賃貸仲介のオーナー・管理会社との付き合い方
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士業務委託で賃貸をやるなら、オーナー様や管理会社とどう付き合えば紹介が続くのか。
この記事は、住居の賃貸仲介の実務経験があり、会社を移るか、エージェントとして働くかを比べている方に向けて書きました。
扱うのは、客付けと元付けの違い、オーナー様への募集条件の提案、管理会社とのやり取りで信頼を落とす行動、そして広告料(AD)のルールの4つです。
業務委託の仕事の全体像は賃貸仲介を業務委託でする仕事とはにまとめたので、ここでは貸す側との関係に絞ります。
2. オーナー様に、募集条件をどう提案すればいい?
3. 管理会社とのやり取りで、信頼を落とすのは何?
4. 広告料(AD)は、どこまで受け取れる?
5. 紹介が続くオーナー様・管理会社との関係は、どう作る?
6. 当社の住居の賃貸エージェントは、オーナー様・管理会社とどう関わる?
賃貸仲介の客付けと元付けは、何が違う?
客付けは部屋を借りたい方の側に立って物件を探す仕事で、元付けはオーナー様や管理会社から入居者の募集を預かる仕事です。
同じ賃貸仲介でも、誰から頼まれているかが違うので、信頼を得る相手も違ってきます。
エージェントとして紹介を続けてもらうには、この2つの立場を分けて考えておく必要があります。
客付けと元付け、それぞれの依頼者
客付けの依頼者は借主です。
希望に合う部屋を探し、内見に案内し、条件を詰めて申込みにつなぐところまでが中心の仕事になります。
元付けの依頼者は貸主、つまりオーナー様です。
管理会社が間に入っている物件では、募集の窓口が管理会社になることもあります。
元付けの側で受ける相談は、賃料や入居条件の決め方、広告の出し方、申込みが来たときの判断材料の整理まで。
店舗で客付けだけをしてきた方は、元付けの側に回ると、オーナー様が何を気にしているかを直接聞く機会が増えます。
両方の業者が入るとき、手数料の上限はどうなる?
元付けの業者と客付けの業者が別々のとき、それぞれが上限まで受け取れるわけではありません。
国土交通省の通達は、当事者の双方が別々の業者に媒介を頼んだ場合、双方の業者が受け取る報酬の合計が告示の額までだとしています。
この扱いは売買だけでなく、貸借の媒介にも当てはまります。
住居の賃貸で合計1か月分(消費税込みで1.1か月分)という上限そのものは、前の記事で詳しく書きました。
元付けと客付けで手数料をどう分けるかは業者どうしで決めることですが、合計の枠が広がることはありません。
オーナー様に、募集条件をどう提案すればいい?
オーナー様に届く提案は、「賃料を下げましょう」の一言ではなく、空室が続いている理由を数字で切り分けたうえでの提案です。
どこで止まっているかが分かれば、直すところも1つに絞れます。
根拠を見せずに値下げだけを勧める仲介は、オーナー様から見ると、楽に決めたいだけの業者と区別がつきません。
空室の理由を、反響・内見・申込みの段階で分ける
まず見るのは、問い合わせがどれだけ来ているかです。
反響そのものが少ないなら、賃料の設定か、写真や掲載の文面に原因がある見込みが高くなります。
反響はあるのに内見に進まないなら、初期費用や入居の条件で外されている可能性を疑います。
内見はあるのに申込みが入らないときに確かめるのは、部屋の状態・設備・周りの環境。
この3段階のどこで止まっているかを伝えられると、オーナー様は打つ手を自分で選べます。
賃料を下げるのは、ほかの手を試したあとの選択肢として示すほうが、話を聞いてもらいやすくなります。
単身世帯が5割を超える福岡市で、入居条件を見直す
福岡市の令和2年の国勢調査では、一般世帯のうち単独世帯が52.0%を占め、親族世帯の47.0%を上回りました。
前回の調査からの増え方も、親族世帯の3.5%に対して単独世帯は13.6%でした。
ひとり暮らしの世帯がこれだけ多い街では、同じ単身向けの部屋どうしで比べられる場面も増えます。
そこで提案に入れたいのが、入居の条件の見直しです。
ペットの可否、二人入居の可否、保証会社の選び方、敷金や礼金の組み方など、賃料以外にも動かせる条件はいくつもあります。
どの条件を緩めるかを決めるのはオーナー様なので、エージェントは緩めたときに起こりうることも並べて伝えます。
「この条件にすれば必ず埋まります」とは言えません。
結果を約束しない代わりに、試したことと反響の変化を毎回お伝えするのが、次の相談につながる形です。
管理会社とのやり取りで、信頼を落とすのは何?
