離婚で家を分ける3つの方法|税金は誰にかかる?
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士離婚を進めるなかで、家をどうするかが決まらない。
福岡市の売主から、当社はこのご相談をいただきます。
分け方は、売って現金で分ける・どちらかが住み続ける・共有のまま持つ、の3つです。
この3つは、税金のかかり方がそれぞれ違います。
とくに見落とされやすいのは、代金を半分ずつ分けても、税金は登記の名義どおりにかかるという点です。
この記事でご説明するのは、3つの分け方と、それぞれで誰にどの税がかかるかです。
税額の個別の判断は税務署か税理士の仕事なので、ここでは制度の形と、確かめる順番を書きます。
2. 財産分与で家をもらっても、贈与税はかからないのですか
3. 売って分けるとき、譲渡所得税は誰にかかりますか
4. 家を渡す側に税金がかかるのは、どんなときですか
5. 共有のまま残すと、将来どうなりますか
6. どの分け方にするか、どう決めればよいですか
離婚で家を分ける方法は、何通りありますか
大きく3つです。
| 分け方 | 税がかかる人 | あとに残るもの |
|---|---|---|
| 売って現金で分ける | 登記の名義人(譲渡所得税) | 残らない |
| どちらかが住み続ける | 家を渡した側(譲渡所得税) | ローンの名義と連帯保証 |
| 共有のまま持つ | その時点ではかからない | 名義・固定資産税・将来の相続 |
離婚後も連絡を取り合う理由になるのが、表の3列目にあたります。
①売って現金で分ける
第三者に売り、ローンを完済して、残った代金を分ける方法です。
金額が1円単位まで出るため、分ける割合でもめにくくなります。
住宅ローンが残っている場合は、売却代金で完済できるかどうかが先に来ます。
完済できないと抵当権が外れず、引渡しそのものができません。
残債は、金融機関が毎年送る返済予定表か、窓口で取る残高証明書で確かめます。
2人がそれぞれローンを組んだペアローンなら、2本とも完済しないと抵当権は外れません。
手順はペアローン・親子リレーで買った家を売る手順にまとめています。
②どちらかが住み続ける
一方が家に残り、もう一方が代わりに現金などを受け取る方法です。
子どもの学校を変えずに済むため、福岡市内でも選ぶ方がいます。
残る側がローンの名義人でないとき、名義を移せるかは金融機関の審査次第です。
審査が通らないまま住み続けると、名義人が返済を止めた時点で家を失います。
連帯保証人になっている場合は、離婚しても保証から自動では外れません。
外すには、金融機関が代わりの保証人や借換えを認める必要があります。
公正証書で約束しても、金融機関との契約はそのまま残ります。
③共有のまま持つ
名義を2人のままにして、結論を先に延ばす方法です。
離婚の協議が長引いているときに選ばれますが、売るにも貸すにも相手の同意が必要になります。
住宅ローンが残っていれば、名義も返済者もそのままです。
離婚したことを金融機関へ伝えないまま、片方だけが住み続ける形になります。
将来どうなるかは、この記事の後半でご説明します。
財産分与で家をもらっても、贈与税はかからないのですか
原則としてかかりません。
かからない理由は「清算」だから
財産分与は、夫婦が結婚している間に協力して作った財産を清算する手続きです。
片方から片方への無償の贈り物ではないので、贈与には当たりません。
離婚後の生活保障という性質も含まれると考えられています。
例外は2つある
国税庁は、次の2つの場合に贈与税がかかるとしています。
- 分与された財産が、婚姻中の夫婦の協力で得た財産の額などを考えても多すぎる場合(多すぎる部分に課税)
- 離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合(もらった財産すべてに課税)
「多すぎる」の線がいくらかは示されていません。
贈与税の基礎控除110万円とも関係がないので、その金額を目安にしないでください。
離婚協議書には「財産分与として」と性質をはっきり書いておきます。
名目が書かれていないと、あとから贈与と見られて説明を求められる余地が残ります。
公正証書にするかどうかは、年金分割や養育費の取り決めと合わせて弁護士へご相談ください。
売って分けるとき、譲渡所得税は誰にかかりますか
税がかかるのは、登記簿に載っている名義人です。
負担する割合は、その人の持分どおりです。
代金の分け方と、税の負担者は別
夫の単独名義の家を売り、代金を半分ずつ分けたとします。
このとき譲渡所得税の申告をするのは夫1人で、税額も夫の持分すべてにかかります。
代金を先に半分渡してしまうと、翌年の納税資金が足りません。
分ける前に税額を見ておくと、この取り違えを防げます。
手取りの試算は手取りシミュレーターでご確認いただけます。
税額の計算に使うのは、売った金額ではなく、売った金額から取得費と譲渡費用を引いた譲渡所得です。
結婚前や結婚直後に買った家だと、売買契約書が見つからないことも多いです。
その場合は売却価格の5%を概算取得費として使う方法がありますが、実際の取得費より小さくなりやすく、税額は増えます。
