競売の通知が届いた|開札までに間に合う分かれ目
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士競売開始決定の通知が届いても、その日のうちに家を出る必要はありません。
手続きには段階があり、どの段階にいるかで打てる手が変わります。
分かれ目は、入札が始まったかどうかです。
入札が始まる前なら、債権者に競売を取り下げてもらい、市場で買主を探す「任意売却」に切り替える道が残っています。
この記事は、福岡市の不動産に競売の通知が届いた方が、残り時間を自分で数えられるところまでを書いたものです。
2. 競売開始決定から開札までは何が起きますか
3. 残された時間はどう数えますか
4. 入札が始まる前なら、任意売却に切り替えられますか
5. 動くのが遅れると、何が失われますか
6. 今日のうちにできること
届いた通知は、どの段階のものですか
文書の題名を見れば、手続きのどこにいるかがすぐ分かります。
「競売開始決定」なら入口、「期間入札」の文字があれば売却の直前です。
文書の題名で段階を見分ける
裁判所から届く文書は、段階ごとに題名が変わります。
| 届いた文書 | いまの段階 | 任意売却への切り替え |
|---|---|---|
| 担保不動産競売開始決定 | 入口。差押えが登記された | 日数に余裕がある |
| 現況調査の日程の連絡 | 執行官が建物を見に来る | まだ切り替えられる |
| 期間入札の通知・公告 | 入札期間と開札期日が決まった | 残りは数週間 |
| 売却許可決定 | 買受人が決まった | 買受人の同意が要る |
| 代金納付期限通知書 | 所有権が移る直前 | ほぼ道がない |
この表のうち、残り時間がいちばん読み違えられるのは3行目です。
日付が決まったことで安心してしまい、その日付までに何工程入るかを数えないまま時間が過ぎます。
公告が出てから相談を始めると、買主を探す時間が最初から足りません。
事件番号と裁判所名を先に書き写す
文書の上部には、年と記号と番号を組み合わせた事件番号が書かれています。
この番号と裁判所の名前が無いと、相談を受けた側は手続きの進み方を調べられません。
電話をかける前に、事件番号・裁判所名・文書の題名・届いた日付の4つを紙に書き写してください。
原本はコピーを取り、まとめて1か所に置きます。
封筒も捨てずに残してください。
特別送達の日付が、期限を数える起点になるからです。
ローンの競売と、福岡市の市税の公売は別の手続き
住宅ローンの滞納で進むのが裁判所の競売、市税の滞納で進むのが市の公売です。
福岡市は、督促状・催告・財産調査・差押え・公売・滞納市税への充当という順で滞納の処理を進めます。
地方税法では、督促状を送って10日を過ぎても納付がない場合に差押えをしなければならないと定められています。
固定資産税の滞納の窓口は、市役所ではなく各区役所の納税課です。
一度に納めると生活に支障が出る場合、分割で納める「換価の猶予」を申請できます。
申請の期限は、原則として各納期限から6か月以内です。
競売の通知が届く状況では、固定資産税の納付も止まっていることがあります。
2つは別の窓口・別の期限で動くので、片方だけ片づけても差押えは残ります。
競売開始決定から開札までは何が起きますか
開始決定のあとに進む順番は、差押えの登記・現況調査・評価・公告・入札・開札の6つ。
所有者の側から日程を早めたり遅らせたりはできません。
差押えの登記と、執行官の現況調査
開始決定が出ると、その不動産の登記に差押えが記録されます。
登記事項証明書は誰でも取れるので、この時点から第三者にも分かる状態です。
差押えの登記は、取下げや取消しがあるまで残り続けます。
次に裁判所の執行官が現地へ来て、建物の状況と誰が住んでいるかを調べます。
この調査は法律に基づくもので、立ち入りを断ることはできません。
断っても日程が延びるだけで、手続きそのものは止まりません。
売却基準価額と、その8割の買受可能価額
裁判所は評価人の評価にもとづいて、売却の基準となる「売却基準価額」を定めます。
売却基準価額は、裁判所が必要と認めれば変更されることもあります。
入札できる下限は、その売却基準価額から10分の2を引いた「買受可能価額」です。
つまり基準額の8割で落ちることも、制度のうえでは起こります。
仮に売却基準価額が2,400万円と定まれば、下限は1,920万円です。
博多区のマンションを集計すると、3LDK系の中央値は2,700万円でした。
対象は2024年第2四半期から2026年第1四半期の127件です。
同じ広さの住戸が下限近くで落ちると、市場で買主を探した場合との差は数百万円の単位になります。
出典:裁判所 不動産競売
期間入札の公告から開札期日まで
売却の手続きに入ると、裁判所は期間入札の公告を掲示します。
あわせて備え置かれるのが、物件明細書・現況調査報告書・評価書の写し(3点セット)です。
置かれた場所で、買受けを考えている人が自由に閲覧できます。
入札期間は1週間以上1か月以内で定められ、東京地方裁判所では原則8日間です。
入札期間が終わると開札期日が来て、いちばん高い金額を入れた人が最高価買受申出人になります。
開札期日から1週間以内の日が売却決定期日に指定され、そこで売却許可決定が出ます。
決定が確定するのは、許可決定から1週間のうちに執行抗告が無かったときです。
確定から1か月以内の日が代金納付期限と定められ、買受人が代金を納めた時点で所有権が移ります。
出典:大阪地方裁判所 代金納付
残された時間はどう数えますか
数え方は、期間入札の公告が出る前か後かで変わります。
