共有名義の売却で使う委任状|代理人と持ち回りの順番
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士共有名義の不動産を売ると決めたけれど、共有者が集まれない。
そんな福岡市の売主に向けた記事です。
兄弟3人で相続した実家で、1人は東京、1人は海外。
この状態でも売却はできます。
全員の同意は必要ですが、全員が同じ日に同じ部屋にいる必要はないからです。
使う道具は、契約書を郵送で回す持ち回り調印と、代理人に権限を預ける委任状の2つ。
どちらを使うか、何日かかるかを順番に並べました。
2. 委任状には何を書きますか
3. 代理人には誰がなれますか
4. 持ち回り調印は、どんな順番で何日かかりますか
5. 海外に住んでいる共有者がいるときは、どうしますか
6. 決済と、そのあとに気をつけることは何ですか
7. まず何をすればよいですか
共有名義の売却に、全員が集まる必要はありますか
ありません。
必要なのは全員の同意で、全員の出席ではないからです。
共有している不動産を売ることは法律上の処分行為にあたるので、持分の多い人が1人で決めることはできません。
そこは動かせない前提です。
では同意した全員を、どうやって1つの契約書に乗せるのか。
方法は2つあります。
1つは、契約書を順番に郵送して全員の署名を集める持ち回り調印。
もう1つは、共有者の誰か1人を代理人にして、その人が全員分を署名する方法です。
どちらを選んでも、実印と印鑑登録証明書だけは共有者の人数ぶん要ります。
ひとり2通を目安に、何をいつ取るかは印鑑証明書は売却で何通必要?有効期限3か月の数え方にまとめました。
そもそも同意が得られていない場合は、話が別になります。
反対している共有者がいるときの進め方は共有名義の不動産は売れる?同意が得られないときにまとめました。
委任状には何を書きますか
誰に任せるか、どの不動産についてか、何を任せるかの3つです。
この3つが欠けていると、登記を受け付けてもらえません。
様式は当社と司法書士が用意するので、売主が白紙から作る場面はありません。
必ず入れる項目
入れるのは、代理人の住所と氏名、委任者の住所と氏名、物件の表示、委任する内容の4つです。
物件の表示は、住所ではなく登記簿のとおりに書きます。
土地なら所在・地番・地目・地積、建物なら所在・家屋番号・種類・構造・床面積です。
委任する内容は「売買契約の締結」「売買代金の受領」「所有権移転登記の申請」のように、1つずつ書き出します。
「売却に関する一切の件」とだけ書いた委任状は、どこまで任せたのかが読み取れません。
登記の委任状の様式は法務局が公開しているので、形を見ておくと説明が通りやすくなります。
委任状は共有者1人につき1通で、持分が少ない人も同じ形のものを出します。
実印と印鑑証明書は、共有者それぞれが出す
委任状に押すのは認印ではなく、市区町村に登録した実印です。
添えるのは、発行から3か月以内の印鑑証明書です。
この2つは代理人がまとめて出すものではなく、共有者ひとりひとりが自分の分を用意します。
実印を登録していない共有者がいた場合は、その人の住所地で印鑑登録から始めてください。
登録自体はその日に終わりますが、本人が窓口へ行く日を作らなければなりません。
結婚や離婚で姓が変わっているのに登録を直していない方は、ここでつまずきます。
登記簿の氏名と印鑑証明書の氏名が違うと、先に氏名変更の登記が必要になるからです。
白紙の委任状にだけは押さない
金額や物件が空欄のままの委任状に実印を押すのは避けてください。
あとから書き入れられた内容で、本人が署名したことになってしまいます。
当社は、委任状をお送りするときに金額と物件を印字した状態でお渡しします。
空欄のある書類が届いたら、押す前に送ってきた相手へ理由を聞いてください。
代理人には誰がなれますか
資格は要りません。
共有者の1人でも、親族でも、司法書士でもなれます。
実務でいちばん多いのは、福岡市に住んでいる共有者を代理人にする形です。
共有者の1人を代理人にする
福岡市内に住んでいる、または動ける共有者が1人いれば、その人に集約できます。
その人が署名するのは、自分の分と、ほかの共有者から預かった分の両方です。
遠方の共有者は、委任状と印鑑証明書を郵送するだけで済みます。
ただし代理人になった人の負担は増えます。
契約の日と決済の日の2回、半日ずつ時間を取ってもらうことになるからです。
決済当日に何が起きるかは決済・引渡し当日の流れでご説明しています。
登記の委任状は、全員が別に出す
売買契約の代理と、登記の申請の代理は別の話です。
登記は司法書士が申請するので、共有者全員が司法書士あての委任状を出します。
契約を1人に任せた場合でも、登記の委任状はそれぞれが用意してください。
「1人に任せたから自分は何も書かなくてよい」と思っていると、決済の直前で止まります。
なお、買主側の担当者や買主本人を売主の代理人にすることはしません。
売る側と買う側を同じ人が兼ねると、価格や条件を誰が守るのかが分からなくなるためです。
判断ができない共有者がいるときは、委任状では足りない
認知症などで判断する力が落ちている共有者がいる場合、その人は委任状を出せません。
意思の確認ができない人の署名は、本人が決めたことにならないからです。
この場合は家庭裁判所で成年後見人を選んでもらい、後見人が本人に代わって手続きします。
共有者に未成年の方がいるときも、親が代理するだけでは済まない場合があるのです。
