、内装工事の期間に充てられないか交渉する
- 旧事務所の原状回復の工事を、解約日までに終えられる日程で組む
- 解約の申し入れを、新しい事務所の契約の見通しが立った時点で出せるよう準備しておく
最後の1つは、早すぎても遅すぎても事業者が困ります。
申し入れを急いで新しい事務所が決まらなければ、行き場が無くなる。
遅らせれば、重なる期間の家賃がそのまま増えます。
申込みの審査の見込みと解約の申し入れの期限を同じ表に書いて、事業者が判断できる形にしておきます。
申込みから契約、内装工事までに何が起きますか?
申込みのあとは、オーナー様の審査、条件の交渉、契約、内装工事の順。
この間に、工事の範囲と消防への届出の段取りを決めておかないと、入居日が後ろへずれていきます。
申込みと契約の前に詰める条件
法人の申込みでは、会社の登記事項証明書や決算書、事業の内容が分かる資料を求められる場面が少なくありません。
求められる書類はオーナー様ごとに違うので、申込みの前に一覧にして事業者へお伝えしておくと、審査の待ち時間が短くなります。
契約の前には、賃料・保証金・フリーレントのほか、入居日と賃料の発生日を別々に確かめておきたいところです。
内装工事のうち、どこまでをビル側の業者が行い、どこから借りる側が発注できるかも、物件ごとに取り決めがあります。
工事の区分と費用の負担が曖昧なまま契約すると、工事の見積もりが出たあとで話が振り出しに戻りかねません。
内装工事と、福岡市消防局への届出
福岡市消防局は、新たにテナントを使う人に、使用開始の7日前までに「防火対象物使用開始届出書」を出すよう求めています。
あわせて、計画の段階から建物の所在地を管轄する消防署へ相談するよう呼びかけています。
レイアウトの変更や扉・窓の変更などは、消防設備の設置が必要になる場合があるためです。
入居したあとに直すと、費用の負担が大きくなるとも書かれています。
仲介の担当者は、届出そのものを代わりに出す立場ではありません。
ただ、入居日から7日をさかのぼった日を日程表に入れ、内装業者との打ち合わせで消防への相談が済んでいるかを確かめることはできます。
移転の前後に、仲介の担当者は何を先回りして用意しますか?
先回りして用意するのは、事業者の社内手続きを含めた日程表と、旧事務所の明け渡しの段取りです。
どちらも事業者が自分で進めるものですが、期限を知らないまま動くと最後の数週間に作業が集中します。
事業者の社内手続きを、日程表に入れる
事務所の住所が変わると、事業者は取引先への案内や名刺・ホームページの書き換えなど、社内でも多くの作業を抱えます。
本店を移す株式会社なら、登記の期限も加わる。
法務局の案内では、株式会社が本店を他の登記所の管轄に移したときは、移転の日から2週間以内に登記をしなければなりません。
登記の手続きは事業者と司法書士の仕事です。
それでも、入居日が動けば登記の期限も動くので、入居日を変えるときは事業者に一言添えておきます。
旧事務所の明け渡しと、保証金の精算
旧事務所は、解約の日までに原状回復を終えて明け渡すのが一般的な取り決めです。
事業用の原状回復は、住居向けの国土交通省のガイドラインではなく、契約書の特約で範囲を決めるのが一般的な実務です。
天井・床・間仕切りをどこまで戻すか、工事をビル側の指定業者が行うかによって、費用も日程も大きく変わります。
原状回復の見積もりは、新しい事務所の契約より前に取っておくと、移転の総額を早い段階で示せます。
保証金から原状回復の費用や償却分が差し引かれる契約なら、戻ってくる金額と時期も事業者の資金繰りに関わる話です。
原状回復の考え方はテナント仲介の仕事内容でも取り上げました。
福岡でオフィス移転の仲介をする場合、当社のエージェントは何を担いますか?
当社のテナント(事業用)の賃貸エージェントは、事業者の移転の相談、物件の提案と内見、条件の交渉を担います。
契約書・重要事項説明書の作成、重要事項説明、用途地域や建物の用途の役所調査は、当社が引き受ける部分です。
天神・博多の建て替えで続く移転の相談
福岡市の天神と博多駅のまわりでは、天神ビッグバン・博多コネクティッドによるビルの建て替えが続いています。
新しいビルへの移転が決まると、元のフロアにも次のテナントの募集が出ます。
移る側の事業者にとっては、まさにこの記事で書いた解約予告と二重家賃の話が、建て替えの日程と重なって出てくる場面です。
建て替えのどの段階でどんな相談が出るかは、天神・博多の事業用賃貸の動向に分けて整理しました。
エージェントと当社の分け方、応募の条件
オフィス移転の案件でエージェントが受け持つのは、上の表の「仲介が動くこと」のうち、事業者とオーナー様に向き合う部分です。
日程表づくりや条件の交渉に時間を使い、書類と調査は当社に任せていただく形になります。
媒介契約の当事者は当社で、エージェントは当社の従業者名簿に載り、従業者証明書をお渡しします。
応募の条件は、店舗・事務所など事業用の賃貸仲介の実務経験です。
宅地建物取引士の資格や、天神・博多のビルオーナー様・管理会社とのつながりは歓迎します。
働き方は業務委託・専業です。
成約した賃貸借で当社が受け取る仲介手数料に応じて、業務委託料をお支払いします。
エージェントからは、月額のサポート利用料をいただく形です。
率と月額の金額は、面談で契約書と一緒にお見せします。
業務委託という働き方そのものは不動産エージェント(業務委託)とは?に、報酬の流れは報酬の仕組みにまとめました。
職種の詳しい条件はテナント(事業用)の賃貸エージェントの募集に、制度の全体とよくある質問はエージェント募集に載せています。
応募は応募フォームから受け付けています。
