不動産エージェントの経費と確定申告|青色申告とインボイス
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士会社員の営業から業務委託の不動産エージェントに移ると、税金の手続きは会社任せではなくなります。
年末調整が無くなり、経費の整理から確定申告、場合によっては消費税の申告まで、自分で受け持つことになるためです。
この記事は、いま賃貸か売買の仲介をしていて、エージェントとして働くかどうかを比べている方に向けて書きました。
独立する前に、何をいつまでに準備すればよいか。
それを国税庁の案内で確かめられるようにするのが、この記事の目的です。
報酬の決まり方や入金の時期は報酬の仕組みの記事で扱ったので、ここでは税の扱いに絞っています。
2. 不動産エージェントの経費には何が入る?
3. 確定申告はいつ、どこの税務署に出す?
4. 青色申告の65万円控除は、何をすれば受けられる?
5. インボイス制度で、業務委託料の消費税はどうなる?
6. おもいで不動産で働く場合、お金の記録はどう流れる?
不動産エージェントの業務委託料は、何所得になる?
業務委託で受け取る報酬は、給与ではなく、個人で営む事業の売上として扱うのが基本で、所得の区分は事業所得です。
国税庁は、事業所得を「事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得」と説明しています。
給与所得から事業所得へ
事業所得の金額は「総収入金額−必要経費」で計算します。
会社員のときは給与所得控除が自動で差し引かれましたが、事業所得では差し引けるのは実際にかかった経費です。
つまり、経費を記録していなければ、その分は所得から引けません。
独立した月から、領収書と通帳の記録を残す習慣が要るのはこのためです。
開業届と青色申告の承認申請はいつまでに出す?
事業を始めたら、「個人事業の開業・廃業等届出書」を納税地の税務署へ出します。
提出の期限は、事業を始めた日が属する年分の確定申告期限までです。
青色申告をしたい場合は、別に「青色申告承認申請書」が要ります。
原則は青色申告をしたい年の3月15日まで、1月16日以後に開業した場合は開業の日から2か月以内です。
開業届より青色申告の申請のほうが期限が早いので、独立の日が決まった段階で一緒に準備しておくと出し忘れません。
不動産エージェントの経費には何が入る?
経費にできるのは、売上を得るために直接かかった費用と、その年の販売費・一般管理費など業務上の費用です。
私的な支出は入らず、仕事と生活の両方に使うものは業務の分だけが対象です。
必要経費の考え方
国税庁の説明では、必要経費は「債務が確定した年」に計上します。
支払った日ではなく、12月31日までに債務が成立し、支払う原因となる事実が起き、金額を合理的に計算できる状態になっているかで判断します。
仲介の仕事に当てはめると、広告の掲載料、物件へ向かう交通費、商談のための通信費などが候補です。
どれも「その支出が無ければ仕事にならないか」を説明できるかどうかが、線引きの目安になります。
反対に、生活のためだけの支出は家事上の経費として扱われ、必要経費には入れられません。
自宅や車など、仕事と生活で兼ねるもの
自宅の家賃や光熱費、私用でも乗る車のように、生活と仕事の両方に使う費用は「家事関連費」と呼ばれます。
経費にできるのは、取引の記録などから業務に必要だったと明らかに区分できる部分だけです。
内見や案内に使う携帯電話を私用と兼ねている場合も、同じ考え方で分けることになります。
どう分けたかを後から説明できるよう、走行の記録や通話の内訳を残しておくと、申告のときに迷いません。
確定申告はいつ、どこの税務署に出す?
所得税の確定申告は、原則として翌年2月16日から3月15日までに、納税地を所轄する税務署へ出し、納付の期限も3月15日です。
期限が土曜・日曜に当たる年は、翌日まで延びます。
申告の期間と、年またぎの扱い
会社員の給与は年末調整で終わりましたが、事業所得は自分で1年分を締めて申告します。
1月から12月までの売上と経費を集計し、翌年の2月から3月に申告と納税を済ませる流れです。
年をまたぐ取引は、どちらの年に入れるかで迷いやすいところです。
たとえば12月分の費用を翌年1月に支払う場合、経費は上の「債務が確定した年」の考え方で12月の年に入ります。
売上を計上する年は取引の内容で決まるため、迷う案件は税理士か税務署に確かめてください。
福岡市博多区に住む場合は博多税務署
所得税の納税地は住所地が基本で、届け出れば事業所などの所在地に代えることもできます。
福岡市の場合、博多税務署の管轄区域は博多区と東区の一部です。
所在地は福岡市東区馬出1丁目8番1号で、JR吉塚駅から徒歩3分の場所にあります。
代表電話は092-641-8131で、かけると自動音声の案内につながります。
名前は博多ですが建物は東区にあるので、初めて窓口へ行くときは住所で確かめてから出かけてください。
ほかの区にお住まいなら、国税庁の税務署一覧で自分の住所の管轄を確かめてください。
当社の事務所は博多区にありますが、エージェントの方が申告する先は、事務所ではなくご自身の納税地で決まります。
出典:福岡国税局 博多税務署
青色申告の65万円控除は、何をすれば受けられる?
