駐車場の査定|土地の値段と収益のどちらで見る?
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士駐車場の土地を査定に出すと、何を見て金額が決まるのか。
月々の駐車場代から計算されると思っている方が多いのですが、実際は逆です。
駐車場の土地は、多くの場合、土地としての値段のほうが賃料から逆算した金額を上回ります。
賃料を軸に見るのは、建物や設備が値段の大半を占める物件のほうです。
この記事は、福岡市内に駐車場の土地をお持ちで、査定を頼む前に金額の決まり方を知っておきたいオーナーに向けて書きました。
当社は不動産管理で駐車場の管理も承っているため、売るか続けるかで迷っている段階のご相談も受けています。
更地にして売るか駐車場のまま売るかの選び方は駐車場の土地は更地にして売る?そのまま売る?にまとめたので、ここでは査定の中身を扱います。
2. なぜ土地としての値段が上回りやすいのですか
3. 査定では現地の何を見られますか
4. 福岡市の地価は自分で調べられますか
5. 福岡市の駐車場で、査定に関わる市の仕組みはありますか
6. 査定を頼む前に、何を用意すればよいですか
駐車場の査定は、土地と収益のどちらで見ますか
土地としての値段を軸に見て、収益からの逆算は参考として並べる、というのが基本の形です。
駐車場は、建物が無いか、あっても精算機と看板とラインだけ。
値段を作っているのはほとんど土地そのものなので、土地の取引事例から入るのが素直な順番です。
土地として見るとは、何を見ることか
近くで実際に売買された土地の1㎡あたりの単価を集め、その土地の面積と条件に合わせて調整していきます。
そのときの目安として、国が公表する地価公示や、相続税の計算に使う路線価も横に置きます。
どれか1つで決めるのではなく、取引事例を中心に置いて、公的な価格で大きく外れていないかを確かめる使い方です。
収益で見るとは、何を見ることか
年間の賃料収入から固定資産税や管理の費用を引き、残った利益を利回りで割り戻して金額を出す考え方になります。
10台で月1万円なら年120万円。
費用を引いた残りが年90万円で、買う側が求める利回りが6%なら、計算上の金額は1,500万円です。
同じ土地が取引事例から2,200万円と出れば、収益からの逆算のほうが700万円低くなります。
月極の駐車場代は、同じ面積に建つ建物の家賃と比べてずっと小さいため、こうなるのが普通です。
収益が前に出るのはどんなときか
機械式の設備が入っていて、その設備ごと引き継ぐ場合。
あるいは、駐車場事業者と一括借り上げの契約を結んでいて、買主がその契約を引き継いだまま持ち続ける場合です。
この2つは、収益からの逆算が土地の値段に近づく、または上回ることがあります。
考え方そのものは収益物件の査定方法3つ|収益還元法と積算の違いで詳しく書きました。
仕組みから知りたい方は、そちらをご覧ください。
なぜ土地としての値段が上回りやすいのですか
買う側が「この土地に次に何を置くか」で値段を決めているからです。
駐車場を駐車場のまま使い続ける前提で買う人は、買主の候補のなかでは少数にとどまります。
買主は、駐車場の続きを買っていない
家を建てたい個人、戸建てを数棟入れたい建売業者、アパートや店舗を建てたい事業者。
この人たちが見ているのは、いま停まっている車の台数ではなく、そこに何が建つかです。
だから査定でも、用途地域や接道といった「建てられるかどうか」の条件を先に確かめていきます。
契約者が付いていることは、有利とは限らない
月極の契約者が埋まっていると収入は安定しますが、更地で引き渡してほしい買主からは、立ち退きを待つ時間として見られます。
引き渡しの時期が読めないぶん、価格の交渉材料にされることもあるでしょう。
満車だから高い、空車だから安い、という単純な話ではないのです。
査定では現地の何を見られますか
見るのは、建てられるかどうかに関わる6点です。
面積、形、接道、用途地域、境界、そして地中。
どれも、あとから分かると価格の修正や引き渡しの延期につながる項目になります。
面積・形・接道
間口が狭くて奥に長い土地は、同じ面積でも建てられる建物が限られるため、単価が下がります。
道路に接している幅が2m未満だと、建物はそもそも建てられません。
駐車場として使えている土地は出入口があるので接道は足りていることが多いものの、間口の幅は必ず実測で確かめます。
用途地域と、建てられるものの範囲
第一種低層住居専用地域なら戸建てや小さな共同住宅まで、商業地域なら店舗やビルまで。
同じ広さの駐車場でも、ここが違えば買主の種類ごと変わってしまいます。
福岡市内の用途地域は市の地図サービスで確かめられますが、境目の土地は窓口での確認が確実です。
境界と越境、そして地中
境界の杭が見つからない土地では、買主から確定測量を求められることが珍しくありません。
境界確定測量の費用は40〜60万円程度で、隣地の所有者全員の立ち会いと署名が要ります。
地中については、以前の建物の基礎、浄化槽、古い井戸が残っていることがあります。
更地にして駐車場にした土地では、解体のときに基礎を全部取らずに埋めた例も見てきました。
査定の段階で「以前ここに何が建っていたか」を聞かれるのは、この確認のためです。
確定測量が必要かどうかの判断は不動産売却に確定測量は必要?現況測量との違い・判断基準にまとめてあります。
福岡市の地価は自分で調べられますか
調べられます。
地価公示と取引価格は国土交通省の不動産情報ライブラリ、路線価は国税庁の財産評価基準書です。
