印紙税の軽減は2027年3月31日まで|差額のために売り急ぐか
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士福岡市で自宅や実家の売却を考えている方から、印紙税のことを聞かれます。
「軽減が2027年3月31日で終わると聞いたので、それまでに売ったほうが得ですか」という質問です。
先に結論を書きます。
1,000万円を超え5,000万円以下の契約書なら、期限の前後で変わる税額は1万円だけです。
福岡市の3LDK系マンションの中央値は、7区のどこでもこの価格帯に入ります。
つまり福岡市の売主の多くにとって、この期限が動かす金額は1万円で固定されています。
この記事は、その1万円が売り時を前倒しする理由になるかどうかを、売却費用の全体と他の期限に並べて整理したものです。
2. 期限の基準は契約日ですか、引渡し日ですか?
3. 軽減が終わると、いくら増えますか?
4. この1万円のために売り急ぐべきですか?
5. 期限をまたぐとき、契約日をどう決めますか?
6. 福岡市の売主が、次にすること
印紙税の軽減はいつまで使えますか?
2027年(令和9年)3月31日までに作成される「不動産の譲渡に関する契約書」までです。
不動産の売買契約書は印紙税法の課税文書にあたり、契約書に書かれた金額に応じて印紙税がかかります。
いまはその税額が本来の額より低く抑えられており、その扱いに期限が付いています。
いま貼る収入印紙はいくらですか?
決まっているのは、契約金額の帯ごとの税額です。
| 契約金額 | 軽減後の印紙税 |
|---|---|
| 500万円超 1,000万円以下 | 5,000円 |
| 1,000万円超 5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 3万円 |
| 1億円超 5億円以下 | 6万円 |
福岡市の戸建て・マンションの売却は、そのほとんどが上から2番目の帯に入ります。
金額の計算そのものは、印紙税はいくらかの記事に価格帯の早見表と消費税の扱いまで書いています。
この軽減は、いつから続いているものですか?
続いているのは2014年(平成26年)4月1日からです。
これまで何度か期限が延ばされ、いまの期限が2027年3月31日です。
次も延長されるかどうかは、この記事を書いている時点では決まっていません。
当社は、延びる前提でも終わる前提でも売却の予定を組まないようにしています。
どちらに転んでも、売主の手取りが動くのは1万円だからです。
軽減が当たらない契約書はありますか?
契約金額が10万円以下の契約書は、この軽減の対象に入りません。
不動産の売買でこの金額に収まることはまずないので、売主が心配する場面はほとんどないでしょう。
気をつけたいのは、売買契約を結んだあとに作る変更契約書のほうです。
価格を下げる合意をして変更契約書を作ると、その文書にもあらためて印紙税がかかることがあります。
変更契約書を作る前に、印紙が要るかどうかを担当者へ確かめてください。
期限の基準は契約日ですか、引渡し日ですか?
基準になるのは、契約書を作成した日です。
引渡しの日でも、決済の日でも、登記が終わった日でもありません。
印紙税は「文書」にかかる税金なので、その文書がいつ作られたかだけを見ます。
2027年3月に契約して、5月に引き渡す場合はどうなりますか?
軽減後の税額で済みます。
売買契約を結んで契約書に署名押印したのが3月31日までであれば、引渡しが4月以降にずれても税額は変わりません。
不動産の売買では、契約から引渡しまで1〜3か月あくことが珍しくありません。
住宅ローンを使う買主の審査や、売主側の荷物の整理が入るためです。
この期間があるおかげで、期限を意識するのは引渡しではなく契約のほうになります。
引渡しを前倒しすれば安くなりますか?
安くなりません。
印紙税が見ているのは、先に書いたとおり契約書を作った日だけだからです。
引渡しを1か月早めても、貼る印紙は1円も変わりません。
ここで混ざりやすいのが固定資産税の精算です。
売却年の固定資産税は引渡し日を基準に日割りで精算し、九州では1月1日を起算日とするのが一般的です。
印紙税は契約日、固定資産税の精算は引渡し日と、同じ売却の中で基準日が分かれています。
日程をずらす相談をするときは、どちらの日を動かす話なのかを分けてください。
福岡市の起算日と納期は固定資産税の日割り精算にまとめています。
軽減が終わると、いくら増えますか?
1,000万円超5,000万円以下の契約書で、1万円から本則の2万円に戻ります。
売主が負担する差額は1万円です。
売買契約書は売主用と買主用の2通を作り、それぞれが自分の1通分の印紙を負担するのが通例になっています。
価格帯ごとの差額はいくらですか?
| 契約金額 | 2027年3月31日まで | それ以降 | 差 |
|---|---|---|---|
| 500万円超 1,000万円以下 | 5,000円 | 1万円 | 5,000円 |
| 1,000万円超 5,000万円以下 | 1万円 | 2万円 | 1万円 |
| 5,000万円超 1億円以下 | 3万円 | 6万円 | 3万円 |
| 1億円超 5億円以下 | 6万円 | 10万円 | 4万円 |
差が3万円を超えるのは、契約金額が5,000万円を超えてからです。
福岡市の相場だと、どの帯に入りますか?
当社が国土交通省の取引価格情報から集計した3LDK系マンションの中央値は、次のとおりです。
| 区 | 3LDK系マンションの中央値 |
|---|---|
| 中央区 | 4,200万円 |
| 早良区 | 3,550万円 |
| 城南区 | 3,000万円 |
| 博多区・西区 | 2,700万円 |
| 東区 | 2,600万円 |
| 南区 | 2,300万円 |
いちばん高い中央区といちばん低い南区で1,900万円の開きがあります。
それでも7区すべてが1,000万円超5,000万円以下という同じ帯に収まります。
区によって差額が変わらないのは、このためです。
区ごとの間取り別・面積別の相場は福岡市の相場ページでご覧いただけます。
戸建てと土地でも同じですか?
