リースバックした家は相続できる?残るのは現金と賃借権
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士親からリースバックを相談された子ども世代と、契約を考えている所有者に向けた記事です。
いちばん大きいところから書きます。
リースバックをすると、その家は相続財産に残りません。
所有権が買主の会社へ移るため、亡くなったときに家族へ渡るのは、手元に残った売却代金と、その家に住むための賃借権の2つになります。
この記事では、家族に何が残って何が残らないのか、同居のご家族が住み続けられるのかを、契約の種類ごとに分けて説明します。
2. 同居している家族は、契約者が亡くなったあとも住み続けられますか
3. 定期借家だと、残された家族の住まいはどうなりますか
4. 相続した実家や共有名義の家でも、リースバックはできますか
5. 契約の前に、家族へ何を伝えておきますか
6. 福岡市で、次にやること
リースバックした家は、相続財産として残りますか
残りません。
売買契約を結んで代金を受け取った時点で所有権は買主の会社へ移り、家は売主の財産ではなくなります。
相続のときに家族が受け取るのは、家そのものではなく、使い残した売却代金と、借主としての立場です。
登記の名義が変わるので、相続登記の対象からも外れる
法務局の登記簿では、所有者の欄が買主の会社名に書き換わります。
名義がすでに変わっているため、亡くなったあとに相続登記をする対象からも外れます。
相続登記は2024年4月から義務になりました。
手続きが1つ減るのは、残された家族にとって負担の軽い面です。
ただし軽くなるのは手続きだけで、家という財産そのものが無くなっている点は変わりません。
家の代わりに残るのは、売却代金の現金
相続財産になるのは、そのとき通帳に残っている現金です。
現金は1円単位で分けられるので、相続人が複数いても分けやすい形ではあります。
一方で、生活費や毎月の家賃に充てれば、その分だけ残る額は減っていきます。
リースバックは、家を現金に換えたうえで、その現金を家賃として少しずつ買主へ戻していく仕組みです。
10年住めば10年分の家賃が出ていくので、契約のときの売却価格がそのまま相続財産になるわけではありません。
福岡市の相場と比べると、どれくらい残るのか
当社が国土交通省の取引価格情報をもとに集計したところ、福岡市東区の戸建ての取引価格は、280件の中央値で3,550万円でした。
リースバックの売却価格は、仲介で一般の買主に売るときより低くなるのが普通です。
買主の会社が、そのあと家賃を受け取り続けることを前提に価格を決めるためです。
つまり相続人に残る現金は、区の中央値より少ない額から始まり、住んでいる年数のぶんだけ減っていきます。
同じ集計で、博多区の戸建ての中央値は4,000万円、取引は87件でした。
件数が少ない区ほど、比べられる似た取引も少なくなります。
買主の会社が出した価格が妥当かどうかは、区と広さをそろえた中央値と並べて見てください。
区ごとの中央値は福岡市東区の相場のページで、種別と広さごとに見られます。
仲介・買取・リースバックの手取りの違いは3つの売り方の比較で並べているので、あわせてご覧ください。
同居している家族は、契約者が亡くなったあとも住み続けられますか
賃借権は相続されるので、原則として住み続けられます。
民法では、相続人が亡くなった方の権利と義務をまとめて引き継ぐと定められています。
借主という立場も、その中に含まれるものの1つ。
貸主の側から「契約者が亡くなったので出てください」と一方的に言えるわけではありません。
ただし住み続けられる年数は契約の種類で変わるので、そこは次の章で分けて書きます。
引き継ぐのは、住む権利と家賃を払う義務の両方
相続人が引き継ぐのは権利だけではありません。
毎月の家賃を払う義務も、同じように移ります。
同居していなかった子どもが相続人になった場合も、家賃の支払い義務からは外れません。
その家に住むつもりが無いのであれば、契約を解約するかどうかを早めに決めることになります。
相続人ではない同居者は、どう扱われるか
たとえば内縁の配偶者のように、同居していても相続人ではない方。
借地借家法には、相続人がいないときに、事実上の夫婦や養子と同じ関係にあった同居者が賃借人の地位を引き継ぐという定めがあります。
反対に相続人が別にいる場合、この定めはそのままは当てはまりません。
扱いがご事情で変わるところなので、契約書を持って弁護士か司法書士に確かめてください。
出典:e-Gov 借地借家法
相続人が複数いるとき、家賃は誰が払うのか
実際には、その家に住み続ける相続人が払う形が多くなります。
ただ、貸主から見れば相続人の全員が借主です。
滞納が起きたとき、住んでいない相続人に請求が届くこともあります。
誰が払うのかを相続人どうしで決めて、貸主にも伝えておくと、あとの行き違いが減ります。
引き継いだあとに、退去したいとき
住む人がいなくなったときにすることは、賃貸借契約の解約と明け渡しの2つ。
解約を申し入れてから契約が終わるまでの期間は、契約書の解約条項で決まっています。
1か月前までの申し入れとしている契約が多いものの、そこは会社によって違うところ。
申し入れが遅れたぶんは、住んでいなくても家賃を払う期間になります。
退去のときの原状回復をどこまで負担するのかも、同じ契約書に書かれています。
亡くなったあとに慌てて読むより、契約する前に家族と一緒に確かめてください。
定期借家だと、残された家族の住まいはどうなりますか
定期借家は期間が満了すると終わるため、家族がそのまま住み続けられるとは限りません。
