不動産会社の行政処分|免許取消・業務停止の調べ方
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士不動産会社が受ける行政処分には、軽い順に指示・業務停止・免許取消の3つがあります。
この3つを最近5年分まとめて公開しているのが、国と都道府県のサイトです。
依頼しようとしている会社に処分歴があるかどうかは、社名か免許番号が分かれば、契約の前に確かめられます。
この記事は、福岡市で売却の依頼先を選んでいる方に向けて、処分の3段階・実際の件数・調べ方の手順を並べたものです。
当社の免許番号「福岡県知事(2)第19722号」を例に、カッコの中の数字の読み方も説明します。
2. 処分を受けている会社は、どれくらいありますか?
3. 依頼先の処分歴は、どこで調べられますか?
4. どんな違反で処分されているのですか?
5. 処分歴が無ければ、安心して任せてよいのですか?
6. 福岡市では、どこまで自分で確かめられますか?
不動産会社の行政処分には、どんな種類がありますか?
軽い順に、指示処分・業務停止処分・免許取消処分の3段階です。
根拠は宅地建物取引業法の第65条と第66条で、処分を出すのは免許を与えた国土交通大臣または都道府県知事になります。
3つは重さが違うだけでなく、依頼している売主に起きることも変わります。
指示処分は「やり方を改めなさい」という命令
いちばん軽いのが、法第65条第1項にもとづく指示処分です。
営業そのものは止まりません。
売却を頼んでいる最中に出ても、媒介契約は続きます。
ただし指示に従わなければ、次は業務停止へ進みます。
業務停止は最長1年。売却活動がその場で止まる
業務停止処分は、法第65条第2項にもとづいて、1年以内の期間を定めて業務の全部または一部を止めるものです。
止まるのは会社の業務なので、その会社に預けている売主の売却活動も一緒に止まります。
広告も内覧も新しい契約も動かせません。
買主を探している途中で止まれば、その期間はまるごと空白になります。
媒介契約を結ぶ前に処分歴を見ておく理由は、ここにあります。
免許取消は、そこから5年間は免許を受けられない
3段階でいちばん重いのが、法第66条にもとづく免許取消処分です。
不正な手段で免許を取った場合や、業務停止処分に違反した場合が対象になります。
これらの理由で取り消されると、その日から5年間は新しい免許を受けられません(法第5条第1項)。
会社をたたんで別の名前で再開する、という抜け道をふさぐための期間です。
処分を受けている会社は、どれくらいありますか?
令和6年度の1年間で147件です。
内訳は免許取消99件・業務停止16件・指示32件で、同じ年度末の宅建業者数は132,291社でした。
割合になおすと、およそ900社に1社。
数としては少ないので、処分歴のある会社に当たること自体がまれだと分かります。
免許取消が99件。業務停止16件の6倍を超える
147件のうち99件が免許取消で、全体の約3分の2を占めます。
業務停止は前年度の33件から16件へ、ほぼ半分に減りました。
ただし1年ごとの増減は、もともと小さな数の上下です。
16件が33件になった年があっても、そこから業界全体の傾向は読み取れません。
処分より多いのは「行政指導」592件
同じ令和6年度に、行政指導は592件ありました。
処分147件の4倍です。
行政指導は処分ではないため、次に挙げる公開サイトには載りません。
検索して何も出てこないことは、「一度も注意を受けていない」という意味にはならないわけです。
依頼先の処分歴は、どこで調べられますか?
国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」で、最近5年分の免許取消・業務停止・指示が引けます。
福岡県知事免許の会社なら、福岡県庁のページでも同じ処分を見られます。
どちらも無料で、会員登録は要りません。
見分け方は免許番号の頭で、「国土交通大臣」なら国、「福岡県知事」なら県が処分を出す側になります。
大臣免許の会社は全国で3,158社、知事免許は129,133社。
複数の都道府県に事務所を置く会社だけが大臣免許なので、福岡市で査定を頼む相手はたいてい知事免許です。
国土交通省のネガティブ情報等検索サイト
載るのは免許取消・業務停止・指示の3つだけで、公開期間は処分の日から5年です。
国土交通大臣が出した処分も、都道府県知事が出した処分も、同じ画面から引けます。
裏を返すと、5年より前の処分は消えます。
10年前に重い処分を受けた会社でも、いまは何も出てきません。
福岡県知事免許なら、福岡県のページも開く
福岡県は「福岡県知事が宅地建物取引業者に対して行った行政処分の状況」を、年度ごとのPDFで公開しています。
公開期間はこちらも5年で、並んでいるのは令和3年度から令和7年度まで。
知事免許の会社は全国で129,133社あり、宅建業者132,291社のほとんどを占めます。
福岡市内に本店を置く会社を調べるときは、まずこちらを見るほうが早いでしょう。
当社の「福岡県知事(2)第19722号」も、この県のページに載る側の免許です。
「宅地建物取引業者検索」には処分が出ない
国土交通省には、もう1つ「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」があります。
ここで分かるのは免許番号・商号・代表者・本店所在地・免許の有効期間などで、処分の情報は含まれません。
処分を調べるつもりでこちらを開くと、何も出ないまま「問題なし」と思い込むことになります。
処分歴と会社情報は、別々のサイトで引いてください。
どんな違反で処分されているのですか?
