福岡市南区の不動産売却相場|戸建て218件と高低差の話
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士福岡市南区で家を売ろうとすると、たいてい2つのことで迷います。
1つは「マンションと戸建てで、相場の見方がまるで違う」こと。
もう1つは「敷地に高低差があるけれど、それが値段にどう響くのか分からない」ことです。
この記事は、南区に不動産をお持ちの方が、その2つを数字で確かめられるように書きました。
使うのは、国土交通省が公開している取引価格情報を当社が集計した数値です。
集計したのは2024年第2四半期から2026年第1四半期までの取引で、南区だけで846件あります。
2. 南区は、なぜ戸建ての取引が多いのですか?
3. 南区の価格は、この10年でどれだけ上がりましたか?
4. 敷地に高低差があると、売却で何が変わりますか?
5. 南区で売るとき、手続きの窓口はどこになりますか?
6. 南区の不動産を売る前に、何から始めればよいですか?
福岡市南区の売却相場は、いくらぐらいですか?
直近2年の中央値は、マンションの3LDK系で2,300万円、戸建てで3,800万円、土地で3,200万円です。
内訳はマンション463件・戸建て218件・土地165件。
このうち戸建てと土地が全体の45%を占めているのが、南区の相場を読むときの出発点になります。
マンションは間取りで565万円から2,950万円まで開く
同じ南区のマンションでも、間取りによって中央値は5倍以上ひらきます。
| 間取り | 中央値 | 面積の中央値 | 件数 |
|---|---|---|---|
| 1R・1K・1DK | 565万円 | 20㎡ | 80件 |
| 1LDK系 | 1,800万円 | 30㎡ | 28件 |
| 2LDK系 | 1,650万円 | 60㎡ | 54件 |
| 3LDK系 | 2,300万円 | 70㎡ | 193件 |
| 4LDK以上 | 2,950万円 | 85㎡ | 64件 |
いちばん取引が多いのは3LDK系の193件で、㎡単価は323,077円。
4LDK以上になると㎡単価は348,913円まで上がります。
南区では、広い住戸ほど1㎡あたりの値段も高い並びになっているということです。
30㎡未満が91件。単身向けの取引が2割ある
専有面積で切り直すと、30㎡未満の住戸が91件で、中央値は570万円でした。
南区のマンション取引463件のうち、約2割がこの帯にあたります。
大橋・高宮・井尻の周辺には単身者向けの小さい住戸がまとまっており、買い手も実需ではなく投資目的の方が中心。
お持ちの住戸が30㎡前後なら、見に来るのは「住む人」ではなく「利回りを計算する人」だとお考えください。
同じ広さでも、賃料がいくら取れているかで提示される金額が変わります。
戸建ては3,800万円・145㎡、土地は3,200万円・200㎡
戸建ての中央値は3,800万円で、面積の中央値が145㎡、㎡単価にすると268,116円です。
南区は高低差のある土地も多く、土砂災害警戒区域の確認が要る場合があります(土砂災害警戒区域の家は売れる?指定前の調査箇所と売る前の確認)。
土地は3,200万円で200㎡、㎡単価150,000円でした。
中央区の土地は㎡単価600,000円なので、南区はその4分の1の水準です。
そのぶん南区では、200㎡前後のゆとりある敷地が普通に流通しています。
南区は高低差のある土地も多く、擁壁や地盤について買主から質問を受けます。
答え方は福岡市で古い家を売る|築年数・耐震・地盤の説明のしかたに書きました。
間取り別・面積別のすべての数値は福岡市南区の不動産売却相場のページに載せています。
南区は、なぜ戸建ての取引が多いのですか?
