実家の鍵を不動産会社に預ける前に決める4つのこと
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士福岡市にある実家を県外から売るとき、ほぼ必ず出てくるのが「鍵を不動産会社に渡してよいのか」という迷いです。
結論から書くと、預けて構いません。
ただし、渡す前に決めておくことが4つあります。
誰が持つか、どんなときに入るか、入った記録をどう残すか、いつ返すかの4つです。
この記事は、福岡市の実家を遠方から売る方に向けて、鍵を郵送する前の取り決めを書いたものです。
当社が鍵をどう受け取り、どこに保管し、いつ返しているかも具体的に書きました。
2. 鍵を預ける前に決める4つとは何ですか
3. 勝手に入られないようにするには、どう取り決めますか
4. 残置物がある家の鍵は、どう扱いますか
5. 福岡市の実家なら、鍵を預ける前に確かめる2つ
6. 鍵を預けたあと、売主は何を受け取れますか
実家の鍵は、不動産会社に預けてよいのでしょうか
売却を頼む会社に鍵を預けるのは、遠方からの売却ではごく普通の進め方です。
法律で禁じられているわけではなく、売主と会社のあいだの取り決めの問題になります。
こじれるのは、預けたかどうかではなく、取り決めを書面にしていなかった場合。
「いつ入ったのか分からない」「返してもらえない」というご相談は、だいたいここから起きています。
鍵がないと止まる3つの場面
鍵を預けなくても、査定の入口までは進みます。
止まるのは、そのあとの3つ。
- 室内の写真と図面……広告に出す室内写真、間取りの実測、給湯器やエアコンの型番の確認。どれも中に入らないと取れません
- 買主の内覧……空き家は売主が立ち会えないため、会社が開錠して案内します。土日に続けて3件入ることもあります
- 引渡し前の確認……残置物の有無、雨漏り、通水の状態。引渡し日の直前にもう一度見ます
とくに内覧は日程が買主の都合で動くので、県外にお住まいの売主が毎回合わせるのは現実的ではありません。
外観の写真だけで売り出すと、問い合わせの段階で「室内の写真はありますか」と聞かれて止まります。
空き家は生活感が無いぶん、室内の写真がそろっているかで問い合わせの入り方が変わるのが当社の実感です。
鍵を預けるかどうかは、売り出しの早さに直接ひびく判断。
当社は鍵をどう受け取っているか
当社は、レターパックなどでご郵送いただくか、現地の鍵の置き場所を教えていただく形でお預かりしています。
お預かりした鍵は施錠管理台帳に記録し、事務所の鍵庫で保管します。
引渡しの日は、買主へ直接お渡しする流れ。
郵送でお送りいただくときは、追跡のできる方法を使ってください。
来福せずに引渡しまで進める手順は遠方からの売却のご案内にまとめています。
鍵を預ける前に決める4つとは何ですか
決めるのは、誰が持つか・どんなときに入るか・記録をどう残すか・いつ返すかの4つです。
この4つを、媒介契約の特記事項か、鍵の預かり証に書き込みます。
口約束で済ませると、担当者が替わった時点で誰も覚えていません。
紙に残しておけば、売主が思い出して確かめにいく手間もなくなります。
①誰が持つか(保管場所と複製の可否)
最初に決めるのは、預ける本数と、会社のどこに置くかです。
確かめたいのは次の4点。
- 預ける本数(玄関・勝手口・門扉・物置を分けて数える。実家は本数が多くなりがちです)
- 保管場所(施錠できる鍵庫か、担当者の机か。鍵庫なら持ち出しの記録も残ります)
- 複製を作ってよいか、作る場合は誰の承諾が要るか
- 担当者が替わるときの引き継ぎのしかた(誰から誰へ渡したかを記録に残すか)
「担当者が鞄に入れたまま持ち歩く」運用は避けてもらってください。
なくなったときに、いつどこで無くしたのかを追えなくなるからです。
