売却代金でローンを完済する順番|決済当日のお金の動き
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士住宅ローンが残る家を売るとき、いちばん分かりにくいのが決済日のお金の動きです。
ローンを完済しないと抵当権は消えず、その完済に使うお金は買主から入る売却代金です。
この逆回りに見える流れを、決済という1日のうちに1回で回してしまいます。
この記事は、残債のある福岡市の家を売ろうとしている方に向けて書きました。
お金がどの順番で動くのか、手出しの現金が要るのはどんなときか、司法書士がなぜ同席するのかを、当社が立ち会う順番どおりに並べます。
2. なぜ司法書士が決済の席にいるのですか
3. 当日のお金を1枚に並べるとどうなりますか
4. 手出しの現金が要るのは、どんなときですか
5. 決済日を迎える前に、何を確かめますか
6. まず何をすればよいですか
決済当日、お金はどんな順番で動きますか
買主の入金を確認したあとに残債を完済し、抵当権の抹消と所有権の移転を同時に申請します。
この順番は入れ替えられません。
完済に充てるお金が売却代金そのものなので、入金の確認が先に来るからです。
場所は買主が住宅ローンを借りる銀行の応接室、所要時間は1時間ほどというのが通例です。
買主の融資が実行され、売主の口座に着金する
決済の開始時刻になると、買主の銀行が融資を実行します。
売主の口座に残代金が振り込まれたら、通帳か画面で着金を確かめてください。
ここで初めて、完済に使えるお金が売主の手元に現れます。
着金が確認できるまで、司法書士は書類を預かったまま動きません。
着金を確認してから、金融機関へ完済金を払う
着金が取れたら、そのお金をそのまま残債の一括返済に回します。
売主の借入先が同じ銀行なら口座間の振替で済み、別の金融機関なら振込の手続きに入ります。
この完済は事前の予約が要るもので、当日いきなり窓口へ行って済むものではありません。
売主の借入先と買主の融資先が別の銀行のときは、振込が着くまでの時間も見ておきます。
当社は決済日の2週間ほど前に、売主と一緒に金融機関へ完済の申出を入れています。
申出をして受け取るのが、完済日と完済に必要な額を書いた精算書です。
抵当権の抹消と名義の移転は、同じ日に一度で申請する
完済すると、抵当権を消すための書類が金融機関から出ます。
司法書士はその書類を受け取り、買主への所有権移転とまとめて法務局へ申請します。
完済しただけでは、登記簿に載った抵当権の記載は消えません。
この登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。
土地と建物のある戸建てなら2個で2,000円という計算になります。
なぜ司法書士が決済の席にいるのですか
買主が「これで名義を移せる」と確かめてから代金を払うために、その確認をする人が要るからです。
売主にも買主にも金融機関にも寄らない立場の人が、書類を点検します。
抵当権を消す側と名義を移す側が同じ日に動くので、両方を1人が受け持つ形になります。
買主は登記できる状態を見ないと払えない
買主から見ると、代金を払った直後に名義が移らない事態がいちばん怖いところです。
そこで司法書士が、権利証・印鑑証明書・委任状・本人確認の書類を決済の冒頭で点検します。
「これで申請できます」という司法書士の確認があってから、買主の融資が実行されます。
売主側の書類が1枚足りないだけで、その日の決済は動きません。
司法書士に払う費用は、売主と買主で分かれます。
当社が扱う契約では、抵当権の抹消は売主、所有権の移転は買主が負担するのが通例です。
依頼する司法書士を選ぶのは、登記費用の大きいほうを払う買主側になります。
抵当権の抹消書類は、完済した直後にしか出ない
金融機関は、完済を確認するまで抹消の書類を渡しません。
書類が出るのは決済のその場なので、受け取ってすぐ申請できる人がいないと止まります。
当社が立ち会う決済でも、抹消の書類は席上で金融機関から司法書士へ渡ります。
後日でよいことにすると、買主は抵当権が付いたままの不動産を買わなければなりません。
抹消を後回しにしたときに何が起きるかは抵当権抹消の費用と手続き|福岡法務局の窓口にまとめました。
権利証が見つからないときも、その場で手が打てる
権利証(登記識別情報通知)は再発行できません。
紛失していても売却はできます。
司法書士が本人確認情報という書類を作って代わりにする方法があり、別に費用がかかります。
ただし当日その場では作れないので、見当たらないと分かった時点で担当者へ伝えてください。
この本人確認情報は、司法書士が決済に立ち会うからこそ当日に使える手です。
立会いの役目と、個人売買で司法書士に頼む範囲は不動産の個人売買と司法書士で分けて説明しています。
申請に向かう法務局は、物件の区で変わる
福岡市の不動産登記は、物件がある区によって管轄する法務局が分かれます。
博多区・中央区・南区・東区の物件は、福岡市中央区舞鶴にある福岡法務局の本局です。
早良区・城南区・西区の物件は、西新出張所が受け付けます。
住んでいる区ではなく、売る不動産がある区で決まる点に気をつけてください。
出典:福岡法務局(本局)の案内
当日のお金を1枚に並べるとどうなりますか
3,000万円で売れて残債が2,600万円あるときは、当日の手元に190万円ほど残る形になります。
入るお金と出るお金を同じ紙に並べないと、この数字は見えません。
手付金は契約の日にすでに受け取っているので、当日入るのは残代金だけだからです。
入るお金は、手付金を引いた残代金
売買代金3,000万円のうち、契約時に手付金100万円を受け取っていたとします。
決済当日に振り込まれるのは、残りの2,900万円です。
これに買主から受け取る固定資産税の精算金が加わります。