親自身も同じ不動産の共有者なら、子の分について特別代理人を立てる必要が出ます。
どちらも裁判所の手続きに数か月かかるので、気づいた時点でご相談ください。
持ち回り調印は、どんな順番で何日かかりますか
当社が契約書を作り、共有者へ順に郵送して署名をもらい、最後に当社へ戻す流れです。
人数と郵送の往復を足して、当社が見ておく余裕は2週間ほど。
買主の融資の期限が決まっているので、ここを詰めすぎると決済日が後ろへずれます。
回す順番と、各自がすること
郵送する順番は、当社が決めて一覧でお知らせします。
届いた共有者がすることは、署名と押印、そして同封の返信用封筒で次の人か当社へ戻すことです。
収入印紙の貼り方や、どこに何通署名するかは、付せんを貼った状態でお送りします。
返送は、追跡ができる方法を使ってください。
契約書の原本が途中で行方不明になると、全員の署名をやり直すことになります。
契約書を何通作るかも、先に決めておきたいところ。
通数が増えると、その分だけ収入印紙が要るからです。
売買代金が1,000万円を超えて5,000万円以下なら、軽減措置で1通1万円かかります。
共有者全員が原本を持ちたいと言えば、人数分の印紙代がそのまま増えます。
原本は売主側で1通、写しをほかの共有者が持つ形にすれば、印紙代は増えません。
日数の見方
国内の郵送は、片道2〜3日。
共有者が3人いれば、当社から1人目、1人目から2人目、2人目から3人目、3人目から当社で4回動きます。
各自が手元で2日置くとすると、郵送だけで2週間近くになる計算です。
当社が返送の遅れやすい方を先へ置くのは、最後の人が遅れるとそこで全部が止まるからです。
署名の間違いが見つかって送り直すと、そこからさらに1週間。
だから当社は、契約書を回し始める前に、記載内容を電話で読み合わせています。
印鑑証明書は、契約書より先に集める
印鑑証明書には3か月の期限があるので、取る時期を先に決めてください。
福岡市に印鑑登録がある方なら、マイナンバーカードがあれば全国のコンビニで取れます。
手数料は250円で、区役所の窓口より50円安く、朝6時30分から夜11時まで使えます。
福岡市から転出している共有者は、今の住所地の役所で取ってください。
区役所の窓口は平日の17時15分までなので、働いている方にはコンビニのほうが現実的です。
東京に住みながら福岡市に住民票を残している共有者は、この方法で夜のうちに取れます。
海外に住んでいる共有者がいるときは、どうしますか
日本の在外公館で署名証明と在留証明を取ってもらいます。
海外へ転出して住民登録を抜くと、印鑑登録も同時に失効するからです。
実印も印鑑証明書も無い状態になるので、別のもので代わりを立てます。
署名証明は、印鑑証明書の代わり
署名証明は、本人が領事の前で署名したことを証明する書類です。
日本国内での不動産登記や銀行の手続きで、印鑑証明書の代わりに使えます。
形式は2つあり、1つは委任状などの書類と綴り合わせて証明するもの、もう1つは署名だけを単独で証明するものです。
不動産の登記では、書類と綴り合わせる形式を求められることが多いです。
どちらが要るかは司法書士が指定するので、取りに行く前に必ず確認してください。
先に自己判断で取ってしまい、使えずにもう一度行くことになった例があります。
在留証明は、住民票の代わり
在留証明は、海外のどこに住んでいるかを証明する書類です。
住民登録が日本に無い方の住所を示すために、登記で求められる書類です。
どちらの書類も、本人が在外公館の窓口へ行かなければ取れません。
任地から大使館まで距離がある国では、それだけで1日仕事になります。
だから海外の共有者がいる案件では、当社は国内だけの場合より2〜4週間多く見ます。
売り出す前の段階で、誰がどの国にいるかを教えてください。
決済と、そのあとに気をつけることは何ですか
売却代金を持分どおりに分けることと、確定申告を各自が出すことです。
代理人が1人で全部を受け取って終わりにはなりません。
お金と税は、最後まで共有者それぞれのものとして動きます。
売却代金は、持分どおりに分ける
振込先は、共有者それぞれの口座を指定できます。
持分が3分の1ずつなら、3,000万円の売却代金は1,000万円ずつです。
代理人の口座に一度まとめると、そこから配る手間と、贈与と見られる心配が出ます。
仲介手数料や司法書士の費用も、持分の割合で分けて精算してください。
代理人が代金を受け取る形にするなら、委任状に「売買代金の受領」を書いておく必要があります。
書いていないと、買主がその人へ振り込めません。
この割り振りは、当社が精算書に書いて決済の前日までにお送りします。
確定申告は、共有者それぞれが出す
譲渡所得の申告は、代理人がまとめて出すものではありません。
共有者それぞれが、自分の持分に対応する分を自分の住所地の税務署へ申告します。
所有期間が5年を超えていれば20.315%、5年以下なら39.63%の税率です。
その家に住んでいた共有者は、3,000万円の特別控除を自分の分について使えます。
住んでいなかった共有者には使えないので、同じ家を売っても1人ずつ税額が変わります。
まず何をすればよいですか
共有者の人数と、それぞれが今どこに住んでいるかを書き出してください。
海外在住の方がいるかどうかで、必要な日数が2〜4週間変わります。
名義が亡くなった方のままの場合は、相続登記が先です。
どの書類をどの窓口で取るかは福岡市の手続き窓口にまとめました。
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