高低差・擁壁のある物件を売る方法|吉塚の傾斜地の売却戦略
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士「毎日この階段を上るのが、年々きつくなってきた」
「擁壁(ようへき)が古いから、売るなら修理しないといけないと言われた」
吉塚周辺の高台や、少し奥に入った住宅地にお住まいの方から、そんな切実なご相談をよくいただきます。
平坦な土地に比べて、高低差のある土地は「売りにくい」と思われがちです。
確かに、法的な制限や工事費用といったハードルはあります。
しかし、だからといって「タダ同然」で手放す必要はありません。
高低差があるからこその「眺望」や「プライバシー」、「水害への強さ」を求める購入者は、ここ博多区にも必ず存在します。
大切なのは、自分の土地が「安全な高低差」なのか、それとも「対策が必要な高低差」なのかを正しく知ることです。
この記事では、専門家しか知らない「擁壁の危険サイン」と、状態に応じた「3つの売却戦略」を分かりやすく解説します。
漠然とした不安を整理して、納得のいく売却への第一歩を踏み出しましょう。
2. 【がけ条例】福岡市で売却するなら知っておきたいルール
3. 状態別・3つの売却ルート(ケーススタディ)
4. 吉塚エリアの「高低差」事情と市場動向
5. まとめ:高低差は「個性」です。まずは正しい調査から。
まずは現状把握。あなたの家の「擁壁」はどのタイプ?
不動産会社に査定を依頼する前に、ご自身で一度、家の周りをチェックしてみてください。
擁壁(土留め)には、そのまま売れるものと、注意が必要なものがあります。
特に福岡市内の古い造成地でよく見かける、以下の3つのケースは要注意です。

1. 二段擁壁(増し積み)
もともとあった擁壁の上に、さらにブロックや石を積み足している状態です。
「下は石積み、上はコンクリートブロック」のように、素材が違っていたり、途中に継ぎ目が見えたりしませんか?
これは、下の擁壁が上の重さに耐えられる設計になっていないことが多く、地震で崩れるリスクが高いとみなされます。
銀行の融資が降りにくいため、一般の個人客には売りにくい代表例です。
2. コンクリートブロック(CB)積み
お隣との境界にある「目隠しフェンス」のようなブロックで、土を支えている状態です。
普通のコンクリートブロックは、鉄筋の量や厚みが「土の圧力」に耐えられるようには作られていません。
高さがある場合、見た目はきれいでも、現在の法律では「不適格」と判断される可能性が高いです。
3. 古い石積み(孕み・水抜き穴なし)
お城の石垣のような立派な石積みでも、横から見て「お腹のように膨らんでいる(孕み)」箇所はありませんか?
また、壁の中に溜まった水を抜くための「パイプ(水抜き穴)」は見当たりますか?
膨らみがあったり、水抜き穴が詰まっていたりすると、大雨の際に崩壊する危険性があります。
【がけ条例】福岡市で売却するなら知っておきたいルール
ご自宅の擁壁が「高さ3メートル」を超える場合、福岡県の建築基準法施行条例、通称「がけ条例」が関わってきます。
難しい法律用語は覚える必要はありません。
売却でまず確かめたい書類は、「検査済証(けんさずみしょう)」です。
ただし、検査済証の有無だけで、現在の安全性や建築できるかどうかが決まるわけではありません。
福岡市ホームページ:福岡市建築基準法施行条例第5条(がけ条例)について
検査済証とは?
その擁壁が「役所の検査に合格して作られた安全なもの」であることを証明する書類です。
これがあれば、購入者は建て替えやリノベーションの計画を立てやすくなります。
相場に沿った価格や、「眺望の良い付加価値物件」として売り出しやすくなります。
ない場合はどうなる?
古い物件では、この書類が残っていないのも珍しくない話です。
書類がなくても、擁壁の現在の状態を調べて確認する方法が、福岡市に用意されているのです。
外観状況チェックシートと現地調査の報告書を使った確認の進め方を、市が案内しているからです。
確認の範囲は、建築の計画ごとに、市の建築審査課(092-711-4577)への相談で決まります。
その場合、購入者が家を建てる際に「擁壁の作り直し」や「防護壁の設置」など、数百万円規模の追加費用がかかる可能性があります。
そのため、売却価格からその工事費用分を差し引くか、あるいは「現状のままでも良い」と言ってくれる人を探す工夫が必要になります。
擁壁の工事費に使える、福岡市の助成金
福岡市には、擁壁の築造や補強・補修の工事費の一部を助成する宅地防災対策助成金があります。
助成額は、対象経費の3分の1か、上限額のどちらか少ないほうです。
上限は、擁壁工事と補強工事が300万円、補修工事が100万円です。
対象には条件があります。
- 崖の高さが2メートルを超えること
- 影響の及ぶ範囲に、建築物・公共施設・私道があること
- 既存の擁壁がある場合は、築造から20年が過ぎているか、変状があると判断されたこと
- 工事のあとの平坦な土地が、工事の前と同じ規模であること
営利目的の不動産事業用の土地や、過去に助成を受けた土地は対象外とされています。
土地が共有のときは、共有者全員の承諾が要ります。
手続きの順番は、事前相談、交付申請、交付決定、工事契約・着工です。
交付決定の前に工事の契約や着工をすると、助成の対象になりません。
売却のために直す工事が対象になるのか、募集の時期はいつか。
この2点はページに書かれていないので、福岡市住宅都市みどり局の開発・盛土指導課(092-707-3902)へ先に相談してください。
見積りを取るだけなら構いませんが、業者との契約は相談のあとにします。
土砂災害警戒区域に入っていないかも確かめる
斜面の土地は、擁壁とは別に、土砂災害警戒区域の指定を受けている場合があります。
県が指定前の箇所を調べていることもあるので、買主への説明に備えて、売り出す前に確認しておくと安心です。
区域の種類による違いや、調査中の箇所の見方、支援制度の確かめ方は、土砂災害警戒区域の家は売れる?指定前の調査箇所と売る前の確認にまとめました。
▼ あわせて読みたい:福岡市博多区の不動産売却の流れ|期間・必要書類・費用を解説
状態別・3つの売却ルート(ケーススタディ)
では、具体的にどう売ればいいのでしょうか。
擁壁の状態によって、最適な「売り方」は分かれます。

