民泊に使える家の査定|買主が見る立地・建物・許可
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士福岡市で民泊を運営している方や、民泊に使えそうな家を持っている方から「民泊の家は、普通の家と査定のしかたが違うのか」と聞かれることがあります。
答えから書くと、査定額の土台になるのは住まいとしての査定額です。
民泊の売上は、賃貸の家賃のように買主へ引き継がれる契約ではないため、査定では参考資料にとどまります。
そのうえで、民泊の買主が見る立地・建物・許可の条件がそろうかを、査定のときに合わせて確かめます。
この記事は、民泊に使える家や民泊中の家を「売るか、持つか」決める前に、査定で何がどう見られるかを知りたい方に向けて書きました。
民泊に向く家の条件そのものは民泊に向く家の条件に、運営したまま売るときの手続きは民泊を運営したまま売るにはにまとめてあります。
ここで扱うのは、査定の中身と、売る・貸したまま持つ・民泊で運用するの3つを査定で並べる方法です。
2. 民泊の売上の実績は、査定額に入る?
3. 民泊の買主は、査定のどこを見ている?
4. 民泊に使える家なら、査定額は上がる?
5. 売る・貸したまま持つ・民泊で運用するは、査定でどう並べる?
6. 福岡市で民泊に使える家の査定を頼むには?
民泊に使える家の査定は、何を基準に金額を出す?
民泊に使える家でも、査定額の基準は近くで実際に売れた住まいの価格(取引事例)で、民泊の売上は補助の資料として扱います。
「民泊に使えるかどうか」は金額を足す材料ではなく、買主の候補がどこまで広がるかを見る材料です。
査定の3つの見方:取引事例・原価・収益
国土交通省の不動産鑑定評価基準は、価格を求める基本の手法を3つに分けています。
| 見方 | 何から価格を出すか | 民泊の家での使われ方 |
|---|---|---|
| 取引事例比較法 | 近くで似た不動産が売れた価格 | 戸建て・マンションの査定の軸 |
| 原価法 | 建て直したらいくらかかるかから、古くなった分を引く | 建物の価値を確かめる |
| 収益還元法 | その不動産が将来生む収益 | 貸した場合の家賃で確かめる。民泊の売上は参考まで |
同じ基準は、価格を「合理的かつ合法的な」いちばんよい使い方を前提に考えるとしています。
管理規約で民泊が禁止されているマンションや、許可が取れない地域の家では、民泊を前提にした価格は出せないということです。
福岡市の都心は、戸建ての取引事例が少ない
取引事例比較法は、近くに似た取引がたくさんあるほど精度が上がります。
当社の相場ページは、国土交通省の取引価格情報(2024年第2四半期〜2026年第1四半期)を集計したものです。
戸建ての取引件数を見ると、東区280件・早良区232件に対し、博多区は87件、中央区は56件でした。
博多駅や天神に近く、民泊の買主が関心を持ちやすい区ほど、比べられる戸建ての取引が少ないわけです。
事例が少ない地域では、似た条件の取引を広い範囲から拾い、道路付けや面積の違いを1件ずつ補正して比べます。
査定書を受け取ったら、どの取引を比べたのかを担当者に聞いてください。
比べた取引の場所と時期が分かれば、その金額が近所の相場から離れていないかを自分で確かめられます。
民泊の売上の実績は、査定額に入る?
