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売却の基本公開 2026.09.17/更新 2026.10.01

浸水想定区域の家は売れる?ハザードマップの説明義務

野上俊彦執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
野上俊彦執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士

ハザードマップで色が付いている場所でも、家は売れます。

2020年8月から、不動産会社には水害ハザードマップで物件の位置を示す義務があります。

つまり買主は、契約の前にかならず知る側です。

売主にとっての分かれ目は「知られるかどうか」ではありません。

「いつ知られるか」のほうです。

この記事は、御笠川や樋井川の近くで家や土地を持っている方に向けたものです。

何が説明されるのか、福岡市のどこで調べるのか、売り出す前に何を揃えるのか。

この3つを順に並べました。

目次1. 浸水想定区域にある家は、売れないのですか?
2. 具体的に、何を見せられるのですか?
3. 福岡市のハザードマップは、どこで見られますか?
4. 福岡市では、実際にどんな浸水が起きたのですか?
5. 隠さずに出したほうが早く売れるのは、なぜですか?
6. 売り出す前に、何から手をつければよいですか?

浸水想定区域にある家は、売れないのですか?

売れます。

売れ行きを分けるのは区域そのものではなく、その情報をいつ、どんな形で買主に渡すかです。

後から出てくると話が止まり、先に出しておけば条件の1つとして進みます。

2020年8月から、説明は不動産会社の義務になった

宅地建物取引業法施行規則が改正され、2020年8月28日から水害ハザードマップにおける物件の所在地が重要事項説明の項目に入りました。

説明するのは売主ではなく、仲介した不動産会社です。

義務なので、売主が「言わないでほしい」と頼んでも省けません。

この点だけは、はっきりさせておいてください。

説明されるのは「場所」であって、被害の予測ではない

不動産会社が行うのは、市町村の水害ハザードマップを示して、物件のおおよその位置を指すことです。

「この家は何年後に浸かります」といった予測までは求められていません。

買主が受け取るのは、あくまで地図上の位置。

そこからどう判断するかは買主に委ねられているので、売主が数字を作って説明する必要はありません。

出典:国交省 水害ハザードマップの説明義務化

具体的に、何を見せられるのですか?

水防法にもとづいて市町村が作った、洪水・雨水出水(内水)・高潮の3つのハザードマップです。

使うのは、市町村が配る印刷物か、市町村のホームページに載っている最新のもの。

不動産会社が独自に作った地図ではありません。

洪水・内水・高潮の3つが対象

洪水は川があふれるもの、内水は下水道や水路が雨を流しきれなくなるもの、高潮は台風で海面が持ち上がるものを指します。

この3つが、2020年の改正で加わった説明の対象です。

土砂災害警戒区域や津波災害警戒区域は、それより前から別の項目として説明の対象になっていました。

まとめて「ハザードマップの説明」と呼ばれますが、根拠は別々です。

土砂災害のほうは、区域の種類や支援制度まで含めて、土砂災害警戒区域の家は売れる?指定前の調査箇所と売る前の確認で扱いました。

福岡市の場合、東区や西区の海沿いでは高潮、早良区や城南区の斜面では土砂災害が絡んできます。

どの災害の説明が付くかは、同じ市内でも場所で変わるということ。

各区の相場と地形の特徴は、福岡市の売却相場の区ごとのページで確かめられます。

古いマップしか無くても、それを説明する

国土交通省のQ&Aは、現行法に合わせて更新されていない古い水害ハザードマップでも、それについて説明するよう求めています。

「最新版が無いから説明できない」は通りません。

マップそのものが作られていない地域では、その旨を伝える扱いになります。

福岡市は洪水・内水・高潮のいずれも公開しているので、この心配は要りません。

出典:国交省 水害リスク情報の重説Q&A

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福岡市のハザードマップは、どこで見られますか?

