前面道路が私道の土地を売る|接道と通行・掘削承諾の調べ方
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士福岡市の古い住宅地で土地や戸建てを売ろうとして、前面道路が私道だと分かり、手が止まる方がいます。
この記事は、そういう不動産を福岡市で売ろうとしている所有者に向けて、売り出す前に何をどの順番で調べるかを書いたものです。
先に結論を書きます。
私道に接しているというだけで、その土地が売れなくなることはありません。
売りやすさを決めるのは2点です。
買主がその土地で建て替えられる道路かどうかと、通行と掘削の承諾を取れるかどうか。
そして、この2点を確かめる材料は、法務局で取る図面3つと、福岡市役所4階の窓口でそろいます。
調べないまま売り出すと、買主が決まったあとの重要事項説明の段階で条件が崩れ、契約が振り出しに戻ります。
2. 売る前に取り寄せる図面は3つ
3. 福岡市で道路の種別を確かめる手順
4. 通行・掘削承諾は誰から、何をもらうのか
5. 承諾が取れないときに、どう売るか
6. 売り出す前に、まず何をするか
前面道路が私道だと、売却では何が問題になるのか
問題になるのは道路を誰が持っているかではなく、買主がその土地で建て替えられるかどうかです。
建築基準法は、建物の敷地が幅4m以上の道路に2m以上接していることを求めています。
この「道路」に当たるかどうかは、公道か私道かでは決まりません。
私道でも、位置指定道路(法第42条第1項第5号)やみなし道路(法第42条第2項)であれば、建築基準法上の道路です。
逆に、見た目は立派な通路でも、法上の道路ではない私道があります。
買主が最初に気にするのは「建て替えられるか」
買主が土地を見に来て、その場で聞いてくるのは道路の種別です。
法上の道路に接していない土地は、法第43条第2項の認定か許可を受けない限り、新しい建物を建てられません。
建てられない土地は、更地にしても駐車場か資材置場としてしか使えず、買う人が大きく減ります。
売主にとっての意味は単純で、種別が分からないまま売り出すと、値付けの根拠が無い状態で走り出すということです。
住宅ローンの審査でも道路は見られる
買主が住宅ローンを使う場合、金融機関は担保になる土地の接道を確認します。
再建築できない土地は担保として評価されにくく、融資が下りないか、金額が削られます。
残るのは、現金で買える人か、不動産会社です。
売り出す前に種別を確かめておけば、最初から現金客に向けた売り方を選べます。
種別を調べて法上の道路ではないと分かったときの売り方は、再建築不可の家は売れる?福岡市の接道と43条の調べ方で説明しています。
売る前に取り寄せる図面は3つ
法務局で取るのは、公図・地積測量図・登記事項証明書の3つです。
この3つで、私道の形・境界・持分の有無が分かります。
いずれも所有者以外でも請求でき、オンラインでも郵送でも受け取れます。
公図(字図)で、道路の形と地番を見る
公図は、土地の並びと地番を描いた図面です。
前面道路に地番が振られていれば、そこは誰かの持ち物である私道だと分かります。
地番が無く「道」とだけ書かれていれば、公道の可能性が高い部分です。
私道が1筆の細長い土地になっているのか、各戸の前で短く切られているのかも、ここで見えます。
切られている場合は、隣の人の土地を通らないと自分の家にたどり着けない形になっていることがあります。
地積測量図で、境界とセットバックの跡を見る
地積測量図は、分筆や地積更正のときに法務局へ出された測量の図面です。
古い住宅地では、そもそも備え付けられていない土地が珍しくありません。
図面が無いか、あっても昭和期のもので現況と合わないときは、確定測量をどうするかの判断が必要になります。
費用の目安は40〜60万円ほどで、3,000万円で売る土地なら売却価格の1〜2%にあたります。
測量の要否と期間は確定測量の費用と期間の記事にまとめました。
測量までは待てないという場合に、現況のまま買取で出した金額との比べ方は福岡の戸建て・古家付き土地の買取に書いています。
登記事項証明書で、私道の持分があるかを見る