当社では、鍵の受領・保管場所・持ち出しの管理・複製の取り扱い・終了時の返却方法を、契約の前にご説明しています。
②どんなときに入るか(入室の条件)
次に決めるのは、どんな用件なら室内に入ってよいかです。
内覧の案内、広告写真の撮影、業者の見積もり、台風のあとの点検。
用件ごとに「毎回連絡が要る」「月1回の巡回はまとめた報告でよい」と線を引いてください。
線を引く基準は、売主が結果を知らないまま終わる用件を作らないこと。
内覧は買主の反応が報告に乗るので事後でよく、見積もりは金額が動くので事前の連絡が要ります。
当社の空き家管理では、室内に入るプランのとき、巡回時の開錠と退出時の施錠を毎回確認します。
協力先の業者が入るときに事前にご説明するのは、鍵の取り扱いと担当の範囲の2つ。
③入った記録はどう残すか
記録は、入った日・時刻・入った人・用件・退出時の施錠の5つがそろっていれば足ります。
言葉だけの報告より、写真が1枚付いた記録のほうが後から確かめやすい。
そもそも活動の報告は、媒介契約の種類によって回数が法律で決まっています。
| 媒介契約 | 活動報告の頻度 | 鍵を預けるときの考え方 |
|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 1週間に1回以上(義務) | 入室の記録を毎週の報告に乗せられる |
| 専任媒介 | 2週間に1回以上(義務) | 2週に1回は必ず届く |
| 一般媒介 | 義務なし | 報告の回数を取り決めに書いておく |
専任なら2週に1回、専属専任なら週1回は必ず報告が来るので、入室の記録もその報告に乗せてもらえます。
一般媒介には報告の義務が無いので、鍵を預けるなら報告の回数を取り決めに書いてください。
3種類の違いは媒介契約の種類のページで比べられます。
④いつ返すか
返す時期は、次の3つのどれかで決めます。
- 引渡しの日に買主へ直接渡す(売主の手元には戻らない)
- 媒介契約が終わったら、指定の住所へ郵送で返してもらう
- 売却をいったん止めるなら、空き家管理の契約に切り替えて預かりを続ける
いちばん多いのは1つめ、つまり売主の手元に鍵が戻らないまま取引が終わる形。
返送になる場合は、送料をどちらが持つかも先に決めておきます。
当社の空き家管理では、鍵の発送費は所有者様のご負担とし、契約の終了時に鍵の返却と管理看板の撤去を確認しています。
返す時期を決めていないと、売れなかったあとに鍵だけが会社に残ったままになりがちです。
勝手に入られないようにするには、どう取り決めますか
「事前に連絡してから入る」を書面に書き、連絡を待てない例外を先に決めておく方法です。
例外とは、台風や地震のあとの緊急点検、近隣からの通報への対応といった場合。
この例外を書いておかないと、急ぎのときに会社が動けません。
「連絡してから入る」は、どこに書くか
書く場所は、媒介契約書の特記事項か、別紙の鍵預かり証のどちらかです。
当社は鍵預かり証を使っています。
媒介契約が終わっても空き家管理が続く場合があり、鍵の話だけ別の紙にしておいたほうが追いやすいからです。
文は長くしなくてよく、「入室の前日までにメールで連絡する、ただし災害後の緊急点検は事後報告とする」程度で足ります。
効くのは文の長さではなく、書面に1行でも残っているかどうか。
複製を作らない・第三者に渡さないを条件にする
合鍵をいくつも作られると、何本出回っているかが分からなくなります。
条件にするのは2つ。
- 複製は売主の承諾を得てから作る(作った本数と保管場所も報告してもらう)
- 協力先の業者へ貸す場合は、貸した日と返った日を記録する
当社は、合鍵の作製と出張での受け取りを空き家管理の月額に含めず、別の見積もりとしてお出ししています。
見積もりの形にしておくと、作ったかどうかが書面に残るからです。
