売買仲介エージェントの仕事内容|査定から引き渡しまで
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士売買仲介の営業を続けながら、このまま会社員でいるか、エージェントとして業務委託で働くかを考えている方に向けた記事です。
売買は賃貸に比べて1件の期間が長く、調査と書類の量も多い分野です。
そのため「業務委託になったら、査定から決済までの何を自分が持つのか」が見えないと、働き方を比べようがありません。
ここでは売買の流れを段階ごとに分け、当社(株式会社おもいで不動産・福岡市博多区)の売買エージェント募集での分担を例にご説明します。
業務委託という契約の形そのものは、不動産エージェント(業務委託)とは?で先に整理しています。
2. 査定から引き渡しまで、売買仲介はどんな流れで進む?
3. 媒介契約の3種類は、エージェントの動き方にどう関わる?
4. 重要事項説明と売買契約書は、誰が作って誰が説明する?
5. 福岡市の売買の相談では、どんな案件が多い?
6. おもいで不動産の売買エージェントには、どんな経験が求められる?
売買エージェントの仕事内容は、会社員の売買営業と何が変わる?
売買エージェントの仕事の中心は、売主・買主の相談に乗り、査定の説明から条件交渉、引き渡しまでお客様に伴走することです。
会社員の売買営業と大きく違うのは、集客と書類の持ち方です。
お客様と向き合う仕事そのものは変わりません。
変わるのは、その前後にある仕事を誰が持つかという点です。
集客と時間:会社の反響を待つ形から、自分で入口をつくる形へ
会社員の売買営業では、会社のチラシやポータルサイトの反響が担当に割り振られるのが一般的です。
エージェントになると、相談の入口をどう増やすかを自分で組み立てることになります。
知人や過去のお客様からの紹介、SNSや動画での発信、地域での顔つなぎなど、方法を選ぶのも本人です。
当社サイトへの売却のご相談も、状況に応じてお渡しします。
ただし、反響の量を約束する制度ではありません。
どの入口から来た相談でも、お客様と媒介契約を結ぶのは当社で、エージェントは当社の担当者としてご案内する立場です。
時間の使い方も変わります。
当社には出社義務・朝礼・日報・ノルマが無く、査定の準備や内見の予定は、お客様の都合と本人の段取りで決まります。
書類:作る側から、中身を確かめてお客様に伝える側へ
売買の営業をしていると、物件調査の結果をまとめ、重要事項説明書と契約書の下書きを作るところまで担当に回ってくる会社も少なくありません。
当社では、物件調査・役所調査、重要事項説明書と売買契約書の作成を会社が担います。
エージェントの役目は、調査で分かったことをお客様の判断に結びつけて伝えること。
書類を一から作る時間が減るぶん、価格の提案と交渉に使える時間が増えます。
査定から引き渡しまで、売買仲介はどんな流れで進む?