「福岡市総合ハザードマップ」に住所を入れれば、画面上で確かめられます。

載っているのは洪水・内水・高潮・津波・土砂災害の5種類です。

スマートフォンからでも開けるので、査定を頼む前に一度見ておいてください。

川から離れていても、内水では色が付く

内水は、川があふれなくても起きます。

下水道や水路が処理しきれない量の雨が短時間で降れば、低い土地に水が溜まる仕組みだからです。

福岡市は内水浸水想定区域を指定したうえで、内水ハザードマップを公開しています。

「うちは御笠川から500メートル離れているから関係ない」という思い込みが外れるのは、たいていこの内水のほうです。

いまのマップは「想定最大規模」で描かれている

福岡市の洪水ハザードマップは、想定される最大規模の降雨で川があふれた場合の範囲と深さを示しています。

何十年も住んでいて一度も浸かっていない土地に色が付くのは、この前提のためです。

「昔のマップでは白かったのに」という話は、前提が変わったと考えてください。

買主から理由を聞かれたときに、この一言が言えるかどうかで受け取られ方が変わります。

見るのは色だけでなく、想定している浸水の深さ

同じ色でも、想定浸水深が0.5メートル未満か、3メートル以上かで意味がまるで違います。

0.5メートル未満なら床上に届かない可能性があり、3メートルなら2階の床まで届く高さです。

買主が住宅ローンや火災保険を考えるときに見るのも、この深さのほうでしょう。

凡例の数字まで控えておくと、そのまま説明の材料になります。

買主が実際に払う金額にも、地域差が入っている

火災保険の水災の料率は、2023年に市区町村ごとの5段階へ細分化されました。

いちばん安い1等地から、いちばん高い5等地までの5区分です。

損害保険料率算出機構の「水災等地検索」で、市区町村名から等地を引けます。

買主は住宅ローンの返済だけでなく、この保険料も合わせて毎月の負担を見ています。

数字で答えられるようにしておけば、値引きの根拠として持ち出されたときに話が噛み合うでしょう。

出典:損害保険料率算出機構 水災等地検索

出典:福岡市総合ハザードマップ

出典:福岡市 内水ハザードマップ

市のマップに加えて、県の最新の浸水想定区域図も見る

福岡県は、県が管理する河川について、洪水浸水想定区域図を公表しています。

県のページによると、県管理334河川のうち333河川が公表済みです(2024年6月28日時点)。

残る1河川の御笠川放水路は地下河川で、浸水が想定されないため対象外とされています。

図には、想定最大規模の降雨で川があふれた場合の浸水範囲と浸水深が載っています。

見られる場所は、県のホームページのPDF、県土整備事務所、県庁河川管理課の大判図面、福岡県総合防災情報の地図です。

市のハザードマップと県の図は、公表された時点が同じとは限りません。

査定のときは、見た資料の名前と公表時点を控えておいてください。

買主に「いつの資料ですか」と聞かれたとき、そのまま答えになります。

区域の外だったからといって、安全が保証されるわけでもありません。

ハザードマップはあくまで想定なので、「区域外です」とだけ伝えて終わらせないようにします。

出典:福岡県 県管理河川の洪水浸水想定区域図

福岡市では、実際にどんな浸水が起きたのですか?

博多駅周辺は、1999年と2003年の2回、大きな浸水を受けています。

どちらも御笠川があふれ、地下街や地下鉄にまで水が入りました。

この2回が、いまのハザードマップと市の整備計画の出発点になっています。

1999年6月29日と、2003年7月19日

1999年6月29日の福岡水害では、福岡で1時間に79.5ミリの雨が降りました。

博多駅周辺は1メートルほど浸水し、浸水家屋は2,576戸。

4年後の2003年7月19日には、御笠川上流の太宰府市で1時間104ミリを記録しました。

このときの浸水家屋は4,235戸で、1999年の1.6倍にあたります。

そのあとに整備された「雨水整備レインボープラン博多」

2回目の浸水を受けて、福岡市は2004年に「雨水整備レインボープラン博多」を作りました。

雨水を流せる能力の目安を、1時間59.1ミリから79.5ミリへ引き上げたのが中心です。

79.5ミリという数字は、1999年6月29日に実際に降った雨量から取られています。

山王雨水調整池をはじめとする主要な施設は、2012年5月に完成しました。

この調整池が貯められる量は約30,000立方メートルで、3万平方メートルの土地に1メートルの水を溜めるのと同じ体積です。

売主として言えるのは、この整備の事実まで。

「だから、もう浸水しません」と言い切ることはできません。

浸水したのは博多だけではない

2009年7月の中国・九州北部豪雨では、城南区と早良区を流れる樋井川があふれました。

床上浸水が172戸、床下浸水が238戸。

7月24日には、福岡空港で1時間に116ミリという雨量を記録しています。

1999年の79.5ミリと比べると、1.4倍を超える降り方でした。

樋井川では2010年度から河道を掘り下げる緊急事業が始まり、2014年度に完了しています。

川ごとに被害の年も対策の年も違うので、自分の物件に近い川で調べてください。

出典:九州地方整備局 福岡水害(H11.6.29)

出典:国交省 樋井川の治水効果(PDF)

出典:福岡市 雨水整備レインボープラン博多

隠さずに出したほうが早く売れるのは、なぜですか?

