福岡市東区の不動産売却相場|香椎・千早と丘陵地の違い
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士福岡市東区は、7区のなかで人口がいちばん多い区です。
香椎・千早の地域拠点、和白や箱崎の住宅地、そして東側に広がる丘陵地と、ひとくちに東区といっても土地の性格が違います。
この違いは、売るときの価格の付き方にそのまま出ます。
この記事は、東区に不動産をお持ちの方に向けて、いま取引がいくらで成立しているのかを数字で確かめていただくために書きました。
国土交通省が公開している取引価格情報をもとに、当社が東区の直近2年ぶんを集計した数値を使います。
あわせて、買い手の層と、東区で実際に起きる「売りにくさ」の正体もお伝えします。
2. 10年で、東区の価格はどう動きましたか?
3. 東区では、どんな人が買っていますか?
4. 東区特有の「売りにくさ」は、どこから来ますか?
5. 東区で売るとき、何から始めればよいですか?
福岡市東区の売却相場は、いくらぐらいですか?
直近2年の中央値は、マンションの3LDK系で2,600万円、戸建てで3,550万円、土地で3,500万円です。
集計したのは2024年第2四半期から2026年第1四半期までの取引で、マンション559件・戸建て280件・土地228件が対象です。
隣の博多区では、同じ期間にマンションが951件動いています。
取引の構成がかなり違うので、比べてみたい方は福岡市博多区の不動産売却相場もご覧ください。
東区と同じく戸建ての取引が多いのが南区で、こちらは218件。
丘陵地の扱いも似ているので、福岡市南区の不動産売却相場もあわせてご覧ください。
戸建ての取引がさらに多いのは、232件の早良区です。
区の中央値が南北で大きくひらく例として、福岡市早良区の不動産売却相場も参考になります。
マンションは間取りで倍以上変わる
同じ東区のマンションでも、間取りによって中央値は倍以上開きます。
| 間取り | 中央値 | 件数 |
|---|---|---|
| 1R・1K・1DK | 1,300万円 | 91件 |
| 1LDK系 | 1,750万円 | 48件 |
| 2LDK系 | 2,100万円 | 67件 |
| 3LDK系 | 2,600万円 | 228件 |
| 4LDK以上 | 2,900万円 | 84件 |
専有面積で切ると、70㎡以上の住戸は中央値3,000万円で、件数も262件と最も多くなります。
東区のマンション市場は、ファミリー向けの広い住戸が中心。
お持ちの住戸が70㎡前後なら、いちばん取引の多い層に入っていることになります。
戸建てと土地は、どちらも3,500万円前後
戸建ての中央値は3,550万円で、面積の中央値が160㎡、㎡単価にすると228,992円です。
土地の中央値は3,500万円、面積240㎡、㎡単価150,000円になります。
戸建てと土地の総額がほぼ並ぶのは、土地のほうが1件あたりの面積が広いためです。
240㎡は、坪でいえばおよそ73坪。
間口と接道の条件によっては、2区画に分けて売る検討が出てくる広さです。
この240㎡は、西区の土地の面積の中央値とちょうど並びます。
ただし西区の㎡単価は130,000円で、東区の150,000円より低い水準。
広い土地を売るときの考え方は福岡市西区の不動産売却相場にも書いています。
㎡単価で見ると、戸建ては土地の1.5倍ほど。
この差が出る理由は物件ごとに違うので、戸建ては建物の状態まで見ないと当てはめられません。
区ごとの内訳は福岡市東区の不動産売却相場に、間取り別・面積別のグラフで掲載しています。
中央値は、そのままご自身の物件の値段ではない
ここまでの数字は、あくまで真ん中の取引です。
同じマンションの同じ間取りでも、階数・方角・リフォームの有無で価格は動きます。
戸建てなら、接道の幅と方位、擁壁の有無で数百万円単位の差が出ます。
中央値でできるのは、「自分の物件がだいたいどのあたりの帯にいるか」を掴むところまで。
1点の金額が要る場面では、現地を見た査定に進んでください。
10年で、東区の価格はどう動きましたか?