公告より前は月単位、公告が出たあとは日単位です。
公告が出る前か、出た後かで分けて数える
開始決定から公告までの長さは、占有者の調査や評価の手間で変わります。
ここは数か月の幅があるため、残り時間を日数で言い当てることはできません。
公告が出ると、入札期間の初日と開札期日が日付で確定します。
この2つの日付が出た時点で、残り時間は決まったと考えてください。
公告と3点セットは、裁判所の不動産競売物件情報サイト(BIT)にも掲載されます。
自分の物件が載っているかどうかは、そこで確かめられます。
探すときは手元の文書の事件番号と所在地を見比べてください。
任意売却に必要な日数から逆算する
任意売却の工程は、買主を探す・債権者の同意を取る・決済するの3つ。
日数が読みにくいのは、買主探しと債権者の同意の2つです。
買主が決まっても、住宅ローンを使う買主なら審査に数週間かかります。
債権者が複数いる場合、全員から配分の同意を得るまで決済できません。
残り3週間しかない状態で3つを並べても、終わらない工程が残ります。
数えるのは「開札まであと何日か」ではなく、「3つの工程が入る日数があるか」です。
「開札の前日まで」を目安に使わない
競売の申立てを取り下げられるのは、申立てをした債権者です。
所有者が自分で取り下げることはできません。
買受けの申出があったあとは、最高価買受申出人と次順位買受申出人の同意まで必要になります。
そのため「開札の前日まで間に合う」は、制度の説明としては通っても、段取りの目安になりません。
買主を探し、債権者に配分を認めてもらうまでの日数が、前日からでは取れないからです。
入札が始まる前なら、任意売却に切り替えられますか
入札が始まる前なら、債権者の同意を得て競売を取り下げ、任意売却に切り替える道があります。
成り立つかどうかを決めるのは、債権者の判断と残り日数の2つです。
取下げに誰の同意が要るか
取下げの主体は申立てをした債権者なので、話を通す相手はまず債権者です。
債権者は、競売で回収できる見込み額と、任意売却で入る見込み額を比べます。
任意売却のほうが多く入ると判断されれば、取下げに応じる余地が生まれます。
買受けの申出があったあとの取下げに要るのは、最高価買受申出人または買受人と次順位買受申出人の同意です。
同意が得られる保証はないので、入札前に動けるかどうかが実務上の線です。
任意売却で決める3つのこと
価格・売却代金の配分・抵当権などを外す条件の3つを、債権者と詰めます。
この3つが固まらないと、買主が見つかっても決済できません。
買主が見つかれば自由に売れる仕組みではない、というのがここの要点です。
費用の出どころと残債の扱いは任意売却の費用は誰が払う?にまとめています。
任意売却が成り立たない場合
債権者が取下げに応じない、残り日数が足りない、共有者の同意が取れないという場合があります。
そのときは競売がそのまま進むので、次に決めるのは引越しの時期と費用の準備です。
条件が合わないときの確かめ方は任意売却ができない場合はで整理しています。
動くのが遅れると、何が失われますか
失われるのは価格・引越し費用・情報の3つです。
このうち情報だけは、あとから取り消せません。
価格は基準額の8割まで下がりうる
競売の下限は売却基準価額の8割なので、基準額が2,400万円なら1,920万円で落ちることがあります。
任意売却は市場に出して買主を探すので、価格の決まり方そのものが違います。
間取り別の相場を載せているのが福岡市博多区の相場のページです。
手取りがいくら残るかは手取りの試算で先に見ておくと、債権者との話が具体的になります。
引越し費用と明け渡しの時期
競売では、代金を納めた買受人が所有者になり、そのあと明け渡しを求めてきます。
話がつかない場合に買受人が使えるのが、裁判所への引渡命令の申立てです。
引越しの時期を自分で選べず、費用も売却代金からは出ません。
任意売却では、引越し費用を代金から控除できるかを債権者に相談する余地があります。
控除が認められるかは、相談の最初に債権者へ確かめておく項目です。
扱いは債権者ごとに違うので、当社は金額を約束せず、個別に確認してからお伝えしています。
公開される情報は取り消せない
公開されるのは、期間入札の公告と3点セットです。
所在地・建物の状況・誰が住んでいるかが、買受けを考える人の誰にでも読める状態になります。
取り下げたあとに掲載が消えても、見た人の記憶と手元に残った控えは戻りません。
近所に知られたくないという理由で相談が遅れると、まさにその公開に間に合わなくなります。
今日のうちにできること
やることは、書類を集めることと、相談先を1つ決めることの2つだけです。
どちらも1日で終わります。
手元に集める4つの書類
集めるのは、裁判所から届いた文書の原本・住宅ローンの残高が分かる書類・固定資産税の納税通知書・登記事項証明書の4つです。
残高は、金融機関から届く残高証明や返済予定表で分かります。
登記事項証明書は法務局で取れます。
どの手続きをどこの窓口でするかは福岡市の手続き窓口で確かめてください。
書類がそろう前でも相談はできるので、集めながら並行して進めてください。
相談先を1つ決める
当社は福岡市博多区千代に事務所を置き、不動産の売却を専門に扱っています。
任意売却の進め方と確認事項は福岡市の任意売却のご相談にまとめています。
督促状の段階からの動き方は住宅ローンの督促状が届いたらで順を追って書きました。
ご本人が県外にいる場合は遠方からの売却の形で、来福なしで引渡しまで進められます。
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