不動産エージェントが失敗する理由|始める前に避けたい4つの型
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士会社員の仲介営業からエージェント(業務委託)へ移るとき、つまずく場所はおおむね決まっています。
この記事は、会社を移るか業務委託で働くかを比べている仲介の営業職の方に向けて、うまくいかない始め方の型を4つに分けて整理したものです。
業務委託という働き方そのものの説明は不動産エージェント(業務委託)とはに、報酬と入金の仕組みは報酬の仕組みにまとめました。
ここでは、その仕組みのどこで人がつまずくのかに絞り、当社(おもいで不動産・福岡市博多区)の募集でそれぞれをどう扱っているかも書きました。
2. 集客の手段が無いまま始めると、何が起きますか?
3. 月額費用と実費を見込まずに始めると、どうなりますか?
4. 契約・書類を一人で抱えると、何が危ないのですか?
5. 名義貸しに当たる働き方とは、どんな形ですか?
6. 当社は、この4つの失敗をどう避ける仕組みにしていますか?
不動産エージェントがうまくいかない理由は何ですか?
不動産エージェントがうまくいかない理由の多くは、営業の腕ではなく、始める前の準備不足にあります。
会社員のときに会社が持っていたものを、自分で持つ用意がないまま始めてしまうのです。
その「会社が持っていたもの」は、大きく分けて4つ。
会社員のときに会社が引き受けていた4つのもの
- 集客:店の看板、ポータルサイトの掲載、会社に入る反響
- お金:広告費・交通費などの経費と、毎月決まった日の給与
- 書類:調査、重要事項説明書、契約書、レインズの操作
- 免許:宅地建物取引業の免許と、その名義のもとで仕事をする仕組み
会社員のあいだは、この4つを意識しなくても仲介の仕事は回ります。
業務委託に移ると、どれを自分が持ち、どれを会社が持ち続けるのかを契約で決め直すことになります。
決め直しが曖昧なまま始めると、成約の数字とは関係のないところで続けられなくなる、というのがこの記事の見立てです。
4つとも、契約を結ぶ前に確かめられる
4つの型には共通点があります。
どれも、契約書と面談の段階で見積もれるものだという点です。
営業の結果は始めてみないと分かりません。
一方で、集客の扱い、毎月の固定費、書類の分担、名義の扱いは、署名の前に文字で確かめられます。
以下は型ごとの、起きることと始める前に見る点です。
集客の手段が無いまま始めると、何が起きますか?
集客の手段が無いまま始めると、成約の入口が無いのに毎月の費用だけが出ていき、最初の成約より先に資金が尽きやすくなります。
業務委託では、案件は会社から割り振られるものではなく、自分で取りに行くものだからです。
「反響は会社が回してくれる」と思い込む
会社員の仲介営業は、店やポータルサイトに入った反響を担当として受け取るところから仕事が始まります。
同じ感覚のまま業務委託へ移ると、最初の数か月は電話もメールも鳴らない、ということが起こり得ます。
当社の募集も、集客はご自身で行うのが基本です。
当社サイトへの反響を状況に応じてお渡しすることはありますが、件数を約束する制度ではありません。
どの会社に参画する場合でも、反響を渡すのか、渡すならどんな順番で誰に渡すのかを、契約の前に書面で確かめてください。
口頭の「回せると思います」は、契約書の中では何の約束にもなりません。
独立前にできる備えは、成約につながる入口を具体的に書き出しておくことです。
たとえば、知人や過去の取引で関わった士業・管理会社からの紹介、自分で続けている発信、地域での付き合いといった入口です。
前の会社の顧客名簿をそのまま持ち出す形は入口に数えないでください。
就業規則や退職時の誓約書で禁じられていることが多く、移った先の会社にも迷惑がかかります。
入口が1つも書けないなら、それは独立の時期を見直す合図です。
自分の名前で出す広告の落とし穴
当社はSNSや動画での集客経験を歓迎しています。
ただし、エージェントが出す物件の広告や集客の発信は、あくまで免許を持つ会社の業務として出すものです。
宅地建物取引業法13条2項は、宅建業者が自分の名義で他人に宅建業を営む旨の表示や広告をさせることを禁じています。
会社の名前を出さずに自分の屋号だけで仲介を案内する形は、この規定との関係で問題になり得るため、当社では避けています。
32条の誇大広告の禁止も、広告を出したのが会社員かエージェントかで変わりません。
当社では、広告表示を不動産の公正競争規約にもとづいて当社が審査してから出します。
月額費用と実費を見込まずに始めると、どうなりますか?
