駐車場の土地は相続税でどう評価される?小規模宅地の特例
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士親が月極駐車場を持っていて、相続税がいくらになるのか心配されている方に向けた記事です。
結論を先にお伝えします。
月極駐車場として貸している土地は、相続税では自用地、つまり誰にも貸していない土地と同じ評価額になります。
アパートの敷地のように、借家権のぶんを差し引いて評価を下げる計算は使えません。
ただし、小規模宅地等の特例を使えれば、200㎡までの部分が50%減額される可能性があります。
条件の一つは、その土地が建物または構築物の敷地になっているかどうかです。
この記事では国税庁の原文で条件を確かめながら、福岡市の駐車場の寸法で200㎡が何台分にあたるかまで計算しています。
2. アパートの敷地と比べると、どれだけ違いますか
3. 小規模宅地等の特例は、駐車場に使えますか
4. 相続の直前に駐車場を始めた場合はどうなりますか
5. 福岡市で確かめる順番
6. 次に何をすればよいですか
月極駐車場の土地は、相続税でどう評価されますか
自用地としての価額で評価します。
つまり、何も貸していない状態の土地と同じ金額です。
契約者がいて、毎月賃料が入っていても、そのぶんが評価額から引かれることはありません。
借りている人の権利を差し引けない理由
土地の所有者が自ら貸駐車場を経営する行為は、一定期間、その土地で自動車を預かる契約だと整理されています。
土地そのものを利用させることを目的とした賃貸借とは、性質が違うという考え方です。
そのため、契約者の持っている利用権は土地自体には及ばないものとされ、賃借権として差し引くことができません。
ここが、借地として貸している土地との分かれ目です。
借地なら借地権のぶんが評価額から引かれますが、駐車場では引かれません。
例外は、利用者の費用で車庫を造らせる契約
例外が1つあります。
車庫などの施設を、駐車場の利用者の費用で造ることを認める契約の場合です。
この場合は土地の賃貸借とみなされ、自用地としての価額から賃借権の価額を差し引いて評価します。
賃借権の計算は契約の内容や残存期間で変わるため、国税庁の区分と最低割合も含めて税理士に確認してください。
月極やコインパーキングの一般的な契約で、利用者が自費で車庫を建てることはまずありません。
ですから、ほとんどの駐車場はこの例外に当てはまりません。
地目は宅地ではなく雑種地になることが多い
駐車場として使われている土地は、現況から雑種地として評価されるのがほとんどです。
家が建っている土地は宅地として路線価で評価しますが、雑種地は評価の方法そのものが別になります。
雑種地は、近傍の土地の価額を基として、位置や形状などの差を考えて比準して評価します。
つまり、路線価をそのまま地積に掛けるだけで、個別の土地の評価額が決まるわけではありません。
近くの宅地の価額から比べて出す手順が入るので、ここは税理士が計算する場面です。
なお、この評価の話は固定資産税の課税とは別のものです。
固定資産税で住宅用地の特例が外れる仕組みは駐車場の固定資産税が高い理由|住宅用地の特例の外れ方に書きました。
アパートの敷地と比べると、どれだけ違いますか
アパートの敷地は、借地権割合と借家権割合をかけたぶんが評価額から引かれます。
駐車場には、この引き算そのものがありません。
同じ広さ、同じ場所の土地でも、使い方で評価額が変わるということです。
貸家建付地の計算式
貸家の敷地になっている宅地は、貸家建付地として評価します。
計算式は、自用地としての価額から「自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」を引いた額です。
借地権割合と借家権割合は、国税庁の路線価図・評価倍率表で確認できます。
仮に自用地としての価額が3,000万円、借地権割合が60%、借家権割合が30%、満室で賃貸割合が100%だったとしましょう。
引かれる金額は3,000万円×0.6×0.3=540万円で、評価額は2,460万円になります。
同じ土地を駐車場にしているあいだは、この540万円が引けない
上と同じ土地を月極駐車場にしていると、評価額は3,000万円のままです。
先ほどの例で言えば、540万円ぶんの差がそのまま残ります。
相続税の税率が仮に20%の区分に入るなら、税額では100万円を超える違いになる計算です。
この差は、駐車場をやめてアパートを建てれば消えるという単純な話ではありません。
建築費の借入、空室、修繕、そして売りにくさが同時に乗ってきます。
評価額だけを見て建物を建てる判断をしないでください。
小規模宅地等の特例は、駐車場に使えますか
貸付事業用宅地等として、200㎡までの部分が50%減額される対象になり得ます。
条件になるのは、その土地が建物または構築物の敷地の用に供されているかどうか。
ここが、駐車場の相続でいちばん分かれるところです。
200㎡まで50%という枠
貸付事業用宅地等の減額は、200㎡を限度に50%です。
自宅の敷地に使える特定居住用宅地等は330㎡まで80%減ですから、枠も減額率も小さくなります。
200㎡を超える部分には、この減額が当たりません。
また、自宅の敷地と駐車場の両方で特例を使いたい場合は、限度面積の調整計算が入ってきます。
どちらに枠を当てるほうが有利かという判断は、税理士の仕事になる部分です。
「建物又は構築物の敷地」という条件
特例の対象は、建物または構築物の敷地の用に供されている宅地等に限られます。
農地と採草放牧地は、ここでは対象外です。
舗装や設備がある場合は、その内容と設置範囲を図面や工事資料で確認してください。
