古くて売れない実家を民泊の買主へ|解体する前に考えること
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士相続した実家が古く、「住む人はもう見つからないだろうから、壊して土地で売るしかない」と考えている方へ。
解体を決める前に、もう1つ確かめてほしい道があります。
住まいとしては買い手が付きにくい家でも、民泊や社宅として使いたい買主が、条件に合えば検討する場合があるのです。
この記事は、福岡市の古い実家を解体して売るか、建物を残して売るかを決めかねている方のために書きました。
結論を先に書くと、民泊の買主は「必ず買ってくれる相手」ではなく、買い手の候補を広げる1つの選択肢です。
2. 解体費が重い古い家は、なぜ建物を残す道を考えるのか
3. 解体・古家付き・民泊の買主も含めて探す、どれを選ぶ?
4. 民泊の買主が買えない古い家とは?
5. 解体するかどうかで、相続空き家の3,000万円控除は変わる?
6. 解体を決める前に、何をすればいい?
古くて売れない実家は、民泊の買主に売れる?
売れる場合はありますが、民泊の買主の条件に合うかどうかは物件しだいです。
住まいを探す家族と、民泊や社宅に使う買主とでは、家を見るところが違います。
その違いこそが、古い家に別の買い手が付く余地です。
住まいの買い手と、民泊の買い手は見るところが違う
家族で住む家を探す人が見るのは、住宅ローンが使えるか、間取りが今の暮らしに合うか、学校や買い物が近いか。
築年数が古いと、このうち住宅ローンの段階で候補から外れやすくなります。
民泊や社宅として使う買主は、事業や会社の目的で家を買うため、見る点が少し変わります。
部屋数や広さ、室内の状態、人を泊められる制度上の条件などです。
「古いけれど広くて、中はきれい」という家は、住まいの買い手には響かなくても、こちらの買い手には検討の材料になります。
「民泊の買主なら売れる」とは言えない理由
民泊に使うには、届出や許可、消防の設備、近所への知らせなど、家の外側の条件がいくつも重なります。
どれか1つで止まれば、その買主にとっては買えない家です。
民泊に使えるかどうかは家ごとに違い、見た目だけでは判断できません。
さらに、民泊の買主は住まいの買主より数が少なく、いつ現れるかも分かりません。
当社がこの記事で書けるのは、「住まいとしては難しい家でも、民泊の買主が条件に合えば検討する場合がある」というところまでです。
価格が上がる、早く売れる、といった約束はできません。
解体費が重い古い家は、なぜ建物を残す道を考えるのか
取り壊しや造成の費用が重いと、更地にして売っても手元に残るお金が減ってしまうからです。
古い家ほど、壊す費用と、壊したあとの土地の使いやすさを並べて比べる必要があります。
傾斜地や増築を重ねた家は、壊す費用が膨らみやすい
木造の家を取り壊すだけなら、費用の目安は次の章の表のとおりです。
ところが高低差のある土地では、取り壊しに加えて造成や擁壁の工事が要ることがあります。
増築をくり返した家なら、どこまでが登記された建物なのかを確かめるのが先です。
こうした費用は、更地で売るときの価格から差し引いて考えることになります。
壊す前に総額をつかんでおかないと、更地のほうが得かどうかを比べようがありません。
建物に使い道が残るなら、住まい以外の買主も候補に入る
古くても中が広く、手入れされてきた家なら、建物そのものに使い道が残っています。
住まいを探す家族に響かなくても、賃貸用に買う人や、民泊・社宅に使いたい買主が検討する場合があります。
ただし、民泊に使える家として売り出しても、実際に買うのが民泊の買主とは限りません。
賃貸用や、直して住む人が買うことも十分にあります。
「住まい」に絞らず、民泊・社宅・賃貸用まで買い手の候補を広げておけば、解体せずに売る道を探しやすくなるでしょう。
坂や高低差のある地域の売りにくさは、東区の丘陵地を例に福岡市東区の不動産売却相場で書いています。
解体・古家付き・民泊の買主も含めて探す、どれを選ぶ?
