買取価格が相場の5〜7割になる理由|差額の内訳
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士不動産の買取価格は、市場相場の5〜7割程度が目安です。
この記事では、その差額がどこへ消えているのかを1つずつ分解します。
安く買い叩かれているのではと感じたまま決めると、買取を選んでも仲介を選んでも後から迷いが残ります。
当社は福岡市博多区千代に事務所を構え、仲介と買取の両方を自社で扱う会社です。
ここでは博多区のマンション3LDK系の中央値2,700万円を例に、仲介の手取りと買取価格を並べます。
読んだあとに決めていただきたいのは、買取に進むか、仲介を何か月走らせてから考えるかの1点です。
2. 差額は具体的に何に消えるのですか?
3. 業者が引き受けているリスクは何ですか?
4. 下がるぶんで、売主は何を買っているのですか?
5. 手取りで比べるには、どこを見ればよいですか?
6. 買取を決める前に試せることはありますか?
買取価格はなぜ相場の5〜7割になるのですか?
下がるぶんは値引きではなく、買い取った業者がそのあと払う費用と、抱えるリスクの合計です。
業者は住むために買うのではなく、直して売り直すために買います。
つまり買取価格は「再販できる値段から、そこへ持っていくまでの費用を引いた残り」という形で決まります。
手数料と価格のどちらが手取りに効くかは、3つの売り方を並べると見えます(福岡で仲介手数料を抑える3つの方法|手取りで比べる)。
博多区のマンション3LDKで、仲介と買取を並べる
国土交通省の取引価格情報をもとに当社が集計したところ、博多区のマンション3LDK系の中央値は2,700万円でした。
集計の対象は2024年第2四半期から2026年第1四半期までの博多区のマンション951件で、3LDK系はそのうち127件です。
この2,700万円で仲介が成立した場合、当社が受け取る仲介手数料は95万7,000円になります。
計算は宅地建物取引業法の報酬額の上限どおりで、2,700万円×3%+6万円に消費税を足した金額です。
手数料だけを引いた手取りは2,604万円。
いっぽう買取なら、5割で1,350万円、7割で1,890万円が目安になります。
仲介手数料が無いぶんを足してから比べる
買取では当社が直接買うので、売主から仲介手数料をいただきません。
そのため「買取価格は手数料が引かれない」というぶんを足してから比べる必要があります。
それでも上の例では、買取7割で714万円、買取5割で1,254万円のひらきが残ります。
手数料の有無で埋まるのは95万円ぶんだけで、残りは別のところへ消えているわけです。
どこへ消えているのかを、次の章で項目に割ります。
差額は具体的に何に消えるのですか?
金額の大きいものは4つあり、買うときの税金・リフォーム代・再販の消費税・売れるまでの資金の利息です。
いずれも仲介で個人が売る場合には出てこない費用で、買主が業者に替わったことで初めて発生します。
買うときの税金は、買主である業者が払う
不動産を買った人には不動産取得税がかかり、福岡県の場合は土地と住宅で評価額の3%です。
対象になるのは2027年3月31日までの取得で、宅地の評価額を半分にして計算する特例もあります。
税額の元になるのは売買価格ではなく、市町村の固定資産課税台帳に登録された評価額です。
これに所有権移転の登録免許税と司法書士の報酬が乗ります。
仲介で個人に売れば、これらを払うのは買主なので、売主の手取りには関係しません。
出典:福岡県 不動産取得税
リフォーム代は再販価格の20%が目安になる
買取再販には不動産取得税の軽減措置があり、福岡県のページに要件が書かれています。
要件は、宅建業者が築10年以上の中古住宅を取得し、2年以内に耐震化などのリフォームをして個人に売り、その個人が自分の住まいにすることです。
工事費は、個人への売却価格の20%以上であることが求められます。
ただし20%にあたる金額が300万円を超えるときは、300万円以上で足ります。
2,700万円で再販するなら20%は540万円なので、基準になるのは300万円のほう。
軽減が通れば、平成9年4月1日以降に新築された住宅なら1,200万円に3%を掛けた36万円が減額されます。