南区は、分譲住宅地が広い範囲に広がっているためです。
直近2年の取引846件のうち、戸建てが218件で25.8%を占めています。
戸建てが87件しかない博多区と比べると、2.5倍の数が動いている計算。
マンションが中心の都心3区とは、売り方の組み立てから変わります。
区ごとに並べると、南区の位置がはっきりする
| 区 | マンション | 戸建て | 土地 |
|---|---|---|---|
| 中央区 | 1,109件 | 56件 | 116件 |
| 博多区 | 951件 | 87件 | 147件 |
| 東区 | 559件 | 280件 | 228件 |
| 南区 | 463件 | 218件 | 165件 |
| 城南区 | 153件 | 146件 | 96件 |
中央区・博多区はマンションが9割近くを占める市場です。
一方の城南区は戸建てが中心で、マンションの取引自体が153件しかありません。
南区は、その両方が同時に動いている区。
同じ形の区をもう1つ挙げるなら、戸建て232件・マンション271件の早良区です。
ただし早良区は南北で相場が3倍ひらくため、区の中央値の使い方が変わります(福岡市早良区の不動産売却相場)。
マンション中心の区との違いを見たい方は福岡市中央区の不動産売却相場もあわせてご覧ください。
戸建てが多い区では、買い手が3〜4件を見比べる
戸建ての取引が多いということは、同じ時期に似た物件が売りに出ているということでもあります。
買い手は1日に3〜4件をまとめて内覧し、その場で比べていきます。
マンションのような「同じ建物の別の部屋」という分かりやすい比較対象がありません。
築年数も間取りもばらばらな物件が、そのまま横に並ぶことになります。
ここで効くのは、価格よりも「見たときの納得感」です。
当社が扱った案件でも、他社で売れずにいた戸建てを、再度ヒアリングして相場感と売却期限を引き直したところ、素早く契約まで進んだことがありました。
同じ南区でも、駅が変われば戸建ての中央値は950万円違う
西鉄天神大牟田線の駅ごとに戸建ての中央値を出すと、区内でもはっきり差が出ます。
| 駅 | 戸建ての中央値 | ㎡単価 | 件数 |
|---|---|---|---|
| 高宮 | 4,550万円 | 346,411円/㎡ | 60件 |
| 井尻 | 3,900万円 | 287,302円/㎡ | 66件 |
| 大橋 | 3,600万円 | 249,325円/㎡ | 84件 |
高宮と大橋では、中央値で950万円の開きがありました。
マンションは大橋が1,900万円・208件、高宮が1,700万円・251件で、差は200万円にとどまります。
南区で「区の相場」をそのまま自分の家に当てはめると、戸建てのほうが大きくずれるということです。
なお1つの町には最大3つの駅が付くため、同じ取引が複数の駅に数えられています。
駅ごとの件数を足し合わせないでください。
境界と越境は、売り出す前に確かめる
戸建てと土地でつまずきやすいのは、境界が確定していない状態で売り出してしまうことです。
境界が決まっていないと、買主が住宅ローンを使えない場合があります。
確定測量の費用は40〜60万円程度、期間は1〜3か月。
3,800万円の戸建てなら、売却価格の1〜2%にあたる出費です。
隣地の立会い調整に時間がかかるため、売ると決めた段階で着手するかどうかを判断してください。
南区の戸建てについては福岡市の戸建て売却のページに、当社の進め方をまとめています。
南区の価格は、この10年でどれだけ上がりましたか?
2016年から2025年までの㎡単価の中央値で比べると、土地が62.4%、戸建てが55.1%、マンションが45.9%上がっています。
上がり幅がいちばん大きいのは土地でした。
マンションより土地と戸建てのほうが伸びているのは、南区の特徴です。
土地は98,500円/㎡から160,000円/㎡へ
南区の土地の㎡単価の中央値は、2016年が98,500円、2025年が160,000円でした。
200㎡の敷地なら、単純計算で1,970万円から3,200万円に変わったことになります。
戸建ては175,758円/㎡から272,521円/㎡、マンションは232,051円/㎡から338,667円/㎡です。
2024年だけ下がって見えるのはなぜか
3種別とも、2024年の数値がいったん前年を下回っています。
これは値下がりではなく、その年に取引された物件の構成が変わったためです。
中央値が指すのは「その年に売れたものの真ん中」。
築古や駅から離れた物件が多く動いた年は、それだけで数値が下がります。
同じ物件を10年追いかけた値動きではない、という点はご注意ください。
ご自身の物件がどの位置にあるかは、中央値だけでは決まりません。
敷地に高低差があると、売却で何が変わりますか?
