個人売買に重要事項説明書は要る?義務が無くて困ること
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士福岡市で個人売買を考えている方から、重要事項説明書のことを聞かれます。
「知り合いに売るだけなので、重要事項説明書は自分で作ればよいですか」という質問です。
結論を先に書きます。
売主と買主が直接取引する個人売買に、重要事項説明の法律上の義務はありません。
そして、重要事項説明書を作れるのは宅地建物取引士だけなので、売主が自分で用意することもできません。
義務が無いことと、無くて困らないことは別の話です。
この記事は、買う相手が決まっている売主に向けて、書面が無いまま進めると何が止まるのかを整理したものです。
2. 重要事項説明書には、何が書いてあるのですか?
3. マンションだと、何が抜けますか?
4. 福岡市だと、どこまで調べる必要がありますか?
5. 書面が無いと、実際に何が止まりますか?
6. 福岡市で個人売買を考えている方が、次にすること
個人売買に重要事項説明書は必要ですか?
法律上の義務はありません。
義務を課されているのが宅地建物取引業者であって、個人の売主ではないからです。
ここを取り違えると、「省略してよい書類」と「そもそも自分では作れない書類」が混ざります。
35条と37条は、誰に向けた条文ですか?
どちらも主語が「宅地建物取引業者は」です。
宅地建物取引業法35条は、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして重要事項を説明させなければならないと定めています。
同じ法律の37条は、契約が成立したときに書面を交付しなければならないと定めた条文です。
宅建業者が間に入らない取引では、この2つの義務はどちらも発生しません。
売主が個人で、買主も個人で、間に業者がいない。
その形であれば、契約書を取り交わすだけでも法律には触れません。
親子や兄弟の間で名義を移すとき、この形になることがあります。
隣の土地を隣家に売る、借りている人がそのまま買い取る、という場合も同じです。
それなら、自分で同じ書面を作ればよいのですか?
作れません。
重要事項の説明は宅地建物取引士が行うものと決まっており、書面にも宅建士の記名が要るからです。
個人が同じ体裁の紙を作っても、それは重要事項説明書ではありません。
当社の代表も、売買契約書と重要事項説明書の役割の違いをブログに書いています。
契約書は司法書士が作成できるけれども、重要事項説明書は不動産業者の仕事だ、という整理です。
個人売買でどこまで自分でできるかの全体像は個人売買はどこまで自分でできるかにまとめました。
重要事項説明書には、何が書いてあるのですか?
買主が「知っていたら買わなかった」となりうることを、契約の前に洗い出した書面です。
中身は、物件そのものの話と、お金や契約条件の話の2つです。
どちらも、売主の記憶ではなく役所や管理会社で確かめた事実を書きます。
物件そのものについて、何を確かめますか?
代表的なものを並べます。
- 登記された権利の種類と内容(抵当権や賃借権が残っていないか)
- 都市計画法・建築基準法などの法令にもとづく制限
- 私道の負担があるかどうか
- 飲用水・電気・ガスの供給施設と、排水施設の整備状況
- 土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域に入っていないか
- 水害ハザードマップ上での位置
- 石綿の使用調査の記録があるか
- 耐震診断を受けているか
この一覧を見て、すぐに答えられる項目がいくつあるでしょうか。
住んでいた本人でも、私道の負担や排水施設の整備状況までは分からないのが普通です。
水害ハザードマップ上の位置の説明は、2020年8月から宅建業者に義務づけられました。
個人売買にこの義務は及びませんが、浸水の想定がある土地なら買主は必ず気にします。
義務が無いから伝えなくてよい、とはならない項目です。
福岡市総合ハザードマップの見方は浸水想定区域の家は売れる?に書きました。
お金と契約条件については、何を書きますか?
売買代金以外に授受される金銭の額と、その目的を書きます。
契約の解除に関する事項、損害賠償額の予定、手付金等の保全措置もここに入ります。
契約不適合責任の履行について保証保険などの措置を講じるかどうかも、書く項目のひとつです。
これらは契約書の条文と対になっており、片方だけを作ると食い違いが生まれます。
契約書のひな形に足りない項目は個人売買の契約書で扱いました。
マンションだと、何が抜けますか?
区分所有建物は、いま挙げた項目に加えて、規約と管理についての項目が上乗せされます。
宅地建物取引業法施行規則16条の2が定めているものです。
戸建てや土地よりも、個人売買で抜けやすいのがこちらです。
規約と管理では、何を確かめますか?
敷地に関する権利の種類と内容から始まります。
共用部分に関する規約の定め、専有部分の利用の制限に関する規約の定め、専用使用権の定めが続きます。
建物の管理を委託しているときは、その委託先の氏名と住所も書く項目です。
ペットや楽器の可否、駐車場の使用権の扱いは、ここで初めて文書になります。
修繕積立金と滞納は、どう扱いますか?
修繕積立金の額と、これまでに積み立てられている額の両方を書きます。
通常の管理費用の額も同じく書く項目です。
そして、前の所有者が滞納している額があれば、その額も書かなければなりません。
滞納分は、買主が引き継ぐことになります。
売主が黙っていて、引渡しのあとに管理組合から請求が届く。
これが、個人売買のマンションでいちばん起きやすいもめ方です。
滞納が数十万円に育っていた例は、実務では珍しくありません。
大規模修繕の予定と一時金の徴収が決まっているかどうかも、同じ資料で分かります。
その資料は、誰が取り寄せますか?
