買主のローンが通らなかったら?融資特約で契約は白紙に
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士売買契約が終わっても、決済日までは落ち着かないものです。
いちばん多いご心配は、買主の住宅ローンが通らなかったらどうなるのか、という点でしょう。
答えは決まっています。
融資特約が付いていれば契約は白紙に戻り、受け取った手付金は全額を買主へ返します。
この記事は、契約を済ませて決済を待っている福岡市の売主の方に向けて、白紙解除の仕組みと、売主の側で先に確かめられることを書きました。
2. 融資特約は、契約書のどこを見れば分かりますか
3. 期限が過ぎてから否決されたら、どうなりますか
4. ローンが通らない理由は、買主の側だけですか
5. 売主が契約前に確かめておく2つ
6. 次に何をすればよいですか
買主のローンが通らなかったら、契約はどうなりますか
融資特約が付いていれば、契約は白紙解除になります。
受け取った手付金は買主へ返し、売主に違約金は入りません。
買主に落ち度があったわけでもないので、損害賠償の話にもなりません。
当社がお客様から受けるご質問でも、お答えはこの形です。
白紙解除は、契約が成立しなかった状態に戻す解除です。
売主は手付金を返し、買主は物件に対する権利を主張できなくなります。
仲介手数料も、契約の成立を前提にした報酬なので発生しません。
売り出しの状態に戻るだけで、売主の手元にお金は残りません。
白紙解除は、契約書の融資特約という条項そのものが根拠です。
法律が自動で白紙に戻すわけではないので、特約が付いていない契約では使えません。
個人の売主と個人の買主の取引で、特約を入れ忘れた契約は実際にあります。
仲介を入れずに進める個人売買では、ここが抜けやすい箇所でしょう。
手付金は全額を返す。利息は付けないのが通例
返すのは、受け取った額そのままです。
売買契約書には「無利息で返還する」と書かれていることが多いでしょう。
預かっていた期間が2か月あっても、その分を足す必要はありません。
ただし条項の書き方は契約ごとに違うので、案の段階で読んでおいてください。
返すのは、原則として買主の口座への振込です。
振込の手数料をどちらが負担するかまで決めておけば、当日に迷いません。
手付金そのものの決め方は手付金はいくらが相場?5〜10%の目安と上限2割の決め方にまとめました。
白紙解除になったあと、売り出しはどうなるか
物件は売り出し中の状態に戻ります。
レインズと不動産サイトの掲載を戻し、問い合わせの受付も再開。
この間、内覧を止めていた期間がそのまま空白になります。
契約から否決までに1か月かかっていれば、1か月ぶん売り出し期間が伸びた形です。
価格を下げる前に、止まっていた期間を差し引いて反響の数を数え直してください。
重要事項説明で説明される「成立しないときの措置」
融資が成立しなかったときにどうするかは、重要事項説明で説明される事項のひとつです。
宅地建物取引業法35条1項に基づき、宅地建物取引士が書面で説明します。
国土交通省の様式にも、融資が成立しないときは売主が受領済みの手付金等を返還する旨を説明する、と書かれています。
つまり白紙解除は、契約の席で双方が確認したうえで始まっている約束です。
融資特約は、契約書のどこを見れば分かりますか
「融資利用の特約」や「ローン特約」という見出しの条項です。
そこに金融機関名・借入額・承認の期限の3つが書き込まれています。
売主が確かめるのは、この3つと、解除のしかたの4点です。
条項に書かれた3つの数字
特約が働くのは、原則としてそこに書かれた金融機関と金額についてだけです。
買主が別の銀行で借りられなかったからといって、自動的に白紙解除になるわけではありません。
借入額が売買代金に近いほど、審査が通らなかったときの影響が大きくなります。
4,000万円の売買で借入額が3,900万円なら、自己資金は100万円だけ。
3つめの期限は、契約から3週間から1か月後あたりに置かれます。
当社のご案内でも、契約から引渡しまでは1〜2か月が一般的だとお伝えしています。
そのうち1か月ほどを住宅ローンの審査が使うためです。
期限の日付は、決済日から逆算して無理のない位置にあるかを見てください。
決済日の2日前に承認期限が来る契約だと、否決されたときに動く時間が残りません。
承認は出たが、金額が足りなかったとき
否決と並んで多いのが、金額を減らして承認が出る場合です。
4,000万円の借入れを申し込んで、3,500万円までなら貸せるという回答になる形です。
このとき白紙解除ができるかは、条項に書かれた借入額の読み方で変わります。
「4,000万円の融資が承認されなかったとき」と書いてあれば、特約が働く読み方です。
金額が書かれていない条項だと、買主が自己資金で埋められるかどうかの話になります。
売主としては、差額の500万円を買主が出せるのかを確かめる場面です。
解除のしかたは2通りある
条項には、期限までに承認が出なければ自動的に解除となる書き方があります。
もう1つは、買主が解除する旨を通知して初めて解除になる書き方です。
前者だと、売主が気づかないうちに契約が終わっているかもしれません。
どちらの形かで、売主が次の買主を探し始める時期が変わります。
期限が過ぎてから否決されたら、どうなりますか
融資特約は使えなくなり、解除には契約書で定めた違約金が必要になります。
期限は買主を守る線であり、同時に売主が待つ期間の終わり。
過ぎた時点で、白紙解除の道は閉じます。
契約から抜ける道は3つあり、どれが使えるかは時期で決まります。
| 解除の種類 | 使える時期 | 手付金の扱い |
|---|---|---|
| 白紙解除(融資特約) | 融資承認の期限まで | 売主が全額返す |
