月極駐車場を売るときの解約予告|契約者にはいつ知らせる?
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士福岡市内の月極駐車場を売ろうと考え始めたオーナーの方、相続で駐車場を引き継いで手放したい方へ書いています。
最初に迷うのは、借りている人にいつ解約を伝えるのか、立ち退き料を払う必要があるのか、の2点でしょう。
先に結論です。
更地に線を引いただけの月極駐車場なら、借地借家法は当たらず、民法と契約書が基準になります。
予告の期間を決めるのは、まず契約書の解約条項です。
立ち退き料は、借地借家法のような法律上の支払い義務は原則として生じにくいものの、契約書と個別の事情で変わります。
この記事では、条文の読み方・売却の流れの中で知らせる時期・契約者を付けたまま売るときの精算を、順に整理しました。
個別の契約書の解釈は弁護士の判断になるため、オーナーが自分で確かめられる範囲に絞っています。
2. 契約者には何か月前に解約を知らせればよいですか
3. 売却の流れのどこで契約者に知らせればよいですか
4. 立ち退き料は払わなければいけませんか
5. 契約者を付けたまま、駐車場として売るときはどうしますか
6. 売ると決めたら、最初に何をすればよいですか
月極駐車場の契約に借地借家法は当たりますか
車を置くために土地を貸す月極駐車場の契約は、建物の所有を目的としないため、借地借家法の「借地権」に当たりません。
借地借家法が守るのは「建物を建てるための借地」と「建物を借りる契約」
借地借家法1条は、この法律の対象を「建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権」と「建物の賃貸借」だと定めています。
2条1号も、借地権を「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定義しています。
アスファルトを敷いて白線を引き、車止めを置いただけの駐車場は、借り手が建物を持つための土地ではありません。
そのため、借地借家法の更新や解約の制限、いわゆる「正当の事由」の規定は、月極駐車場の契約には当たらないことになります。
解約の予告の期間をどう書くかは、契約書の作り方しだいです。
入れておきたい項目は駐車場の管理委託は何をしてくれる?にまとめています。
基準になるのは、民法の賃貸借の規定と、オーナーと契約者が交わした契約書です。
事業者に一括で貸している土地は違約金の条項も付くため、コインパーキングの土地の売却に分けました。
「土地を借りる契約」か「区画を使う契約」かで読み方が変わる
月極駐車場の契約が、民法でいう土地の賃貸借なのか、区画を使わせてもらう別の種類の契約なのかは、契約の中身で見方が分かれます。
区画が決まっていて、契約者が24時間自由に出し入れできる形なら、土地の賃貸借に近いと見るのが1つの考え方です。
区画を固定せず、管理人が車の置き場所を指示する形なら、場所を利用する契約として見る余地も出てきます。
どちらと見るかで、次の章の民法617条の当てはめが変わり得るのです。
ここはオーナーが自分で決めてしまわず、契約書の書き方を手がかりに進めるのが安全です。
立体駐車場や、建物の中の駐車場を貸している場合は、建物の賃貸借として扱われる可能性もあるため、先に専門家へ相談してください。
契約者には何か月前に解約を知らせればよいですか
契約書に解約の予告期間が書いてあれば、その期間が出発点です。
まず契約書の解約条項を確かめる
月極駐車場の契約書には、「貸主・借主のどちらからでも、何か月前までに書面で申し入れれば解約できる」という条項が入っていることがよくあります。
確かめるのは、次の4つです。
- 貸主の側から解約できると書いてあるか(借主からの解約しか書いていない契約書もあります)
- 予告の期間は何か月か
- 予告は書面で、と決まっているか
- 解約の月の賃料を日割りにするか、月単位で受け取るか
相続で引き継いだ駐車場では、契約書が見つからないことも珍しくありません。
管理会社に任せていたなら、管理会社が契約書の控えを持っているはずです。
口約束だけで貸していた場合は、次の項の「条項が無いとき」に当たるため、読み進めてください。
解約条項が無いときの民法617条と618条
民法617条は、期間を定めなかった賃貸借について、各当事者はいつでも解約の申入れができると定めています。
そのうえで、申入れの日から賃貸借が終わるまでの期間を物の種類ごとに決めたのが、次の表です。
| 民法617条1項の区分 | 申入れから終了まで |
|---|---|
| 土地の賃貸借 | 1年 |
| 建物の賃貸借 | 3か月 |