買主がその情報を知る時期が、売れるまでの日数を左右するからです。

重要事項説明は、契約の直前に行われます。

そこで初めて色の付いた地図を見せられた買主が、その場で落ち着いて判断できるでしょうか。

契約直前に知ると、買主は白紙に戻す方向へ動く

買主は申込みから契約までのあいだに、住宅ローンの事前審査を通し、家族と何度も話しています。

その最後の場面で新しい情報が出ると、決めたはずのことをもう一度ひっくり返すことになります。

白紙に戻れば、売主は募集をやり直す側です。

1か月半かけて進んだ話が消えるので、先に出した場合よりかえって遅くなります。

過去に浸水したことは、売主から先に伝える

ハザードマップは「これから起こりうること」を示した地図で、過去に実際に浸かったかどうかは載っていません。

床上・床下の浸水を経験していれば、それは売主しか知らない事実です。

当社では、物件状況の報告書に書いていただいたうえで売り出しています。

伝えずに引き渡した結果どうなるかは、雨漏りを隠して売却したら|裁判になった3件の結論で扱いました。

出す資料を3つ揃えてから売り出す

  • 福岡市総合ハザードマップで、物件の位置と想定浸水深を印刷したもの
  • 過去の浸水の有無と、あった場合はその年・深さ・復旧の内容
  • 止水板・かさ上げ・排水ポンプなど、対策として手を入れた箇所があればその記録

3つ目まで用意できると、話の向きが変わります。

「危ない土地です」ではなく「こう備えてある家です」として見てもらえるためです。

止水板の設置や外構のかさ上げは、領収書か工事の写真が残っていれば十分でしょう。

床上浸水を受けたあとに床や壁を張り替えていれば、その工事も同じ扱いになります。

買主が知りたいのは、被害そのものより「そのあと何をしたか」だからです。

資料が出てこない場合でも、記憶にある範囲で年と深さを伝えてください。

曖昧なまま黙っておくより、分かる範囲で先に言うほうが後の火種になりません。

売り出す前に、何から手をつければよいですか?

ハザードマップを見るところからで構いません。

色が付いていたかどうかで、査定のときに話すことが変わります。

戸建てなら、建物の高さと敷地の高さも一緒に測っておくと話が早くなります。

今日できること

福岡市総合ハザードマップを開き、住所で物件を出してください。

洪水・内水・高潮の3つを順に切り替えて、色と凡例の数字を控えます。

画面を印刷しておけば、そのまま不動産会社との打ち合わせに使えるでしょう。

区役所や法務局の窓口で取る書類は、福岡市7区の手続き窓口ガイドにまとめてあります。

戸建てと土地は、敷地の高さも見られる

同じ町内でも、道路から50センチ高い敷地と、道路より低い敷地では話が変わります。

盛土や擁壁で高さを確保している土地なら、そこは伝える価値のある情報です。

境界や高低差を含めた戸建ての調べ方は、福岡市の戸建て売却にまとめました。

地図で先に確かめておく土地の事情は、水害のほかにもあります。

遺跡の範囲に入っているかどうかは、埋蔵文化財包蔵地の土地の売り方で調べ方を書きました。

判断に迷う部分は、人に聞いてください

色が付いている土地をいくらで売り出すかは、深さ・築年・道路付け・周りの取引で変わります。

地図の読み方と、値付けへの反映は別の作業です。

建物の保険や補償の細かい条件は、保険会社や代理店にご確認ください。

売り出し方そのもので迷っているなら、15分の無料相談で伺います。

色が付いていること自体は、売らない理由になりません。

先に出して、備えたところまで見せる。

その順番さえ守れば、あとは値付けと売り出し方の話になります。

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この記事の目次1. 浸水想定区域にある家は、売れないのですか?
2. 具体的に、何を見せられるのですか?
3. 福岡市のハザードマップは、どこで見られますか?
4. 福岡市では、実際にどんな浸水が起きたのですか?
5. 隠さずに出したほうが早く売れるのは、なぜですか?
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