裏を返すと、軽減を取る前提で動く業者は、300万円以上の工事費を仕入れの段階で見込んでいることになります。
この措置の対象も2027年3月31日までの取得です。
再販の消費税は、個人の売主にはかからない
消費税のうち、土地の譲渡は非課税で、建物の譲渡は課税の対象です。
そして事業者でない個人が自宅を売る場合、建物にも消費税はかかりません。
ここが買取の価格差を生む、意外に大きな一項目です。
業者が個人から買うとき、その建物に消費税は乗りません。
ところが業者が売るときには、建物部分が課税の対象になります。
再販価格2,700万円のうち建物が税込1,100万円だとすると、そこに含まれる消費税は100万円。
仲介手数料の95万7,000円とほぼ同じ金額が、売主ではなく業者の側で消えていきます。
売れるまでの利息と、売れ残ったときの値下げ
買取の代金は業者が金融機関から借りて用意するため、売れるまでの月数ぶん利息が出ます。
2,700万円の物件を1,890万円で仕入れたなら、その1,890万円は売れる日まで寝たままの資金です。
固定資産税・管理費・修繕積立金も、業者が持っている間は業者の負担です。
そして予定どおりに売れなければ、業者は自分の再販価格を下げます。
その値下げ分をあらかじめ織り込んでおかないと、仕入れた物件が赤字になるからです。
仲介なら、この売れ残りの時間を背負うのは売主自身。
買取では、そこを業者が代わりに背負う形に入れ替わります。
業者が引き受けているリスクは何ですか?
引渡し後の契約不適合責任を2年以上負うことと、買主が見つかるまでの期間を抱えることの2つです。
どちらも価格に織り込まれていて、金額として目には見えません。
宅建業者が売主になると、責任期間を2年より短くできない
宅地建物取引業法40条は、業者が自ら売主になる売買について、買主に不利な特約を禁じています。
許されるのは、引渡しの日から2年以上となる期間を定める特約だけ。
これに反する特約は無効になります。
つまり業者が再販した家に雨漏りや配管の不具合が出れば、引渡しから2年のあいだは業者が直す側に立ちます。
個人が売主になる仲介では、この条文は当てはまりません。
期間を3か月に縮めたり、古家付き土地として免責にする契約も、買主が納得すれば結べます。
個人の売主が自由に決められるその部分を、業者は法律で固定されているわけです。
売れない期間の費用は、全部業者の側で止まる
仲介で3か月売れなければ、売主に起きるのは「まだ売れていない」という状態です。
買取で3か月売れなければ、業者には利息と保有費用が実額で積み上がります。
再販しにくい条件が重なるほど、業者はこの期間を長めに見積もります。
再販しにくい条件とは、旧耐震・借地・再建築不可・極端に狭い土地などです。
借地の家で地主の承諾が取れるかどうかは、借地権の家を売る手順で確かめてください。
条件が重い物件で買取価格が5割に寄るのは、ここが理由になります。
なお事故物件の買取は相場の3〜5割になることが多く、通常の買取よりさらに下がります。
この線引きについては福岡市の事故物件は買取で手放せるかに分けて書きました。
下がるぶんで、売主は何を買っているのですか?
買っているのは金額ではなく、引渡し日が先に決まることと、買主を探す期間が無くなることです。
この2つに値段を付けられるかどうかで、買取が合う人と合わない人が分かれます。
期日が先に決まる
仲介では、買主がいつ現れるかを誰にも約束できません。
相続税の納期、施設の入居金、住み替え先の決済日など、動かせない期日があるときに効くのが買取です。
当社の買取は最短1日〜2週間前後で現金化まで進みます。
「3か月後の月末に必ず現金が要る」という形の相談なら、価格より期日を優先した方が結果が良くなります。
詳しい進め方は福岡市の不動産買取のページにまとめました。
内覧と広告が無くなる
仲介では、室内を写真に撮り、見知らぬ方を家に通すことになります。
買取なら買主は当社だけなので、広告は出さず、内覧も1回で終わりです。
近所や親族に知られたくないという事情があるとき、この差は金額に換算しにくい価値を持ちます。
片付けについても同じです。
残置物をそのまま、壊れた設備もそのままで引き渡せるので、処分費と工事の立ち会いが消えます。
手取りで比べるには、どこを見ればよいですか?