民泊の売上の実績は、査定額にそのまま足されることはなく、買主が検討するときの参考資料として扱われます。
理由は、売上が建物と一緒に買主へ移る契約ではないことと、売上の中に運営する人の工夫が含まれていることの2つです。
売上は引き継がれる契約ではなく、運営の工夫も含まれる
入居者がいる賃貸住宅なら、家賃の契約は売買と一緒に買主へ移ります。
民泊の客との契約は1泊ごとで、引渡しの翌月に誰が泊まるかは決まっていません。
不動産鑑定評価基準は、賃貸以外の事業に使う不動産の収益を、一般に売上高から考えるとしています。
ただし、売上高のうち不動産に帰属する部分や、貸した場合の家賃を使って求めることもできる、とも書いています。
民泊の売上には、値付け・予約サイトの口コミ・清掃の質といった運営の工夫が含まれ、そこは家そのものの値打ちとは分けて考えるということです。
運営する人が変われば、同じ家でも売上は変わります。
予約や届出がどう引き継がれないかの詳しい話は、民泊を運営したまま売るにはに書きました。
民泊中の家の査定で、出していただくとよい資料
売上の数字よりも査定で役に立つのは、その家で民泊ができている根拠になる書類です。
- 住宅宿泊事業の届出番号か、旅館業の許可証の写し
- 消防法令適合通知書と、消防設備の点検の記録
- 年度ごとに泊めた日数の記録(届出の民泊の場合)
- 売買に含めたい家具・家電の一覧
- 売上を出すなら、期間を書いた全部の月の記録
届出の民泊は、泊められる日数が年180日まで(4月から翌年3月までの1年度)です。
旅館業の許可なら日数の上限はなく、どちらで営業しているかによって、買主が引き継いだあとに描ける使い方が変わります。
許可を事業ごと引き継ぐ方法は、旅館業の許可は売却で引き継げる?で説明しています。
民泊の買主は、査定のどこを見ている?
民泊の運営会社やオーナーが見るのは売上の数字ではなく物件そのもので、立地、一棟で自由に決められるか、旅館業の許可が取れる建物か、の3つです。
当社が査定のときに民泊の買主の目で確かめるのも、この3点になります。
立地:博多・天神からどれだけ近いか
当社は、福岡市で民泊を運営している会社と提携しています(提携先)。
提携している運営会社の目安では、海外からの宿泊客を狙うなら、博多・天神から車で5〜10分、歩いて30分ほどの範囲が中心です。
泊まる人が減ってもよいと考えるなら、範囲はもっと広がる、というのが運営会社の見方です。
この範囲の外にある家が民泊に使えないわけではありません。
ただ、民泊の買主の候補は範囲の外へ行くほど少なくなる、と考えて査定の話を進めます。
地下鉄の駅からの道のりや、荷物を引いて歩ける道かといった細かな見られ方は、民泊に向く家の条件に書きました。
一棟かどうか:自分たちで決められる建物か
民泊の買主が次に確かめるのは、使い方を自分たちで決められる建物かどうかです。
分譲マンションの1室は、管理規約で民泊を禁止していることが多く、提携している運営会社もそう見ています。
規約に禁止の定めがあれば届出ができないため、民泊の買主の候補からは外れ、住まいの買主に向けた査定になります。
規約の読み方と、禁止の部屋の売り方はマンションの民泊は管理規約で決まるにまとめました。
反対に、持ち主が1人のアパートや小さなビルは、空いている部屋だけを民泊に回す形が取りやすい建物です。
提携している運営会社の目安では、場所によっては一棟まるごと空室でも運営できる例があるそうです。
空室を民泊で埋める方法と、一棟を運営会社に貸す方法は、アパートの空室を民泊で埋めると一棟を民泊の運営会社に貸すで比べています。
一棟の建物の売り方そのものは、一棟ビル・一棟マンション・アパートの売却のページで扱っています。
旅館業の許可:用途地域・面積・設備
1年を通して営業したい買主は、旅館業の許可が取れる建物かを見ます。
許可を決めるのは、用途地域(その場所に建ててよい建物の種類の区分)、床面積、設備の基準の3つ。
設備の基準の中身は、民泊を旅館業の許可で営業するにはで原文に沿って整理しました。
物件によって、取れる家と取れない家に分かれます。
旅館業法施行令では、簡易宿所の客室の床面積は延べ33㎡以上で、泊める人が10人未満なら1人3.3㎡以上でよいとされています。
福岡市内で許可を取るときの相談先は、家がある区の衛生課です。
市は、できるだけ工事の前に平面図を持って相談するよう案内しています。
自分の家の用途地域の調べ方はその家は民泊に使える?で説明しました。
民泊に使える家なら、査定額は上がる?
