不動産営業は転職か業務委託か|5つの項目で比べる
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士いまの会社を辞めると決めたあと、次の道は大きく2つに分かれます。
別の不動産会社へ転職して会社員を続けるか、エージェントとして業務委託で働くか、という分かれ道です。
この記事は、賃貸か売買の仲介をしている営業職の方が、その2つを同じ物差しで比べられるように書きました。
どちらが得かを決めつけるのではなく、ご自身の状況に当てはめて判断できる材料を並べています。
業務委託という働き方そのものの説明は、不動産エージェント(業務委託)とは?にまとめました。
2. 固定給と収入の上限・下限は、どう変わる?
3. 社会保険と税金は、誰が負担する形になる?
4. 裁量と責任の範囲は、どこまで変わる?
5. 会社を辞めるとき、それぞれどんな段取りになる?
6. 転職とエージェント、どちらが合うかは何で決める?
不動産営業の転職と業務委託は、何が違う?
転職は雇用契約を結び直すこと、業務委託は雇用契約を結ばずに仕事を請け負うことで、固定給・社会保険・裁量・収入の上下・辞め方が変わります。
仲介の仕事の中身は、どちらを選んでも大きくは変わりません。
変わるのは、お金と時間と責任を誰が引き受けるかという枠組みのほうです。
5つの項目を1枚の表で比べる
まず全体を一覧にしました。
「転職」は一般的な会社員の営業、「エージェント」は業務委託の一般的な形を指しています。
| 項目 | 転職(会社員) | エージェント(業務委託) |
|---|---|---|
| 固定給 | 会社の給与体系による。固定給の部分がある会社が多い | 無い。成約に応じた業務委託料だけ |
| 社会保険 | 会社の健康保険・厚生年金に入り、保険料は会社と折半 | 国民健康保険・国民年金へ自分で切り替え、全額を自分で納める |
| 裁量 | 時間・進め方は会社の指示に沿う | 時間・集客・進め方を自分で組み立てる |
| 収入の上下 | 下限は固定給で支えられ、上限は歩合の規程で決まる | 下限は0。月額費用があれば、手元に残る額がマイナスになる月もある |
| 辞めるときの段取り | 退職日の翌日に入社すれば、保険も年金も会社が手続き | 保険・年金・税の届出を自分で行う。宅建士は勤務先の変更登録も |
表の5項目は「誰が引き受けるか」の違い
表を横に読むと、どの行も同じ構図になっていることに気づくはずです。
会社員は、収入の波や保険の手続きを会社に預ける代わりに、時間の使い方を会社に合わせます。
エージェントは、時間の使い方を手にする代わりに、波と手続きを自分で引き受けます。
どちらの組み合わせが自分の暮らしに合うか、というのがこの比較の本当の問いです。
固定給と収入の上限・下限は、どう変わる?
転職なら固定給が収入の下限を支えますが、エージェントには固定給が無く、成約が無い月の収入は0になる一方、成約の分だけ受け取る額が増える形です。
上限の決まり方も違うので、両方を同じ月収の数字で比べると判断を誤ります。
転職:固定給が下限を支え、歩合の規程が上限を決める
不動産会社の給与は、固定給と歩合(インセンティブ)を組み合わせた形が多く見られます。
固定給の額、歩合の計算の仕方、目標に届かないときの扱いは会社ごとに違い、求人票だけでは読み切れません。
転職を考えるなら、内定の前に雇用契約書と賃金規程の該当部分を見せてもらうのが確実でしょう。
固定給があるぶん、会社は売上の目標や勤務の管理を求めるのがふつうです。
下限の安心と時間の自由は、たいてい引き換えの関係。
転職先を選ぶときは、固定給の額だけでなく、その固定給と引き換えに何を求められるかを並べて見ておくと、入社後の食い違いを減らせます。
エージェント:下限は0、手元に残る額は費用を引いて考える
業務委託料は、会社が受け取った仲介手数料に応じて決まります。
成約が無ければ、会社から支払われるお金はありません。
さらに月額の費用がかかる会社では、成約の無い月は手元のお金が減っていきます。
成約から入金までに時間差があることも、会社員の給与には無い性質です。
報酬の原資や入金の時期は、不動産エージェントの報酬の仕組みで詳しくご説明しています。
比べるときは「うまくいった年の年収」ではなく、最初の入金までの数か月をどう暮らすかで考えてみてください。
当社も、収入は活動量と経験によって大きく変わり、一定の収入を保証するものではありません。
社会保険と税金は、誰が負担する形になる?
転職なら会社を通じて健康保険と厚生年金に入り保険料を会社と折半しますが、業務委託では国民健康保険と国民年金へ移り、保険料も税も自分で納めます。
手取りを比べるときに見落としやすいのが、この部分です。
転職:保険料の半分は会社が持つ
日本年金機構によると、厚生年金の保険料は標準報酬月額と標準賞与額に保険料率を掛けて計算します。
保険料率は18.3%で固定され、事業主と被保険者が半分ずつ負担する仕組みです。
会社員の給与明細に載っている厚生年金の額とは別に、会社も同じ額を納めているということです。
会社の健康保険の保険料にも、会社の負担分があります。
転職ならこの形が続き、入社の手続きも会社の仕事。
業務委託の報酬と給与を額面で並べると、この会社負担の分だけ業務委託が多く見えるので、比べるときは差し引いて考えてください。
業務委託:保険も税も自分で入り直す
業務委託で働く個人は、会社の社会保険の外に出ます。
健康保険は任意継続か国民健康保険を選び、年金は国民年金の第1号被保険者へ切り替える流れです。
会社が持っていた半分がなくなるうえ、厚生年金に比べて将来の年金も少なくなります。
切り替えの期限や、福岡市の国民健康保険の届出は業務委託の社会保険にまとめました。
税も、年末調整ではなく確定申告で自分で納めます。
経費の扱いや青色申告は経費と確定申告の記事をご覧ください。
裁量と責任の範囲は、どこまで変わる?