売買仲介は、相談と査定、媒介契約、販売活動、申込みと交渉、重要事項説明と契約、決済と引き渡しの順に進みます。
当社では、お客様と向き合う段階をエージェントが、調査・書類・登録・立会を会社が受け持つ分担です。
段階ごとの分担を表にまとめました。
| 段階 | エージェントが担うこと | 当社が担うこと |
|---|---|---|
| 相談・査定 | ヒアリング、査定の説明、価格の提案 | 物件調査・役所調査 |
| 媒介契約 | 契約の種類の違いをお客様と確かめる | 媒介契約の当事者になる |
| 販売活動 | 販売活動、内見のご案内 | レインズ登録・検索、図面・写真、広告表示のチェック |
| 申込み・交渉 | 価格・引き渡し時期などの条件交渉 | 住宅ローンの手続き |
| 重説・契約 | お客様の疑問の聞き取り | 重要事項説明書・売買契約書の作成、重要事項説明の実施 |
| 決済・引き渡し | 引き渡しまでの伴走 | 決済の立会、士業への取り次ぎ |
相談・査定から販売活動まで
最初の相談では、売りたい理由と時期、住宅ローンの残りなど、価格の前にある事情を聞き取ります。
査定の説明と価格の提案は、エージェントの仕事です。
当社の査定の手法は、参画後2週間のオンボーディングでお伝えします。
販売活動に入ると、物件のレインズ登録は当社が行います。
不動産流通機構の規程で、業務を委託した個人事業主へのID貸与が禁じられているためです。
登録・検索・ステータスの更新は当社が受け持ち、必要な情報はその都度共有します。
内見のご案内と、購入を考える方からの質問への答えは、エージェントの受け持ちです。
売買契約から決済・引き渡しまで
購入の申込みが入ると、価格や引き渡しの時期、付帯設備の扱いなどの条件交渉が始まります。
ここは売主・買主の気持ちをいちばん知っているエージェントの出番です。
条件がまとまると、重要事項説明と売買契約に進みます。
書類の作成と重要事項説明、住宅ローンの手続き、決済の立会は当社が行います。
決済の日には、残代金の支払い、抵当権の抹消や所有権移転の登記の申請、鍵の受け渡しが同じ日にまとめて進むのが一般的です。
登記を頼む司法書士や、税の相談を受ける税理士への取り次ぎも当社の役目です。
エージェントは、決済の日取りの調整や鍵の受け渡しまで、お客様の不安を一つずつ減らしていく立場になります。
媒介契約の3種類は、エージェントの動き方にどう関わる?
媒介契約には、専属専任・専任・一般の3種類があります。
どれを選ぶかで、他社へ重ねて頼めるかどうかと、レインズ登録や売主への報告の決まりが変わる仕組みです。
どの型にするかを決めるのは売主で、仲介する側は違いを十分に説明する立場です。
専属専任・専任・一般の違い
宅地建物取引業法34条の2は、売買の媒介契約を結んだときに書面を交付することを、宅建業者に求めています。
国土交通省は、3つの型ごとの契約書のひな形として標準媒介契約約款を告示で示しています。
| 型 | 他社への重ねての依頼 | 自分で見つけた相手との契約 | レインズへの登録 | 売主への業務の報告 |
|---|---|---|---|---|
| 専属専任媒介 | できない | できない | 契約から5日以内 | 1週間に1回以上 |
| 専任媒介 | できない | できる | 契約から7日以内 | 2週間に1回以上 |
| 一般媒介 | できる | できる | 法律上の義務は無い | 法律上の義務は無い |
専属専任と専任の有効期間は、3か月を超えられません。
国土交通省の「解釈・運用の考え方」は、通常の取引では標準媒介契約約款を使うのが適当だとしています。
登録の期限と報告の頻度を、誰が守るのか
当社では、媒介契約の当事者は当社です。
そのため、レインズへの登録の期限と売主への業務の報告は、免許を持つ当社の責任で管理します。
一方で、報告に載せる問い合わせや内見の様子は、販売の現場にいるエージェントの手元に集まる情報です。
会社員のときに自分で管理していた期限の数え方を、会社と分け合う形だと考えると分かりやすいでしょう。
売主にとっては、決まった頻度で報告が届くことが、任せた会社を信頼する手がかりの一つです。
媒介契約の種類の違いを売主と確かめるのは、最初の相談を受けるエージェントの役目になります。
重要事項説明と売買契約書は、誰が作って誰が説明する?
