不動産エージェントの会社の選び方|契約書で読むところ
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士エージェント制の会社を比べるとき、最初に目に入るのは還元率の数字です。
けれども同じ率でも、会社が引き受ける仕事や、契約の終わらせ方が違えば、働き方はまるで別物です。
この記事は、仲介の営業職として働きながら、所属先の候補を何社か比べている方に向けて書いています。
率の比べ方そのものは報酬の仕組みの記事に譲り、ここでは契約書の条項と、免許・宅建士の体制の確かめ方、面談で聞く質問の3つに絞ります。
2. 業務委託契約書では、どの条項を読めばいい?
3. 会社の免許と宅建士の体制は、どうやって確かめる?
4. 面談では、どんな質問をすればいい?
5. おもいで不動産では、面談で何をお見せする?
不動産エージェントの会社は、還元率のほかに何を比べればいい?
還元率のほかに比べるのは、会社が担う実務の範囲、月額費用の中身、実費の負担、反響の扱い、契約期間と解約の5つです。
この5つは、どれも契約書か面談の資料に書かれているはずの項目です。
書面で出てこない項目があれば、それ自体が比べる材料になります。
5つの項目を1枚の表に並べる
候補の会社ごとに、次の表を1列ずつ埋めていくと抜けが見えます。
右端の列は、当社(おもいで不動産)の場合です。
| 項目 | 確かめること | 当社の場合 |
|---|---|---|
| 実務の範囲 | 調査・書類・重説・レインズ・決済を誰が担うか | 会社が担当。重説は当社の宅建士が行う |
| 月額費用の中身 | 何の費用が含まれ、成約の無い月も同額か | レインズ・図面ソフト・電子契約・士業の維持・調査や書類の人件費など。成約の無い月も同額 |
| 実費の負担 | 広告費・交通費などを誰が持つか | 個別の案件の実費はエージェントのご負担 |
| 反響の扱い | 会社への問い合わせが回ってくるか、約束か | 状況に応じてお渡しする。供給の約束はしない |
| 契約期間と解約 | 期間・更新・違約金・初期費用の有無 | 1年ごとの更新。初期費用・加盟金・中途解約の違約金はなし |
率と月額の金額は、当社では面談で契約書の全文と一緒にお見せしています。
書いていないことを、口頭の説明で埋めない
表の欄が「運用で対応」「案件ごとに相談」のような言葉で埋まる場合もあるでしょう。
柔軟な運用そのものは悪くありません。
ただ、契約書に書かれていない約束は、担当者が替われば消えてしまいます。
表の空いた欄は、口頭で納得せず、どの条項に書いてあるのかを聞き返してください。
業務委託契約書では、どの条項を読めばいい?
業務委託契約書で必ず読むのは、業務の範囲、報酬の計算、解約と更新、競業と反響の扱いの4か所です。
この4か所で、何を任され、いくらになり、どう終わり、終わったあと何が残るかが決まります。
なお2024年11月に施行されたフリーランス法では、発注する事業者が業務の内容や報酬の額、支払期日を書面かメール等で示す義務を負います。
口頭の条件提示だけで契約を急がせる会社は、その時点で見直す理由になるでしょう。
業務の範囲と報酬の計算
業務の範囲の条項では、会社が担う作業が具体的な名前で書かれているかを見ます。
「必要に応じて支援する」とだけある場合、重要事項説明書の作成や役所調査を自分で抱えることになりかねません。
報酬の計算の条項で確かめたいのは、率を何に掛けるかです。
会社が実際に受け取った仲介手数料なのか、税抜きか税込みか、値引きした場合はどちらの額か。
契約が白紙になった、手数料が減額された、といった場合の扱いも条項に入っているかを確かめます。
両手の取引になったときの扱いは、会社によって決め方が分かれるところです。
広告の表示を誰が確認するかも、業務の範囲の条項で見ておきたい点です。
宅建業者の広告には、不動産の公正競争規約に沿った表示が求められます。
当社では広告表示を規約に基づいて当社が審査し、エージェントが一人で判断を抱えない形です。
解約と更新
解約の条項では、違約金の有無、予告の期間、解約したあとに進行中の案件の報酬がどうなるかを読みます。
媒介契約の当事者は会社なので、エージェントが辞めても進行中の案件は会社に残ります。
そのとき決済まで進んだ案件の業務委託料が支払われるのか、どの時点の成約までが対象なのかは、条項に書かれていなければ決まっていないのと同じです。
フリーランス法では、6か月以上の業務委託を発注者が解除するか更新しないとき、少なくとも30日前までに予告する義務があります。
フリーランスから理由を求められれば、発注者は遅滞なく示さなければなりません。
これは発注者側の義務なので、エージェント側から辞めるときの条件は、契約書の文言で別に確かめておく必要があります。
当社の契約は1年ごとの更新で、中途解約の違約金はありません。
競業と反響の扱い
競業の条項では、在籍中の兼務と、契約が終わったあとの制限の2つを分けて読みます。
宅建業者は事務所ごとに従業者名簿を備え、従業者に証明書を携帯させる義務があります。
当社がエージェントを専業に限り、他社との兼務をお断りしているのは、名簿の登載が重なるためです。
契約が終わったあとの制限は、期間・地域・対象の3点がどこまで書かれているかを読みます。
期間の定めが無い、対象が「不動産に関わる一切の業務」のように広い、といった書き方なら、署名の前に意味を確かめてください。
反響の条項では、会社に入った問い合わせを誰がどう受け持つか、契約が終わったあとの顧客との関係がどうなるかを確かめます。
当社では、当社を通さない直接取引と、手数料の直接の受け取りを禁止しています。
媒介契約の当事者は当社で、手数料は全額当社の名義で入金するためです。
会社の免許と宅建士の体制は、どうやって確かめる?
