個人売買でフラット35は使える?9割の壁と諸費用
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士親族や知人に直接売る個人売買で、買主の住宅ローンが進まない。
そんなとき、「フラット35なら借りられるらしい」という話が出てきます。
先に結論を書きます。
フラット35は住宅金融支援機構の商品ですが、申し込みの窓口は民間の金融機関です。
必要書類も、金利も、融資手数料も、その取扱先ごとに違います。
そのうえフラット35には、民間の住宅ローンには無い関門が2つあります。
物件検査(適合証明書)と、融資率9割という線引きです。
この記事は、福岡市で個人売買を進めようとしている売主と買主に向けて、その2つと費用の負担を整理したものです。
当社は売主側から「買主にフラット35を使わせたい」というご相談を受けます。
そのときに最初にお伝えしているのは、借りられるかどうかを決めるのは売主ではない、ということです。
2. 物件検査という、もう1つの関門があります
3. 融資率9割を超えると、金利が上がります
4. ローンのほかに、買主が負担する費用
5. 売主が、先にできること
フラット35なら、個人売買でも借りられますか
「フラット35だから通る」「個人売買だから通らない」という決まりはありません。
扱いは取扱金融機関ごとに分かれています。
商品は機構、窓口は民間の金融機関です
フラット35を申し込む先は、住宅金融支援機構ではなく、取り扱っている銀行や信用金庫などの金融機関です。
借入金利と融資手数料は、その金融機関ごとに決められています。
同じフラット35という名前でも、窓口を変えれば条件が変わるということ。
買主が1行で断られたからといって、フラット35そのものが使えないと決まったわけではありません。
買主の年齢で、借りられる期間が変わります
フラット35に申し込めるのは、申込時の年齢が70歳未満の方です。
親子リレー返済という仕組みを使う場合は、70歳以上でも申し込めます。
ここが個人売買で効いてくるのは、親族間の取引で買主が60代というケース。
申し込めたとしても、完済時の年齢の上限があるため、返済期間は35年より短くなります。
期間が短くなれば毎月の返済額は上がるので、買主が「借りられる額」も変わってきます。
年収に対する年間返済額の割合(総返済負担率)にも基準が決められています。
売買の金額を相談する前に、買主にこの2つを確かめてもらってください。
必要書類は、取扱金融機関によって異なります
中古住宅を買う場合の必要書類について、公式サイトにはこう書かれています。
申し込みに必要な書類は取扱金融機関によって異なり、重要事項説明書の写しなども必要となる場合がある、という書き方です。
ここは事実を2つ並べておきます。
- 重要事項説明書を作成し、記名して説明できるのは宅地建物取引士です
- 金融機関は売買契約書を求め、重要事項説明書も求める場合があります
「重要事項説明書が無いとフラット35は必ず通らない」とは書けません。
逆に「重要事項説明書は要らない」とも言えません。
買主が申し込もうとしている金融機関に、何が要るのかを先に聞いてください。
金融機関ごとの違いは不動産の個人売買で住宅ローンは使える?福岡の銀行が求める書類にまとめています。
物件検査という、もう1つの関門があります
フラット35では、住宅が機構の定める技術基準に合っているかどうかの検査を受けます。
合格すると適合証明書が交付され、これを提出しないと資金を受け取れません。
検査を受けるのは、家そのものです
民間の住宅ローンの審査は、買主の年収や勤務先といった「人」の面が中心になります。
フラット35では、それに加えて建物が基準を満たしているかどうかを見られます。
検査機関か適合証明技術者に申請し、合格して初めて適合証明書が出る仕組みです。
築年数が古い家ほど、ここで時間がかかると考えてください。
そもそも基準に合わない家もあります
検査で見るのは、建物の状態だけではありません。
中古住宅の技術基準では、住宅の敷地が原則として一般の交通の用に供する道に2m以上接していることが求められます。
床面積にも下限があり、車庫や共同住宅の共用部分は含めずに数えます。
福岡市の古い住宅地には、細い私道の奥に建つ家や、旗竿状の敷地に建つ家が残っています。
接している幅が足りなければ、買主の資金計画そのものを組み直すことになりかねません。
私道に接する土地の調べ方は前面道路が私道の土地を売る|接道と通行・掘削承諾の調べ方に書きました。
検査手数料は買主の負担です
物件検査の手数料は、検査機関または適合証明技術者によって違います。
そして、この費用を負担するのは申込者、つまり買主のほうです。
親族間の売買では「登記費用だけ見ておけばよい」と考えがちですが、それだけでは足りません。
売主が用意する資料で、日程が決まります
検査の申請には、その家の図面や確認済証・検査済証といった資料が要ります。
これらを持っているのは売主です。