宅建業法35条は、売買契約が成立するまでに、宅地建物取引士が書面を交付して重要事項を説明するよう定めています。
当社では書類の作成を会社が担い、説明は当社の宅地建物取引士が行う分担です。
エージェントが宅建士の資格を持っているかどうかで、この分担は変わりません。
35条の重要事項説明と37条の書面
35条の重要事項説明では、宅建士が宅建士証を示したうえで説明し、書面には宅建士が記名します。
売買契約が成立したあとに交付する37条の書面にも、宅建士の記名が求められます。
売買の重要事項説明書に並ぶのは、登記の内容や法令上の制限、道路との関係、代金以外にやり取りするお金などの項目です。
調査の漏れはそのまま説明の漏れになるので、当社は調査から説明までを一つの流れとして会社の側で持っています。
宅建士の資格を持つエージェントの場合
当社の売買エージェントの募集で、宅地建物取引士の資格は歓迎の条件です。
必須ではありません。
資格をお持ちの方には、宅地建物取引士資格登録簿への勤務先の登録をお願いしています。
そのうえで、重要事項説明は当社の宅建士が行う運用です。
資格があれば、説明の場でお客様が引っかかった点を、エージェントが法令の言葉で補えるようになります。
福岡市の売買の相談では、どんな案件が多い?
当社に寄せられる売買の相談は、相続した実家、住み替え、離婚に伴う売却など、売る理由に事情を抱えたものが中心です。
価格の話より先に、段取りの整理から始まる案件が多くあります。
当社が主に扱うのは、福岡市内のマンション・戸建て・土地です。
相続した実家と、使われていない家
福岡市によると、令和5年住宅・土地統計調査で市内の空き家は約7.9万戸ありました。
そのうち、売却用や賃貸用として住宅市場に出ていない「その他の住宅」が約1.3万戸です。
相続した実家がこの「その他の住宅」として残っている場合、売る前に相続人どうしの話し合いや名義の整理が必要になります。
当社の売買エージェント募集で歓迎の条件に挙げたのは、相続・空き家・共有名義の案件のご経験です。
相続・空き家の案件をどう受けて進めるかは、相続・空き家の売却仲介の進め方にまとめました。
出典:福岡市 空き家の流通促進
住み替え:売ると買うの段取りを並べる
住み替えの相談で最初の分かれ道になるのは、今の家の売却と次の家の購入のどちらを先に進めるか。
先に売れば資金の見通しは立ちますが、仮住まいが要る場合も出てきます。
先に買えば住まいは決まる一方、二重のローンや売却の期限に追われるおそれがあります。
どちらが合うかを決めるのは、手元の資金と、売却にかけられる期間です。
住宅ローンの残りと新しい借入れの組み方まで含めて整理するので、住宅ローンの知識も歓迎の条件に入れました。
ローンの手続きそのものは当社が担い、エージェントはお客様の希望と期限を聞き取って段取りに落とします。
おもいで不動産の売買エージェントには、どんな経験が求められる?
応募の条件は、不動産の売買仲介の実務経験です。
売買仲介の営業のほか、買取再販会社での仕入れ・販売、新築戸建て・マンションの販売の経験も対象になります。
賃貸仲介だけのご経験の方は、住居の賃貸やテナントの賃貸の職種をご覧ください。
売買へ移りたい方のご相談も歓迎です。
参画のあとの2週間と、最初の案件
業務委託契約を結んだあとは、当社の従業者名簿への登載と、従業者証明書の交付が最初の手続きです。
続く2週間のオンボーディングでは、当社の査定の手法、書類の流し方、士業への取り次ぎ方をお伝えします。
最初の案件には、代表が同席する決まりです。
働き方は専業のみで、副業や他社との兼務はお受けしていません。
活動の範囲は福岡県内で、当社の主戦場は福岡市です。
お金の流れと、面談でお見せするもの
お金の流れは二方向です。
当社からエージェントへは、成約した売買で当社が受け取る仲介手数料に応じた業務委託料をお支払いします。
エージェントから当社へは、月額のサポート利用料をお支払いいただく形です。
率と月額の金額は、面談で契約書の全文と一緒にお見せします。
初期費用・加盟金・中途解約の違約金はありません。
仕組みの詳しいところは不動産エージェントの報酬の仕組みにまとめました。
募集が売買1名なのは、専任の宅建士1名につき従業者5名という法令上の上限があり、当社が代表1名体制のためです。
