リースバックの税金|譲渡所得と3,000万円控除の使い方
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士リースバックで自宅を売ると、住み続けられても所有権は買主に移ります。
税金の世界では、これは普通の売却とまったく同じ扱いです。
この記事は、リースバックの条件提示を受けて、手元に結局いくら残るのかを確かめたい福岡市の売主に向けて書いています。
順に見ていくのは、譲渡所得の計算、税率の分かれ目、居住用3,000万円控除の要件、固定資産税の精算、確定申告の5つです。
リースバックそのものの仕組みはリースバックでの売却にまとめてあります。
2. 税率はいくらですか
3. 3,000万円控除は、リースバックでも使えますか
4. 固定資産税は、いつから買主の負担になりますか
5. 確定申告は必要ですか
6. 福岡市で、次に何をすればよいですか
リースバックで売っても、税金はかかりますか
売って利益が出れば、通常の売却と同じように譲渡所得税がかかります。
住み続けるという条件が付いても、所有権が動いた事実は変わらないからです。
家賃を払い続けることも、売ったときの税額を減らす材料にはなりません。
家賃は、税金の計算に一切入りません
売ったあとに払う家賃は、譲渡所得の計算に入らないお金です。
譲渡費用として引けるのは、売るためにかかった仲介手数料や印紙代などに限られます。
住むために払う家賃は、その家に住み続けるための費用であって、売却の費用ではないからです。
つまり、家賃で手取りが減っても、税額は減りません。
ここが、リースバックの手取りを見誤りやすい点です。
課税されるのは、売った金額ではなく「もうけ」です
計算の順番は、売った金額から取得費と譲渡費用を引き、そこから特別控除を引く、という形です。
取得費は、その家を買ったときの代金や仲介手数料などで、建物については使った年数分を差し引きます。
譲渡費用は、売るためにかかったお金です。
2,000万円で売っても、取得費と譲渡費用の合計が2,200万円なら利益は出ていないので、譲渡所得税はかかりません。
気をつけたいのが、建物の取得費が買ったときの金額のままではない点です。
建物は使うほど価値が減る前提なので、築年数の分だけ差し引いた金額を使います。
2,500万円で買った家でも、そのうち建物部分は計算上かなり小さくなっている場合があります。
土地は減りませんが、建物は減るということです。
買った値段が分からないときは、売却価格の5%
親から受け継いだ家では、買ったときの契約書が見つからないことがあります。
その場合は、売却価格の5%を取得費とみなして計算できます。
2,000万円で売るなら、取得費はわずか100万円という計算です。
実際にはもっと高く買っているはずなのに、差額がまるごと利益として扱われます。
契約書を探すだけで税額が数百万円変わることもあるので、詳しくは取得費が不明な実家の売却、概算5%の注意点を読んでみてください。
税率はいくらですか
長期譲渡なら20.315%、短期譲渡なら39.63%です。
分かれ目は、その家を5年を超えて持っていたかどうかにあります。
5年は「売った年の1月1日」で数えます
数えるのは引渡しの日までではありません。
売った年の1月1日の時点で所有期間が5年を超えていれば長期、5年以下なら短期になります。
2021年6月に買った家を2026年8月に売った場合、実際の所有は5年2か月です。
それでも2026年1月1日の時点では4年7か月なので、短期の扱いになります。
売り急ぐと税率が倍近く変わる場面があるということです。
1,000万円の利益なら、差は約193万円
利益が1,000万円出たとして、長期なら税額は約203万円です。
同じ1,000万円でも、短期なら約396万円になります。
差は約193万円で、これは売る時期を数か月ずらすかどうかだけで動く金額です。
5年目のリースバックを勧められたときは、契約日を1月1日基準で数え直してください。
短期と長期の境目は譲渡所得税の短期と長期の違いで詳しく説明しています。
10年を超えて住んだ家なら、さらに下がります
売った年の1月1日で所有期間が10年を超えるマイホームには、軽減税率の特例があります。
譲渡所得のうち6,000万円以下の部分が14.21%になり、それを超える部分は20.315%です。
この特例は、次に説明する3,000万円控除と一緒に使えます。
控除を引いたあとの金額に14.21%がかかるため、両方あてはまる方の税額はかなり下がる形です。
利益が4,000万円なら、3,000万円を控除した残り1,000万円に14.21%がかかり、税額は約142万円です。
同じ4,000万円の利益でも、どちらの特例も使えず長期の20.315%で計算すると約812万円になります。
3,000万円控除は、リースバックでも使えますか
要件を満たせば使えますが、リースバックでは見落とされやすい要件があります。
住んでいる家を売る場合、所有期間の長さは問われません。
利益が3,000万円までなら、この控除で譲渡所得が0になることもあります。
売る相手が親族や同族会社だと使えません
配偶者や一定の親族、同族会社など、特別の関係にある相手へ売った場合は適用外です。
親族が設立した会社に売って住み続ける形をリースバックと呼ぶ例もあるので、買主が誰なのかを先に確かめてください。
買主が第三者の会社かどうかは、売買契約書と登記事項証明書で分かります。
