福岡市の空き家の解体に補助金は出る?3つの制度と期限
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士福岡市の実家が空き家になり、解体してから売るか迷っている方に向けた記事です。
最初に結論を申し上げます。
空き家ならどれでも解体費が出るという制度は、福岡市にありません。
ただし、旧耐震の木造戸建てで耐震診断の判定が出れば、除却工事費の23パーセント・上限30万円の補助があります。
よく紹介されている「空き家活用補助金」は、改修に使うもので解体費には使えません。
この記事では、使える制度と使えない制度を分け、申請と解体の時期の決め方までご説明します。
金額と要件は、福岡市のページの記載を確かめたうえで書いています。
2. 「空き家活用補助金」は、解体に使えませんか
3. 塀だけが危ないときは、どうなりますか
4. 解体する時期は、いつにすればよいですか
5. 解体してから売るか、そのまま売るか
6. まず何をすればよいですか
福岡市に、空き家の解体費を補助する制度はありますか
空き家ならどれでも出る制度はありません。
出るのは、旧耐震の木造戸建てで、耐震診断の判定が出た場合に限られます。
制度の名前は福岡市木造戸建住宅耐震建替費等補助事業で、空き家対策ではなく耐震化の制度です。
補助されるのは、除却工事費の23パーセントです
除却だけを行う場合、交付額は除却工事費の23パーセントで、上限は30万円です。
建替えを行う場合は1戸20万円に加え、相続した空き家の除却費の23パーセント(上限30万円)が加算されます。
どちらの場合も、既存住宅の延べ床面積に39,900円を掛けた額の23パーセント以内が上限になります。
対象になる建物の条件は2つです。
- 昭和56年5月31日以前に建築確認を得て着工した、2階建て以下の木造戸建住宅
- 耐震診断の結果、倒壊する可能性が高いと判定されたもの
マンションや、昭和56年6月以降に着工した家は、この制度の対象ではありません。
相続した空き家には、別の期限が付いています
相続または遺贈で取得した空き家を除却する場合、期限があります。
相続開始日から起算して3年を経過する日の属する年の、翌年3月までに行う工事が対象です。
ここで混ざりやすいのが、譲渡所得の空き家3,000万円特別控除の期限です。
控除のほうは、相続から3年目の年末までに売ることが条件になっています。
つまり補助金の期限は、控除の期限より3か月うしろにあります。
先に来るのは控除の期限なので、両方を使うつもりなら年末を基準に組み立ててください。
控除の要件は空き家3,000万円控除の期限にまとめています。
申請するのは、工事を契約する前です
この制度でいちばん多い取りこぼしが、申請の順番です。
福岡市の案内では、工事の契約や着工の概ね1か月前までに申請することになっています。
先に解体業者と契約してしまうと、同じ工事でも対象になりません。
出発点は耐震診断なので、解体業者に見積もりを頼む前に市へご相談ください。
「空き家活用補助金」は、解体に使えませんか
使えません。
福岡市の空き家向けの補助金は2つありますが、どちらも改修工事を行うことが前提です。
対象経費に家財道具の撤去費は入りますが、建物を取り壊す費用は入っていません。
福岡市の3つの制度を、解体に使えるかどうかで並べます。
表は横にスクロールして確認できます。
| 制度 | 上限 | 解体費に使えるか |
|---|---|---|
| 木造戸建住宅耐震建替費等補助 | 30万円 | 使える(旧耐震・判定が必要) |
| 地域貢献等空き家活用補助金 | 250万円 | 使えない(改修が前提) |
| 空き家活用補助金(調整区域) | 100万円 | 使えない(改修が前提) |
金額がいちばん大きい制度が、解体には使えないという並びになっています。
地域貢献等空き家活用補助金は上限250万円です
空き家を子ども食堂や福祉施設などに改修する場合の制度です。
補助率は設計費・家財道具撤去費・改修工事費などの合計額の2分の1で、上限は250万円になります。
家財道具の処分費だけを出すことはできず、改修工事費とその他経費の合計の5分の1までという枠があります。
対象の空き家は、着工日が昭和56年6月1日以降であることが条件です。
それより古い建物は、耐震改修で耐震性を確保する必要があります。
子育て世帯が住む用途の区分もあり、こちらの上限は100万円まで。
市街化調整区域の制度は上限100万円で、10年の縛りがあります
もう1つが、市街化調整区域の定住化を促す空き家活用補助金です。
補助率は改修工事費・設計費などの合計額の2分の1で、上限は100万円です。
対象になるのは、空き家を取得して住む方、借りて住む方、貸す方の3通りに限られます。
そして2つの制度に共通するのが、空き家を10年以上活用するという条件です。
売却を考えている方には、この10年がそのまま足かせになります。
補助金を受けて改修してから売る、という使い方はできないとお考えください。
市街化調整区域の土地をどう扱うかは市街化調整区域の土地は売れない?に書いています。
もう1つ、どちらの制度にも枠があります。
地域貢献等空き家活用補助金は令和8年度の定員が3棟で、先着順です。
市街化調整区域の制度は令和8年4月1日から随時の募集で、予算額に達した時点で終わります。
要件を満たしていても、年度の後半には受付が閉じている場合があるとお考えください。
塀だけが危ないときは、どうなりますか
ブロック塀等除却費補助事業という別の制度が使えます。