公表されている処分の理由には、重要事項説明義務違反がはっきり書かれています。
処分の中身をまとめて読めるのが、国土交通省が所管する不動産適正取引推進機構(RETIO)の処分検索です。
分類は処分年度別と処分の種類別の2つ。
免許取消・業務停止・指示のどれを受けたのか、どの条文に違反したのかまで読めます。
重要事項説明の不備は、ほかの違反と並んで書かれる
1件の処分に、違反の理由が複数並ぶことも珍しくありません。
重要事項説明義務違反のとなりに、専任の宅地建物取引士の設置義務違反や、37条書面の不交付が書かれた処分も公表されています。
3つは別々の違反ですが、同じ会社で同時に起きた形です。
説明が抜ける会社では、書面と人の配置も同時に薄くなっている、と読めます。
逆に言えば、1つだけを直させても元には戻りません。
売主にとって、重要事項説明の不備は他人事ではない
重要事項説明は買主に対して行うものなので、売主には関係が無いように見えるでしょう。
ところが説明の漏れが原因で契約が解除されれば、相手方として立つのは売主です。
解除になれば、売主は受け取った代金を返す側に回ります。
会社の処分歴を先に見ておくのは、この順番を避けるためです。
売却後のもめごとがどう裁かれているかは、雨漏りを隠して売却したら|裁判になった3件の結論でも扱っています。
人が足りているかは、公開されている数字で分かる
宅建業法第31条の3は、事務所の従業者5人につき1人以上の専任の宅地建物取引士を置くことを求めています。
この人数は、先ほどの業者検索で2025年4月から表示されるようになりました。
従業者数と宅地建物取引士の人数が並んでいるので、比率はその場で計算できます。
処分の理由に出てくる項目が、処分の前に確かめられる形で公開されているわけです。
処分歴が無ければ、安心して任せてよいのですか?
処分歴が無いことは最低条件であって、その会社を選ぶ理由にはなりません。
147件という数は、132,291社のうちの147社です。
残りの132,144社が全部同じ、ということにはならないでしょう。
処分は行政が引く最後の線で、その手前に会社ごとの差があります。
免許番号のカッコの中は、免許を受けた回数
免許番号は「福岡県知事(2)第19722号」のように書かれます。
カッコの中の2は、免許を受けてから何回目の免許かを表す数字です。
免許の有効期間は5年なので、(2)なら5年以上、(3)なら10年以上その免許で営業してきた計算になります。
当社は2021年の設立で、いまは(2)です。
カッコの数字が小さいことは、悪いことではない
(2)の会社より(5)の会社が良い、とは言えません。
会社を新しく作れば、経験の長い人が始めた会社でも(1)から始まります。
数字が示すのは、その免許で営業してきた年数だけ。
年数と、売却を任せたときの仕事の質は別のものです。
処分歴の次に見るのは、媒介契約の説明のしかた
調べ物が終わったら、次は媒介契約の話の進め方を見てください。
専任をすすめる理由、レインズへ登録する日、報告の頻度を、こちらが聞く前に説明する会社かどうかで差が出ます。
3種類の違いと選び方は媒介契約の種類にまとめました。
そもそも仲介・買取・リースバックのどれで進めるかで、見るべき会社が変わります(3つの比較)。
担当者そのものの見分け方は、不動産売却で「良い担当者」を見分ける条件で書いています。
福岡市では、どこまで自分で確かめられますか?
免許番号さえ控えておけば、3つは自宅のパソコンで終わります。
残る1つが、福岡県庁の窓口で名簿そのものを見ることです。
査定を受けた会社の名刺かホームページに、免許番号は必ず書かれています。
自宅でできる3つ(15分ほど)
- ネガティブ情報等検索サイトで、5年分の処分歴を引く
- 国交省の業者検索で、免許の有効期間・従業者数・宅地建物取引士の人数を見る
- 福岡県のPDFで、同じ免許番号が載っていないか確かめる
3つとも空振りなら、公表されている範囲では処分歴が無い会社です。
ここまでで、判断の材料の半分は揃います。
福岡県庁の窓口では、名簿そのものが見られる
福岡県知事免許の会社の名簿は、福岡県庁の建築指導課宅建業係で閲覧できます。
場所は福岡市博多区東公園7番7号、閲覧できる時間は9時30分から12時までと、13時から16時30分までです。
電話番号は092-643-3718。
当社の事務所は博多区千代4丁目で、県庁までは歩いて数分の距離にあります。
最寄りは地下鉄箱崎線の千代県庁口駅で、天神からは中洲川端で乗り換えて2駅。
この駅の周辺がどう変わってきたかは、【千代県庁口駅】博多駅の価格高騰で変わる住環境と売却の好機で扱っています。
処分歴が無くても、県には相談できる
調べて何も出てこないのに、やり取りの中で引っかかることがあるかもしれません。
福岡県は、宅地建物取引業についての相談窓口を建築指導課に置いています。
免許を与えた側が直接聞く窓口なので、業界団体への相談とは性格が違います。
処分147件に対して行政指導が592件あるとおり、行政の対応は処分だけではありません。
「処分されるほどではないが困っている」という段階も、行政は想定しています。
調べ終えたあと、人に相談する部分
ここまでの内容は、公表されている制度と件数の話です。
すでにもめごとが起きている場合や、契約を解除できるかどうかの判断は、弁護士・司法書士へご相談ください。
当社は「請求は通ります」「必ず解除できます」といった見通しをお伝えしません。
個別の事情で結論が変わるためです。
売却の進め方そのもので迷っているなら、15分の無料相談で伺います。
会社選びでよく聞かれることは、よくあるご質問にまとめてあります。