普通借家であれば、貸主に正当な事由が無い限り契約は更新されます。
同じ「売ったあとも賃貸で住み続ける」でも、この2つは別物です。
期間が満了すると、契約はそこで終わる
定期借家には、更新という仕組みがそもそもありません。
期間が来れば契約は終わり、住み続けるには貸主と新しく契約を結び直すことになります。
契約者本人が亡くなって相続人が借主になっても、残りの期間は延びません。
相続人が引き継ぐのは、あくまで残りの期間だけです。
期間が1年以上の定期借家では、貸主は満了の1年前から6か月前までの間に、契約が終わることを借主へ通知する決まりになっています。
この通知が来てから住まいを探し始めると、残りは半年しかありません。
「再契約できます」は約束ではない
期間が来ても再契約できますから、と口頭で言われることがあります。
再契約するかどうかを決めるのは貸主のほうです。
書面に再契約の条件が書かれていなければ、断られたときに主張する根拠がありません。
家族の住まいまで守りたいのであれば、再契約の条件を契約書へ書き込むところまで話し合ってください。
契約書で見るのは3か所
- 契約の種類(定期借家か、普通借家か)
- 契約期間と、期間が満了したあとの取り決め
- 借主が亡くなったときの扱い
この3つは、契約書の冒頭と末尾に離れて書かれていることがよくあります。
片方だけ読んで安心しないよう、両方に目を通してください。
普通借家と定期借家の違いはリースバックで何年住める?定期借家と普通借家の違いで詳しく書きました。
相続した実家や共有名義の家でも、リースバックはできますか
売る権利を持っている人が全員そろっていれば、できます。
裏を返すと、名義が亡くなった方のままだったり、共有者の1人が反対していたりすると、その時点では売れません。
リースバックも売買なので、通常の売却と同じ条件がそのままかかります。
名義が亡くなった方のままだと、売買契約に進めない
先に登記の名義を相続人へ変えておく必要があります。
福岡市内にある不動産の登記を扱うのは、福岡市中央区舞鶴3-9-15の福岡法務局(本局)です。
名義を変える登記は、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に申請する決まりになりました。
必要な書類と手数料、どこに何を出すのかは福岡市の手続き窓口ガイドにまとめています。
共有名義は、共有者の全員が売ることに同意する
兄弟3人で相続した実家であれば、3人全員が売ることに同意しないと契約できません。
1人でも反対すれば、その家はリースバックの対象になりません。
親が住み続けるための契約なのに、子どもの1人が反対して止まる形は実際に起きます。
同意が得られないときの進め方は共有名義の不動産は売れる?同意が得られないときに書いています。
相続した不動産の売却そのものの流れは相続した不動産の売却にまとめました。
相続人が福岡を離れて暮らしているとき
親だけが福岡市に残り、子どもは県外という組み合わせは珍しくありません。
この場合でも、売買契約や登記の手続きは郵送と持ち回りで進められます。
ただし、同意の取りまとめに時間がかかるぶん、契約までの日数は延びます。
家賃をいつから払い始めるのかは引渡し日で決まるので、日程はまとめて詰めてください。
県外にお住まいのまま福岡の不動産を売る流れは遠方から福岡の不動産を売却にまとめています。
契約の前に、家族へ何を伝えておきますか
伝えるのは、家が残らないこと、毎月の家賃がいくらか、いつまで住めるのかの3つです。
家が残らないことを家族が知るのが相続のときになると、話はこじれます。
実家を継ぐつもりでいた子どもにとっては、前提がそこで崩れるためです。
家族に伝える3つと、なぜ家族に関わるのか
| 伝えること | なぜ家族に関わるか |
|---|---|
| 家は相続財産に残らない | 実家を継ぐ前提が崩れる |
| 毎月の家賃と、いつまで払うのか | 相続人が家賃を払う立場になる |
| 契約の種類と期間 | 同居の家族が住める年数がここで決まる |
3つとも、契約書と重要事項説明書に書かれている内容です。
口頭で伝えるより、書面の写しを家族に渡すほうが早く済みます。
説明の場に家族へ同席してもらう
説明を聞く場に家族がいれば、伝え忘れも、聞き違いも減ります。
当社にご相談いただく場合も、ご家族とご一緒に聞いていただいて構いません。
2026年10月1日からは、不動産会社が賃貸借の内容まで告げる義務を負います。
告げる項目は売買で4つ、賃貸借で16、合わせて20あります。
ただし売買価額や借賃の算定根拠の説明は、義務ではなく「対応することが望ましい事項」という位置づけです。
新しい決まりの全体像はリースバックの新ルール総まとめにまとめました。
当社もリースバックを扱う立場なので、この20項目は当社にも同じようにかかります。
福岡市で、次にやること
家族に残したいものが「家」なのか「現金」なのかを、先に決めてください。
家そのものを残したいのであれば、リースバック以外の方法から検討することになります。
現金を残して住み続けたいのなら、比べるのは売却価格と家賃と住める年数の3つ。
当社では仲介・買取・リースバックの3つを同時に試算し、手取り額と引渡し時期を並べてお出しします。
仕組みと注意点はリースバックでの売却にまとめています。
先にデメリットを読んでおきたい方はリースバックのデメリット6つもご覧ください。
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勧誘のしつこさや契約の進め方に不安があるときは、福岡県の宅地建物取引業に関する相談窓口も使えます。
