不動産売却の手取りシミュレーション|試算の使い方と見落とし
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士福岡市で自宅や実家を売ろうかと考えたとき、最初に知りたいのは「手元にいくら残るか」です。
当社のサイトには、その概算を出す費用・手取りシミュレーターがあります。
入れるのは、売買代金・買ったときの価格・住宅ローンの残債の3つから。
ただ、この画面でつまずきやすいのは入力ではなく、出てきた数字の読み方でした。
結果には金額が2つ並び、上は引渡しの日、下は翌年の確定申告を済ませたあとの金額です。
この記事で説明するのは、画面に何を入れるのか、2つの金額の違い、試算で見落としやすい費用、そして画面が反映していない3つです。
手取りが引かれる順番そのものは不動産売却の手取りの計算方法、費用の相場は費用の内訳と手取りの目安にまとめています。
2. 入れる3つの金額は、どこを見て決めますか?
3. 結果に出る2つの金額は、それぞれ何の金額ですか?
4. 試算で見落としやすいのはどこですか?
5. 3,000万円控除が使えるかどうかで、手取りはどれだけ変わりますか?
6. シミュレーターが反映していないものは何ですか?
不動産売却の手取りは、自分でどこまで試算できますか?
売買代金の見込みが決まっていれば、仲介手数料・印紙税・登記費用・譲渡所得税の4つは自分で概算できます。
当社のシミュレーターが計算しているのも、この4つです。
逆に自分では決められないのが売買代金そのもので、そこだけは査定が要ります。
4つの質問で、使える控除と税率が決まります
画面は金額の入力より先に、4つの質問を出します。
Q1は不動産の種類(更地・戸建て・マンション)、Q2は使い方(自分が住んでいた・相続した・それ以外)。
Q3が特例の要件の確認で、Q4が所有していた期間です。
この4つで、3,000万円特別控除を差し引くかどうかと、譲渡所得にかける税率が決まります。
Q3で「いいえ・わからない」を選んでも計算は止まりません。
控除を使わない金額が出るので、低い側の見込みとして読んでください。
試算は査定の代わりにはなりません
売買代金の欄に入れるのは、売主が仮に置いた数字です。
ここが500万円ずれれば、手取りも500万円前後ずれます。
当社が無料査定でお出しするのは、近い条件の成約事例と、現地を見たうえでの価格です。
シミュレーターの役目は「その価格で売れたとして、いくら残るか」を先に確かめること。
入れる3つの金額は、どこを見て決めますか?
売買代金は当社の相場ページ、買ったときの価格は売買契約書、ローン残債は返済予定表か年末残高証明書で確かめます。
売買代金は福岡市7区の相場から仮に置く
当社は福岡市の売却相場に、区ごと・種別ごとの中央値を載せています。
たとえば東区の戸建ては、取引280件の中央値が3,550万円でした。
博多区のマンションなら、3LDK系127件の中央値が2,700万円。
この中央値をいったん入れて計算し、査定額が出たら入れ替えるのが早い順番です。
同じ区の中でも、価格を動かすのは戸建てなら敷地の広さ、マンションなら専有面積です。
買ったときの価格が分からないときは、チェックを使う
買ったときの価格の欄には「わからない(売買代金の5%で概算)」というチェックがあります。
相続した家を売る場合は、亡くなった方が買ったときの価格を引き継ぎます。
ただし概算取得費は売却価格の5%なので、3,550万円の家なら177万円ほどにしかなりません。
契約書が1枚出てくるだけで税額が大きく下がるので、押し入れを探すのは試算より先です。
「その他の費用を調整する」を開いて、目安を書き換える
金額の画面の下にある「その他の費用を調整する」を開くと、解体・測量・引越し・残置物の処分・ハウスクリーニング・リフォームの欄が出ます。
目安の数字が最初から入っているので、見積りがあれば書き換え、要らない項目は0にしてください。
木造戸建ての解体費は1坪5〜8万円、30坪で150〜240万円ほど。
境界確定測量は40〜60万円程度で、マンションを選んだときは欄そのものが出ません。
同じ場所に「抵当権がついている」と「登記上の住所から引越しをしている」の2つのチェックもあります。
抵当権抹消は約1万7000円、住所変更登記は約1万4000円で、どちらもチェックを入れない限り0のままです。
結果に出る2つの金額は、それぞれ何の金額ですか?
上の「引渡し時にお手元に残るお金」は決済の日に精算される金額で、下の「税金を払った後に残るお金」は翌年の申告を済ませたあとの金額です。
引渡し時にお手元に残るお金
決済の日には、買主からの代金で住宅ローンを完済し、仲介手数料と登記費用を払い、残りが売主の口座に入ります。
東区の戸建てを3,550万円で売り、ローン残債が800万円、引越しと片付けに25万円かかった場合で見てみます。
仲介手数料は123万7500円、印紙税は1万円、抵当権抹消が約1万7000円。
差し引かれるのは合計951万円ほどで、引渡し時の手取りは約2,598万円です。
ローン残債と費用の合計が売買代金を上回るときは、結果に「オーバーローン」と出ます。
そのときに選ぶのは、不足分を自己資金で補うか、住み替えローンを使うか、任意売却に進むかの3つ。
税金を払った後に残るお金
譲渡所得税と住民税は、引渡しの日ではなく翌年の確定申告で納めます。
申告の期間は、譲渡した年の翌年2月16日から3月15日まで。
先の例で買った価格が分からず概算取得費(売却価格の5%)を使うと、3,000万円特別控除のあとに残る課税譲渡所得は247万円ほどになります。
長期譲渡(所有5年超)の税率20.315%をかけると、税額は約50万円。
引渡し時に残った2,598万円から、翌年さらに50万円が出ていく、という読み方です。
結果の画面には「この結果を保存する(印刷・PDF)」があり、試算日と条件を1枚に残せます。
ご家族と相談するときは、口で伝えるよりこの1枚を見ながら話したほうが早く決まります。
試算で見落としやすいのはどこですか?