㎡単価の中央値で比べると、2016年から2025年までにマンションが109.0%、土地が82.9%、戸建てが72.8%上がりました。
いちばん動いたのはマンションで、208,383円/㎡から435,417円/㎡へと倍以上になっています。
マンションは10年で倍。ただし同じ部屋を追った値ではない
この数字の読み方には、ひとつ注意点があります。
各年に成約した物件の㎡単価を並べたもので、同じ部屋の値動きを追いかけたものではありません。
新しいマンションの取引が増えた年は、それだけで中央値が上がります。
お持ちの築30年の住戸が、10年前の2倍で売れるという意味にはならないため、そこは切り分けてお考えください。
とはいえ、買ったときより高い金額で売れる方が東区に増えているのも事実です。
売却益が出ると譲渡所得税の対象になりますので、手取りの計算は費用シミュレーションで先に確かめておくと安心できます。
戸建ては2023年がいちばん高く、その後は横ばい
戸建ての㎡単価は、2023年の255,172円/㎡がこの10年の最高でした。
2024年は228,992円/㎡、2025年は230,348円/㎡で、2年続けて横ばいです。
マンションが2024年から2025年にかけて360,000円/㎡から435,417円/㎡へ伸びたのとは、動きが分かれています。
この先どうなるかを当社が言い当てることはできません。
できるのは、いまの水準がどこにあるかを数字でお見せするところまでです。
東区では、どんな人が買っていますか?
間取りが分かったマンション518件のうち、3LDK系と4LDK以上が312件を占めます。
6割がファミリー向けの住戸という構成で、これが東区の買い手の中心です。
買い手の6割は、家族で住む人
ファミリー層が中心だと、内覧で見られるところが変わります。
収納の量、部屋数、小学校までの距離、駐車場の有無といった、暮らしの条件です。
香椎・千早のように商業施設と駅がまとまっている地域では、車がなくても生活できる点が効いてきます。
東側の丘陵地なら、駐車場の台数と坂の傾きが同じくらい見られます。
売り出す前に、この2つのどちらの土俵で戦うのかを決めておいてください。
件数で見ると、3LDK系の228件が間取り別では単独で最多です。
裏を返せば、3LDKの住戸は買い手から比べられる相手も多いということ。
同じ間取りが同時期に複数出ているときは、価格を下げる前に写真と管理状況を見直したほうが早く動きます。
ワンルームは投資家が買う
1R・1K・1DKの取引も91件あります。
この層を買うのは、住むためではなく貸すために持つ方です。
見られるのは内装よりも、家賃・管理費・修繕積立金・入居状況といった数字になります。
賃貸中のままでも売却は可能で、当社は投資用として売る場合と、空室にしてから売る場合の両方を試算してお出しします。
この2つは、売れるまでの期間も価格も別物。
どちらが得かは、残っている入居期間と、空室にできる時期で変わります。
入居者がいるうちに売れば家賃が入り続けますが、買い手は投資家に絞られます。
空室にしてから売ると、住むために探している方も候補に入る代わりに、空けている間の管理費と修繕積立金はご自身の負担です。
沿線で生活圏が分かれる
東区を通る鉄道は、JR鹿児島本線・JR香椎線・西鉄貝塚線・地下鉄箱崎線の4つ。
箱崎・千早・香椎はJR鹿児島本線で博多駅まで直結するため、都心へ通う世帯が買い手に入ります。
一方、JR香椎線や西鉄貝塚線の沿線は、東区のなかで生活が完結する層が中心です。
同じ東区でも、買い手が見ている「便利さ」の中身が違うということになります。
当社が広告文を作るときは、駅名だけでなく、どこへ何分で行けるのかまで書くようにしています。
出典:福岡市 東区の概要
東区特有の「売りにくさ」は、どこから来ますか?