価格だけを並べず、仲介手数料・譲渡所得税・持っている間の費用の3つを引いた後の金額で比べるのが正解です。
引く順番を間違えると、仲介が有利な差が実際より大きく見えます。
税引き後で比べると差は縮むが、消えない
先ほどの2,700万円の例で、取得費が分からない相続物件だったとしましょう。
概算取得費は売却価格の5%なので、仲介なら135万円、買取7割なら94万5,000円になります。
所有期間が5年を超えていれば、長期譲渡所得の税率は20.315%です。
仲介の譲渡所得は2,700万円から135万円と95万7,000円を引いた2,469万円で、税額は約502万円。
買取7割の譲渡所得は1,890万円から94万5,000円を引いた1,795万円で、税額は約365万円です。
税引き後の手取りを並べると、仲介は約2,103万円、買取7割は約1,525万円になります。
税引き前は714万円あった差が、税引き後では約578万円まで縮みます。
縮むのは、安く売れば譲渡益も小さくなり、そのぶん税金も減るからです。
いっぽう、ご自身が住んでいた家で3,000万円の特別控除が使えるケースなら、同じ金額でもどちらも税額は出ません。
その場合の差は714万円のまま残ります。
持っている間の費用を、売れるまでの月数ぶん足す
仲介が有利に出た578万円は、すぐ売れた場合の数字です。
売れるまでの固定資産税・管理費・修繕積立金・電気と水道の基本料金は、その月数ぶん売主が払い続けます。
空き家なら草刈りや巡回の費用も乗ります。
月3万円の負担で1年かかれば36万円で、578万円の6%ほど。
遠方からの往復や、心理的な負担までは金額になりません。
この引き算を数字で確かめられるのが手取りの試算です。
800万円以下は仲介手数料の計算が変わる
売却価格が低い物件では、仲介手数料の計算式そのものが変わります。
低廉な空家等の特例により、当社は800万円以下の物件の仲介手数料を30万円+消費税で計算します。
この特例を使うには、媒介契約の前に説明して合意しておくことが必要です。
価格が低い帯では、手数料が価格に占める比率が上がります。
つまり買取と仲介の差が、2,700万円の例よりも小さくなる帯があるということです。
計算の詳細は800万円以下の売却と仲介手数料に書きました。
買取を決める前に試せることはありますか?
当社に登録のある購入希望者に当てる方法と、期限から逆算して仲介を走らせる期間を区切る方法があります。
どちらも買取の選択肢を手放さずに試せるので、順番としては先に置いた方が得です。
買いたい方の条件に当ててから決める
当社には、買いたい方の条件が登録されています。
エリア・種別・予算・時期を公開していて、購入希望者の条件一覧でご覧いただけます。
条件に合う方がいれば、広告を出さずに個人の買主へ直接つなげるということです。
この道が通れば、価格は仲介の水準で、期間は買取に近づきます。
合わなければ買取の見積りに戻るだけなので、売主が失うものはありません。
期限から逆算して、仲介の期間を区切る
「3か月だけ仲介で出し、売れなければ買取」という決め方もできます。
先に買取価格を書面で出しておけば、下限が分かった状態で仲介を走らせられるからです。
仲介・買取・じぶん売却・リースバックの4つは売り方の比較で並べて見られます。
査定額が買取価格に近い数字だったときの見分け方は、査定額が安いと感じたらに書きました。
当社は仲介と買取の両方を自社で扱うので、同じ物件で両方の金額を並べてお出しできます。
まずは無料査定で、仲介の想定価格と買取価格の2つをご確認ください。
博多区の相場をご自身で確かめたい方は、福岡市博多区の売却相場もあわせてご覧ください。
