不動産の個人売買で住宅ローンは使える?福岡の銀行が求める書類
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士親族や知人に、福岡市のマンションを直接売ろうとしている方から、いちばん多くいただくご相談がこれです。
「買主が住宅ローンを使いたいと言っているが、進められますか」
個人売買でつまずくのは、価格でも契約書でもありません。
ほとんどの場合、買主の住宅ローンの本審査で止まります。
この記事では、金融機関が本審査で何を求めるのか、その書類を誰が作るのか、そして止まったときにどうするかを順に書きます。
なお【フラット35】は民間の住宅ローンと条件の立て方が違うため、この記事では扱いません。
2. どの金融機関でも同じ扱いですか?
3. 書類や名義でも、買主のローンは止まります
4. 福岡市で個人売買を進めるなら、どの順番ですか?
5. ローンで止まったとき、買主を変えずに進める方法
不動産の個人売買で、買主は住宅ローンを使えますか?
使えないと決まっているわけではありませんが、本審査で出す書類が揃わないことがあります。
ここで押さえるのは、次の2つの事実です。
金融機関は本審査で売買契約書を求め、多くの場合に重要事項説明書も求めます。
そして重要事項説明書は、宅地建物取引業者が作り、宅地建物取引士が記名して説明する書類です。
金融機関が本審査で求める書類
福岡市に本店を置く西日本シティ銀行の住宅ローン「建築名人」では、必要書類に売買契約書または工事請負契約書が挙げられています。
同じ一覧に、重要事項説明書も並んでいました。
どちらも「建築・販売業者から交付を受けるもの」として書かれている書類です。
つまり、売主と買主のあいだで話がまとまっただけでは、この欄が埋まりません。
重要事項説明書を作れるのは宅地建物取引業者だけ
重要事項説明書は、宅地建物取引業法の第35条で定められた書類です。
宅地建物取引業者が、契約が成立するまでのあいだに交付して説明する、という決まりになっています。
その書面には宅地建物取引士が記名します。
売主と買主だけで進める取引には、この書類を作る人がいません。
司法書士に登記を頼んでも、ここは埋まりません。
売買契約書は司法書士でも作れますが、重要事項説明書は宅地建物取引業者の仕事だからです。
この2つを因果でつなげて考えない
ここで「重要事項説明書が無いから住宅ローンは通らない」と決めてしまう方がいます。
その言い方は正しくありません。
住宅ローンの審査は、買主の収入や勤務先、物件の担保評価、その金融機関の基準で決まるものです。
書類が1つ足りないことだけで結果が決まるわけではありません。
売主として押さえるのは、事実を2つ並べたところまでです。
銀行は本審査でその書類を求めることがあり、その書類は業者が入らないと用意できません。
そこから先は、買主の金融機関に聞くしかありません。
事前審査が通ったのに、本審査で止まる理由
買主から「事前審査は通りました」と聞いて安心してしまう売主が多くいます。
ところが個人売買で止まるのは、ほとんどが本審査の段階です。
事前審査で見るのは、買主の年収・勤務先・借入の状況といった人の側の条件になります。
本審査では、そこに物件の書類が加わります。
売買契約書・重要事項説明書・登記事項証明書・公図といった書類が並ぶのは、この段階。
つまり事前審査が通ったという話は、物件の書類がまだ1枚も見られていないという意味でもあります。
売主として動き出すのは、この差を買主と共有したあとにしてください。
どの金融機関でも同じ扱いですか?
金融機関ごとに違います。
そして違いは、公開されているページに書いてあることもあれば、窓口で聞かないと分からないこともあります。
個人間売買を対象外と決めている銀行もある
当社が2026年9月に各行の公開資料を調べた範囲では、不動産業者の仲介が無い個人間の売買を対象外と明記していたのは、イオン銀行でした。
ほかの金融機関のページには、そこまではっきりした一文が見つかりませんでした。
書いていないことは「使える」という意味ではなく、「個別に判断する」という意味に近いものです。
利用条件は各行の商品概要説明書に載っているので、買主にそこを見てもらいます。
融資のほかに売主が自分で確かめることになる項目は、個人間売買のトラブル|本人確認と資金確認は誰がやるにまとめました。
民間の住宅ローンで行き詰まったときに名前が挙がるフラット35については、個人売買でフラット35は使える?9割の壁と諸費用で物件検査と融資率の話をまとめました。
「親族間売買」の条件とは別の話
銀行のよくある質問を読むと、親族間売買を取り扱わない、という記載によく当たります。
これは仲介業者が入るかどうかとは別の論点です。
親子や兄弟のあいだの売買は、価格を当事者だけで決められるため、金融機関が慎重に扱う取引とされています。
親族以外の知人に売る場合は、この条件には当たりません。
逆に、親族に売るのであれば、業者が入っていても断られることがあります。
2つを混ぜて読むと、自分の取引がどちらで止まっているのか分からなくなります。
買主の金融機関に、売り出す前に聞いてもらう
順番として効くのは、買主が事前審査を出す前に必要書類を確認してもらうことです。
聞く内容は2つだけ。
仲介業者が入らない売買を扱えるか、そして本審査で重要事項説明書を求めるか。
ここを先に確かめておけば、契約書を作ってから引き返す事態を避けられます。
聞き方も決めておくと早く終わります。