東区で価格が読みにくくなるのは、東側に広がる丘陵地の物件です。
敷地に高低差があると、福岡市のがけ条例が建て替えの可否に関わってきます。
がけ条例は、高さ3mと「2倍の距離」で決まる
福岡市建築基準法施行条例の第5条が、がけに近接する建築物を制限しています。
ここでいう「がけ」は、地表面が水平面に対して30度を超える傾斜の土地です。
その高さが3mを超えると、居室のある建物を建てられない範囲が生まれます。
がけの上に建てるならがけの下端から、がけの下に建てるならがけの上端から、高さの2倍の水平距離以内が制限されます。
高さ5mのがけなら、制限されるのは10m以内。
ただし、擁壁を設けてがけの崩壊が起きないと認められる場合などは、この制限から外れます。
建て替えできる土地かどうかで買い手の数が変わるため、傾斜地の売却では最初に確かめる点です。
解体すると、かえって売れなくなることがある
当社が2026年に売却をお手伝いした、東区香椎駅東の戸建てをご紹介します。
築50年を超え、約8mの傾斜地でがけ条例に該当し、増築を複数回くり返していて、しかも未登記という物件でした。
当初は建物を解体して更地にする案も検討しています。
ところが見積もりを取ると、取り壊しと造成にかかる費用だけで1,000万円を超えることが分かりました。
その費用は、そのまま売却価格から差し引かれます。
一方で建物の中は、増築を重ねたぶん広く、大切に使われていて状態も良好でした。
そこで当社は解体をやめ、建物を残したまま、住まいに限らない買い手に向けて売り出しています。
融資が付きにくい条件のため厳しい場面もありましたが、最終的に賃貸用の不動産として購入される方と縁がつながりました。
更地にするかどうかは、費用と買い手の両方を見てから決めてください。
ほかの事例は売却事例にまとめています。
未登記の増築は、契約の直前で問題になる
丘陵地の古い戸建てでは、増築部分が登記されていないことがよくあります。
登記簿の床面積と、実際の建物の大きさが合わない状態です。
買主が住宅ローンを使う場合、金融機関から登記を整えるよう求められることがあります。
売り出す前に登記簿と現況を突き合わせておけば、契約の直前で慌てずに済みます。
この確認は当社が査定の段階で行いますので、ご自身で図面を探す必要はありません。
東区で売るとき、何から始めればよいですか?
最初にやるのは、相場の帯に自分の物件を当てはめることです。
そのうえで、傾斜地かどうか、建物に手が入っているかどうかを確かめます。
手順は3つ
- 区ページの中央値で、ご自身の物件がどの帯にいるかを掴む
- 権利証か固定資産税の納税通知書を用意して、面積と地番を確かめる
- 高低差・増築・未登記に心当たりがあれば、査定の前に伝えておく
3つ目を先に共有していただけると、査定額の根拠が変わります。
後から出てくると、買主が決まったあとに価格を下げる話になりかねません。
3つ目に心当たりがあるかどうかは、図面が無くても判断できます。
建物の一部だけ屋根の形や外壁の色が違う、増築した年を家族から聞いている、といった手がかりで十分です。
そこから先の確認は当社が引き受けますので、思い出したことをそのままお伝えください。
売り出す時期は、数字ではなくご事情で決める
10年の推移を見ると、東区の水準は2016年より高い位置にあります。
ただ、当社は「いま売るべきです」とはお伝えしません。
相続の期限、住み替えの時期、空き家の維持費といったご事情のほうが、数か月の相場の上下より金額に効くためです。
迷っている段階なら、売ると決める前に相談していただいてかまいません。
査定の前に、聞いておきたいことがあれば
東区の物件について、価格の目安を出すところまでは無料査定でお受けしています。
現地を見て、接道・高低差・管理状況まで確かめたうえで、根拠の付いた金額をお出しします。
売るかどうかを決めていない段階のご相談は、15分無料相談のほうが気楽でしょう。
福岡市のほかの区の相場は福岡市の売却相場から、7区それぞれのページをご覧いただけます。