| 動産及び貸席の賃貸借 | 1日 |
月極駐車場の契約を「期間の定めの無い土地の賃貸借」と読むと、オーナーからの申入れは1年前、という計算になります。
実務の感覚からすると長く、ここを読み違えると売却の段取りが大きく狂うはずです。
618条は、期間を定めた契約でも、途中で解約する権利を残してある場合には617条を準用するとしています。
「1年契約・自動更新・途中解約は申入れにより可能」という契約書で予告期間が書かれていなければ、やはり617条の読み方が問題として残るわけです。
前の章のとおり、契約が土地の賃貸借に当たるかどうかで答えが変わり得るため、条項が無いときは弁護士に確かめてから通知を出してください。
なお、一般論として、実務では2〜3か月前に書面で知らせる例が多く見られます。
ただしこれは慣行であって、法律が決めた期間ではありません。
出典:e-Gov法令検索 民法
売却の流れのどこで契約者に知らせればよいですか
更地で売るなら、買主がほぼ決まった段階で知らせ、予告期間が明けた後に引渡し日を置くのが基本の形です。
| 段階 | 売主がやること | 契約者への連絡 |
|---|---|---|
| 1. 査定 | 契約書と契約者の一覧をそろえる | まだしない |
| 2. 媒介契約 | 更地渡しか駐車場のままかを決める | まだしない |
| 3. 買主の目星 | 購入申込の条件と引渡し日を詰める | 通知文を準備する |
| 4. 売買契約 | 引渡し日を予告期間より後にする | 書面で解約を申し入れる |
| 5. 明け渡し | 敷金の返還・区画の確認 | 最終日の案内 |
| 6. 決済 | 残代金の受領と引渡し | — |
段階ごとの手続きは、売却の流れ(全11ステップ)に沿って進みます。
早すぎる通知と遅すぎる通知、それぞれの損
査定の段階で全員に解約を伝えると、買主が決まる前に駐車場が空になります。
売れるまでの数か月、賃料が入らないまま固定資産税だけを払う形です。
しかも買主が「駐車場のまま買いたい」という投資家やコインパーキング事業者だった場合、空にしたこと自体が裏目に出ます。
逆に売買契約の後で知らせると、予告期間が引渡し日に間に合わないことがあります。
引渡し日に車が残っていれば、売主は約束どおりに土地を渡せません。
契約者の側から見ても、短い予告で次の駐車場を探すのは負担が大きく、苦情や居座りの原因になります。
両方の損を避けるには、買主の目星が付いた段階で通知文を用意し、売買契約と同じ時期に申し入れる形がいちばん無理がありません。
売買契約書に書いておくこと
更地で渡す約束をするなら、売買契約書には次の3点を入れておきます。
- 売主が引渡しまでに駐車場の契約をすべて終了させること
- 精算機・看板・車止めなどの撤去を誰が負担するか
- 契約者が期日までに退去しなかったときの引渡し日の扱い
3つ目を決めずに契約すると、1台が残っただけで決済が止まり、違約の話になりかねません。
媒介契約の種類ごとの違いは、媒介契約の種類にまとめてあります。
立ち退き料は払わなければいけませんか
月極駐車場の解約では、借地借家法のような立ち退き料を前提とした仕組みが無いため、法律上の支払い義務は原則として生じにくいと考えられます。
借地借家法の「正当の事由」と財産上の給付は、駐車場には当たらない
立ち退き料がよく話題になるのは、借地借家法6条(借地)と28条(建物の賃貸借)の場面です。
この2つの条文は、貸主が更新を断ったり解約を申し入れたりするには「正当の事由」が必要だとしています。
正当の事由を判断する材料の1つとして、貸主が明渡しと引換えに「財産上の給付」をする申出、つまり立ち退き料が挙げられています。
月極駐車場の契約は、先に見たとおり借地借家法の対象外です。
そのため、立ち退き料を払って正当の事由を補う、という組み立て自体が出てきません。
ただし、契約書に解約時の補償を約束した条項がある場合や、予告期間を守らずに急いで明け渡してもらう場合は、話が変わります。
「絶対に払わなくてよい」とまでは言い切れない、というのが正確なところです。
それでも応じる例がある:日割りの返金と次の駐車場の案内
法律上の義務とは別に、トラブルを避けるために少し手当てをするオーナーもいます。
よくあるのは、解約月の賃料を日割りで返す、敷金を早めに返す、の2つです。
契約者がいちばん困るのは、お金よりも次の置き場所だと思います。
車庫証明で届け出る保管場所は、自動車の使用の本拠(自宅や事業所)から2キロメートル以内でなければなりません。
保管場所を変えたときは、変更した日から15日以内に警察署長へ届け出る決まりもあります。
