不動産の個人売買と司法書士|自分で登記できる範囲と費用
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士不動産の名義変更は、売主と買主が自分で法務局に申請できます。
司法書士に頼まなければ登記できない、という決まりはありません。
ただし自分で申請できることと、代金の受け渡しを安全に終えられることは別の話です。
この記事では、自分にできる登記の範囲、司法書士でなければできない線、決済の立会いが何を担保しているのかを分けて説明します。
福岡市の物件なら、行き先は売る不動産の区で決まる法務局と、お住まいの区役所の2か所です。
2. 司法書士に頼まないと違法になるのは、どこからですか?
3. 決済の立会いは、何をしているのですか?
4. 福岡市では、どこの窓口へ行くことになりますか?
5. 費用は、どこで変わりますか?
6. 個人売買を選ぶ前に、確かめること
個人売買で、登記を自分で申請できますか?
できます。
不動産登記は当事者の申請によって行うのが原則で、売買では売主と買主が共同して申請します。
資格者に委任することもできますが、委任しなければならないという定めはありません。
申請の形は、窓口・郵送・オンラインの3つ
法務局の窓口へ持ち込む方法、郵送する方法、オンラインで送る方法があります。
オンラインは添付書類の原本を別に出す場合があるので、初めてなら窓口が確実です。
申請書の様式と記載例は、法務局が登記の種類ごとに公開しています。
書き方で迷ったら、管轄の法務局の登記手続案内を使ってください。
オンラインで共同申請をする場合、売主と買主の双方が申請情報に電子署名を付ける必要があります。
初めての個人売買でオンラインを選ぶ利点は、ほとんどありません。
書類に不備があると法務局から補正の連絡が入り、そのぶん完了が後ろへずれます。
出典:法務省 不動産登記
所有権移転は、売主と買主がそろって申請する
所有権の移転登記は、権利を得る買主と、権利を手放す売主が共同で申請します。
売主だけ、買主だけでは受け付けられません。
どちらか一方の書類が欠けると、その日の申請は止まります。
個人売買で日程がずれやすいのは、この一点です。
登記を後回しにすると、その不動産の権利を第三者へ主張できない期間ができます。
売主が同じ不動産を別の人にも売った場合、先に登記した人が権利を得ます。
だから決済と登記の申請は、同じ日にそろえてください。
申請が通ると、新しい名義人である買主に登記識別情報通知が交付されます。
売主の側でも、登記事項証明書を取れば名義が移ったことを確かめられます。
売主が用意するのは、だいたい4つ
- 登記識別情報通知(かつての権利証)
- 印鑑証明書(作成から3か月以内のもの)
- 固定資産評価証明書
- 登記の原因を示す書類(売買契約書など)
評価証明書が要るのは、評価額から登録免許税を計算するためです。
登録免許税は、金融機関で納めた領収証書か収入印紙を申請書に貼って納付します。
当社も過去の決済で、登記費用の見積りを出すために町役場まで評価証明書を取りに行きました。
印鑑証明書は作成から3か月以内のものに限られるので、取るのは決済日が決まってからです。
先に取ってしまうと、日程が延びたときに取り直しになります。
取るものと行き先の全体像は売却に必要な書類にまとめています。
司法書士に頼まないと違法になるのは、どこからですか?
自分の登記を自分で申請する分には、何の問題もありません。
線が引かれるのは、他人の登記手続を「業として」代理したり、その書類を作ったりするところです。
この行為は司法書士法で司法書士に限られ、違反すると1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。
「報酬をもらっていないから大丈夫」ではない
要件は報酬の有無ではなく、繰り返し引き受ける意思があるかどうかです。
無償でも、反復して引き受けていれば業として扱われます。
親族の登記を代わりに申請してあげる、という善意もここに入ります。
自分が当事者になっている登記だけを、自分で申請してください。
「申請はそちらでやるので、書類だけ作ってほしい」も、同じ線の内側です。
行政書士や税理士の資格でも、登記の代理はできません。
相談先の分かれ目は、申請書の書き方までが法務局、個別の権利関係の判断が司法書士、税金が税理士です。
個人売買では、この3つを自分で行き分ける手間も自分に乗ります。
出典:法務省 司法書士の業務
不動産会社も、登記の代理はできない
宅地建物取引業の免許で登記の代理はできません。
当社が決済に司法書士へ入ってもらうのは、そのためです。
「登記もこちらでやります」と言う相手がいたら、誰の資格で行うのかを確かめてください。
自分にできること・できないことの全体像は不動産の個人売買はどこまで自分でできるで一覧にしました。
決済の立会いは、何をしているのですか?