高低差があると、買主がその土地に建て替えられるかどうかが変わり、結果として買い手の数が変わります。
南区の南西部に広がるのは、標高597mの油山のふもとです。
油山市民の森の住所は南区大字桧原で、その周辺から長丘・若久・高宮にかけては、敷地に高低差のある住宅地が続きます。
がけ条例は「高さ3m超」と「2倍の距離」で決まる
福岡市建築基準法施行条例の第5条が、がけに近接する建築物を制限しています。
ここでいう「がけ」は、地表面が水平面に対して30度を超える傾斜の土地です。
高さが3mを超えるがけが対象です。
がけの上に建てるならがけの下端から、がけの下に建てるならがけの上端から測ります。
その高さの2倍の水平距離以内には、居室を持つ建物を建てられません。
高さ4mのがけなら、制限されるのは8m以内。
敷地の奥行きが狭ければ、建てられる場所がほとんど残らないこともあります。
擁壁があるときに確かめること
擁壁を設けてがけの崩壊のおそれがないと認められる場合などは、この制限から外れます。
そこで確かめるのは、擁壁がいつ・どういう手続きで造られたかです。
検査済証や工事の記録が残っていれば、買主の側で安全性を確認しやすくなります。
記録が見つからない擁壁は、買主が安全性の確認から始めることになり、その手間が価格の交渉材料になります。
記録が出てこなかったときに何から手を付けるかは、高低差・擁壁のある物件を売る方法にまとめました。
売り出す前に、お手元の書類を一度すべて出してみてください。
解体して更地にするのが正解とは限らない
高低差のある土地では、建物を壊す費用に加えて、地面を平らにならす造成費がかかります。
当社が東区で扱った築50年・約8mの傾斜地の戸建てでは、この2つの見積りが合わせて1,000万円を超えました。
その金額は、そのまま売却価格に響きます。
この案件で活かしたのは、建物の中が広くてきれいだったという利点でした。
建物を残したまま、居住用に限らない買い手に向けて売り出しています。
最終的には、賃貸用として購入される方に引き渡しました。
更地にする前に、建物を残したまま買う人がいないかを探すのが先です。
その見極め方と、更地にしたときに固定資産税がどう変わるかは福岡市で土地を売る流れにまとめました。
南区で売るとき、手続きの窓口はどこになりますか?
戸籍や固定資産評価証明書は南区役所ですが、売った翌年の確定申告は南区役所ではありません。
南区役所の住所は南区塩原3-25-1です。
いっぽう確定申告の管轄は南福岡税務署で、こちらは博多区春町3-2-21にあります。
区役所と税務署で行き先が分かれる
南区にお住まいの方の譲渡所得の申告先は、南区内ではなく博多区の南福岡税務署です。
区役所で済むと思って出向くと、二度手間になります。
申告の時期は売った翌年の2月16日から3月15日まで。
3,000万円の特別控除などを使う場合は、税金がゼロでも申告が必要です。
どの手続きがどこの窓口かは福岡市7区の手続き窓口ガイドにまとめています。
手取りは、売値から何を引いた額か
売値がそのまま手元に残るわけではありません。
引かれるのは、仲介手数料、印紙税、抵当権抹消の1〜2万円台、必要なら測量費の40〜60万円です。
譲渡益が出れば、所有5年以下なら39.63%、5年超なら20.315%の税がかかります。
3,800万円の戸建てで、これらを差し引くといくら残るかは手取りの試算で計算できます。
南区の不動産を売る前に、何から始めればよいですか?
最初にやるのは、お持ちの物件が上の表のどこに入るかを確かめることです。
マンションなら間取りと専有面積、戸建てなら土地の面積と高低差の有無。
その2つが分かれば、中央値からの距離がおおよそ見えます。
そのうえで、境界が確定しているか、擁壁の記録が残っているかを手元の書類で確認してください。
中央値はあくまで目安で、階数・方角・接道状況で実際の価格は変わります。
個別の目安が知りたい方は無料査定をご利用ください。
まだ売ると決めていない段階でも、当社は15分無料相談でお受けしています。