「売主と直接の売買で、仲介する不動産会社が入りません」と最初に伝えてください。
そのうえで「本審査の必要書類を一覧でください」と頼みます。
一覧に重要事項説明書が入っていれば、そこで方針が決まったことになります。
入っていなければ、業者を入れずに進める道も残るという判断になるでしょう。
どちらにしても、判断の材料はその一覧1枚。
この確認を買主任せにすると、話がはっきりしないまま数週間過ぎることがあります。
売主から「一緒に確かめませんか」と声をかけるほうが、結果として早いのです。
書類や名義でも、買主のローンは止まります
止まる場所は、重要事項説明書だけではありません。
物件の側の書類が欠けていても、担保評価の段階で進まなくなります。
名義が揃っていないと審査が進まない
当社が2026年に扱った土地で、相続人が非常に多い1区画がありました。
相続手続きを進めても、最終的に集まったのは12名のうち10名まで。
この状態では買主の住宅ローンの審査が通らず、売主様のご意向もあって当社の買取で決着しています。
名義が揃っていない不動産は、買主がお金を借りられません。
相続が絡む個人売買では、登記を先に片付けてから相手と話すほうが早く終わります。
確認済証・検査済証が見つからないとき
古い建物では、確認済証や検査済証が手元に無いことが珍しくありません。
買主が住宅ローンを使う場合、ここを確認されることがあります。
福岡市では、建築確認台帳に載っている内容を「建築確認等台帳記載事項証明書」として出してもらえます。
手数料は1件300円。
窓口は住宅都市みどり局の建築指導課で、6番窓口のセルフ検索システムから自分で申請できます。
遠方にお住まいなら、電話かメールで問い合わせたうえで、申請書をメールかFAXで送る形です。
境界が確定していないとき
土地や戸建てでは、境界が確定していないと買主が住宅ローンを組めないことがあります。
確定測量の費用は40〜60万円程度で、期間は1〜3か月。
個人売買では、この費用をどちらが出すかを決めていないまま話が進みがちです。
売主が集められる書類は売却に必要な書類に一覧でまとめています。
マンションは、管理の書類でも見られる
マンションなら測量は要りませんが、代わりに管理の状態を見られます。
求められるのは管理規約と長期修繕計画、それに管理費・修繕積立金の金額です。
滞納があると、買主が引き継ぐ債務として扱われます。
親族に売る場合は、この滞納の話が出ないまま決済まで進んでしまうことがあります。
管理会社に残高証明を頼めば、金額はその場で分かるものです。
個人売買でも、ここは業者が入る取引と同じだけ調べておいてください。
福岡市で個人売買を進めるなら、どの順番ですか?
先に決めるのは、買主が現金かローンかです。
ここで進め方が完全に分かれます。
買主が現金なら、業者が入らなくても進められる
現金の買主であれば、金融機関の審査そのものがありません。
そのため重要事項説明書を求められる場面もなくなります。
ただし、説明を受けずに買った買主から、あとで契約不適合を主張されるおそれは残ります。
自分でどこまでできるかは不動産の個人売買はどこまで自分でできる?に整理しました。
もう1つ、現金の取引でも残るのが税金の手続きです。
売れた価格が買ったときの値段を上回っていれば、譲渡所得の申告が必要になります。
業者が入らない取引では、これを教える人がいません。
買主がローンなら、書類を先に揃えておく
登記事項証明書、公図、測量図、固定資産税の納税通知書、購入時の契約書。
これらはどれも、売主が先に集められる書類です。
どの窓口で何が取れるかは福岡市7区の手続き窓口ガイドにまとめています。
書類が揃っていれば、業者が入る形に切り替えたときの待ち時間も短くなるのです。
個人売買では、契約不適合責任の範囲や、譲渡所得の申告も抜けやすいところ。
相手別の注意点は不動産の個人間売買は可能?契約・住宅ローン・税金の注意点で書いています。
ローンで止まったとき、買主を変えずに進める方法
相手を探し直す必要はなく、業者だけを途中から入れる形に切り替えられます。
買主が見つかっているのにローンで止まる、という状態がいちばんもったいない形。
売り先はそのままで、業者だけ入る
当社にも、同じご相談が実際に届いています。
代表の野上が2023年に対応したのは、空き家バンクで見つけた物件を所有者と直接お話で進めていた方のご依頼でした。
住宅ローンを組む段になって、当社にお声がけいただいた案件です。
相手も物件も決まっていたので、重要事項説明書の作成からお引き受けしました。
買主を探す作業が要らないぶん、業者が入る範囲は小さくなります。
切り替えても、やり直しにならないもの
途中から業者を入れると、話が振り出しに戻ると思われがちです。
実際に残るものと、作り直すものは分かれています。
そのまま使えるのは、買主・価格・引渡しの時期という合意の中身。
作り直すのは、売買契約書と重要事項説明書の2つです。
重要事項説明書は書き写す書類ではないので、登記・都市計画・道路・管理規約を業者が調べたうえで作ります。
買主の本審査は、その書類が揃ってから出し直してもらう順番になります。
ここまで来ていれば、残っているのは調査と書類の時間だけです。
その範囲に合わせた料金の立て方として、当社はじぶん売却という形をご用意しています。
売主様に準備や内覧のご案内を担っていただき、当社の通常料金から仲介手数料を20%または30%割り引く売り方です。
ご自分の取引がどこで止まりそうか分からないときは、無料査定のご相談でお聞きください。