管理会社からの信頼をいちばん早く落とすのは、物件の状況を確かめないまま広告や案内を進めることと、申込みの中身をあとから変えることです。
どちらも、管理会社がオーナー様へ説明し直す手間を生みます。
管理会社の側から見て「この人の申込みは手戻りが無い」と思われるかどうかで、次の情報の回り方が変わります。
物件確認をせずに広告し続けると、おとり広告になる
国土交通省は令和5年1月、業界団体に対して、いわゆる「おとり広告」の禁止を徹底するよう求める通知を出しました。
その中では、成約済みの物件を速やかに広告から消さずに掲載を続けることも、おとり広告に当たると示されています。
実際には取引する意思のない物件を好条件で広告して来店を促し、別の物件を案内することも同じ扱いです。
宅地建物取引業法32条は、こうした広告を誇大広告等として禁じています。
管理会社に空室の状況を確かめず、古い情報で広告を出し続ける仲介は、法令の面でも、管理会社との関係の面でも危うい。
申込みの段階では、入居希望日・人数・勤務先・保証会社の利用などを、最初に聞いたとおりに正確に伝えることが土台になります。
あとから条件が変わったときは、伝言で済ませず、変わった中身と理由を自分の口から管理会社へ伝えてください。
管理会社は、オーナー様へ報告する立場にいる
管理会社の動き方を理解するには、管理会社に課されている義務を知っておくと早く分かります。
賃貸住宅管理業法では、管理する戸数が200戸以上の事業者は国土交通大臣の登録が必要で、200戸未満は任意の登録です。
登録した管理業者には、管理業務の実施状況を、委託したオーナー様へ定期的に報告する義務があります。
家賃などを自社の財産と分けて管理することも、義務の1つです。
つまり管理会社は、仲介から届いた申込みや条件の相談を、オーナー様へ説明できる形で受け取りたい立場にいます。
申込みの内容を整理して渡し、判断に要る材料をそろえておく仲介は、管理会社にとって説明の手間が少ない相手です。
広告料(AD)は、どこまで受け取れる?
国土交通省の告示では、宅建業者が受け取れるのは告示が定める報酬と、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額に限られます。
「ADがもらえる物件」という言い方が業界にはありますが、名目を広告料にすれば何でも受け取れるわけではありません。
賃貸のエージェントとして収入の見通しを立てるとき、この点を先に押さえておく必要があります。
通達が示している、受け取れないもの
国土交通省の「解釈・運用の考え方」は、告示による報酬と、依頼者の依頼による広告の料金に相当する額のほかは受け取れないとしています。
そのうえで明記されているのが、いわゆる案内料や申込料も受け取れないという点。
依頼者の依頼によらずに行った広告の料金に相当する額も、受け取れません。
別に受け取れる例として挙げられているのは、依頼者の特別の依頼による遠隔地での現地調査など、事前に依頼者の承諾がある特別な費用です。
広告料として受け取れるかどうかは、名目ではなく、依頼者から依頼された広告があったかどうかで決まります。
当社での広告料(AD)の扱い
当社のエージェントへの業務委託料は、成約した賃貸借で当社が受け取る仲介手数料に応じてお支払いします。
オーナー様から受け取る広告料も、当社では仲介手数料と同じ扱いです。
業務委託料を計算するもとの売上に、広告料も含めます。
オーナー様との媒介契約の当事者は当社で、お客様からのお金の受け取りも当社名義です。
広告料の扱いが告示に合っているかどうかは、最終的に媒介の当事者である当社が責任を負うことになります。
そのため、オーナー様から広告料の話が出たときは、どんな広告を依頼されたのかを必ず当社と確かめてから進めてください。
1年の組み立ては、広告料ではなく、成約の件数と相談の入口の数で考えるほうが、制度の変わり目にも揺らぎません。
業務委託料の考え方と入金の時期は、不動産エージェントの報酬の仕組みで詳しく書いています。
紹介が続くオーナー様・管理会社との関係は、どう作る?