残置物がある家の鍵は、どう扱いますか
残置物がある家でも鍵は預けられますが、荷物を動かす前に処分の同意が別に要ります。
家具や仏具が残っている実家で、ここを飛ばすともっともこじれるところ。
残置物は売主のもの。同意なしには動かせません
鍵を預かることは、中の荷物を処分してよいという意味になりません。
当社は、残置物の処分を提携業者の見積もりでご確認いただいたうえで着手します。
買取で手放す場合は、処分の費用を買取価格に織り込むため、別のご負担は発生しません。
仲介で売る場合は、処分の費用を売主が先に出すか、買主に現況のまま引き渡すかの選択。
片付けないまま売り出す進め方は残置物のまま実家の売却を始めるでくわしく書いています。
片付け業者や買取業者が入るときの鍵
片付けの当日は、作業員が何人も出入りします。
決めておくのは3つ。
- 鍵を貸す相手は会社か個人か(貸出先を会社名か氏名で記録する)
- 作業の前後で室内の写真を撮るか(撮ってもらえば、何が残っていたかを後から確かめられます)
- 残すものと処分するものを、写真つきの一覧で先に確定するか
仏壇や位牌、権利証や通帳のように「捨てられると取り返せないもの」は、先に送り先を決めておいてください。
作業のあとに気づいても、処分の済んだものは戻りません。
空き家そのものの売り方は空き家・実家じまいのご案内にまとめています。
福岡市の実家なら、鍵を預ける前に確かめる2つ
福岡市内の実家で確かめたいのは、水道をどうするかと、名義が片付いているかの2つです。
どちらも鍵を送ってからでは手戻りになります。
室内に入るなら、福岡市水道局への連絡が要る
福岡市内の水道は市の水道局が供給しているため、使用の開始と中止の連絡先も福岡市水道局になります。
申し込み先は、お客さまセンター(092-532-1010)か、水道局のウェブの受付。
電話の受付は平日の8時45分から17時30分まで。
空き家で水を止めている実家は、室内を見せる前に使用の再開を申し込んでください。
通水しないと蛇口から水が出ず、排水のトラップが乾いて下水の臭いが上がってきます。
内覧に来た買主がまず気づくのは、間取りよりも臭いのほうです。
鍵を送るのと同じ週に、水道の連絡も済ませておきます。
名義が片付いていないときの、福岡市の相談窓口
相続した実家の名義が亡くなった方のままだと、鍵を預けても売り出しまでは進みません。
福岡市は、住宅相談コーナーで司法書士による空き家の相談を予約制で受け付けています。
登記・税・測量の窓口がどこになるかは、福岡市7区の手続き窓口ガイドで区ごとに引けます。
名義の整理と売却の準備は同時に進められるので、登記が終わるまで鍵の話を止めなくてかまいません。
出典:福岡市 空き家相談
鍵を預けたあと、売主は何を受け取れますか
受け取るのは、鍵の預かり証と、入室を含む活動の報告の2つです。
預かり証に本数・保管場所・返す時期が書かれていれば、4つの取り決めはそこで形になっています。
売却をいったん止めて持ち続ける場合は、管理の契約へ切り替える道もあります。
当社の空き家管理は、屋外だけを見るライトが月6,600円(税込)、室内まで入るスタンダードが月12,100円(税込)です。
差額の5,500円は「室内に入るかどうか」の差で、鍵をお預かりするのは室内に入るプランから。
プランと作業の範囲は空き家管理のご案内で見られます。
管理に切り替えるか、値段を見直して売り続けるかは、預かりの期間を決めるときに一緒にご相談できます。
遠方から売るときに受け取るべき報告は遠方から売るとき受け取るべき5つの報告で整理しました。
鍵をいつ送るか、何を書面にしてもらうかで迷ったら、15分の無料相談でご一緒に決められます。
実家の所在地と、いま鍵をどなたが持っていらっしゃるかだけ分かれば、その場で段取りをお伝えします。