私道の地番が分かったら、その地番の登記事項証明書を取ります。
所有者欄に自分の名前と「持分6分の1」のような記載があれば、その私道の共有者です。
名前が無ければ、他人の土地の上を通って出入りしていることになります。
変わるのは、買主に説明する内容と、承諾を取りに行く相手です。
売却に必要な書類の全体像は必要書類の一覧で確かめてください。
福岡市で道路の種別を確かめる手順
福岡市の場合、私道の種別はインターネットでは分からず、市役所4階の窓口でしか答えが出ません。
順番としては、法務局で図面をそろえてから市役所へ行くほうが、一度で話が済みます。
福岡市Webまっぷに私道は出てこない
福岡市は、都市計画情報と指定道路をWebまっぷで公開しています。
公開されているのは7区すべてですが、道路の種別として見られるのは法第42条第1項第1号の道路と法第42条第2項の道路だけです。
しかも、この第42条第2項の表示からは私道が除かれています。
つまり、私道について画面で調べようとすると、何も出てこないか、公道だけが色分けされた地図を見ることになります。
ここで「載っていないから法上の道路ではない」と早合点しないでください。
私道の種別は窓口でしか答えが出ない、というだけのことです。
道路判定係の窓口は平日だけ。火曜と水曜は午前のみ
確かめる先は、住宅都市みどり局建築指導課の道路判定係です。
場所は福岡市中央区天神1丁目8番1号の市役所4階、電話番号は092-711-4584。
受付は月曜から金曜の午前9時00分から11時30分と、午後1時00分から4時30分です。
毎週火曜と水曜の午後は、窓口が閉まります。
仕事を休んで行く方が多いので、火曜と水曜は午前に行く点を先に知っておいてください。
持って行くものは、場所が分かる地図、道路下水道局路政課で取れる道路台帳平面図、法務局の公図・登記簿謄本・地積測量図、それに現地の写真です。
なお、道路台帳平面図に書かれた管理幅員と、建築基準法上の幅員は別物とされています。
台帳の数字が4mだから安心、とはならないということです。
道路判定係の窓口で分かるのは、その道が建築基準法上の道路に当たるかどうかです。
幅員は、路政課の窓口で道路台帳平面図を見て確かめ、あわせて現地で測るのが確実です。
位置指定道路であれば、指定を受けたときの図面(道路位置指定図)が特定行政庁に保管されています。
指定どおりの幅が今も確保されているかは、その図面と現況を見比べて判断することになります。
区役所や法務局の場所は福岡市7区の手続き窓口ガイドにまとめました。
幅が4m未満なら、セットバックの有無まで確かめる
私道の幅が4mに足りない場合、次の分かれ目は、その道がみなし道路(法第42条第2項)かどうかです。
みなし道路なら建て替えはできますが、原道の中心線から2m下がった線までが道路の扱いになります。
福岡市は、向かい側の敷地が既に下がっていても、自分の敷地は原道の中心線から2m下がるよう求めています。
「向かいが下がったから、うちは下がらなくてよい」という理解は成り立ちません。
既に下がっているかどうかは、現地の官民境界や、新築時の確認申請図書の配置図で確かめます。
後退した部分に建物は建てられないので、売り出す前に有効な敷地面積を出し直しておいてください。
後退する部分の扱いに悩む方には、福岡市の狭あい道路拡幅整備事業があります。
対象は、幅員4m未満の市道に接する敷地です。
この記事の主題である私道は、市の案内で対象外とされています。
接している道が市道か私道かは、道路判定係の窓口で確かめられます。
市道に接している場合、後退した部分を市に寄附して整備を任せるか、自分で管理するかを選べます。
これが個別整備型で、問い合わせ先は住宅都市みどり局建築指導部の建築調整課(電話092-711-4586)です。
一方、道沿いの住民が協力して寄附し、道全体を広げる路線整備型は、道路下水道局道路計画課(電話092-711-4462)の担当です。
助成の額は市の基準で決まり、工事を終えたあとの相談は対象外です。
買主が建て替えを考えているときは、着工の前に市へ相談するよう伝えてください。
