不動産の個人売買はどこまで自分でできる?できること一覧
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士「不動産会社を通さずに、自分で売れないだろうか」
売却を調べ始めた方から、この質問をよくいただきます。
調べていくと、危ないからやめなさいという記事と、買主がもう決まっている人向けの記事ばかりが出てきます。
買主は決まっていない、でも自分でも動きたい。
この記事は、そういう方に向けて「どこからが資格の要る仕事なのか」を線引きしたものです。
結論から言うと、法律や会員資格で止まるのは4か所だけ。
残りは、売主ご本人でも手を動かせます。
2. 売却に使う書類は、自分で集められますか?
3. 買主は、自分で探せますか?
4. 重要事項説明は、個人売買でも必要ですか?
5. 登記と税金は、どこまで自分でできますか?
6. 自分で進めるなら、どこから手をつければよいですか?
不動産の個人売買で、自分にできないことは何ですか?
資格や免許が必要なのは、ポータルサイトとレインズへの掲載、重要事項説明、他人の登記の代理、そして税務の相談と書類作成の4つです。
それ以外の作業には、資格の壁がありません。
書類を集める、写真を撮る、価格を調べる、買主と条件を話す。
どれも売主ご自身でできます。
できること・できないことの一覧
| 作業 | 売主が自分で | 根拠 |
|---|---|---|
| 登記事項証明書・公図の取得 | できる | 誰でも請求できる |
| 区役所での評価証明書の取得 | できる | 所有者本人の請求 |
| 取引価格の相場を調べる | できる | 国交省が公開 |
| 室内の写真・動画の撮影 | できる | — |
| 買主との価格・条件の話し合い | できる | 当事者どうし |
| 売買契約書に署名・押印する | できる | 当事者どうし |
| 自分名義の登記を申請する | できる | 本人申請 |
| 自分の確定申告をする | できる | 本人の申告 |
| SUUMO・アットホームへの掲載 | できない | 宅建免許が条件 |
| レインズへの登録・検索 | できない | 宅建業者のみ |
| 宅建業法上の重要事項説明 | できない | 宅建業法35条 |
| 他人の登記を代理する | できない | 司法書士法 |
| 他人の税務相談・申告書作成 | できない | 税理士法52条 |
「できない」4つのうち、性質が2種類ある
重要事項説明・登記の代理・税務の3つは、資格者にしか認められていない仕事です。
いっぽうポータルサイトとレインズは、資格ではなく掲載・会員の条件で線が引かれています。
どちらも「頑張れば自分でできる」類のものではありません。
ここを早めに知っておくと、途中で行き止まりに当たらずに済みます。
自分の家を1回売るだけなら免許は要らない
ご自身の持ち物を売ること自体には、宅地建物取引業の免許は必要ありません。
免許が要るのは、売買を反復継続して行う場合です。
所有しているマンション1戸を売るだけなら、そこには当たりません。
相場を調べるところに、資格は要らない
実際にいくらで成約したかは、国土交通省が不動産情報ライブラリで公開しています。
種別・地域・期間を指定すれば、売主ご本人でも同じ数字を見られる仕組みです。
当社はこの公開データを福岡市7区ごとに集計し、福岡市の売却相場として中央値と件数で並べています。
査定を頼む前に自分で当たりを付けておけば、提示された金額の根拠を聞きやすくなるでしょう。
売却に使う書類は、自分で集められますか?
集められます。
登記事項証明書は、所有者でなくても誰でも請求できる書類です。
法務局の窓口で交付を請求するとき、身分証明書も印鑑も要りません。
登記名義人以外が請求する場合でも、委任状は不要です。
自分で取りに行くのは、だいたい5種類
マンションを売るときに売主が用意する書類は、種類としては多くありません。
- 登記事項証明書(法務局)
- 公図・建物図面(法務局)
- 固定資産評価証明書(区役所)
- 印鑑登録証明書・住民票(区役所)
- 管理費・修繕積立金の額が分かる書類(管理会社)
このうち管理会社に出してもらう書類だけは、発行までに日数がかかることがあります。
売ると決めた時点で、先に依頼しておいてください。
手数料は取り方で3通りある
不動産の登記事項証明書の手数料は、法務局の窓口で請求すると1通600円です。
オンラインで請求して郵送で受け取れば500円、窓口で受け取れば480円になります。
3通取れば差は360円。
金額の差より、法務局へ行く回数が減ることのほうが効いてきます。
福岡市では、取りに行く先が2か所に分かれる
登記事項証明書は、全国どこの法務局でも取れます。
福岡市内なら、中央区舞鶴の福岡法務局が窓口のひとつ。
いっぽう固定資産評価証明書や印鑑登録証明書は、お住まいの区役所です。
登記の書類と市の書類で、行き先が分かれると覚えておいてください。
どの書類をどこで取るかは福岡市7区の手続き窓口ガイドに一覧にしてあります。
売却に必要な書類そのものは売却に必要な書類でご確認ください。
買主は、自分で探せますか?