どちらも無料で、住所から地図をたどれば自分の土地の近くの地点に行き着きます。
地価公示と取引価格を見る
地価公示の地点と、実際に取引された価格の集計は、同じ地図の上で切り替えて見る形です。
福岡市は7区に分かれているので、区を選んでから自分の町名まで寄せていく手順になります。
見るときは、その地点が自分の土地と同じ用途地域で、同じくらいの道路に面しているかを確かめてください。
幹線道路沿いの地点を住宅地の土地に当てても、単価は合いません。
路線価を見る
国税庁の財産評価基準書で、福岡県を選び、福岡市の該当する区の路線価図を開きます。
路線価は道路ごとに1㎡あたりの価額が千円単位で書かれていて、評価額は路線価に土地の形による調整率と地積を掛けて計算します。
令和8年分は、2026年1月1日から12月31日までに相続や贈与で取得した財産の評価に使う年分です。
気をつけたいのは水準の違いです。
路線価は、地価公示価格などをもとにした価格の8割程度を目安に定められています。
つまり路線価をそのまま売れる金額だと思うと、2割ほど低く見積もることになるわけです。
出典:国税庁 財産評価基準書
調べた数字が、そのまま査定額にならない理由
地価公示も路線価も、その地点の標準的な土地を前提にした1㎡あたりの価格です。
実際の土地には、間口の狭さ、高低差、角地かどうか、面積が大きすぎて買主が限られるといった事情が付いてきます。
公的な価格は、査定額が大きく外れていないかを確かめる物差しとして使うのが現実的な扱いになります。
福岡市の駐車場で、査定に関わる市の仕組みはありますか
関わるのは2つです。
駐車場法に基づく届出と、建物を建てる側の附置義務。
どちらも、売るときに買主や司法書士から質問が出る項目になります。
500㎡以上の駐車場は、市への届出がいる
福岡市では、都市計画区域内で駐車区画の面積が500㎡以上の駐車場を営業する場合、駐車場法に基づく届出が必要です。
ここに福岡市ならではの線引きがあります。
利用者をあらかじめ決める月極の駐車場は対象外で、区画を指定せずに定期券や回数券を発行する駐車場は対象になるのです。
同じ500㎡の土地でも、貸し方によって届出の要否が分かれます。
窓口は市の道路下水道局の駐車場施設課で、届出書の様式とチェックリストが市のページに載っています。
査定の前に、ご自分の駐車場が届出済みかどうかを確かめておいてください。
出典:福岡市 路外駐車場の届出
附置義務の「隔地」で、買主が増えることがある
福岡市には、一定規模の建物を建てるときに駐車施設を設けさせる条例があります。
その駐車施設を敷地内に置くのが著しく困難だと市長が認めて承認した場合の特例が、条例第8条にあります。
敷地からおおむね300m以内の場所に設けてよい、という内容です。
これが何を意味するか。
近くで建物を計画している事業者から見れば、あなたの駐車場が自分の建物の駐車施設の候補になり得るということです。
ただし適用には市長の承認が必要で、指定地域では距離の扱いも変わります。
条例は令和8年4月1日に改正されたものが施行されているので、該当しそうなときは市の手引きと窓口で確かめてください。
天神では、市が空き状況を公開している
福岡市は2025年9月1日から「福岡市駐車場ナビ」の本格サービスを始めました。
天神地区の19の駐車場、約5,900台分の空き状況が地図で見られます。
時間貸しの駐車場が足りているのか混んでいるのかを、市が公開している形です。
天神の近くに土地をお持ちなら、自分の駐車場の周りがどんな状況かを一度見ておくと、事業者からの提案を読むときの下地になるでしょう。
査定を頼む前に、何を用意すればよいですか
登記事項証明書、測量図、駐車場の契約書、契約者ごとの賃料と契約期間の一覧。
この4つが揃っていると、土地としての値段と収益からの逆算の両方を同じ日に出せます。
揃っていなくても査定は止まらない
登記と公図は当社で取得できるので、手元に無いものは言っていただければ結構です。
賃料の一覧だけは、オーナーご本人か管理会社しか持っていません。
台数と1台あたりの賃料、空いている区画の数を、紙でもメモでも構わないので先にご用意ください。
契約者の入れ替わりが多い区画があれば、そこも書き添えていただけると助かります。
空きが続いている区画は、更地で売る案を考えるときの材料になります。
当社は、2通りの数字を並べてお出しします
駐車場のまま売る場合と、契約者に出てもらって更地で売る場合の2つです。
どちらが向いているかを決めるのは、好みではなく土地の条件です。
そこで両方の金額と、それぞれにかかる期間を並べてお見せしています。
最近、当社には「駐車場は空いていませんか」という、借りたい方からのお問い合わせが多く寄せられています。
売らずに続ける選択肢も含めて比べたい方は、不動産管理の窓口へどうぞ。
駐車場の管理をお引き受けする場合の費用は、土地の広さと台数、精算機の有無で変わるのでお見積りします。
税金の話は、数字が出てから
売ったときの税金は、所有していた期間で税率が変わります。
所有が5年以下なら39.63%、5年を超えていれば20.315%です。
ただし取得費や譲渡費用の中身で税額は変わりますし、駐車場の土地は自宅の特例が使えません。
当サイトの手取りの試算は自宅の売却を前提にしているため、駐車場には当てないでください。
個別の税額と有利不利の判断は、税理士にご確認いただく範囲になります。
まず金額を知りたい方は、無料査定からお申し込みください。
契約者の一覧と登記があれば、土地としての値段と収益からの逆算を並べた形でお出しします。