| 手付解除 | 手付解除期限まで | 買主は放棄、売主は倍額 |
| 違約解除 | 上の2つを過ぎたあと | 契約書で定めた違約金 |
融資承認の期限と手付解除期限は、同じ日とは限りません。
契約書の案を読むときは、2つの日付を並べて確かめてください。
期限を延ばすときは書面で残す
審査が長引いて期限に間に合わないことも、珍しくありません。
延長に応じるかどうかは売主の判断ですが、口約束で済ませないでください。
覚書を1枚作り、新しい期限の日付を書いて双方が署名します。
書面が無いと、あとで「延長していたはず」という食い違いが残るだけです。
違約金の話に進む前に確かめること
買主が本当に否決されたのか、申し込みそのものが遅れていたのかを分けて考えます。
金融機関の否決の通知は、買主の手元に残っているはずです。
その写しを見せてもらえば、どちらなのかが分かります。
判断に迷うときは15分無料相談へお持ちください。
ローンが通らない理由は、買主の側だけですか
いいえ。
物件の側の事情で否決されることもあります。
住宅ローンの審査は、買主の返済力と、物件の担保としての評価の両方を見ます。
売主が手を打てるのは、後者のほうです。
担保の評価が出にくいのは、再建築ができない土地や、市街化調整区域の土地です。
福岡市内でも、西区や早良区の一部には調整区域が残っています。
こうした物件は、融資を前提にした買主だと契約の時点で不安が残ります。
扱いは市街化調整区域の土地は売れない?福岡で手放したい実家や農地を売却する実務のヒントにまとめました。
買主の側の理由
年収に対する返済額の割合が基準を超えると、借入額が希望どおりに出ません。
フラット35では、年収400万円未満は総返済負担率30%以下、400万円以上は35%以下が基準です。
他の借入れも合算して計算されるため、自動車ローンや奨学金の残高が影響します。
契約後に転職や新しい借入れがあると、承認済みの審査がやり直しになるでしょう。
出典:フラット35 ご利用条件
権利関係が整っていない物件の理由
名義や共有者がそろっていない物件は、融資の対象になりにくくなります。
当社が扱った山口県防府市の土地では、相続人の同意が12人のうち10人までしか集まりませんでした。
その状態では買主の住宅ローン審査が進まず、最終的に当社の買取で売却を終えています。
経緯は防府市の共有者が多い土地の事例に残してあります。
相続した実家を売るなら、相続登記を売り出しと並行して進めてください。
書類がそろわない物件の理由
建築確認済証や検査済証が見つからない家は、福岡市内の古い物件でも珍しくありません。
買主が住宅ローンを使う場合、金融機関から提出を求められることがあります。
見つからないときは、市区町村で台帳記載事項証明書を取ってください。
福岡市の窓口と手数料は、検査済証が無い家は売れる?福岡市で取れる台帳記載事項証明書にまとめました。
無くても売却そのものはできますが、契約前に用意しておくほうが審査は早く進みます。
必要な書類は売却に必要な書類に一覧があります。
売主が契約前に確かめておく2つ
事前審査が済んでいるか、借入額が売買代金に対していくらかの2つです。
どちらも契約の前に聞けることで、聞いても失礼にはなりません。
仲介した不動産会社を通して確かめてください。
契約後も、審査の進み具合を週に1回は聞いておくとよいでしょう。
本審査の申し込みがいつ出たかを押さえておけば、期限に間に合うかの見当がつきます。
福岡市内の取引では、買主が地元の金融機関を使うことも、勤務先の提携先を使うこともあります。
どこへ申し込むかで審査にかかる日数が変わるため、金融機関名まで聞いておいてください。
事前審査が済んでいるか
事前審査は、本審査の前に金融機関が買主の返済力をおおまかに見る手続きです。
通っていれば、本審査で覆る可能性はぐっと下がるはずです。
済んでいない買主との契約は、審査を1つも終えずに物件を止めることになります。
当社が契約の日を決めるのは、事前審査の結果を確かめてからです。
借入額と自己資金の内訳
売買代金のうち、いくらを借り、いくらを自己資金で出すのかを聞きます。
自己資金が厚い買主は、審査の結果が少し下がっても契約を続けられるでしょう。
逆に全額を借入れでまかなう計画だと、評価が1割下がっただけで足りなくなります。
手付金を相場より低くしたいと言われる場合、ここが細いのかもしれません。
買主が住宅ローンを使わないのであれば、融資特約そのものが不要です。
代表の野上は、新築建売の業者が買主になった糟屋郡篠栗町の契約について、ローン特約が無いことのありがたさをブログに書いています。
特約が無ければ、審査で止まる場面がありません。
価格が同じなら、融資を使わない買主のほうが引き渡しまでの不確実さは小さくなります。
そのときの記録は篠栗町和田の買主様契約が完了!にあります。
当社の買取も当社が買主になるため、同じ理由で審査待ちが生じません。
次に何をすればよいですか
決済を待っている段階なら、契約書の融資利用の特約を開いてください。
見るのは次の4か所です。
- 金融機関名と借入額
- 融資承認の期限の日付
- 自動解除か、通知による解除か
- 手付金の返還の条件(無利息かどうか)
この4つが分かれば、期限の日に何が起こるかを先に知っておけます。
白紙解除は事故ではなく、契約のときに双方で決めておいた筋道です。
起きたときに慌てないために、期限の日付だけはカレンダーに書き写しておいてください。
決済までの段取りは売却の流れに11ステップで並べました。
契約から引渡しまでの動きは売買契約から引渡しまでにやること|決済当日の流れにまとめています。
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