通行・掘削承諾は誰から、何をもらうのか
私道の所有者全員から、通行と掘削の両方について、書面でもらいます。
口頭の了解では、所有者が代替わりした時点で最初からやり直しになります。
買主が求めているのは「今の隣人が良い人かどうか」ではなく、10年後も同じ条件で通れる証拠だからです。
承諾書に入れておく4つのこと
実務で必ず入れるのは次の4点です。
- 車を含む通行を認めること
- 水道管・下水道管・ガス管の工事のために掘削することを認めること
- 建て替えのときも、あらためて承諾を求めないこと
- この承諾が、土地を買った次の所有者にも引き継がれること
4つ目が抜けている承諾書を見かけますが、それでは売主が持っている間だけの約束で終わります。
掘削の承諾が無いまま引き渡すと、買主は給排水の引き直しに着手できません。
古い住宅地では、水道管が細く、建て替えのタイミングで引き直しが避けられない土地もあります。
持分があっても承諾は要る
私道の持分を持っているなら通行も掘削も自由、とはなりません。
共有している土地は、他の共有者の権利も同じように及んでいるためです。
民法の改正を受けて、法務省は共有私道の工事に必要な同意を整理した報告書を出しています。
補修のように形や効用を大きく変えない工事は持分の過半数で決められる、といった整理がされました。
ただし、これは工事についての同意の話で、買主が求める通行・掘削承諾書とは別物です。
持分があるかないかにかかわらず、書面はそろえておいてください。
相続で持分が細かく分かれているケースは共有道路(私道)に接する相続した土地の売り方で詳しく書いています。
承諾が取れないときに、どう売るか
全員の承諾が取れなくても売る方法はありますが、買主が限られ、価格は下がります。
取れない理由は、反対されているか、相手が見つからないかのどちらかです。
反対されている場合は、まず理由を聞き取るところから始めてください。
過去の補修で費用を出してもらえなかった、工事の車両で塀を壊された、といった経緯が残っていることがあります。
売主本人が行くと感情の話に戻りやすいので、当社は不動産会社の担当者として間に入ります。
連絡が取れない所有者がいるとき
福岡市の古い住宅地で今も見かけるのが、私道の所有者が明治生まれの名義のままという土地です。
この場合は、登記事項証明書から戸籍をたどって相続人を探す作業になります。
当社が扱った案件にも、相続で共有者が増えて全員を探し出すのに苦労した土地がありました。
私道ではなく山口県防府市の土地でしたが、最終的に集まったのは12分の10までで、買主の住宅ローン審査が通りませんでした。
その案件は、売主のご意向もあって当社の買取で決着しています。
実際の進め方は売却事例をご覧ください。
現況のまま買取で手放す選択肢
承諾がそろわない土地でも、不動産会社は現況のまま買い取ることがあります。
会社側が承諾の取得や相続人の調査を引き受ける前提なので、仲介で売るより価格は下がります。
それでも買取を選ぶ理由は、近所付き合いのある相手に頭を下げに行かずに済むことです。
仲介と買取のどちらが向くかは仲介・買取・リースバックの比較で見比べてください。
売り出す前に、まず何をするか
今日できるのは、法務局で公図・地積測量図・登記事項証明書を取ることです。
その3つを持って、平日の受付時間内に市役所4階の道路判定係へ行けば、種別の答えが出ます。
同じ日に、その土地が遺跡の範囲に入っていないかも確かめておくと二度手間になりません。
手順は埋蔵文化財包蔵地の土地の売り方に書きました。
そこまで進めば、承諾を取りに行く相手と、値付けの前提が決まります。
図面を取るところから代わりにやってほしい、という方は当社にお任せください。
当社は福岡市の土地売却で、測量・境界・接道の調査を売主に代わって進めています。
遠方にお住まいでも、現地の確認と写真の報告、オンライン面談、郵送での手続きで進められます。
売るかどうかを決めていない段階でもかまいませんので、15分の無料相談で道路のことだけ聞いてみてください。
価格の目安を先に知りたい場合は、無料査定からお申し込みいただけます。
