不動産売却で生成AIは使える?聞いてよいこと・だめなこと
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士福岡市で家を売ることを考えていて、生成AIを使ってみたい方に向けた記事です。
結論から書くと、売主が生成AIを使うのは有効な場面と、そうでない場面にはっきり分かれます。
向いているのは、言葉の意味を調べることと、人に聞く前の下ごしらえです。
向いていないのは、金額と、税金の可否の判断になります。
全宅連の2026年の調査では、住まい探しに生成AIを使ったことがある人は全体で33.9%でした。
この記事では、その数字の中身を見たうえで、売主の側の使い方を整理します。
2. 使っている人は、生成AIに何を聞いていますか?
3. 売主が生成AIに聞いてよいことは何ですか?
4. 生成AIに任せてはいけないことは何ですか?
5. 当社のAIチャットは、何をするものですか?
6. 使ってみるときは、どんな順番がよいですか?
生成AIは、どのくらい使われているのですか?
住まい探しで生成AIを使ったことがある人は、全体の33.9%でした。
ただしこの数字は、年代でまったく違う顔をしています。
20代は53.4%、60歳以上は14.8%
年代別に見ると、20代53.4%、30代42.3%、40代31.4%、50代19.6%、60歳以上14.8%です。
20代と60歳以上では、3倍以上の開きがあります。
当社のお客様に多い50〜60代では、5人に1人前後という水準になります。
「まわりは皆使っている」という話ではありません。
「今後使ってみたい」も同じくらいいる
使ったことはないが今後活用してみたいと答えた人は、50代で18.1%、60歳以上で15.7%でした。
すでに使っている人と、これから使いたい人が、ほぼ同じ割合で並んでいます。
つまり、この世代では今まさに使い始める人が増えている途中です。
なおこの調査は全国の20〜65歳の男女5,000人に聞いたもので、家を買う人だけの数字ではありません。
地域別の区分は九州までで、福岡市だけの値は載っていません。
使っている人は、生成AIに何を聞いていますか?
使った人1,695人に目的を聞くと、1位は希望エリアの地域情報の収集・比較で33.5%でした。
2位が専門用語の解説の28.4%です。
上位5つの内訳
3位は物件のメリット・デメリットの比較で27.6%。
4位が条件整理や悩み相談の22.7%、5位が会社選びや問い合わせ文の作成の22.4%でした。
並べてみると、物件そのものを決めるためではなく、決める前の下調べに使われていることが分かります。
1位が地域情報だったのは、そこがいちばん調べにくいところだからでしょう。
住んだことのない街の雰囲気は、間取り図にも価格表にも書いてありません。
裏を返せば、売主が街のことを具体的に書ける物件は、その手間を省いてあげられます。
売主の側にも、同じ使い方ができる
上の5つは、買う人の目的として集計されたものです。
ただ、中身は売主にもそのまま当てはまります。
専門用語の解説も、悩みの整理も、問い合わせ文の作成も、売る側に必要な作業です。
買う側が生成AIで相場を調べる動きについては買う側は生成AIで相場を調べる|売主の値付けと出す情報に分けて書きました。
売主が生成AIに聞いてよいことは何ですか?
答えが1つに決まっていて、間違いに気づける範囲なら、聞いて構いません。
具体的には、用語の意味・手順の全体像・人に聞く質問づくりの3つです。
専門用語の意味を調べる
媒介契約、契約不適合責任、抵当権抹消、契約不適合の免責。
不動産の書類に並ぶのは、日常では使わない言葉です。
生成AIに「中学生にも分かるように説明して」と頼むと、かみ砕いた説明が返ってきます。
当社も不動産売却の用語集を置いているので、両方を見比べていただくと確かめが効きます。
説明が食い違ったときは、用語集や公的機関のページのほうを採ってください。
不動産会社に聞く質問の一覧を作る
ここが、いちばん効く使い方だと当社は考えています。
たとえば、次のように頼んでみてください。
- 福岡市で戸建てを売ります。訪問査定のときに不動産会社へ聞くべきことを10個挙げてください。
出てきた一覧を紙に印刷して、そのまま持ってきていただいて構いません。
その場で思い出せなかった質問が、あとから不安として残るためです。
質問の紙をお持ちになる方は、当社としてもありがたい存在です。
売却の手順の全体像をつかむ
売却は、査定・媒介契約・売り出し・内覧・契約・決済と段階が分かれます。
それぞれに何か月かかるのかを、先に大づかみで知っておくと予定が立てやすくなります。
ただし個別の期間は物件で変わるので、目安として受け取ってください。
当社の手順は売却の流れに全11ステップで書いてあります。
査定書の読み方を、先に下調べする
査定書を受け取っても、どこを見ればよいのか分からないという声をよく伺います。
そこで、受け取る前に「不動産の査定書に載っている項目と、その意味を教えて」と聞いておいてください。
取引事例比較法、原価法、収益還元法といった言葉の意味が先に入っていれば、説明を聞く姿勢が変わります。
ただし、金額そのものの妥当性をAIに判定させるのは避けてください。
当社は査定のときに、どの事例を採ったか、なぜその補正をかけたかまでお見せしています。
その説明が用意できない会社かどうかは、質問すれば分かる部分です。
生成AIに任せてはいけないことは何ですか?