そのうえで、構築物に当たるか、どの面積がその敷地になるかを税理士に確認します。
一方、何の構築物も無い土地は、この条件から外れる扱いです。
では砂利を敷いただけの土地はどちらに入るのでしょうか。
国税庁が公開している資料の範囲では、ここに線を引く記述を確認できませんでした。
確認できていないことを当社が断定するわけにはいきませんので、砂利敷きの駐車場は税理士か所轄の税務署にお尋ねください。
なお、消費税では青空か舗装かで扱いが分かれます。
その線は駐車場の賃料に消費税はかかる?青空と舗装で変わる線にまとめました。
承継・保有を続け、申告することも条件
構築物があるだけで、特例の適用が決まるわけではありません。
被相続人の貸付事業を引き継ぐ場合は、原則として申告期限までに承継し、期限まで事業と土地の保有を続ける要件があります。
生計を一にしていた親族の事業に使っていた場合などは、区分に応じて条件を確認します。
特例を受けるには、相続税の申告書に明細書などの必要書類を添付する手続きも必要です。
納税のため先に売る計画がある方は、保有継続の条件への影響を売買契約前に税理士へ確認してください。
福岡市の1台分で数えると、200㎡は何台分か
200㎡と言われても、駐車場の広さとしては実感しにくいでしょう。
福岡市の附置義務条例は、駐車施設の1台分を幅2.3メートル以上・奥行5メートル以上と定めています。
この寸法どおりなら1台で11.5㎡ですから、200㎡は17台分あまりになります。
ただし、車が出入りする通路の面積が別に必要です。
通路を取ったぶん、実際に置ける台数はこれより少なくなる計算です。
月極駐車場にこの条例が直接かかるわけではないものの、1台分の広さの目安にはなるでしょう。
台数だけで200㎡以内かどうかを判断することはできません。
通路などを含めた対象面積を確認し、特例を選択する部分と限度面積の計算を税理士に依頼してください。
相続の直前に駐車場を始めた場合はどうなりますか
相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は、原則として貸付事業用宅地等から外れます。
つまり、相続が近いと分かってから駐車場を始めても、この特例には間に合いません。
いつから貸し始めたのかが、ここで効いてきます。
例外は、3年を超えて特定貸付事業を続けていた場合
例外があります。
相続開始の日まで3年を超えて引き続き特定貸付事業を行っていた場合は、除外されません。
これは、以前から不動産の貸付けを事業として続けてきた方を想定した定めです。
貸付けの年数だけでなく、準事業に当たるかなどの区分も確認する必要があります。
ただし、どの範囲が特定貸付事業にあたるかは個別の判断になりますので、ここも税理士にご確認ください。
始めた日が分かる書類を残しておく
3年という線で判定されるので、貸し始めた日を示せるかどうかが分かれ目になります。
残しておくものは、最初の契約者との駐車場賃貸借契約書、舗装やライン引きを依頼した工事の請求書、そして賃料の入金が分かる預金通帳です。
親が元気なうちに、この3つの所在を聞いておいてください。
亡くなったあとに探し始めると、契約書だけが見つからないという形で詰まります。
申告と納税の期限は10か月
相続税の申告と納税の期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月目の日です。
提出先は、亡くなった方の住所地を所轄する税務署になります。
相続人の住所地の税務署ではありませんので、ここを間違える方がいます。
納税のために駐車場を売るつもりなら、10か月という期限から逆算してください。
契約者への解約の予告が必要なので、売却の段取りは自宅を売るときより前に始まります。
予告から決済までの日数は駐車場の売却にかかる期間|契約者への予告から決済までに書きました。
福岡市で確かめる順番
先に登記の地積と現況を合わせ、次に管理の状態を見てください。
この2つが整っていれば、税理士に相談したときの話が早く進みます。
登記の地積と現況が合っているか
まず法務局で登記事項証明書を取り、地積を確かめてください。
古い土地では、登記の地積と実際の面積が合っていないことも珍しくありません。
200㎡の枠ぎりぎりの広さなら、この差が減額される面積に直接響きます。
どの窓口で何を取るのかは手続き窓口ガイドにまとめています。
駐車場の管理が止まっていないか
契約者が減ったまま放置されている駐車場を、相続のときに初めて見る方が少なくありません。
区画は残っているのに契約書が無い、賃料が現金で手渡しされていて記録が無い、という状態です。
そうなる前に、管理の形を整えておいてください。
当社が駐車場の管理でお引き受けしているのは5つです。
月極の区画割りと契約者の募集、コインパーキング事業者のご提案と比較、看板やライン引き・精算機の手配。
それに、無断駐車への対応と、駐車場代の集金・毎月の送金。
最近は「駐車場は空いていませんか」という、借りたい方からのお問い合わせも当社に多く届いています。
管理料はお見積りいたします。
次に何をすればよいですか
まず、その駐車場の面積と、舗装や設備があるかどうかを確かめてください。
そのうえで、相続税がかかるのか、特例が使えるのかという判断は税理士にお願いしてください。
個別の税額の計算と有利不利の判断は、税理士でなければできない仕事です。
当社がお伝えできるのは、国税庁の資料に書かれている範囲の一般論までになります。
なお、当サイトの手取り計算シミュレーターは自宅の売却を前提にした作りですので、駐車場の土地には当てないでください。
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