福岡市で昭和のうちに建った家では、検査済証が見つからないことも珍しくありません。
その場合、市の窓口で台帳記載事項証明書を取れば、確認と検査の記録を証明できます。
どの手続きをどこで行うかは福岡市7区の手続き窓口にまとめました。
売却に必要な書類の全体像は売却に必要な書類をご覧ください。
融資率9割を超えると、金利が上がります
フラット35には、借入額が住宅の購入価額の9割を超えるかどうかで金利が変わる仕組みがあります。
この割合を融資率と呼びます。
購入価額は、売買契約書に書かれた金額です
公式の説明では、住宅の購入価額は売買契約書に記載された売買金額とされています。
2,000万円の家に対して1,800万円を借りれば融資率は9割。
1,900万円を借りると9割を超えるので、金利は9割を超える場合のものになります。
頭金を200万円用意できるかどうかで、35年分の金利が変わるという意味です。
諸費用まで借りようとすると、線を越えます
物件検査手数料・融資手数料・登記費用・火災保険料は、購入価額とは別に出ていきます。
これらを借入額に足していくと、融資率は9割を超えやすくなります。
買主が「全部込みで借りたい」と言っているときほど、この線を意識してください。
売主にとっては、価格を決める前の話です
売買金額が決まると、融資率の分母が決まります。
親族間で「きりのいい金額にしよう」と決めたあとで、買主の頭金が足りないと分かる。
この順番だと、価格を決め直すところからやり直しになります。
買主がいくら自己資金を出せるのかを、金額の話と同時に確かめてください。
ここで1つ、やってはいけないことがあります。
融資率を下げたいからといって、売買契約書の金額を実際より高く書くこと。
契約書はそのまま金融機関に提出され、売主の譲渡所得の計算にも、買主の贈与税の判断にも使われる書類です。
1枚の紙が3か所に効くので、実際の取引と違う金額を書けば、どこかで必ず食い違います。
ローンのほかに、買主が負担する費用
フラット35を使うと、借入金の返済とは別に出ていくお金があります。
いずれも買主の負担です。
火災保険は、返済が終わるまで必要です
借入れの対象になる住宅には、返済終了までのあいだ火災保険への加入が求められます。
保険料を払うのは買主のほうです。
建物の構造や補償の範囲で金額が変わるため、契約前に見積もりを取ってもらってください。
融資手数料は金融機関ごとに違います
フラット35の融資手数料は、取扱金融機関がそれぞれ決めています。
定額の先もあれば、借入額に対する割合で決める先もあるからです。
金利が低い金融機関ほど手数料が高いこともあるため、並べて比べるのは金利と手数料の両方。
そこへさらに、抵当権を設定する登記の費用。
金利は毎月変わります
フラット35の借入金利は、申し込んだ月ではなく、資金を受け取る月の金利が適用されます。
そして金利は毎月見直されるので、記事に書いた数字は翌月には古くなります。
ここで「高い」「安い」と書くつもりはありません。
買主が判断する日の数字を、公式の金利検索ページで直接見てください。
金融機関ごとの金利と手数料が、その場で並びます。
売主が、先にできること
買主がどの金融機関で借りるかを、売主は決められません。
それでも、売主の側で先に片づけられることが4つあります。
1. 書類をそろえておく
登記済証や図面、確認済証や検査済証は、探すのに時間がかかります。
買主の申し込みが始まってから探すと、そのぶん検査も融資も後ろへずれます。
見つからない書類があるなら、代わりに何を取れるかを先に調べておいてください。
当社が個人売買のご相談を受けるときも、最初にお願いするのは書類の棚卸しです。
そろっているかどうかで、引渡しまでの日程が1か月単位で変わります。
2. 手取りを計算しておく
売買金額が決まっても、手元に残る額はそこから費用を引いた後の金額です。
個人売買でも、登記費用や税金は発生します。
おおよその手取りは手取りの試算で計算できます。
3. 親族どうしなら、価格の決め方も確かめる
親から子へ、相場よりかなり安い値段で売る。
この形は、買主の側に贈与税がかかることがあります。
著しく低い価額で財産を譲り受けたときは、時価との差額について贈与があったものとみなされるためです。
土地や家屋の時価は、通常の取引価額に相当する金額とされています。
「身内だから安くしてあげよう」という気持ちが、翌年の税金に変わる場面。
いくらなら問題が無いかは個別の判断になるので、価格を決める前に税務署か税理士に相談してください。
4. どこまで自分でやるかを決めておく
個人売買で自分にできること、できないことの線引きは不動産の個人売買はどこまで自分でできる?できること一覧に書きました。
重要事項説明書のように、宅地建物取引士でなければ作れない書類もあるからです。
買主がローンを使う取引なら、その一点だけで進み方が変わります。
なお当社には、売主に作業を分担していただくかわりに、当社の通常料金から仲介手数料を割り引くじぶん売却という売り方もあります。
