手付金はいくらが相場?5〜10%の目安と上限2割の決め方
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士売買契約の日取りが決まると、不動産会社から「手付金はいくらにしますか」と聞かれます。
金額を決めるのは売主と買主の話し合いで、法律が一律に定めているわけではありません。
実務では売買代金の5〜10%に収まることがほとんどで、3,000万円の取引なら150万〜300万円です。
この記事は、福岡市で自宅や実家を売る方が、契約の席で手付金の額を自分で判断できるようにまとめました。
手付金を少なくすると買主が契約から降りやすくなる、という逆向きの効きも合わせて書きます。
2. 手付金には、どんな意味がありますか
3. 手付金に上限はありますか
4. 手付金が少ないと、売主に何が起きますか
5. 手付解除の期限は、どう決めますか
6. 次に何をすればよいですか
手付金はいくらが相場ですか
売買代金の5〜10%が一般的です。
当社にも「手付金はいくらですか」というご質問が実際に届きますが、お答えする目安はこの範囲になります。
範囲の上を決めているのは法律ではなく、買主が契約の日までに用意できる現金の額です。
住宅ローンは決済の日に実行されるので、手付金はローンの外から出すお金になります。
土地の取引だと、金額の幅がもっと開きます。
博多区の土地は中央値8,800万円(147件)で、5%なら440万円、10%なら880万円です。
この水準になると、手付金の額そのものが買主を絞る条件になります。
福岡市7区の中央値から見る目安
当社がまとめている福岡市の相場から、戸建ての成約価格の中央値に5%と10%を当てた金額を並べます。
直近8四半期の取引から出した数字です。
| 区 | 戸建ての中央値 | 5% | 10% |
|---|---|---|---|
| 東区 | 3,550万円(280件) | 約178万円 | 355万円 |
| 博多区 | 4,000万円(87件) | 200万円 | 400万円 |
| 中央区 | 6,250万円(56件) | 約313万円 | 625万円 |
| 南区 | 3,800万円(218件) | 190万円 | 380万円 |
| 城南区 | 4,000万円(146件) | 200万円 | 400万円 |
| 早良区 | 3,900万円(232件) | 195万円 | 390万円 |
| 西区 | 3,900万円(222件) | 195万円 | 390万円 |
中央区だけ金額が飛ぶのは、戸建ての中央値が6,250万円と高いからです。
同じ10%でも、博多区の400万円と中央区の625万円では、買主が用意できる家庭の幅が変わります。
区ごとの数字は博多区の相場のページで確かめられます。
端数のない金額に丸めるのが普通
割合で出した数字をそのまま契約書に書くことは、ほとんどありません。
実際に書き入れるのは150万円・200万円・300万円のような、100万円単位の数字です。
売買代金が3,780万円なら、5%の189万円ではなく200万円に寄せます。
理由は、買主が銀行から引き出して契約の席に持参する金額だからです。
近年は前日までの振込で済ませる形も増えましたが、金額を丸める習慣はそのまま残っています。
振込で受け取るときは、契約の席に入る前に着金を確かめておいてください。
金融機関の締め時間を過ぎていると、入金の記録は翌営業日まで出てきません。
手付金は代金の一部で、別に払うお金ではない
手付金は売買代金の外側に足される費用ではありません。
決済日には、残代金から手付金を差し引いた額が振り込まれます。
4,000万円の売買で手付金が200万円なら、決済日の入金は3,800万円です。
手付金を多くしても、売主が最終的に受け取る総額は変わりません。
変わるのは、受け取る時期だけ。
手付金をゼロにする契約も、法律の上では結べます。
その場合、買主が契約から抜けるときの歯止めが無くなります。
当社が手付金をお勧めするのは、この歯止めを残すためです。
仲介手数料や登記費用を引いたあとの手取りは手取りの試算で確かめてください。
手付金には、どんな意味がありますか
買主は手付金を放棄し、売主はその倍額を払うことで、契約を解除できます。
これを解約手付といい、根拠は民法557条です。
つまり手付金は、契約から抜けるときの値段でもあります。
金額を決める作業は、「相手にいくらまでなら抜けさせてよいか」を決める作業と同じことです。
手付金には、契約が成立した証しという意味もあります。
ただし売買の実務でまず問題になるのは、解除のときにいくら動くかという点です。
買主が降りるときは手付金を置いていく
手付金が200万円なら、買主は200万円を失って契約から抜けます。
売主は受け取った200万円を返さずに、次の買主を探すことになります。
戻ってこないのは時間のほう。
売り出しから契約までに3か月かけていれば、その3か月はやり直しです。
そのあいだに相場が動いていれば、売り出し価格の見直しからになります。
売主から解除するときは倍返しになる
売主が契約をやめたいときは、手付金の倍額を払います。
200万円を受け取っていたなら、その200万円を返した上で、さらに200万円を払う形です。
手元から出ていくのは合わせて400万円。
手付金を高く設定すると、売主側から解除するときの負担も同じだけ重くなります。
親族の間で売却の話がまとまりきっていない物件なら、ここを確かめてから額を決めてください。
相手が動き出したあとは手付では解除できない
民法557条が使えるのは、相手方が契約の履行に着手するまでです。
何をもって着手とみるかは事案ごとに判断され、裁判例も分かれています。
買主が残代金を用意して引き渡しを求めてきた段階は、着手とみられる典型です。