紹介が続く関係は、成約したあとの報告と、募集が無い時期の相談の受け方で作られます。
申込みを入れて終わりにする仲介は、次の空室が出たときに思い出してもらえません。
成約のあとに、何を返すか
入居が決まったら、どんな方が、どの条件の何を決め手に申し込んだのかを、オーナー様と管理会社へ短く返します。
個人の事情に踏み込まず、条件と反響の流れだけを伝える形です。
この報告は、次に空室が出たとき、どの条件から募集を始めるかの材料になります。
退去の予定を早めに知らせてもらえる関係になれば、空室になる前から募集の準備を始められます。
募集の無い時期の相談を、断らない
空室が無い時期にオーナー様から来るのは、設備の入れ替えや、更新のときの賃料の相談などです。
そのときは仲介手数料につながらなくても、分かる範囲で答え、分からないことは分からないと伝えます。
税金や建物の修繕の判断のように、専門家に聞くべきことは、その専門家につなぐのがエージェントの役目。
繁忙期と落ち着いた月の動き方の違いは、賃貸仲介を業務委託でする仕事とはで触れました。
当社の住居の賃貸エージェントは、オーナー様・管理会社とどう関わる?
当社では、オーナー様への募集条件の提案はエージェント、書類のやり取りと広告表示のチェックは会社、と分けています。
関係づくりと提案に時間を使い、書類の手戻りで管理会社の信頼を落とさない形にするための分担です。
エージェントが担うことと、会社が担うこと
エージェントに担っていただくのは、問い合わせの対応と物件の提案、内見のご案内、入居条件の交渉、申込みから入居までの調整です。
オーナー様への募集条件の提案と、ご自身での集客も、エージェントの仕事に入ります。
会社が担うのは、重要事項説明書と賃貸借契約書の作成、重要事項説明の実施、レインズ・物件情報の確認です。
広告表示のチェック、保証会社・管理会社との書類のやり取り、クレーム・紛争対応も会社の担当。
広告を出す前に会社が表示を確かめるので、古い情報のまま掲載が続く形を防ぎやすくなります。
当社のエージェントは当社の従業者名簿に登載し、従業者証明書を交付します。
募集の条件と、応募の前に知っておいてほしいこと
募集は住居の賃貸で1名、業務委託(完全歩合制)・専業のみで、活動エリアは福岡県内(主戦場は福岡市)です。
応募の条件は住居の賃貸仲介の実務経験で、宅地建物取引士の資格は歓迎ですが必須ではありません。
管理会社やオーナー様とのつながりをお持ちの方も、歓迎する対象です。
当社からは成約した仲介手数料に応じた業務委託料をお支払いし、エージェントからは月額のサポート利用料をいただきます。
率と月額の金額は、面談で契約書と一緒にお見せします。
初期費用・加盟金・中途解約の違約金はありません。
制度の全体はエージェント募集のページに、住居の賃貸の職種の詳細は住居の賃貸エージェントの募集ページにまとめています。
店舗や事務所の賃貸に関心がある方はテナントの賃貸エージェント、売買に移りたい方は売買エージェントのページもご覧ください。
話を聞くだけでも構いませんので、応募フォームからご連絡ください。