探す場所と順番は取得費が不明な実家の売却をご覧ください。
共有名義なら、控除も各自で判定する
次は、2分の1ずつの共有名義で、2人ともその家に住んでいた場合です。
譲渡所得は持分ごとに計算し、居住用の3,000万円特別控除も名義人ごとに判定します。
2人で最大6,000万円ぶんの控除になるため、共有名義のまま売るほうが税負担が軽くなる場合があります。
どちらかが先に家を出ていた場合、変わるのは出た側の要件の数え方です。
所有期間5年で税率が変わる
売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡で20.315%、5年以下なら短期譲渡で39.63%です。
約2倍の差があるので、売る年をずらすだけで手取りが変わります。
数えるのは引渡しの日ではなく、売った年の1月1日です。
5年目の12月に引渡すと短期、翌年の1月に引渡すと長期になる境目があります。
離婚の日取りと引渡しの日取りが近いときは、この境目を先に確かめてください。
数え方は譲渡所得税の短期と長期の違いでご説明しています。
家を渡す側に税金がかかるのは、どんなときですか
売らずに、財産分与として不動産そのものを相手に渡したときです。
渡した時の時価が収入金額になる
国税庁は、分与した時の土地や建物などの時価が譲渡所得の収入金額になるとしています。
現金を受け取っていないのに、渡した側に譲渡所得税がかかる形です。
買ったときより時価が下がっていれば税額は出ませんが、福岡市では地価が上がった地点が多く、含み益が出ている家もあります。
もらった側は、分与を受けた日にその時の時価で取得したことになります。
将来その家を売るときの5年の数え方も、分与を受けた日からです。
離婚が成立する前に渡すと控除が使えない
居住用の3,000万円特別控除は、配偶者や親子など特別の関係がある人への譲渡には使えません。
離婚届を出す前に配偶者へ渡すと、この除外に当たります。
成立後の財産分与なら配偶者ではなくなるため、要件を満たせば使える余地があります。
渡す順番で税額が変わるので、日付を決める前に税務署か税理士へご確認ください。
申告するのは、売った年や渡した年の翌年です。
離婚から1年以上あとに納税の時期が来るため、そのころには連絡が取りづらくなっていることもあります。
納税資金を誰がどこから出すかは、分ける段階で紙に残してください。
出典:国税庁 No.3114 離婚して土地建物などを渡したとき
共有のまま残すと、将来どうなりますか
売るにも貸すにも相手の同意が要るうえ、固定資産税の通知が代表者1人だけに届きます。
福岡市では納税通知書が代表者宛てに届く
福岡市は共有の不動産について、共有者のうち代表者を決めて管理しています。
代表者を変えるには「共有資産に係る代表者変更届」の提出が必要です。
納税通知書の発送は毎年4月上旬です。
家を出た側が代表者のままだと、通知が元配偶者の手元に届き続けます。
4月に届いたかどうかを相手に聞かないと分からない状態が、毎年くり返されます。
窓口は物件がある区の区役所課税課です。
福岡市7区の手続き窓口は福岡市の手続き窓口ガイドにまとめています。
滞納が続くと、持分を差し押さえられる可能性も出てきます。
相手が亡くなると、話し相手が増える
共有者の一方が亡くなれば、その持分は相続人のものです。
再婚していれば、その配偶者や子が共有者になります。
売る相談をする相手が、元配偶者1人から、会ったことのない相続人へ替わる形です。
自分の持分だけを売ることは法律上できますが、持分だけを買う一般の買主はほとんどいません。
話し合いがつかないときの最後の手段は、裁判所に共有物分割請求を出す方法です。
裁判になると結論が出るまで時間がかかり、弁護士費用も要ります。
同意が得られないときの選択肢は共有名義の不動産は売れるかをご覧ください。
共有を解く手順は共有名義の不動産売却でご説明しています。
どの分け方にするか、どう決めればよいですか
先に決めるのは、分け方ではなく家の評価額です。
「いくらの家を分けるのか」が決まらないと、現金で渡す額も決められません。
福岡市は区によって相場の差が大きく出ます。
同じ70平方メートルの3LDKマンションでも、中央値は中央区4,200万円に対して南区2,300万円でした。
約1.8倍のひらきがあるので、市内の平均では評価できません。
評価額に使う数字は3つあり、どれを使うかで金額が変わります。
- 不動産会社の査定額(いま売れる見込みの価格)
- 相続税路線価(公示地価の8割が目安)
- 固定資産税評価額(公示地価の7割が目安)
財産分与の話し合いで使うのは、いま売れる見込みの価格です。
固定資産税の通知に載っている評価額を持ち出すと、実際に売れる金額より低く見えます。
評価額が出たら、3つの分け方それぞれで手取りと税額を並べてください。
離婚にともなう売却の進め方は離婚に伴う不動産売却にまとめています。
どの分け方が合うか迷うときは、名義とローンの状況がわかる書類を持って15分無料相談をご利用ください。
売却時期の決め方は離婚で家を売るなら離婚前かでもご説明しています。