前年・前々年に同じ特例を使っていないこと
売った年の前年と前々年に、この控除やマイホームの譲渡損失の特例を受けていると使えません。
住み替えを繰り返した方は、3年に1度しか使えない控除だと考えてください。
また、この控除を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋は対象外です。
すでに住まなくなっている家は「3年目の年末」まで
引っ越したあとの家を売る場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。
2023年5月に引っ越したなら、期限は2026年12月31日です。
リースバックは住み続ける方法なので、多くはこの期限に関係しません。
関係してくるのは、いったん転居したあとに元の家をリースバックで手放すような場合です。
使えるかどうかは、当社では判断しません
当社は宅地建物取引業者なので、税務の個別判断はできません。
要件のどれかがぎりぎりだと感じたら、契約前に税理士か税務署へ確かめてください。
「控除が使えるので税金はかかりません」と言い切る会社があれば、その根拠を書面でもらうところから始めます。
固定資産税は、いつから買主の負担になりますか
引渡し日より後の分を買主が負担するのが、売買契約での一般的な取り決めです。
ただし、市に納める義務があるのは1月1日時点の所有者、つまり売主のほうです。
日割りで分ける精算は法律ではなく商慣習なので、契約書に書かれた条件がそのまま効く形になります。
福岡市の納期は4月・7月・12月・翌年2月
福岡市は毎年1月1日を賦課期日とし、その日の所有者へ1年分を課税する扱いです。
年度の途中で引き渡しても、第3期と第4期の納付書は売主あてに届きます。
精算金を受け取ったあとも、12月と2月に納付書が来て驚く方がいるのは、この仕組みのためです。
起算日を1月1日にするか4月1日にするかで精算額も変わります。
福岡市の納期と起算日は売却年の固定資産税の日割り精算にまとめました。
受け取った精算金は、売却価格に足して申告します
買主から受け取った未経過分の固定資産税相当額は、譲渡所得の収入金額に含めます。
名目は精算金でも、税金の計算では売買代金の一部として扱われるからです。
2,000万円で売って精算金を5万円受け取ったなら、収入金額は2,005万円になります。
確定申告は必要ですか
利益が出た場合と、特例を使って税額が0になる場合の両方で必要です。
3,000万円控除は、申告しなければ適用されません。
売った年の翌年に、住所地の税務署へ申告します。
申告に要る書類は、売る前からそろえ始める
使うのは、売買契約書の写し、仲介手数料などの領収書、買ったときの契約書の3つです。
買ったときの契約書は、引渡しのあとに探し始めると間に合わないことがあります。
リースバックは引渡し後もその家に住み続けるので、書類は家の中にあるはずです。
条件提示を受けた段階で探しておいてください。
手取りは、家賃を足して比べる
リースバックの手取りは、売却代金から税金と費用を引いただけでは出ません。
そこから、住み続ける年数分の家賃が出ていきます。
家賃が月10万円なら5年で600万円、10年なら1,200万円です。
2,000万円で売った家に10年住み続ければ、家賃の総額は売却代金の6割に達します。
たとえば、20年前に2,500万円で買った家を2,000万円でリースバックした場合を考えてみてください。
売却価格が買ったときより低いので譲渡所得は出ず、税金は0です。
いったん手元に入るのは、そこから仲介手数料などの費用を引いた額です。
月10万円の家賃で10年住めば、そこから1,200万円が出ていく計算になります。
| 項目 | 金額の例 |
|---|---|
| 売却代金 | 2,000万円 |
| 譲渡所得税 | 0円(利益が出ないため) |
| 10年分の家賃(月10万円) | △1,200万円 |
| 10年後に残る計算 | 約800万円 |
税金が0でも、10年後に残るのは売却代金の半分以下という結果になります。
家賃の決まり方をまとめたのがリースバックの家賃の算定根拠は聞ける?です。
売却時の税と費用を引いた手取りは手取りの試算で先に出せます。
福岡市で、次に何をすればよいですか
順番は、いま売ったらいくらになるかを知り、税額の見当をつけ、家賃と足して比べる、の3つです。
提示された条件を受けるかどうかを決めるのは、そのあとです。
まず、相場の側から金額を確かめる
リースバックの買取価格は、相場より低く提示されることがあります。
提示額が妥当かどうかは、通常の売却でいくらになるかを知らないと判断できません。
当社の無料査定では、仲介・買取・リースバックの3つを同時に試算し、手取り額と引渡し時期を並べてお見せしています。
並べてみると、住み続けるために払う総額がはっきりしてきます。
迷っている段階で聞いてよい
売ると決めていなくても、条件の読み方だけを聞きにみえる方は少なくありません。
税金の個別判断はできませんが、どの数字を税理士に確かめればよいかは整理できます。
取得費の資料がそろっているか、所有期間が5年と10年のどちら側かの2つは、その場で分かる部分です。
提示された条件に判を押す前であれば、確かめ直す時間はまだあります。
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