この着金を確認したあとに、玄関の鍵と建物の書類を買主へ渡します。
お金の受け渡しと鍵の引渡しを同じ席で終えるので、引越しは決済日の前に済ませておく形です。
出るお金は、完済金と当日の費用
| 項目 | 金額の例 | 払う先 |
|---|---|---|
| 当日の入金(残代金) | +2,900万円 | 買主から |
| 住宅ローンの一括返済 | −2,600万円 | 金融機関へ |
| 一括繰上返済の手数料 | 金融機関ごとに違う | 金融機関へ |
| 仲介手数料 | −105万6,000円 | 当社へ |
| 抵当権抹消の費用 | 1〜2万円台 | 司法書士へ |
| 当日の残り | 約192万円 | 売主の手元 |
仲介手数料は、売買代金の3%に6万円を足して消費税を掛けた額です。
3,000万円なら105万6,000円で、当日の残りの半分を超える大きさになります。
契約時の手付金100万円を足すと、この売却で動いた現金は約292万円です。
ここから譲渡所得税が出る場合は、翌年の確定申告で納めます。
ご自身の数字で並べたいときは手取りの試算に金額を入れてみてください。
固定資産税の精算では、売主が受け取る側になる
その年の固定資産税は、1月1日に持っていた人にまとめて課税されます。
そのため引渡し日以降の分を買主から日割りで受け取るのが、売買契約での取り決めです。
福岡市の納期は4月・7月・12月・翌年2月の4回で、納付書は売主あてに届きます。
当社が福岡市で扱う契約では、1月1日を起算日にするのが一般的です。
出典:福岡市 市税の納期
手出しの現金が要るのは、どんなときですか
残債と当日の費用の合計が、当日入る残代金を超えるときです。
差額は売主が用意して、その日の朝までに口座へ入れておく必要があります。
お金が足りないまま決済の日を迎えると、完済ができず抵当権も消えないためです。
手出しが出るかどうかは、売り出す前に分かります。
査定額から費用を引いた額と、金融機関に聞いた完済必要額を並べるだけだからです。
残債が売却価格を上回るとき
2,500万円で売れて残債が2,600万円あれば、100万円が丸ごと足りません。
これに仲介手数料などが乗るので、手出しは150万円ほどになります。
自己資金で埋められないときの選択肢は、住み替えローンか任意売却の2つです。
滞納が始まる前なら選べる手が多いので、金額が見えた時点でご相談ください。
競売との違いと相談の時期は住宅ローンが払えないときの任意売却|競売との違いと相談時期で説明しています。
残債より高く売れても、足りないことがある
2,650万円で売れて残債が2,600万円なら、差は50万円です。
ところが仲介手数料が94万円ほどかかるので、44万円ほどの手出しになります。
残債を上回る価格で売れたかどうかだけでは、手出しの有無は判断できません。
費用を引いた後の数字で見ないと、決済の前日に現金が足りないと気づく形になります。
売却にかかる費用の全体像は福岡市の不動産売却|費用の内訳と手取りの目安にまとめました。
手出しの現金は、いつまでにどこへ用意するか
決済の前日までに、完済する口座へ入れておいてください。
当日に窓口で引き出して間に合わせるのは無理があります。
定期預金を崩す場合や、親族から借りる場合は、さらに日数を見ておく必要があります。
金額が確定するのは、金融機関の精算書と当社の費用見積りが揃った時点です。
住み替え先の購入を同じ日に組む場合は、売却の決済を午前、購入を午後に置きます。
売却で受け取ったお金をその日の購入に回すためで、順番が逆だと現金が足りません。
決済日を迎える前に、何を確かめますか
確かめるのは、完済に必要な額・決済の時間帯・当日持参するものの3点です。
いずれも売出しの段階では決まらず、買主が決まってから固まります。
逆に言えば、この3つが揃っていれば当日は1時間で終わります。
完済に必要な額を、書面で出してもらう
残高証明書の数字と、完済に必要な額は一致しません。
完済の日までの利息と、一括繰上返済の手数料が乗るためです。
金融機関に完済の申出をすると、決済日を指定した精算書が出ます。
その書面の金額を当社に教えていただければ、手出しの有無はその場で計算できます。
日程が1日ずれると利息の額も変わるので、決済日が固まってから取り寄せてください。
決済は平日の午前に組む
着金の確認から法務局への申請までを同じ日のうちに終えるため、午前の枠から埋まります。
銀行も法務局も土日は動きません。
金曜の午後に組むと、書類が1枚足りないだけで週明けまで持ち越しになります。
売却の全体の日程は売却の流れで11のステップに分けて並べました。
当日持参するものを、前日に並べて確かめる
売主が持参するのは、実印・印鑑証明書・本人確認書類・通帳と届出印・物件の鍵の5点です。
印鑑証明書には期限があり、発行から3か月以内のものを求められます。
福岡市では、区役所のほかコンビニの端末でもマイナンバーカードで取れます。
受け取れるのは毎日午前6時30分から午後11時までで、手数料は窓口より50円安い額です。
決済が午前なら、前日の夜に取っておくと当日の朝に慌てません。
鍵は玄関だけでなく、勝手口・門扉・郵便受け・車庫のものまで数を数えて持って行ってください。
当社は決済の3日前に、この一覧を売主へお送りしています。
まず何をすればよいですか
残債の額と、いまの相場を並べて見るところから始めてください。
この2つが揃えば、手出しが出るのか、手元にいくら残るのかが決済の前に分かります。
売り出したあとに調べるのでは、買主が決まってから引き返せなくなります。
福岡市の売却を専門に扱う会社として、当社は残債のある物件の決済にも立ち会ってきました。
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