管理会社に有料で資料請求をします。
請求できるのは所有者本人か、委任を受けた者に限られるのが一般的です。
買主が自分で電話をかけても、まず出してもらえません。
当社が媒介する売却なら、この資料の取得も当社の仕事です。
福岡市だと、どこまで調べる必要がありますか?
物件の調査は、福岡市内の複数の窓口を回って資料を集める作業になります。
当社が福岡市で売却を預かるとき、査定の段階から回っている先を挙げます。
個人売買では、この部分を誰も担当しません。
当社が福岡市で回っている窓口はどこですか?
| 調べること | 福岡市の窓口 | 分かること |
|---|---|---|
| 道路台帳・道路査定図 | 道路下水道局 | 前面道路の幅員と種別。4m未満ならセットバックで有効面積が減る |
| 配水管の位置図 | 水道局 | 引込みがあるか。無い土地は工事費が数十万円かかる |
| 下水道の配管図 | 道路下水道局 | 公共下水道か、浄化槽か、汲み取りか |
| 建築確認台帳の記載事項証明 | 住宅都市局 建築指導部 | 適法に建てられたか。検査済証が無いと買主のローンが通らないことがある |
| ガスの種別 | 西部ガス | 都市ガスかプロパンか。プロパンは給湯器がガス会社の所有のことがある |
どれも、住んでいるだけでは手元に無い資料です。
前面道路の幅員ひとつで、買主が建て替えられるかどうかが変わります。
私道が絡む場合の調べ方は前面道路が私道の土地を売るに書きました。
博多区・中央区で、特に見ておくものはありますか?
埋蔵文化財包蔵地の照会です。
福岡市の経済観光文化局 文化財活用部が窓口になります。
該当すると、工事に着手する60日前までに届出が必要になります。
博多区・中央区は該当する範囲が広く、当たる可能性が高めの区です。
買主が建て替えるつもりで買った土地が包蔵地だった場合、工期が延びます。
売ったあとに買主から知らされる形になると、話がこじれます。
詳しい扱いは埋蔵文化財包蔵地の土地は売れるにまとめました。
これを全部、自分で回れますか?
回るとなれば、平日の日中に天神・博多駅前・舞鶴を行き来する日が要ります。
窓口ごとに必要なものが違い、地番が分からないと受け付けてもらえない請求もあります。
住所と地番は別の番号で、ここでつまずく方が少なくありません。
どの窓口に何を出すかは手続き窓口ガイドに区ごとにまとめてあります。
ここをご覧いただいて、ご自分で回れそうかを判断してください。
書面が無いと、実際に何が止まりますか?
買主の住宅ローンです。
金融機関は融資の審査で売買契約書を必ず求め、重要事項説明書もあわせて求めることが多いからです。
売主側の都合ではなく、買主側の手続きで止まります。
銀行は、なぜ重要事項説明書を見るのですか?
担保にする物件の内容を、第三者が確かめた書面で押さえたいためです。
当社の代表が、大分県への移住を考えていた売主の売却に関わったことがあります。
その方はご自身で空き家バンクを使い、所有者と直接お話を進めていました。
それでも、住宅ローンを組む段になって当社にお声がけをいただきました。
銀行から住宅ローンを借りる場合は、重要事項説明書が必要になるからです。
福岡の銀行が本審査で何を求めるかは個人売買と買主の住宅ローンで確かめました。
現金の買主なら、問題は無いのですか?
ローンでは止まりませんが、買える人の数が減ります。
買主が現金で払える方に絞られると、そのぶん売れるまでの期間が延びます。
相手が決まっている個人売買では、ここは問題になりません。
問題になるのは、その相手がローンを使う場合のほうです。
引き渡したあとの責任はどうなりますか?
民法の契約不適合責任で決まります。
宅建業者が売主のときに買主を守る特別な制限は、個人が売主の取引には及びません。
雨漏り、シロアリ、給湯器の不具合、隣地との取り決め。
知っていることを書面に残さずに渡すと、あとで「聞いていない」と言われたときに証拠がありません。
個人間売買の注意点は不動産の個人間売買は可能?に一通り書きました。
福岡市で個人売買を考えている方が、次にすること
買う相手が決まっているかどうかで、やることが分かれます。
決まっていないなら、そもそも買主を探す方法から考えることになります。
相手が決まっている場合
その方がローンを使うのかどうかを、先に聞いてください。
現金であれば、契約書と登記の段取りが中心になります。
ローンを使うのであれば、重要事項説明書を用意できる形に組み直すことから始まります。
どちらでも、マンションなら管理会社への資料請求だけは早めに動いてください。
資料が出てくるまでに2週間かかることもあるためです。
値段の話をする前に、滞納と大規模修繕の予定を押さえておくと、あとで条件を変えずに済みます。
当社に相談するとどうなりますか
当社は、媒介契約を結ぶ前でも相場のご説明・売り方のご相談・費用の試算まで無料で承ります。
個人売買のつもりで始めた話を、途中から当社が引き取ったこともありました。
その段階でも、調査と書面の作成からやり直せます。
ご自身でも動いて費用を抑えたい方には、じぶん売却という形もご用意しています。
当社が媒介したうえで、売却の準備の一部を売主に担当していただく仕組みです。
重要事項説明と売買契約は、この形でも当社が行います。
まずは無料査定から、いまの状況をお聞かせください。