転職なら仕事の進め方と時間は会社の指示に沿いますが、エージェントは時間・集客・進め方を自分で決められる代わりに、その結果も自分で受け止めます。
ただし、宅建業法のうえでの立場は、どちらも免許を持つ会社の従業者です。
転職:会社の型に合わせ、会社の型に守られる
会社員は、出社の時刻・朝礼・日報・上長の同行といった会社の仕組みの中で働きます。
窮屈に感じる面がある一方、研修や先輩の同行で経験を積める面もあります。
扱う分野を広げたいとき、会社の中で異動できる場合もあるでしょう。
集客の看板も会社のものなので、反響は店や会社のサイトに入ってくるのが基本です。
エージェント:時間と集客は自分のもの
業務委託では、いつ・どこで・どう動くかを自分で組み立てます。
そのぶん、集客の手段を自分で持っていないと、空いた時間がそのまま空白になるでしょう。
この点で始める前につまずきやすい型は、不動産エージェントが失敗する理由で取り上げました。
一方で、宅建業は免許を持つ会社の業務なので、媒介契約の当事者は会社で、エージェントは会社の従業者として仲介します。
重要事項説明や広告表示のチェックを誰が行うかは会社ごとに違い、ここが責任の重さを左右するところ。
当社の場合、調査・書類・レインズ・重要事項説明・決済まわりは会社の担当で、重要事項説明は当社の宅地建物取引士が行います。
エージェントの仕事は、集客から提案・交渉・引き渡しまで、お客様と向き合う部分です。
会社を辞めるとき、それぞれどんな段取りになる?
転職は退職日の翌日に入社すれば手続きの多くを次の会社が行いますが、エージェントは保険・年金・税の届出を自分で行い、宅建士は変更登録も要ります。
退職を伝える前に、次の始まりの日と、空白の期間をどう過ごすかを決めておくと慌てずに済みます。
失業給付は、自営業を始める場合の扱いを先に確かめる
雇用保険の基本手当は、働く意思があり仕事を探しているのに職に就いていない人のための給付です。
厚生労働省のQ&Aでは、自営業の方などが受給できない例に挙がっています。
離職後に事業を始めた人のために、事業をしている期間を受給期間に数えない特例も設けられました。
最大3年間を受給期間に算入しない形で、事業を始めた日などの翌日から2か月以内に、住所を管轄するハローワークへ申請します。
個々の扱いはハローワークが判断するので、退職の前に一度相談しておくと確実です。
宅建士の勤務先の変更登録(福岡県)
宅地建物取引士の資格登録簿には、勤務先の宅建業者が載っています。
福岡県は、勤務先が変わったときは宅建士証を持っているかどうかにかかわらず、遅滞なく変更登録を申請するよう案内しています。
退職したなら退職証明書、入社したなら在職証明書を添えるのが決まりで、従業者証明書では代わりになりません。
県内にお住まいの方の窓口は、福岡・久留米・北九州・飯塚の4か所にある県土整備事務所の建築指導課です。
受理から登録の完了までは、おおむね40日ほどかかるとされています。
転職でもエージェントでも、勤務先が変わる点は同じなので、この手続きはどちらにも必要です。
転職とエージェント、どちらが合うかは何で決める?
収入が少ない時期も暮らしが回るか、集客の手段を持っているか、会社に任せたい仕事は何か、の3つに答えると、どちらが合うかが見えてきます。
答えが一つでも「いいえ」なら、いまは転職を選び、準備が整ってから業務委託を考えるという順番もあり得るでしょう。
3つの問いを自分に当てはめる
- 収入の波に耐えられるか:最初の入金までの生活費と、月額の費用・保険料・年金を、手元の蓄えで払えるか
- 集客の手段があるか:紹介、SNS、地域のつながりなど、会社の看板に頼らない入口を一つでも持っているか
- 何を会社に任せたいか:調査・書類・重説・決済のどこまでを会社に引き受けてほしいか
3つ目は、エージェントを選ぶ場合の会社の選び方にそのままつながります。
任せたい範囲を会社が引き受けないなら、業務委託でもかえって仕事が増えるからです。
反対に、書類や調査まで自分の手で回したい人にとっては、会社が引き受ける範囲の広さは月額の費用に見合わないかもしれません。
任せたい範囲と払う費用の釣り合いは、人によって答えが変わるところです。
エージェントを選ぶ前に確かめること
- 業務委託料の率と、月額の費用の金額・中身が、契約書の形で示されるか
- 調査・書類・重説・レインズ・決済を、誰が担うと書いてあるか
- 初期費用・加盟金・中途解約の違約金があるか
- 専任の宅建士の人数に対して、在籍者が多すぎないか
- 副業や他社との兼務を認めるか(認める場合、従業者の登録はどうするか)
契約書のどの条項を読むかは、不動産エージェントの会社の選び方で詳しく取り上げています。
当社(株式会社おもいで不動産・福岡県知事(2)第19722号)は、住居の賃貸・テナントの賃貸・売買の3職種で各1名を募集しています。
業務委託(完全歩合制)の専業のみで、初期費用・加盟金・中途解約の違約金はありません。
率と月額の金額は、面談で契約書の全文と一緒にお見せし、持ち帰ってご検討いただけます。
面談はオンラインで完結し、在職中のご相談も受け付けています。
制度の全体はエージェント募集のページに、職種ごとの仕事は住居の賃貸・テナント(事業用)の賃貸・売買の各ページにまとめました。
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