民泊に使える条件がそろっていても、それだけで査定額が上がるとは言えません。
当社は住まいとしての査定額を基準に置き、民泊に使える条件がそろうかを合わせて確かめる、という順番で査定します。
住まいの査定額を土台に置く理由
1つめの理由は、民泊の目的で家を探す買主が、住まいとして探す人より少ないことです。
2つめは、民泊を始めるには家具・家電・内装の費用がかかること。
提携している運営会社によると、海外の方に好まれる和の内装にする例もあり、誰が負担するかは運営の形と物件で変わります。
買主はその費用を見込んで価格を考えるので、売主が受け取る金額に上乗せされるとは限りません。
民泊に使える家として売り出しても、実際に買うのが民泊の買主とは限りません。
民泊の買主に絞らず、住まい・賃貸の買主と並べて探すほうが、声のかかる相手は増えるはずです。
「民泊なら高く」と言われたら、根拠を聞く
宅地建物取引業法34条の2は、不動産会社が売る価格について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。
同じ法律の47条の2は、利益が出ることが確実だと誤解させる断定的な判断を示して契約を勧めることを禁じています。
「民泊にすれば高く売れます」とだけ言われたら、どの取引と比べた金額なのか、売上をどう扱ったのかを聞いてください。
答えが取引事例ではなく民泊の売上の見込みだけなら、その金額は住まいとしての査定額と分けて考えたほうが安全です。
会社ごとに査定額が違う理由は、査定額の高さで選ぶと危ない理由でも触れました。
売る・貸したまま持つ・民泊で運用するは、査定でどう並べる?
当社の査定では、売った場合の価格に加えて、貸したまま持つ場合と民泊で運用する場合を同じ表に並べて比べます。
比べるのは、お金の入り方・手間・先にかかる費用・やめやすさです。
民泊で運用する場合の話は、ご希望があれば提携先の運営会社と一緒にうかがいます。
3つを並べて比べる項目
| 比べる項目 | 売る | 貸したまま持つ | 民泊で運用する |
|---|---|---|---|
| お金が入る時期 | 引渡しの日にまとめて | 毎月の家賃 | 泊まった分だけ。月ごとに変わる |
| 手間を持つ人 | 売るまでの準備だけ | 管理会社に任せられる | 運営委託なら届出や報告が残る(借り上げなら運営会社が持つ) |
| 先にかかる費用 | 仲介手数料など | 入居前の修繕 | 家具・家電・内装、消防設備 |
| やめるとき | 引渡しで手を離れる | 普通の賃貸なら、入居者に住み続ける権利がある | 廃業の届出をして売るか貸す |
どれを選んでも、いつか売るときの土台になるのは、住まいとしての査定額です。
その数字を先に知っておけば、貸す・民泊にするという案を、売った場合と同じ物差しで比べられます。
相続した実家で迷っている場合の決める順番は、相続した実家は売る・貸す・民泊のどれ?に書きました。
民泊で運用するなら:運営委託と借り上げ
提携している運営会社によると、民泊で運用する形は大きく2つに分かれます。
オーナーが家を持ったまま運営だけを任せる「運営委託」と、運営会社が部屋や一棟を借りて民泊にする「借り上げ」です。
借り上げの賃料は契約で決まるもので、ずっと同じ金額が続くとは限りません。
旅館業の申請は、借り上げなら運営会社が自らの名義で行い、運営委託なら行政書士をご紹介して書類を作成してもらいます。
ただし、許可が取れるかどうかは物件しだいです。
運営を任せたときに何が家主に残るかは、民泊の運営代行とはで整理しています。
相続した空き家なら、先に3,000万円控除を確かめる
相続した実家を売るときに使える「空き家の3,000万円控除」には、要件が決まっています。
その1つが、相続のときから売るときまで、事業・貸付け・住まいに使っていないことです。
一度でも民泊や賃貸に使うと、この控除は使えなくなる、ということです。
査定で3つを並べる前に、控除が使える家かどうかを確かめておけば、比べる表がそもそも変わります。
個別の税額は、税務署か税理士に確かめてください。
福岡市で民泊に使える家の査定を頼むには?
無料査定のお申し込みのときに、民泊を運営中であることや、民泊での運用も聞いてみたいことを書き添えてください。
当社は住まいとしての査定額をお出ししたうえで、民泊の買主の目で立地・建物・許可を確かめ、売る・貸す・民泊の3つを並べてご説明します。
民泊で運用する案については、ご希望があれば提携先の運営会社と一緒にお話をうかがいます。
査定額を断定するものではなく、どの数字を何から出したかを一緒に確かめる場です。
民泊で運用する道と、売る場合との比べ方は、民泊で運用する(福岡市)のページにまとめました。
査定を頼むかどうかもまだ決めていない方は、15分の無料相談で状況だけでもお聞かせください。