探せますが、ここが個人売買でいちばん狭くなるところです。
物件を広く知らせる場所のうち、主要な2つが売主本人には開いていません。
ポータルサイトと、レインズです。
SUUMO・アットホームは宅建免許が掲載の条件
アットホームは、物件掲載の条件のひとつに宅建免許を保有していることを挙げています。
個人の所有者の場合は、加盟している不動産会社へ相談するよう案内されています。
つまり「自分で写真を撮って自分で載せる」という形にはなりません。
レインズは宅建業者だけが使う仕組み
レインズは不動産会社専用のシステムで、一般の方が直接検索することはできません。
会員になれるのは宅地建物取引業者で、宅地建物取引士の登録を受けただけの個人は会員になれない決まりです。
ただし、不動産会社に依頼して売り出している売主なら、自分の物件の登録内容は確かめられます。
国土交通省は2024年12月に、売主が取引状況を確認するためのリーフレットを出しました。
確かめ方はレインズの登録証明書の見方をご覧ください。
残るのは知人・親族と掲示板。確認も売主が担う
ポータルとレインズが使えないと、買主を探す先は、知人・親族・近所の方と、個人が投稿できる掲示板に絞られます。
買主がすでに決まっている取引なら、これで足ります。
決まっていない状態から始めるなら、まず届く範囲を確かめてください。
個人が投稿できる掲示板で何が求められ、どこまで届くのかはジモティーで不動産は売れる?届く範囲と契約の現実に分けて書きました。
そして相手が見つかったあと、本人確認と資金の裏付けの確認が残ります。
不動産会社が入る取引では、この2つを当社が行います。
個人売買では、売主ご自身がやることになるところ。
相手が本当に登記名義人本人か、代金を用意できる方か。
親族や長い付き合いの知人なら確かめる必要は小さいでしょうが、そうでない相手では話が変わります。
手付金を受け取る前に、どこまで確かめるかを決めておいてください。
重要事項説明は、個人売買でも必要ですか?
売主と買主が個人どうしで、宅建業者が間に入らない取引なら、法律上の義務はありません。
宅建業法35条は、宅建業者に対して、契約の前に宅地建物取引士が説明をさせる義務を課しています。
義務を負うのは業者であって、個人の売主ではありません。
義務が無いことと、書面が要らないことは別
ここで押さえておきたい事実が2つあります。
1つは、重要事項説明書を作れるのは宅地建物取引士だけだということ。
買主がフラット35を使う場合の書類の扱いは、個人売買でフラット35は使える?9割の壁と諸費用に書いています。
もう1つは、金融機関が住宅ローンの審査で売買契約書を必ず求め、重要事項説明書も多くの場合に求めるということです。
この2つが重なると、買主が現金で買える方に寄っていきます。
買主の数は、そのまま売れるまでの期間に響きます。
福岡の銀行が本審査で実際に何を求めるかは個人売買と買主の住宅ローンで確かめました。
売ったあとの責任は、民法で決まる
引き渡したものが契約の内容に合っていなかったときの責任は、民法の契約不適合責任です。
宅建業者が売主のときに買主を守る特別な制限は、個人が売主の取引には及びません。
個人売買では、何をどこまで伝えたかが、あとで争いの分かれ目になります。
雨漏り、シロアリ、給湯器やエアコンの不具合、近隣との取り決め。
知っていることは、書面に残して渡してください。
口頭で伝えたつもりでも、引き渡しのあとに「聞いていない」と言われれば水掛け論です。
どんな点でもめやすいかは不動産の個人間売買は可能?契約・住宅ローン・税金の注意点にまとめました。
登記と税金は、どこまで自分でできますか?
ご自身名義の登記はご自身で申請でき、確定申告もご自身でできます。
線が引かれるのは、他人のためにそれをやる場合です。
売主と買主のどちらかが、もう一方の手続きを代わりにやってあげる形にはできません。
法務局には登記手続の案内がある
法務局は、自分で登記申請をする方に向けた手続案内を行っています。
申請書の作成に必要な情報は教えてもらえます。
ただし担当者が申請書を作ることはなく、書類集めも申請人がやる前提です。
資格の無い方が、業として他人の登記手続を代理したり、書類を作ったりすることは、司法書士法で禁じられています。
どこまでが自分の登記で、どこからが司法書士の仕事になるのかは不動産の個人売買と司法書士で分けました。
税金の相談は、無償でも税理士だけ
税務代理・税務書類の作成・税務相談は、税理士法52条により税理士でない者が行えません。
この禁止は、報酬を受け取らない場合にも及びます。
違反すると、2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です。
当社も不動産会社ですから、お客様個別の税額を判断することはできません。
費用と税の目安を自分で見ておきたい方は、手取りの試算で数字を入れてみてください。
住宅ローンが残っているなら、決済は同じ日にそろえる
売る物件に抵当権が付いたままだと、買主はその状態で買えません。
代金を受け取り、残りの借入を返し、抵当権を抹消し、名義を移す。
この4つを同じ日にそろえる段取りが要ります。
金融機関と司法書士と買主の予定を合わせる作業なので、日付を決める前に各所へ確認してください。
抵当権抹消にかかる費用そのものは、1〜2万円台です。
自分で進めるなら、どこから手をつければよいですか?
買主が決まっているかどうかで、最初の一歩が変わります。
すでに相手がいるなら、登記事項証明書を取って、名義と抵当権の状態を確かめるところから。
いないなら、その買主をどこで探すかを先に決めてください。
買主が決まっている場合、決まっていない場合
相手がいる場合に先に確かめるのは、住宅ローンを使うのか現金かの1点です。
現金なら、書類と契約書をそろえる作業が中心になります。
ローンを使うなら、買主が申し込む金融機関に、必要書類を先に聞いておいてください。
相手がいない場合は、届く範囲が狭いまま売り出すと、時間だけが過ぎていく形になりがちです。
全部を自分でやる、全部を任せる、の2つしか無いと思われがちですが、間の形もあります。
売却全体の順番は売却の流れに11ステップで並べてあります。
売り方そのものを比べたい方は4つの売り方の比較をご覧ください。
当社にも、その間にあたる形があります。
売主様が書類の準備・撮影・情報入力を担当し、そのぶん当社の通常料金から仲介手数料を20%・30%割り引くじぶん売却です。