建物を解体しなくても、道路に面した塀だけを対象にできる点が違います。
空き家で近所から連絡が来るのは、塀と庭木の2つが多いところです。
補助額は、長さと工事費を比べて低いほうです
除却する塀の長さに15,000円を掛けた額と、除却費用の3分の2を比べ、低いほうが交付されます。
上限は1件あたり30万円です。
福岡市のページには令和8年度から補助率と上限額を引き上げたという記載もあるため、申請の前に金額をご確認ください。
対象になるのは、道路に面した高さ1メートル以上の塀です
対象は3通りあります。
- 高さ2.2メートルを超えるコンクリートブロック塀
- 高さ1.2メートルを超えて、控え壁がないもの
- 調査で著しいひび割れや傾きが確認された、高さ1メートル以上のもの
工事のあとに残る塀は、高さ1メートル未満で、著しいひび割れや傾きがないことが求められます。
この制度も、すでに工事を契約した場合や着工した場合は対象外です。
先に見積もりだけ取り、契約は申請のあとに回してください。
解体する時期は、いつにすればよいですか
税の期限があるかどうかで、年内と年明けのどちらが得かが変わります。
固定資産税を判定するのは1月1日の状況なので、解体の日付が1日違うと1年分の差。
ここを知らずに12月に解体すると、翌年度から税が上がったことに春になって気づきます。
1月1日に建物が無いと、その年度から特例が外れます
住宅が建っている土地には、固定資産税の住宅用地の特例がかかっています。
更地になると、その軽減が外れます。
税額が上がるのは、解体した翌年度からです。
判定するのは1月1日の状況です。
1月2日以降に解体すれば、その年度は特例が残ります。
急ぐ理由が無いなら、解体を年明けに回すほうが1年分有利です。
税額の仕組みと、解体後に必要な住宅用地の申告は実家の解体費用はいくら?福岡の坪単価と更地の注意点にまとめています。
期限がある方は、年内に終える必要があります
空き家3,000万円控除を使う方は、話が逆になります。
控除の期限は相続から3年目の年末なので、その年の12月31日までに引渡しを済ませる必要があります。
更地で引き渡す約束なら、解体も年内です。
1年分の固定資産税と、3,000万円の控除では、金額の桁が違います。
期限が来ている方は、税より控除を優先してください。
なお、床面積10平方メートルを超える建物を取り壊すときは、工事開始の前日までに建築物除却届が必要です。
手数料はかかりません。
区役所と市の窓口の場所は福岡市7区の手続き窓口ガイドにまとめています。
解体してから売るか、そのまま売るか
補助金が出ても、解体費の大半は自己負担のまま残ります。
そのため、補助金の有無だけで解体を決める方はいません。
比べるのは、更地で売った価格と、古家付きのまま売った価格の差です。
上限30万円で埋まるのは、1割から2割です
木造戸建ての解体費は1坪あたり5〜8万円で、30坪なら150〜240万円ほどかかります。
上限30万円の補助が出ても、残る負担は120万円から210万円です。
割合でいえば、補助で埋まるのは1割から2割にとどまります。
そして補助が出るのは、耐震診断で倒壊の可能性が高いと判定された場合だけです。
判定が出ない家では、全額が自己負担になります。
ここで「隣の市にはあるのに」と感じる方がいます。
同じ福岡県内でも、市によって制度の立て方が違うためです。
北九州市には老朽空き家等除却促進事業があり、危険と判定された空き家の除却に1棟あたり上限30万円が出ます。
こちらは耐震化ではなく空き家対策の制度で、昭和56年5月以前の建築で市場流通が困難と判定されたものが対象です。
福岡市の制度が耐震診断から入るのは、空き家対策ではなく耐震化の枠で作られているからです。
解体せずに売る道も残っています
古家付き土地として現況のまま売る方法があります。
買主が解体を前提に買うため、解体費は価格の交渉に乗せる形です。
どちらが手元に残るかは、物件ごとに計算しないと分かりません。
分かれ目になるのは3つです。
1つ目が、建て替えができる土地かどうかです。
接道が足りない土地を更地にすると、建てられない土地が残ります。
2つ目が、買主が住宅ローンを使うかどうかです。
古家が残っていると融資を受けにくい場合があり、そのぶん買主の層が狭まります。
3つ目が、残置物の量です。
家財が多い家では、解体費に処分費が重なって見積もりが膨らみます。
価格と期間の比べ方は福岡の空き家は買取と仲介どちら?に書きました。
当社の空き家の売却の進め方は福岡市の空き家売却でご確認いただけます。
まず何をすればよいですか
解体業者に見積もりを頼む前に、2つを確かめてください。
1つ目が建物の着工年で、2つ目が相続した日です。
この2つで、使える制度と期限がほぼ決まります。
耐震診断が出発点です
昭和56年5月31日以前の着工であれば、耐震診断の申込みから始まります。
診断の結果が出ないと、除却の補助は申請できません。
個別の税額や相続税の判断は税理士、登記は司法書士の担当になります。
当社は(公社)福岡県宅地建物取引業協会の会員で、必要な場合はそれぞれの専門家をご紹介できます。
片付けや解体を決める前に、両方の価格を見てください
当社の無料査定でお出しするのは、現況のままの価格と、解体して更地にした場合の価格の2つです。
決めるまでの間だけ管理を預けたい方には、月6,600円(税込)からの空き家管理もあります。
管理をご依頼いただいても、当社へ売却を依頼する必要はありません。
内容は空き家管理のページに書いています。