任せてはいけないのは、金額・税金の可否・個人情報の3つです。
いずれも、間違っていても読んだ側が気づけないという共通点があります。
相場の金額を、そのまま信じない
生成AIが答える相場は、いつの、どこの、何件の取引から出したものか分からないことがあります。
学習した時点より新しい取引は反映されません。
福岡市の場合、同じ区でも駅からの距離と広さで単価が大きく変わります。
実際の取引価格は、国土交通省の不動産情報ライブラリで四半期ごとに公表されています。
当社の福岡市の売却相場も、この同じデータを区ごとに集計したものです。
区の平均という答えが、どれだけ役に立たないかを博多区の数字で示します。
当社が集計した博多区のマンション951件のうち、424件は1R・1K・1DKでした。
その中央値は20㎡で1,400万円です。
一方、3LDK系127件の中央値は65㎡で2,700万円でした。
同じ区の中で、総額が2倍近く違うわけです。
「博多区の相場はいくら」という聞き方では、自分の住戸に当てはまる答えが出てきません。
税金の可否と金額は、専門家に確かめる
3,000万円の特別控除が使えるか、取得費をいくらで計算するか。
この種の判断は、要件のどれか1つを取り違えるだけで結論がひっくり返ります。
生成AIは、要件を満たしていない前提でも、それらしい説明を返してきます。
制度の名前と、確かめるべき要件を洗い出すところまでに留めてください。
最終的な判断は、税理士か税務署にご確認ください。
答えを確かめる、3つの問い返し
生成AIの答えは、確かめる手立てを持っていれば使えます。
1つ目の問い返しは「その根拠になった資料の名前とURLを教えて」です。
出典が出てこない、または開けないときは、その答えを使わないでください。
2つ目は「いつの時点の情報ですか」と聞くこと。
制度は毎年のように変わるので、古い答えは正しく見えても使えません。
3つ目は、同じことを言い方を変えてもう一度聞く方法です。
1回目と2回目で答えが食い違うなら、そこは確かめが要る論点だと分かります。
住所・氏名・登記の内容を入力しない
ここは、金額の話とは別の危なさです。
生成AIに入力した文章は、サービスによっては学習に使われます。
売却はご家族にも伏せて進める方がいるくらい、知られたくない情報を含む手続きです。
地番、氏名、ローンの残高、相続人の名前は入力しないでください。
「福岡市博多区の築30年の戸建て」程度まで抽象化すれば、用語や手順の質問には十分です。
当社のAIチャットは、何をするものですか?
当社のサイトにもAIチャットを置いています。
回答のもとにしているのは、当社のよくある質問157問と各ページの情報です。
査定額と税務の個別判断はしない
チャットは、査定額をお答えしません。
税務の個別の判断もせず、人へおつなぎする形にしてあります。
理由は、そこが間違えたときにお客様の損になる部分だからです。
役割を「案内」に絞り、金額と判断は担当者が引き取ります。
回答には、根拠にした公的機関のページを出典として表示するようにしています。
読んだ方が自分で確かめられないと、案内として成り立たないためです。
名前を出さずに聞ける窓口として使う
最初はボタンを選ぶだけで進むようにしてあります。
白紙の入力欄だと手が止まる、というご意見をいただいたためです。
電話やLINEと違い、名前を伝えずに聞けるところが違いになります。
人と話したくなったら、そのまま担当者へ代わることも可能です。
「売るか貸すか」は、AIでは決まらない
相続した実家をどうするか迷っている方から、よくご相談をいただきます。
生成AIに聞くと、売却と賃貸それぞれの一般的な利点と欠点が並んで返ってくるはずです。
そこから先、どちらが自分にとって有利かは、物件ごとの数字を入れないと出ません。
当社は不動産管理もお引き受けしていて、区分マンションなら1室からご相談を承ります。
賃貸建物の管理料は、物件と管理内容に応じて個別にお見積もりします。
その比較は不動産管理のページからご相談ください。
売らずに持ち続ける場合の巡回と報告は空き家管理でお引き受けしています。
使ってみるときは、どんな順番がよいですか?
順番は、用語を調べる、質問を作る、人に会う、の3つです。
生成AIで完結させるのではなく、人に会う前の準備に使うという考え方になります。
3つの手順
1つ目は、手元の書類に出てくる分からない言葉を洗い出すこと。
2つ目は、不動産会社に聞きたいことを10個ほど作ることです。
3つ目が、その紙を持って査定や相談に進むところ。
この順で進めると、相談の時間を「聞きたかったこと」に使えます。
何から聞けばよいか分からないとき
売るかどうかも決まっていない段階の方も少なくありません。
その場合は15分無料相談で、ご事情を伺うところから始めます。
価格の目安が先に欲しい方は無料査定をご利用ください。
どちらも、生成AIで下調べをしてからお越しいただいて構いません。