免許と宅建士の体制は、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で、誰でも無料で確かめられます。
行政処分の有無を調べる先は、同じ省の「ネガティブ情報等検索サイト」です。
どちらも会社名か免許番号で引けるので、求人や面談の案内に書かれた免許番号をそのまま入れてみてください。
面談の前に5分で終わる作業なので、候補の会社はすべて引いておくと話が早く進むはずです。
企業情報検索システムで見るところ
宅建業者の検索では、免許番号、商号、代表者名、本店と支店の所在地、免許の有効期間、所属団体などが表示されます。
2025年4月からは、業者の概要に従事者と専任の宅建士の総数が載るようになりました。
事務所ごとの専任の宅建士の人数も表示されます。
専任の宅建士は、業務に従事する者5人につき1人以上を置く決まりです。
専任の宅建士の人数を見れば、その事務所がエージェントをあと何人迎えられるか、おおよその見当がつくでしょう。
なお掲載情報の更新は月2回で、実際の届出とは時間差が出ることもあります。
行政処分はネガティブ情報等検索サイトで
ネガティブ情報等検索サイトには、宅建業者に対する免許取消・業務停止・指示の処分が、最近5年分載っています。
処分を行ったのが国土交通大臣でも都道府県知事でも、同じ画面から検索できる作りです。
処分歴があった場合は、面談でその理由と、そのあと何を改めたのかを聞いてみてください。
処分の内容が広告の表示か、重要事項の説明か、手数料の受け取り方かによって、エージェントの仕事への影響も変わります。
たとえば広告の処分なら、いまは誰がどの手順で表示を確かめているのかを聞くと、改善が仕組みになっているかどうかを見分けられるはずです。
福岡県知事免許の会社は、県で書類も閲覧できる
福岡県知事の免許を持つ会社なら、免許の申請書類と届出書類の過去5年分を、県の窓口で閲覧できます。
閲覧は無料で、1人1日5件までです。
候補が福岡県内だけに事務所を置く会社であれば、検索システムの表示より踏み込んで、申請書類まで見比べる手段として使えます。
課内の決められた場所で見る形で、書き写しはできません。
閲覧の場所は会社の本店所在地で分かれるので、出向く前に県の案内で確かめてください。
当社の免許は、宅地建物取引業 福岡県知事(2)第19722号です。
所属団体などは会社概要に載せていますので、検索システムの表示と照らし合わせてください。
面談では、どんな質問をすればいい?
面談で聞くのは、実務を誰がどこまで担うか、お金と契約の条件が書面のどこにあるか、宅建士の体制に余裕があるかの3つです。
答えを聞きながら、上の表の空いた欄を埋めていきます。
質問の数を絞るなら、この記事の最初の表で空いたままの欄から聞くのが近道です。
実務と契約について聞くこと
- 重要事項説明書と契約書は、誰が作って誰が説明しますか
- レインズの登録と検索は、誰がどの手順で行いますか
- 月額費用には何が含まれ、成約の無い月はどうなりますか
- 率を掛ける元の金額は、税抜きの受領額ですか
- 解約したとき、進行中の案件の報酬はどう扱いますか
- 会社に入った反響は、どんな基準で誰に渡りますか
質問への答えが契約書のどの条項にあたるかを、その場で示してもらうと、あとで読み直すときに迷いません。
もう一つ聞いておきたいのが、契約書を署名の前に持ち帰れるかどうか。
その場での署名を求められると、ほかの会社の条件と並べて読む時間が取れなくなります。
税理士や弁護士など、ご自身が相談できる専門家に見てもらう余地も残りません。
宅建士の体制と人数について聞くこと
- 重要事項説明をする宅建士は何人いて、自分の案件は誰が担当しますか
- エージェントはいま何人在籍していて、あと何人迎える予定ですか
- 従業者名簿への登載と、従業者証明書の交付はいつ行いますか
人数の答えは、検索システムの専任の宅建士の人数と食い違っていないかを見ます。
当社は代表1名が専任の宅建士の体制で、迎えられるのは3名までです。
そのため住居の賃貸・テナント(事業用)の賃貸・売買の3つの分野で、各1名ずつを募集しています。
おもいで不動産では、面談で何をお見せする?
当社は面談のあとに、還元率・月額費用・業務分担・契約書の全文をお渡しします。
持ち帰ってご検討いただけるので、ほかの会社の契約書と並べて、この記事の項目で読み比べてください。
応募から契約までの流れ
応募フォームを送っていただくと、2営業日以内にご返信します。
書面での審査のあと、代表との60分ほどのオンライン面談に進んでいただく流れです。
条件をご提示して、ご納得いただけたら業務委託契約を結びます。
契約のときに行うのが、従業者名簿への登載と従業者証明書の交付。
宅建士の資格をお持ちの方には、資格登録簿の勤務先の登録もお願いしています。
業務委託という働き方の基本は、会社員の営業との違いの記事でご説明しています。
募集している3つの職種
応募の条件は、応募する分野の仲介の実務経験です。
宅建士の資格は歓迎ですが、必須ではありません。
職種ごとの業務の範囲は、住居の賃貸エージェント、テナント(事業用)の賃貸エージェント、売買エージェントの各ページにまとめています。
制度の全体はエージェント募集のページにあります。
まずは条件を見比べたいという段階でもかまいませんので、応募フォームからご連絡ください。
