仲介手数料無料・半額は売却でも使える?買う側との違い
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士「仲介手数料無料」「仲介手数料半額」という広告を見て、家を売るときも同じように安くなるのかとお考えでしたら、先に結論をお伝えします。
あの広告のほとんどは、賃貸の入居者と、新築の建売住宅を買う人に向けたものです。
福岡市で家やマンションを売る側、つまり売主の仲介手数料は、法律の上限いっぱいで受け取るのが今も一般的です。
当社も、売却の仲介手数料は上限額を基本にしています。
この記事は、広告の「無料・半額」が誰の手数料の話なのかを分けたうえで、売主であるあなたの手数料がどうなるのかまで書いたものです。
福岡市で売る場合の金額も、7区の相場から実際に計算しています。
2. 福岡市で家を売ると、仲介手数料はいくらになりますか
3. 売主向けに「半額」をうたう会社は、何を割引しているのですか
4. 売主の仲介手数料が0円になる形はありますか
5. 媒介契約の前に確かめる2つのこと
6. 次に何をすればよいですか
「仲介手数料無料・半額」の広告は、誰の手数料の話ですか
大半が、賃貸の部屋を借りる人と、新築の建売住宅を買う人に向けた広告です。
検索の言葉は同じ「仲介手数料 無料」でも、売る側と買う側では報酬の受け取り方そのものが違います。
まず、この2つを分けて見てください。
賃貸の「半額」は、もともとの原則に戻しているだけ
居住用の建物の賃貸を不動産会社が仲介するとき、貸主と借主の一方から受け取れる報酬は、原則として借賃1か月分の0.55倍までです。
借賃8万円の部屋なら、借主が払う上限は4万4,000円という計算になります。
1か月分の1.1倍、つまり8万8,000円まで受け取れるのは、依頼を受けるにあたって依頼者の承諾を得ている場合だけです。
しかもこの承諾は、依頼を受ける時点で得ておく必要があります。
あとから取った承諾は認められません。
つまり賃貸の「半額」は、特別な値引きというより、法律が原則としている水準に戻した状態に近いものです。
新築の建売住宅は、買う側が0円になることがある
新築の建売住宅を買うときに仲介手数料0円が成り立つのは、売主が建売業者だからです。
仲介した会社は売主である業者の側から報酬を受け取れるので、買主から受け取らなくても仕事として成り立ちます。
当社も2022年に、福岡県の新築建売を仲介手数料0円でお手伝いするサービスを作りました。
そのときに代表の野上が書いた理由は2つです。
1つは、新築の建売は売主の業者が調査をしていて、建物の保証も10年間ついているため、仲介する会社の仕事が少ないこと。
もう1つは、ポータルサイトへの掲載料や撮影・編集の費用をかけず、買いたい物件をご自身で探してきていただく形にしたことです。
広告にかけるお金を使わないぶんを、手数料0円という形に回しています。
当時の考え方は代表のブログに残しています(新築建売仲介手数料0円のサービス提供開始)。
売る側の手数料は、同じ理屈では下がらない
売主の売却を仲介する場合、その会社が報酬を受け取れる相手は売主しかいません。
買主側にも別の会社が付けば、その会社は買主から受け取ります。
つまり、買う側の0円を成り立たせていた「他の誰かが払っている」という構図が、売主側には最初から無いわけです。
売買の媒介で受け取れる報酬の上限は、売買代金が400万円を超える場合、代金の3%に6万円を加えた額とこれに対する消費税です。
この上限が、売主の仲介手数料の出発点になります。
出典:国交省 報酬の額の告示
福岡市で家を売ると、仲介手数料はいくらになりますか
売買代金が800万円を超えるなら、代金×3%+6万円に消費税を加えた額です。
3,000万円で売れた場合は105万6,000円(税込)になります。
この金額が、広告の「無料・半額」を気にされる理由そのものです。
福岡市7区の3LDKで計算すると
当社が国土交通省の取引価格情報から集計した、福岡市7区の3LDK系マンションの成約価格の中央値で計算すると、次のようになります。
| 区 | 3LDK系の中央値 | 仲介手数料(税込) |
|---|---|---|
| 中央区 | 4,200万円 | 145万2,000円 |
| 早良区 | 3,550万円 | 123万7,500円 |
| 城南区 | 3,000万円 | 105万6,000円 |
| 博多区 | 2,700万円 | 95万7,000円 |
| 西区 | 2,700万円 | 95万7,000円 |
| 東区 | 2,600万円 | 92万4,000円 |
| 南区 | 2,300万円 | 82万5,000円 |
博多区の2,700万円で考えると、手数料は95万7,000円です。
仮にこれが半額になれば、差は47万8,500円になります。
引っ越し代と、荷物の処分費をまとめて払える程度の金額。
気になって当然の差です。
区ごとの価格は福岡市の売却相場のページで、間取り別・面積別までご覧いただけます。
800万円以下なら、計算式そのものが変わる
売買代金が800万円以下の場合は、上の計算式ではなく、30万円に消費税を加えた額を受け取れる特例があります。
2024年7月に、対象が400万円以下から800万円以下へ広がったものです。
当社はこの特例で計算します。
ただし適用には、媒介契約の前のご説明とご同意が必要です。
計算の詳細は800万円以下の不動産売却|仲介手数料の上限33万円(税込)と計算方法にまとめています。
売主向けに「半額」をうたう会社は、何を割引しているのですか
多くは条件付きで、その条件を満たさなければ通常料金に戻ります。