近くに空きが無いと、契約者は2キロの範囲を自分で探し回ることになるわけです。
当社には、「駐車場は空いていませんか」という、借りたい方からのお問い合わせが最近多く寄せられています。
閉じる駐車場の契約者に次の駐車場を案内したい、というご相談にも乗れますので、売却のご相談と一緒にお声がけください。
福岡市の都心部では「隔地の駐車施設」になっていないかを確かめる
福岡市には「建築物における駐車施設の附置等に関する条例」があり、商業地域などで一定規模以上の建物を建てるときは駐車場を設ける義務があります。
建物の敷地内に設けるのが著しく困難な場合の特例も、条例8条にあります。
市長の承認を受ければ、敷地からおおむね300メートル以内の別の場所に設けてよい、という定めです。
商業地域などにある近くのビルの持ち主が、法人名で何台もまとめて借りている場合は、この「隔地」の駐車施設として使っている可能性があるのです。
その場合、契約者は代わりの場所を探し、市の手続きもやり直す必要があるため、一般的な予告期間では足りないことがあります。
法人の契約者がいるときは、通知の前に「附置義務の駐車場として届けていないか」を契約者に確かめてください。
条例の扱いは、福岡市道路下水道局の附置義務の窓口が案内しています。
契約者を付けたまま、駐車場として売るときはどうしますか
駐車場のまま売るなら解約の予告は要らず、貸主の立場を買主へ引き継いで、敷金と賃料を決済日で精算する形です。
貸主の地位は、売主と買主の合意で移せる
民法605条の3は、不動産の売主が貸主であるときは、借主の承諾がなくても、売主と買主の合意で貸主の地位を買主に移せると定めています。
建物の賃貸借なら、建物の引渡しによって地位が当然に移る605条の2の場面になるのが普通です。
月極駐車場は借地借家法の対抗力が無く、登記もされていないことが多いため、売買契約書で「貸主の地位を買主に引き継ぐ」と合意しておく形になります。
買主が契約者に対して貸主だと主張できるのは、所有権の移転登記をした後です。
決済日に登記を申請し、賃料の振込先もその日に切り替える段取りにすると、どちらに払えばよいかで契約者が迷いません。
振込先の変更は、売主と買主の連名の書面で全員に知らせてください。
敷金・保証金と賃料の日割り精算
貸主の地位が移ると、敷金を返す義務も買主に引き継がれます。
605条の3が、605条の2第4項の敷金の承継の規定を準用しているためです。
そこで決済では、預かっている敷金の合計を売買代金から差し引くか、別に買主へ渡して精算します。
精算の前に、契約者ごとの区画番号・月額賃料・預り敷金・賃料の滞納の有無を一覧にしておくと、買主の確認が早く済みます。
賃料は、決済日を境に日割りで分けるのが一般的な形です。
翌月分を前月末に受け取る前払いの契約なら、決済月の残りの日数分を売主から買主へ渡します。
固定資産税も同じ日を境に日割りで精算するのが慣行で、福岡市の納期は市のページで確かめられます。
売ると決めたら、最初に何をすればよいですか
最初にやるのは、契約書と契約者の一覧をそろえ、更地で売るか駐車場のまま売るかを決めることです。
この2つのどちらが向いているかは、用途地域と接道で決まります。
調べる順番は駐車場の土地は更地にして売る?そのまま売る?にまとめました。
契約者への通知書に書くこと
更地で売ると決めたら、通知書には次の5つを書きます。
- 解約する契約(区画番号と契約者名)
- 解約の日(契約書の予告期間を満たす日)
- 最終月の賃料の扱い(日割りか月単位か)
- 敷金の返還の時期と方法
- 問い合わせ先(オーナーか管理会社)
「売却するため」と理由を書くかどうかは、買主が決まる前なら伏せてもかまいません。
通知は普通郵便ではなく、届いた日が分かる方法で送ると、予告期間の起算日で揉めずに済みます。
駐車場の売却は、建物の無い土地の売却として査定します。
当社の手取りシミュレーターは自宅の売却を前提にしているため、駐車場の試算には使わず、個別にご相談ください。
税金は国税庁の一般的な説明までをご案内し、個別の税額は税理士の判断になります。
売るかどうか決めきれない場合のもう1つの道は、駐車場のまま持ち続けることです。
任せて続ける・閉じる・売るの3つを毎年の手取りで並べる方法は、駐車場経営をやめたいときの比べ方にまとめました。
人に任せて続ける場合の手取りの違いは、管理委託と一括借り上げの違いで10台の例を使って比べています。
当社は不動産管理の中で、月極の区画割り・契約者の募集・駐車場代の集金と毎月の送金まで、駐車場の管理も承っています。
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