戸建てはおおむね同じで、帯をまたぐのは土地のほうです。
当社の集計では、戸建ての中央値は東区の3,550万円から中央区の6,250万円まで並びます。
5,000万円を超えるのは中央区だけで、そこでの差額は3万円です。
土地の分かれ方は、もっとはっきりしています。
南区3,200万円・西区3,100万円に対し、博多区は8,800万円、中央区は1億2,500万円でした。
博多区の土地なら差額は3万円、中央区の土地なら4万円です。
売るものが土地で、しかも博多区や中央区であれば、期限をまたぐ影響は1万円では済みません。
それでも数万円の話であることは変わらないので、判断の軸は次の章のとおりです。
この1万円のために売り急ぐべきですか?
当社は勧めていません。
売却で動く他の金額と比べたときに、桁が2つ違うからです。
期限を理由に売り出し時期や価格の判断を早めると、そちらで失うほうが大きくなります。
売却費用の全体では、どれくらいの位置ですか?
売却にかかる費用の目安は、売買代金の4〜6%程度です。
仲介手数料・印紙税・登記費用・測量費・引越し費用がここに含まれます。
3,000万円で売れた場合なら120〜180万円になります。
印紙税の差額1万円は、その1%にも届きません。
ご自身の物件での内訳は費用シミュレーションで試算できます。
期限を切って売ると、価格はどう動きますか?
「この日までに契約したい」と決めて売り出すと、価格を見直す判断が早まります。
3,000万円の物件で1%下げれば30万円です。
印紙税の差額1万円を確実に取るために、30万円が動く判断を早める取引になっていないか。
ここを並べて見てから決めてください。
当社が扱った戸建てで、住み替えが済んでいて「できる限り早く売りたい」というご要望の売却がありました。
そのときも、期限だけで走らずに相場感の洗い出しから始め、売却までのゴールを決めてから買主を探しています。
期限と金額は、どちらかを捨てるものではなく、一緒に置いて見るものです。
もっと大きい期限は別にありませんか?
あります。
売主の手取りを数十万円から数百万円動かす期限は、印紙税ではなく譲渡所得の特例のほうです。
- 居住用財産の3,000万円特別控除は、住まなくなってから3年目の年末まで
- 相続財産を売ったときの取得費加算は、相続開始から3年10か月以内
- 相続登記の申請義務化は2024年4月から始まり、期限を過ぎると過料の対象になる
3,000万円控除が使えるかどうかで、譲渡所得税は数百万円単位で変わります。
印紙税の1万円を気にして、こちらの期限を落とすほうがはるかに惜しい結果を生みます。
売却のご相談で当社がまず日付を伺うのは、この3つのほうです。
期限の一覧は不動産売却の期限カレンダーに、取得費加算の数え方は取得費加算の特例にまとめています。
期限をまたぐとき、契約日をどう決めますか?
契約日は、売り出しの時期から逆算して決まります。
売主が「3月31日に契約する」と宣言して決まるものではありません。
買主が現れ、条件がまとまって初めて契約日が置けるからです。
逆算はどこから始めますか?
売り出しから買主が決まるまでの期間を先に見積もります。
当社が査定のときにお伝えするのは、この期間と価格の関係です。
そのうえで、契約したい時期に間に合う売り出し日を決めます。
2027年3月までに契約したいのであれば、逆算の起点は売り出しの月です。
売り出してすぐ買主が決まる物件もあれば、半年かかる物件もあります。
この幅は価格の置き方と、その物件を探している人の数で変わるものです。
期間の逆算のしかたは福岡市の不動産売却にかかる期間にまとめています。
ここで決めるのは売り出し日であって、値下げの予定ではありません。
売り出し価格をどう置くかは売り出し価格の決め方に書いています。
印紙そのものを無くす方法はありますか?
電子契約であれば収入印紙は要りません。
印紙税法が対象とする「文書」は紙で作られたものを指し、電磁的記録はその対象に含まれないためです。
ただし電子契約を選ぶには、売主と買主の双方の合意が要ります。
どちらか一方でも紙の契約書を希望すれば、通常どおり印紙を用意することになるでしょう。
期限の前後どちらであっても、電子契約なら印紙税の話そのものが消えます。
福岡市の売主が、次にすること
印紙税の期限は、売り時を決める材料としては小さすぎます。
売り時を決めるのは、相場・ご自身の事情・譲渡所得の特例の3つです。
印紙税は、そのどれよりもあとに出てくる話になります。
契約書を作る段になって初めて、いくらの印紙を貼るかが決まるからです。
費用の全体を先に見る
印紙税を含めた費用の合計を、ご自身の想定価格で出してみてください。
1万円が全体のどこにあるかが分かれば、迷いはそこで終わります。
試算は費用シミュレーションで数分です。
相場と期限を一緒に相談する
当社は、媒介契約を結ぶ前でも相場のご説明・売り方のご相談・費用の試算まで無料で承っています。
3,000万円控除や取得費加算の期限が近い方は、査定の前にその日付をお持ちください。
どの期限に間に合わせる売却なのかが決まると、売り出し時期と価格の置き方も決まります。
ご相談は無料査定から承ります。