成約が無い月も月額費用と実費は出ていくため、最初の入金までを支える資金が無いと、案件の途中で活動を続けられなくなります。
報酬の仕組みは報酬の仕組みの記事に書いたので、ここで扱うのは見込み違いが起きる場所だけです。
出ていくお金を3つに分けて書き出す
出ていくお金は、性質の違う3つに分けると見落としが減ります。
| 種類 | 中身の例 | 見込み違いの起き方 |
|---|---|---|
| 月額の固定費 | 会社へのサポート利用料 | 成約が無い月も同額 |
| 案件ごとの実費 | 広告費、交通費、撮影 | 動くほど増える |
| 自分の暮らしと手続き | 生活費、税、社会保険 | 会社員のときは天引きで見えなかった |
当社の場合、月額のサポート利用料は毎月末にご請求し、広告費や交通費など個別の案件の実費はエージェントのご負担です。
金額は面談で、契約書の全文と一緒にお見せします。
比べる相手の制度では、同じ費目が月額に含まれているのか、別に請求されるのかも確かめてください。
最初の入金までの空白を、数字で見ておく
業務委託料は、申込みや契約の時点ではなく、決済や入金の確認が済んだあとに支払われます。
当社では、決済完了と入金確認のあと、翌月末にお振り込みする決まりです。
売買は契約から決済まで日数が空くことが多く、賃貸は申込みから入居までが比較的短い仕事。
どちらの分野でも、活動を始めた月から最初の入金までのあいだは、出ていくお金が先に立ちます。
その期間の月額費用・実費・生活費を足した額を、独立前に手元で用意できるかを計算してから始めてください。
当社は、一定の収入を保証することはありません。
契約・書類を一人で抱えると、何が危ないのですか?
書類の誤りは免許を持つ会社の法令違反として扱われるため、一人で抱える形は、時間だけでなく取引の安全も削ります。
提案と交渉に使えるはずの時間まで、書類に取られるためです。
重説は宅建士の仕事、契約書面は業者の義務
宅建業法35条は、宅建業者が契約の成立までに、宅地建物取引士に重要事項を記した書面を交付して説明させるよう定めています。
37条は、契約が成立したら、宅建業者が遅滞なく所定の事項を記した書面を交付するよう定めた規定です。
宅地建物取引士でないエージェントは、重要事項の説明そのものを行えません。
宅建士であっても、書類の作成から説明までを一人で背負うと、確かめる目が自分しか無くなります。
35条・37条への違反は、65条2項で、1年以内の業務停止を命じられ得る対象です。
書類の誤りは、取引の相手方にとっても見過ごせない問題です。
福岡県の建築都市部建築指導課宅建業係は、宅建業法が規制する取引について相談を受け付けています。
県が挙げる相談例には、重要事項の説明を受けていない、説明された事項に誤りがある、といったものが並んでいます。
どれも、書類を一人で抱えて手が回らなくなったときに起きやすい形です。
分担が言葉だけの会社で起きること
求人の段階で「書類は会社がやります」と書いてあっても、実際には作成をエージェントに任せ、会社は押印だけ、という運用もあり得ます。
この形だと、書類の手間も誤りの責任も、気づかないうちに自分の側へ寄ってきます。
面談では、重要事項説明書と契約書を誰が作り、誰が確かめ、誰が説明するのかを、書類ごとに分けて尋ねてください。
当社では、レインズの登録・検索、物件調査と役所調査、重要事項説明書と契約書の作成は、当社の担当です。
重要事項説明は当社の宅地建物取引士が行い、エージェントには同席していただきます。
名義貸しに当たる働き方とは、どんな形ですか?