代金の支払いと所有権の移転を、同じ場で成立させるための確認です。
司法書士が書類と本人を確かめ、登記できる状態だと確認してから、買主が残代金を払います。
順番が決まっているので、どちらかが先に渡して相手を待つ形になりません。
決済当日の1時間で起きること
- 残代金の入金確認
- 抵当権の抹消と所有権移転の登記手続
- 固定資産税の精算
- 鍵のお引渡し
当社がお手伝いする決済は、買主の銀行で1時間ほどです。
この場に司法書士がいないと、入金を待つ人と鍵を渡す人の順番を、当事者だけで決めることになります。
当日のお金の出入りは売却代金でローンを完済する順番に並べました。
売買代金が数千万円になる場面で、先に渡す側を決める話し合いです。
売主が遠方にお住まいの場合は、郵送で署名する持ち回り契約と、司法書士の立会いによる決済を組み合わせます。
当社がお手伝いする取引では、ご来社なしでの完了が可能です。
当事者だけで進める個人売買では、この遠隔の段取りも自分たちで作ることになります。
決済を平日の午前中に組むのは、その日のうちに法務局へ申請を出すためです。
午後から始めると、申請が翌営業日に回ることがあります。
住宅ローンが絡むと、立会いは省けない
買主が住宅ローンを使う場合、金融機関は登記が確実に入ることを条件に融資します。
抵当権の設定登記を同じ日に行うため、司法書士の立会いが前提です。
売主側に住宅ローンが残っている場合も、抹消と移転を同じ日にそろえる必要があります。
買主の融資が実行されるのは決済の当日で、前日に入金されるわけではありません。
売主の抹消書類が銀行から出てくるのも当日なので、書類の到着を待つ場面が出ます。
銀行が求める書類は個人売買で住宅ローンは使えるかで説明しました。
権利証が見つからないとき
登記識別情報通知や権利証は、再発行できません。
その場合は、決済当日に司法書士が本人確認情報を作成して代わりにします。
作成には別途費用がかかるため、先に見積りを取ってください。
紛失に気づいた時点で相談しておけば、決済の直前で慌てずに済みます。
福岡市では、どこの窓口へ行くことになりますか?
登記は売る不動産の区で決まる法務局、評価証明書と印鑑証明書はお住まいの区役所です。
博多区・中央区・南区・東区の物件は、中央区舞鶴の福岡法務局本局が受け付けます。
早良区・城南区・西区の物件は、西新出張所です。
行き先が2か所に分かれるので、平日に動く日を2回とることになります。
法務局と区役所の分担
| 取るもの | 行き先 | 使い道 |
|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 法務局(郵送や全国の法務局でも可) | 名義と担保の確認 |
| 固定資産評価証明書 | 各区役所 | 登録免許税の計算 |
| 印鑑証明書 | 各区役所 | 売主の本人確認 |
| 所有権移転の申請 | 物件の区を管轄する法務局 | 名義の書き換え |
福岡法務局の本局は福岡市中央区舞鶴3-9-15、電話番号は092-721-4570です。
管轄は物件の所在地で決まるので、住んでいる区の法務局とは限りません。
申請に行く前に、その不動産の管轄がどこかを確かめてください。
区役所も法務局も、平日の日中しか開いていません。
登記事項証明書は全国のどの法務局でも取れますが、申請を出せるのは管轄の法務局だけです。
郵送でも申請できますが、不備があると書類が往復するので日数が読めません。
窓口ごとの持ち物は福岡市7区の手続き窓口ガイドに並べました。
出典:福岡法務局(本局)の案内
相続した家なら、先に相続登記
亡くなった方の名義のままでは、売買の登記に進めません。
相続登記の登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です。
司法書士に頼む場合の報酬は、当社の窓口ガイドでは5〜10万円を目安に置いています。
相続人が複数いる場合は、遺産分割協議書に全員の実印と印鑑証明書がそろっていることが前提になります。
相続登記は2024年4月から義務になり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
費用は、どこで変わりますか?
登録免許税は法律で決まっているので、自分で申請しても同じ額です。
変わるのは、司法書士に払う報酬の部分だけになります。
そのかわり、書類の不備によるやり直しと日程の組み直しは、自分で負うことになります。
登記が一度で通らなければ、引渡しが終わっても名義は移りません。
その間に売主側で相続や差押えが起きると、買主の登記はさらに難しくなります。
この不確かさは金額に置き換えにくいので、報酬との比較では見落とされがちです。
登録免許税は、誰が申請しても同じ
売買による所有権移転の登録免許税は、土地が1000分の15、建物が1000分の20です。
土地の税率には期限付きの軽減措置が入っているので、申請の前に最新の税額表を見てください。
司法書士に頼んでも自分で申請しても、この税額は動きません。
売主側で出る登記の費用
住宅ローンが残っていれば、抵当権抹消の登記が必要です。
目安は1〜2万円台です。
登記上の住所が昔のままなら、住所変更登記に14,000円ほどかかります。
この2つは、個人売買でも仲介でも同じように出る費用です。
相続や離婚で名義が複雑になっている場合は、移転の前に整えておく登記が増えます。
契約書の印紙税は、個人売買でも要る
売買契約書には印紙税がかかります。
軽減措置が2027年3月31日まで続いており、1,000万円超5,000万円以下で1万円、5,000万円超1億円以下で3万円です。
仲介会社が入らない個人売買でも、この印紙は同じように必要です。
契約書を売主と買主で2通作るなら、それぞれに貼ります。
個人売買を選ぶ前に、確かめること
登記を自分で申請するかどうかより先に、決済の日に誰が何を確認するのかを決めてください。
買主が住宅ローンを使うなら、司法書士の立会いは省けません。
買主が現金で、双方が親族という場合だけ、自分たちで完結させる道が残ります。
契約書に何を書くかは不動産の個人売買の契約書にまとめました。
手続きの一部を分担して、契約と決済は任せたいという方には、当社の通常料金から仲介手数料を割り引くじぶん売却という選び方もあります。
買主がまだ決まっていない段階なら、価格の見当を先に付けておくと判断が早くなります。
価格の目安が先に必要なら、無料査定をお使いください。
どこまで自分でやれるか迷う段階なら、15分無料相談で切り分けからお手伝いします。