見るべきなのは割引率ではなく、どういうときに割引が消えるのかという部分です。
よくある条件は「買主も自社で見つけたとき」
売主向けの割引で見かけるのは、買主もその会社が自分で見つけた場合に限る、という条件です。
その場合、会社は売主と買主の両方から報酬を受け取れるので、売主側を割り引いても合計額が確保できます。
逆に、他社が連れてきた買主で決まったときは、受け取れるのは売主からの分だけになります。
そこで通常料金に戻るのなら、広告に書かれた「半額」は、結果によって消える条件付きの料金ということです。
この条件には、もう一つ別の問題がついてきます。
自社で買主を見つけたときだけ割引になるなら、他社からの問い合わせを通さない動機が生まれます。
いわゆる囲い込みです。
他社の買主で決まると割引が消える会社に、他社の買主を積極的に探す理由はありません。
売主から見ると、手数料が47万円安くなる代わりに、買主候補の数が減ることになります。
価格が50万円下がれば、割引の効果はそこで消える計算です。
確かめ方は不動産売却の囲い込みとは?レインズで確認する方法と対策に書いています。
条件が広告に書かれているかを見る
割引や値下げをうたう広告は、その条件が分かるように示されていなければなりません。
価格や取引条件について、実際よりも著しく有利だと消費者に誤認させる表示は、景品表示法が禁じる有利誤認表示にあたります。
「半額」と大きく書いてあるのに、適用の条件がどこにも見当たらない。
そういう広告を見つけたら、条件を書面で出してもらってください。
口頭で「だいたい大丈夫です」と言われた条件は、あとで確かめようがありません。
出典:消費者庁 有利誤認表示
金額は媒介契約の前に、説明と合意が要る
仲介手数料は、媒介契約を結ぶ前に、上限の範囲内で金額を説明し、依頼者と合意する必要があります。
国土交通省の解釈・運用の考え方に、そう明記されています。
ですから「売れてから計算します」「だいたい3%です」で媒介契約に進むのは、順番が逆です。
割引があるかないかに関係なく、金額は契約の前に確かめられます。
売主の仲介手数料が0円になる形はありますか
あります。
当社のような不動産会社が物件を直接買い取る形なら、仲介手数料はかかりません。
ただし、0円になるぶん価格が下がるので、手数料だけを見て選ぶと判断を誤ります。
買取で手数料がかからない理由
買取は、当社が買主になる取引です。
売主と買主のあいだを仲介しているわけではないので、仲介の報酬という概念がそもそも発生しません。
そのかわり、当社が転売できる価格で買うことになるため、買取価格は相場の5〜7割程度が目安になります。
内訳は買取価格が相場の5〜7割になる理由|差額の内訳に書きました。
手数料ではなく、手取りで並べて比べる
博多区の3LDK、中央値の2,700万円で並べてみます。
仲介で2,700万円で売れた場合、仲介手数料95万7,000円を引いた残りは2,604万3,000円です。
同じ物件を買取で手放すと、価格は相場の6割で1,620万円。
仲介手数料は0円ですから、そのまま1,620万円が残ります。
差は984万3,000円。
仲介手数料の95万7,000円の、10倍を超える開きになります。
手数料0円という言葉だけで選ぶと、この差を見落とします。
買取が向くのは、期日が決まっている場合と、近所に知られずに手放したい場合です。
媒介契約の前に確かめる2つのこと
確かめるのは、手数料が下がるときに何が減るのかと、実費の扱いです。
どちらも、媒介契約を結ぶ前なら紙で出してもらえます。
減るのは作業か、それとも売る力か
手数料が下がるときは、必ずどこかが減っています。
売主が書類の取得や写真の撮影を引き受けて、会社の作業時間が減るのなら、減ったのは作業です。
一方で、ポータルサイトへの掲載を省く、レインズへの登録を遅らせる、内覧の対応を減らすという形で下がるなら、減っているのは売る力です。
後者は、売却価格そのものに跳ね返ります。
確かめ方は難しくありません。
レインズに登録する期日、ポータルサイトのどこに何枚の写真を出すか、問い合わせに何時間以内で返すか。
この3つを媒介契約の前に聞いて、通常料金のときと同じ答えが返ってくるなら、減っているのは作業のほうです。
ですから聞く順番は「何%引きですか」ではなく、「何の作業が無くなるのですか」からにしてください。
実費は手数料とは別にかかる
手数料が安くても、実費は別に出ていきます。
マンションなら管理会社が発行する書類の費用、戸建てなら登記や測量の費用です。
抵当権の抹消は1〜2万円台、境界確定測量は40〜60万円程度が目安です。
手数料の割引額が47万円でも、測量が必要な土地なら、その差はほぼ消えてしまう計算になります。
費用の全体像は手取り計算シミュレーターで並べてご確認いただけます。
次に何をすればよいですか
まず、見ている広告が売る側の話なのか買う側の話なのかを、もう一度確かめてください。
売る側の話であれば、書面で求めるものは2つです。
割引の条件と、条件を満たさなかったときの金額。
この2つが紙に出てくれば、あとから「言っていない」が起きません。
そのうえで、ご自身の物件でいくら残るのかを知りたい場合は、手取り計算シミュレーターか無料査定をお使いください。
福岡市の相場をもとに、価格と費用を並べてお出しします。
なお当社には、売主が売却の準備を担当するぶん、当社の通常料金から20%または30%を割り引くじぶん売却という仕組みがあります。
対象は福岡市と近郊の区分所有マンションで、無料や半額ではありません。
割引が自動で適用されることもありません。
担当していただく範囲と割引率、割引後の金額を、媒介契約の前に書面でご提示したうえで決める形にしています。