建て替えができて更地を欲しがる買い手が多い場所なら解体、建物に使い道が残っているなら古家付きか民泊の買主も含めて探す、が目安です。
3つの売り方を並べると、次のようになります。
| 売り方 | 売主が先に払うお金 | 向いている家 | 気をつける点 |
|---|---|---|---|
| 解体して更地で売る | 解体費(木造30坪で150〜240万円ほど) | 建物が傷んでいて、土地を欲しがる人が多い場所 | 翌年から土地の固定資産税が上がる |
| 古家付き土地で売る | 原則なし | 建て替え前提の買主や、直して住む人が付きそうな家 | 解体費のぶん、価格の交渉が入りやすい |
| 民泊の買主も含めて探す | 原則なし | 広くて室内の状態が良い家 | 制度の条件に合わない家は対象外。時間が読めない |
解体して更地で売るとき、何がかかるか
木造戸建ての解体費は1坪5〜8万円が目安で、30坪の家なら150〜240万円ほどです。
売却価格が2,000万円の土地なら、1割前後をこの費用に充てる計算です。
アスベストの事前調査が義務になったこともあり、解体費は上がる傾向にあります。
更地にすると、住宅用地の特例も外れます。
この特例は、住宅1戸あたり200㎡までの土地で、固定資産税を計算するもとの額を評価額の6分の1にするものです。
福岡市では、住宅を取り壊したら区役所の課税課へ申告する決まりで、期限は1月31日とされています。
傾斜地では、さらに造成の費用が加わることがあります。
取り壊しの見積もりだけで決めず、造成や擁壁まで含めた総額を確かめてください。
傾斜地では、更地にしても建てられないことがある
福岡市のがけ条例は、30度を超える傾斜で高さが3mを超える「がけ」の近くに、居室のある建物を建てることを制限しています。
制限される範囲は、がけの高さの2倍の水平距離以内です。
高さ4mのがけなら、8m以内が対象になります。
擁壁を設けてがけ崩れのおそれがないと認められる場合などは、この制限から外れます。
つまり、古い家を壊して更地にしても、次の家を建てるには擁壁の工事が要る土地があるということです。
そうした土地では、解体しただけでは買い手が増えず、費用だけが先に出ていきます。
古家付きで売る・民泊の買主も含めて探すとき
建物を残して売れば、売主が解体費を先に払う必要はありません。
古家付き土地として売り出すと、建て替えを考える買主は、解体費を差し引いた額で価格を考えます。
民泊の買主も含めて探す場合は、建物そのものに値段が付く可能性が残ります。
ただし、どちらも買主が住宅ローンを使いにくい点は同じです。
買い手が現金や事業向けの融資で買える人に限られるぶん、売れるまでの時間は読みにくくなります。
売り出す時点で「いつまでに売りたいか」を決めておくと、途中で買取に切り替えるかどうかの判断がしやすくなるでしょう。
民泊の買主が買えない古い家とは?
建物が登記されていない家、建て替えができない家、宿泊施設への用途変更や消防の設備で止まる家は、民泊の買主の候補から外れやすくなります。
どれも家の中を見ても分からないので、売り出す前に書類で確かめてください。
登記されていない家は、そのままでは届出ができない
年180日まで人を泊める住宅宿泊事業の届出には、建物の不動産番号が要ります。
福岡県は、建物の登記がされていない家では届出ができないと案内しています。
登記の種類も、一戸建ての住宅・長屋・共同住宅・寄宿舎のどれかであることが条件です。
古い家では、増築した部分だけが登記されていないこともあります。
登記簿の床面積と実際の大きさが合っているかは、売り出す前に見ておきたいところです。
建て替え・検査済証・用途変更・消防で止まる家
接道の条件を満たさず建て替えができない家は、住むことも貸すことも売ることもできます。
ただ、買主が融資を受けにくくなるので、買い手の数は絞られます。
調べ方は再建築不可の家は売れる?福岡市の接道と43条の調べ方にまとめました。
検査済証(建物が完成したときの検査に合格した証明)が無い家も、古い建物では珍しくありません。
福岡市では台帳記載事項証明書で記録を確かめられることがあり、取り方は検査済証が無い家は売れる?に書きました。
1年を通して泊める旅館業の許可を取るなら、家を宿泊施設に用途変更する手続きが必要になることがあります。
福岡市の資料では、建物を200㎡を超える特殊建築物(旅館など多くの人が使う建物)に用途変更する場合、確認申請と工事完了の届出が要るとしています。
200㎡以下なら確認申請は要らなくても、建築基準法の決まりに合わせる必要までは消えません。
住宅を民泊に使う場合は新しく消防用の設備が要ることも多く、その費用も買主が買うかどうかを決める材料になります。
届出と許可の違い、年180日の上限、消防の書類、宿泊税の決まりは空き家を民泊にするには|福岡市の届出と年180日の上限で説明しました。
解体するかどうかで、相続空き家の3,000万円控除は変わる?