会社の免許を借りて実態は自分の事業として仲介する形は、宅建業法13条が禁じる名義貸しに当たるおそれがあります。
その場合は、会社の業務停止や免許取消し、関わった人への罰則につながりかねません。
業務委託で働くと、会社との距離が会社員より遠くなるぶん、この形に気づかず近づくことがあります。
宅建業法13条1項は、宅建業者が自分の名義で他人に宅建業を営ませることを禁じています。
エージェントが会社の従業者として仲介する仕組みと、名義貸しとの違いは業務委託とはの記事で説明しました。
ここで押さえたいのは、契約書の名前ではなく、取引の実態で見られるという点です。
名義貸しに近づく働き方
次のような形は、会社の看板の下にいても、実態が「自分の事業」に寄っていきます。
- 仲介手数料を、自分の口座でお客様から直接受け取る
- 会社に知らせないまま、お客様と直接取引を進める
- 自分の屋号だけで不動産業を名乗り、会社の名前を出さずに広告する
- 重説や契約の段階まで、会社が取引の中身を知らない
当社では、お客様との媒介契約の当事者は当社で、仲介手数料は全額を当社名義で受け取ります。
当社を通さない直接取引と、手数料の直接の受け取りは禁止です。
この線が契約書に書かれていない会社では、名義貸しに近い形がいつのまにか日常になっている、ということも起こり得ます。
処分と罰則、そして参画先の確かめ方
13条に違反した宅建業者は、65条2項により1年以内の業務停止を命じられることがあります。
情状が特に重いときは、66条により免許の取消しです。
79条は、13条1項に違反して他人に宅建業を営ませた者に罰則を定めています。
免許を受けずに宅建業を営んだ者も同じ条文の対象で、3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金、またはその両方です。
参画を考えている会社の処分歴は、国土交通省のネガティブ情報等検索サイトで調べられます。
宅建業者への免許取消・業務停止・指示が、処分の日から5年間公開される仕組みです。
ただし、情報を載せていない自治体もあるため、見当たらないときは免許権者の自治体のサイトも確かめてください。
当社は、この4つの失敗をどう避ける仕組みにしていますか?
当社は、書類・重説・名義の扱いを会社側で固め、率と月額は契約書の全文で事前にお見せします。
集客だけは、エージェントご本人に委ねる形です。
4つの型のうち、会社が引き受けられるものは引き受け、引き受けられないものは最初にそう伝える、という線の引き方です。
契約の前にお見せするもの
オンライン面談のあと、還元率・月額費用・業務分担・契約書の全文をお渡しします。
持ち帰ってご検討いただけるので、ほかの会社の条件と並べて読み比べてください。
初期費用・保証金・加盟金はいただかず、契約は1年ごとの更新で、中途解約の違約金もありません。
契約のあとは2週間のオンボーディングで、当社の査定の手法、書類の流し方、士業への取り次ぎ方をお伝えします。
最初の案件には、代表が同席する決まりです。
福岡県知事免許のもとで働くということ
当社は、宅地建物取引業 福岡県知事(2)第19722号の免許のもとで媒介を行っています。
エージェントは当社の従業者名簿に登載し、従業者証明書を交付する形です。
福岡県では、現に有効な宅建業免許の申請・届出書類を、県土整備事務所などの窓口で閲覧できます。
閲覧は無料で、過去5年分の書類が対象です。
当社に限らず、参画先の会社がどんな体制で免許を受けているかを、自分の目で確かめる手段として使えます。
募集は住居の賃貸・テナント(事業用)の賃貸・売買の各1名で、専業の方に限っています。
専任の宅地建物取引士1名につき従業者5名という法令上の上限があり、当社が代表1名体制だからです。
制度の全体とよくある質問はエージェント募集のページに、職種ごとの仕事の中身は住居の賃貸・テナントの賃貸・売買の各ページにまとめています。
免許番号と所属団体は会社概要に載せています。
話を聞くだけでも構いませんので、応募フォームからご連絡ください。