65万円の控除を受けるには、複式簿記の帳簿と決算書を期限内の申告書に添え、e-Taxで申告するか優良な電子帳簿で保存することが要件です。
どれか1つでも欠けると、控除の額は下がります。
65万円・55万円・10万円の違い
控除の額は、満たした要件によって3段階に分かれます。
| 控除の上限 | 主な要件 |
|---|---|
| 65万円 | 複式簿記・決算書の添付・期限内申告に加えて、e-Taxでの申告か優良な電子帳簿の保存 |
| 55万円 | 複式簿記・決算書の添付・期限内申告(電子の要件は満たさない) |
| 10万円 | 上の要件を満たさない青色申告 |
65万円と55万円の差は、紙で出すか電子で出すかの違いだけです。
同じ帳簿をつけるなら、e-Taxで出したほうが控除は10万円大きい計算です。
期限を1日でも過ぎると55万円・65万円の控除は受けられないため、3月15日の期限は動かせない日として予定に入れておきます。
会社員のうちに準備しておくこと
複式簿記に慣れていない方は、会計ソフトを決めて、独立した月から入力を始められる状態にしておくのが第一歩です。
事業用の通帳とカードを生活用と分けておくと、経費の区分と帳簿の入力がそれだけで軽くなります。
e-Taxを使うには事前の準備が要るので、最初の申告の年明けに慌てないよう、早めに試しておくと安心です。
もう一つ、所得税と消費税の納税資金を、入金のたびに分けておく口座も用意しておきます。
前年の所得によっては翌年に予定納税も始まるため、その仕組みは報酬の記事の後半をご覧ください。
インボイス制度で、業務委託料の消費税はどうなる?
インボイスを交付できるのは税務署長の登録を受けた事業者だけで、登録すると売上の規模にかかわらず消費税の申告が必要です。
登録するかどうかで、消費税の扱いは大きく変わります。
開業したての時期と、登録したときの違い
消費税は、基準期間(個人は前々年)の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として納税の義務が免除されます。
前年1月から6月の課税売上高が1,000万円を超えた場合などは、この免除が受けられません。
開業したばかりの年は前々年に事業の売上が無いため、登録しなければ免税事業者になることが多い時期です。
一方、適格請求書発行事業者の登録を受けると、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも納税の義務は免除されません。
取引先がインボイスを求めるかどうかは、支払う側が仕入税額控除を受けたいかどうかで決まります。
登録していない事業者からの仕入れでも一定の割合を控除できる経過措置があり、その期限は令和13年9月30日。
登録の申請はe-Taxでも行え、登録されると登録番号や氏名などが国税庁の公表サイトに載ります。
業務委託の契約で登録を求められるかどうかは会社ごとに違うため、契約書と面談で必ず確かめてください。
2割特例は令和8年分まで、その後は3割特例
免税事業者から登録した小規模な事業者には、納める消費税を売上の消費税額の2割にできる「2割特例」があります。
対象は令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日を含む課税期間で、個人事業者なら令和8年分の申告が最後です。
事前の届出は要らず、消費税の確定申告書に適用を受ける旨を書き添えれば使え、申告のたびに選べます。
令和8年度の税制改正で、個人事業者には令和9年分と令和10年分に使える「3割特例」が設けられました。
納める税額を売上の消費税額の3割にできるもので、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることなどが要件です。
これから登録する方は、2割特例の残りの期間が短く、3割特例も2年間に限られる点を前提に、その後の申告方法まで含めて考えておく必要があります。
個人事業者の消費税の申告と納税の期限は、所得税より遅い翌年3月31日です。
出典:国税庁 2割特例
おもいで不動産で働く場合、お金の記録はどう流れる?
当社の制度で帳簿に残すお金は、当社からの業務委託料、当社への月額のサポート利用料、個別案件の実費の3つになります。
3つとも入出金の時期が決まっているので、月ごとの記帳の形を作りやすい仕組みです。
業務委託料・月額費用・実費の時期
当社が業務委託料をお振り込みするのは、決済の完了と入金の確認が済んだあとの翌月末です。
月額のサポート利用料は毎月末にご請求し、成約が無い月も同じ額になります。
広告費や交通費など、個別の案件にかかる実費はエージェントのご負担です。
月額のサポート利用料も実費も、事業のために払うお金なので、必要経費の候補として毎月の帳簿に入れておくものになります。
月額費用は毎月末の請求なので、12月分は12月の年の経費として整理する形が考えやすいでしょう。
12月に決済した案件は振込が翌年になるため、どちらの年の売上にするかは、上で触れたとおり税理士か税務署に確かめておくと安心です。
なお、当社が一定の収入を保証することはなく、収入は活動量と経験によって大きく変わります。
面談で確かめていただきたいこと
当社は、還元率と月額費用の金額をサイトに載せず、面談で契約書の全文と一緒にお見せしています。
税の手続きの準備には、業務委託料の支払いの流れと、請求書のやり取りの形を先に知っておくことが欠かせません。
当社としては、適格請求書発行事業者の登録をしていただけると助かります。
ただし必須の条件ではありません。
登録の有無とその後の請求書のやり取りは、面談で確かめさせてください。
税の個別の判断は、税理士や税務署にご確認いただくことになります。
制度の全体と応募の流れはエージェント募集のページに、職種ごとの仕事は住居の賃貸・テナントの賃貸・売買の各ページにまとめています。
業務委託という働き方そのものはエージェントとは何かの記事で、話を聞いてみたい方は応募フォームからご連絡ください。