パターンA:安全性が確認できる(検査済証あり・劣化なし)
【戦略:強みをアピールして高値売却】
このケースは自信を持って売りに出しましょう。
「高台ならではの風通し」「道路からの視線が気にならないプライバシー」は、平地の建売住宅にはない大きな魅力です。
チラシやネット広告でも、単なる土地としてではなく「空が広い暮らし」というライフスタイルを提案することで、こだわりのある買主と巡り合えます。
パターンB:危険信号あり・検査済証なし
【戦略:正直に告知してトラブル回避】
二段擁壁や古い石積みの場合でも、売却は可能です。
ただし、絶対にやってはいけないのは「隠して売る」ことです。
売却後に崩れたり、家が建てられないことが発覚したりすると、契約解除や損害賠償(契約不適合責任)を求められる恐れがあります。
この場合、以下の2つの選択肢を検討します。
-
更地渡し: 売主側の費用で擁壁をやり直すか、建物を解体して「土地」として売る。
(かけた費用のぶん売値が上がるかどうかを、先に計算します)
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現況有姿(そのまま): 「擁壁に難あり」と正直に伝え、その分価格を抑えて売る。
DIY好きや、建築費にお金をかけたい層に響くことがあります。
パターンC:自分では判断できない
【戦略:プロによる現地診断】
「見た目はきれいだけど、書類がない」
「隣の家の擁壁と繋がっていて、境界がよく分からない」
そんな時は、自己判断せずに私たちにご相談ください。
役所で古い資料を調査したり、専門家と連携してリスクを洗い出したりすることで、「意外と問題なく売れる」ことが判明するケースも多々あります。
▼ あわせて読みたい:【博多区吉塚】空き家を放置していませんか?「買取」なら不要な不動産を現状のままで即現金化できます
吉塚エリアの「高低差」事情と市場動向
最後に、ここ吉塚・博多エリア特有の事情についてお話しします。
吉塚は博多駅へのアクセスが良く、平坦地の人気は依然として高い状態が続いています。
しかし、価格が高騰しすぎて「手が出ない」という一次取得者層(初めて家を買う人)が増えているのも事実です。
そんな中、あえて「擁壁のある土地」や「坂の上の物件」が注目されています。

理由はシンプルで、「土地を安く手に入れて、その分、建物にお金をかけたい」と考える人が増えているからです。
また、建築家と協力して、高低差を活かしたスキップフロア(段差のある家)や、地下車庫のあるユニークな家を建てたいという需要もあります。
「使いにくい土地」と決めつける前に、「面白い土地」として見せていく。
それが、私たちおもいで不動産の得意とする販売手法です。
まとめ:高低差は「個性」です。まずは正しい調査から。
記事のポイントを整理します。
-
擁壁チェック: 「二段擁壁」「普通のブロック」「孕み」がないか確認しましょう。
-
書類の有無: 「検査済証」があれば、買主への説明がしやすくなります。
ただし、有無だけで安全性は決まりません。
-
告知義務: 不安な点は隠さず伝えることが、結果的にスムーズな売却に繋がります。
「うちは古いから売れないかも」と一人で悩む必要はありません。
高低差や擁壁の問題は、専門的な知識があれば、状況に応じた進め方を探せます。
株式会社おもいで不動産では、机上の査定だけでなく、実際に現地に足を運び、「擁壁の状態」や「高低差の活かし方」まで含めた具体的な提案を行っています。
売るかどうかを決めるのは、その後で構いません。
まずは、あなたの大切な資産の「本当の価値」と「現状」を知ることから始めてみませんか?