見落としが起きるのは、ローン残債の扱い、チェックを忘れる登記費用、そして欄そのものが無い固定資産税の精算金の3か所です。
ローン残債は手取りから引かれるが、経費にはならない
住宅ローンの残債は決済の日に一括返済するので、引渡し時の手取りからは確かに引かれます。
ところが譲渡所得の計算では、残債は取得費にも譲渡費用にも入りません。
借入の返済は、その家を買うため・売るためにかかった費用ではないからです。
残債が多い売主ほど「手元に残らないのに税金がかかる」という形になります。
この順番を取り違えると試算が合わないので、手取りの計算方法も合わせて読んでください。
福岡市の固定資産税の精算金には、欄がありません
その年度の固定資産税を市に納める義務があるのは、1月1日時点の所有者、つまり売主です。
引渡し日から年末までの分を買主から受け取るのが商慣習で、年税額12万円の家を9月1日に引き渡すなら約4万円。
シミュレーターにはこの精算金を入れる欄が無いので、実際の手取りはその分だけ増えます。
受け取った精算金は、譲渡所得の収入金額に算入されるお金です。
福岡市の納期は4月・7月・12月・翌年2月の年4回なので、秋に引き渡すと精算が済んだあとに第3期と第4期の納付書が売主あてに届きます。
出典:福岡市 固定資産税
仲介手数料は、売り方によって下がることがあります
画面に出る仲介手数料は、法定の上限額(税込)で計算したものです。
結果のいちばん下には、じぶん売却を選んだ場合の20%OFF・30%OFFの金額も並びます。
売主が内覧の案内などを分担すると、当社の通常料金から仲介手数料を割り引く売り方。
同じ売買代金でも手取りが変わるので、2つを見比べてから売り方を決められます。
3,000万円控除が使えるかどうかで、手取りはどれだけ変わりますか?
先の東区の例では、控除を使えると税額が約50万円、使えないと約660万円で、差は約610万円でした。
マイホームは、住まなくなって3年目の年末まで
自分が住んでいた家を売る場合、譲渡所得から最大3,000万円を差し引けます。
条件は、住まなくなった日から3年目の年末までに売ること。
所有期間の長さは問われないので、買って3年の家でも対象です。
所有10年超のマイホームなら、控除後に残る利益のうち6,000万円以下の部分に軽減税率14.21%が使えます。
相続した空き家は、要件がまったく別
相続した家には「相続空き家の特例」があり、マイホームとは要件が別に決まっています。
期限は、亡くなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。
建物が1981年5月31日以前の建築で、相続の直前まで亡くなった方がひとりで住んでいたことも要件に入ります。
さらに売却価格が1億円以下であることも条件で、区分所有建物であるマンションは対象外。
要件を満たすか分からないときはQ3で「いいえ・わからない」を選ぶと、控除なしの高い側の税額が出ます。
期限の数え方は空き家3,000万円控除の期限で確かめてください。
シミュレーターが反映していないものは何ですか?
建物の減価償却、買換え特例、譲渡損失の繰越控除の3つは、計算に入っていません。
建物の取得費は、本来なら減価償却を引く
買ったときの価格の欄に入れた金額は、そのまま取得費として使われます。
本来の取得費は、建物の分だけ年数に応じた減価償却費を差し引いた額です。
事業に使っていない建物は「取得価額×0.9×償却率×経過年数」で計算し、償却率は木造0.031、鉄筋コンクリート0.015。
建物1,500万円の木造を20年持っていた場合、差し引く額は837万円になります。
取得費が837万円減るとその分だけ譲渡所得が増えるので、税率20.315%なら約170万円の差。
買ったときの価格を入れて計算した場合、建物のある物件では画面の税額が低めに出ます。
買換え特例と譲渡損失の繰越控除は、画面の外
住み替えで使う買換え特例と、売って損が出たときの繰越控除は反映されません。
買換え特例は令和8年度の税制改正で2年延長されたので、住み替えを考えている方は買換え特例の延長も見てください。
譲渡損失の繰越控除は、マイホームの売却など使える場面が限られた特例です。
どちらか当てはまりそうなときは、申告の前に税理士へ確かめてください。
当社は税額そのものの判断をしません(税理士法52条)。
画面の注記にも「正確な金額は税理士・税務署に」と書いてあるとおりです。
試算のあとに、何をしますか
概算が出たら、次は売買代金の数字を本物にする番です。
当社は無料査定で価格の根拠をお見せし、その条件をそのまま入れ直して手取りを出します。
売ると決めていない段階なら、15分無料相談で試算の読み方だけを聞いていただいて構いません。
当社は公益社団法人福岡県宅地建物取引業協会の会員で、事務所は博多区千代にあります。
税額の個別の判断は提携する税理士、登記は司法書士が担当します。