変わります。
相続した空き家の3,000万円控除は、売ったあとに家が耐震基準を満たすか、取り壊されていることが条件の1つだからです。
建物を残して売るなら、この条件をどう満たすかを売り出す前に決めておく必要があります。
控除の条件は「耐震基準を満たす」か「取り壊す」
国税庁の説明では、対象は1981年5月31日以前に建てられた家です。
築50年の家なら、建てた年はこの日より前にあたります。
2024年1月1日以後の売却では、売った時から翌年2月15日までの間に、耐震基準を満たすか、家の全部を取り壊すことが条件に加わりました。
ほかに、相続から3年目の年末までに売ること、売却代金が1億円以下であることなども要件です。
相続人が3人以上いる場合、控除の上限は1人2,000万円までになります。
家を残して売るなら、翌年2月15日までの段取りを決めておく
民泊や社宅として家を使う買主は、建物を壊しません。
その場合、控除を使うには、翌年2月15日までに家が耐震基準を満たしている必要があります。
耐震の工事を誰がいつ行うかを契約の前に話し合っておかないと、売ったあとで控除が使えないと分かることになります。
控除を使えるかどうかで手取りが大きく変わる家なら、建物を残す売り方が本当に得かを税理士に確かめてください。
期限の数え方は空き家3,000万円控除の期限に、旧耐震の家の考え方は旧耐震の家を売る方法と3,000万円控除に書いています。
解体を決める前に、何をすればいい?
解体業者に見積もりを頼む前に、建物を残した場合と解体した場合の両方で、売れる見込みを査定で出してもらってください。
一度壊した家は元に戻せないので、比べるのは壊す前しかできません。
売り出す前に確かめたいのは、次の3つです。
- 建物の登記:増築部分まで登記されているか、登記簿の床面積と実際が合っているか
- 建てたときの記録:検査済証、無ければ台帳記載事項証明書で確かめられるか
- 土地の条件:接道を満たしているか、がけ条例にかかる高低差があるか
この3つで、民泊の買主の候補に入るか、更地にしても建て替えができるかの見当が付くはずです。
書類がそろっていなくても、当社で査定の段階から一緒に確かめられます。
空き家の売却全体の進め方は福岡市の空き家売却のページにまとめています。
査定は「建物を残す」と「解体する」の両方で頼む
査定を頼むときは、古家付きのままの見込みと、解体した場合の見込みを両方出してほしいと伝えてください。
解体した場合の見込みから解体費を引いた額と、古家付きの見込みを並べれば、壊すかどうかを数字で比べられるからです。
民泊や社宅の買主も含めて探す価値がある家かどうかも、その場でお伝えします。
民泊の買主が査定のどこを見るのかは、民泊に使える家の査定に書きました。
査定のご依頼は、無料査定のページからお送りください。
民泊で運用する道と、売る場合との比べ方は、民泊で運用する(福岡市)のページにまとめました。
売らずに民泊として持ち続けたいという方は、15分無料相談でお話をうかがいます。