売主の側でも、引き渡しに向けて測量や残置物の撤去を始めれば、着手にあたり得ます。
裁判例の中身は手付解除はいつまで?履行の着手と手付倍返しの裁判例にまとめました。
手付金に上限はありますか
売主が宅地建物取引業者のときだけ、売買代金の2割という上限がかかります。
宅地建物取引業法39条1項の決まりです。
自宅や実家を売る個人の売主には、この上限が当てはまりません。
条文が「宅地建物取引業者がみずから売主となる」場合を名指しで書いているためです。
業者が売主のときは代金の2割まで
4,000万円の物件なら、業者が受け取れる手付金は800万円までになります。
新築の分譲やリフォーム済みの再販で見かける水準でしょう。
同法39条2項では、業者が受け取った手付はどんな名目でも解約手付として扱われます。
買主に不利な特約を付けても、その部分は無効です。
さらに受け取る額が代金の5%(工事完了前)や10%(完了後)を超えると、保全措置が必要になります。
保全措置とは、業者が倒産しても手付金が買主に戻るようにしておく仕組みです。
金融機関による保証、保証保険、指定保管機関への寄託の3通りが用意されています。
個人が売主の取引には、この仕組みがありません。
個人が売主のときと、買取のとき
個人が売主の契約では、2割を超える手付金を申し出る買主は、実務ではまず現れません。
契約の日に数百万円を超える現金を動かすのは、買主の側も避けたい手間だからです。
当社が買主になる買取では、売主が業者ではないので39条の上限が働きません。
当社の買取は最短1日〜2週間前後で決済まで進むため、手付金を預かる期間そのものが短くなります。
売り方ごとの違いは4つの売り方の比較で見比べてください。
手付金が少ないと、売主に何が起きますか
買主が契約から降りる判断が軽くなります。
手付解除は、買主にとって「置いていく金額ぶんの損で済む」話です。
その金額が小さければ、迷う理由も小さくなるでしょう。
手付金は、買主が契約を守る理由を金額に置き換えたものだと考えてください。
50万円と300万円で、買主の迷いはどれだけ違うか
手付金が50万円の契約なら、買主は50万円を捨てれば抜けられます。
300万円なら、同じ判断に6倍の重さがかかります。
他に良い物件が出てきたときに、どちらが踏みとどまるでしょうか。
手付金の額は、買主の本気度をそのまま金額にしたものだと考えてください。
当社が買主の内訳を確かめるのは、手付金が相場より軽いと感じたときです。
値段を下げる交渉と同時に手付金も下げたいと言われたときは、とくに理由を確かめる場面です。
融資特約で解除されたときは全額を返す
買主の住宅ローンが否決されると、融資特約によって契約は白紙解除になります。
このとき手付金は買主に全額返り、売主に違約金は入りません。
手付金をいくらにしていても、この解除は止められません。
効くのは金額ではなく、融資の承認がいつ出るかという日付のほうです。
白紙解除の手順は買主のローンが通らなかったら?融資特約で契約は白紙にで説明しました。
だからこそ、手付解除の期限と融資承認の期限を、どの順番に置くかが問題になります。
受け取った手付金は使わずに置いておく
手付金は、契約が解除されれば返すことになるお金です。
融資特約での白紙解除なら全額、売主からの解除なら倍額を用意します。
住み替えの頭金に充てる予定で使ってしまうと、返す段になって手元が足りません。
決済日まではそのまま置いておき、充てるのは残代金が入ってからにしてください。
判断に迷うときは15分無料相談でご相談ください。
手付解除の期限は、どう決めますか
契約書に「手付解除期限」を日付で書き入れます。
民法557条の「履行の着手」だけを頼りにすると、解除できるかどうかが当日まで分かりません。
日付で区切っておけば、売主も買主も迷わずに済みます。
期限の置き方は2通りある
1つは「契約から1か月後」のように、契約日から数える形です。
もう1つは「決済日の1か月前」のように、引き渡しから逆算する形になります。
どちらでも構いませんが、融資の承認が出る予定日との前後は必ず確かめてください。
承認が出たあとも手付解除ができる期間が残っていると、売主は買主の判断を待つしかありません。
買い先行で住み替える方は、新居の契約日より前に期限が来るように置くと動きやすくなります。
期限を過ぎたあとは違約金の話になる
手付解除期限を過ぎてからの解除には、契約書で定めた違約金が必要です。
売主が宅地建物取引業者のときは、違約金と損害賠償の予定を合わせて代金の2割までに制限されます。
宅地建物取引業法38条の決まりで、2割を超える部分は無効になります。
売主が個人の契約では、この制限はかかりません。
割合は契約書の案を読めば分かるので、契約日の前に目を通しておいてください。
見出しは「手付解除」「違約金」「融資利用の特約」と並んでいることが多いでしょう。
この3つの条項を続けて読むと、どの期間にどの解除ができるかが見えます。
読んでも分からない書き方になっていれば、担当者に日付で説明してもらってください。
次に何をすればよいですか
手付金の額は、売買契約書の案が届いた時点で、たいてい書き込まれています。
契約日の前に案を見せてもらい、3か所だけ確かめてください。
- 手付金の額(売買代金の何%にあたるか)
- 手付解除期限の日付(融資承認の予定日との前後)
- 違約金の割合
この3つが分かっていれば、契約の席で金額の話に戻る必要がなくなります。
気になる条項があれば、案の段階で直してもらうほうが早く済みます。
契約までの段取りは売却の流れに11ステップで並べました。
契約日までに用意する書類は売却に必要な書類で確かめられます。
まだ価格の見当がついていないのであれば、無料査定からお申し込みください。
