民泊をやめて家を売る手順|廃業の届出から売り出しまで
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士民泊をやめて家を売ると決めたとき、最初に迷うのは「何から手を付けるか」です。
結論から書くと、順番は予約を止める → 管理業者との契約を解く → 廃業の届出 → 家具の判断 → 売り出しの5段階になります。
この記事は、福岡市で民泊を運営しているオーナーが、やめてから売り出すまでの段取りと期限を確かめるために書きました。
届出の期限は住宅宿泊事業法で30日、旅館業と福岡市の宿泊税はそれぞれ10日です。
窓口も県と市に分かれているので、順番を決めずに動くと、どこかの届出が漏れたまま売り出しを迎えます。
民泊の制度そのもの(届出と許可の違い、年180日の上限など)は、空き家を民泊にするにはで説明しました。
2. 予約サイトと管理業者には、いつ何を伝える?
3. 廃業の届出と宿泊税は、どこへいつまでに出す?
4. 家具や備品は、片づけてから売るべき?
5. 民泊に使っていたことは、買主に伝える必要がある?
6. 届出が済んだら、売り出しの前に何を確かめる?
民泊をやめて売るとき、何をどの順番で片づける?
民泊をやめて売るときは、お客様の予約、委託先との契約、行政への届出、家の中の片づけ、売り出しの順に進めます。
先に売り出しを始めると、内覧の日に宿泊客がいる、届出が残ったまま契約日を迎える、といったずれが起きるためです。
期限と窓口を1枚にまとめると、次のとおりです。
| 順番 | やること | 期限の目安 | 相手・窓口 |
|---|---|---|---|
| 1 | 新しい予約の受付を止める | 最終宿泊日を決めた時点 | 予約サイト |
| 2 | 管理業者との委託契約を解約する | 契約書の予告期間による | 住宅宿泊管理業者 |
| 3 | 廃業の届出(届出の民泊) | 廃業した日から30日以内 | 福岡県 |
| 3 | 廃止の届出(旅館業の許可) | 廃止した日から10日以内 | 区の衛生課 |
| 3 | 宿泊税の廃止の届出 | 廃止した日から10日以内 | 福岡市 宿泊税係 |
| 4 | 家具・備品を残すか決める | 売り出しの前 | 不動産会社と相談 |
| 5 | 売り出し | 届出が済んでから | 不動産会社 |
いちばん短い期限は10日で、30日の3分の1しかありません。
最後のお客様が帰った日を「廃止した日」と考えて、その週のうちに届出の書類をそろえておけば、10日の期限にも間に合う計算です。
やめずに、運営したまま売る道もある
民泊をやめてから売るのが唯一の道ではなく、運営を続けたまま、民泊として買いたい人に引き継いで売る方法もあるからです。
この場合は予約を止めず、届出も買主が新しく出し直す形になるので、この記事の順番とは進め方が別物になります。
止めるのではなく、引き継ぐための準備が中心になるためです。
住まいとしては買い手が付きにくい家でも、民泊の買主が条件に合えば検討する場合もあるでしょう。
ただし、民泊として買いたい人は住まいとして探す人より少なく、必ず見つかるわけではありません。
運営ごと引き継ぐときに何が移り、何が移らないかは、民泊を運営したまま売るにはにまとめました。
どちらが合うかは家の条件と買主の層で変わるため、迷う段階なら売り出し前に一度ご相談ください。
予約サイトと管理業者には、いつ何を伝える?
予約サイトには最終宿泊日のあとの受付を止める設定を入れ、管理業者には契約書の予告期間に合わせて解約を申し入れます。
どちらも、届出より先に済ませておく手続きです。
新しい予約を止め、入っている予約をどうするか決める
最初にするのは、最終宿泊日を決めて、それより後の日を予約サイトのカレンダーで閉じることです。
閉じ忘れると、届出を出したあとに新しい予約が入り、断る手間とキャンセルの扱いが生まれます。
すでに入っている予約は、泊めきってから閉めるのが基本です。
お客様の都合ではない取り消しは、予約サイトの規約でオーナー側に罰則が付く場合があるので、断る前に規約の取り消しの条項を読んでください。
複数のサイトに載せているなら、全部のサイトで同じ日を閉じます。
1つでも開いたままだと、そこから予約が入るからです。
住宅宿泊管理業者との委託契約を解約する
宿泊客がいる間に家主が不在になる民泊では、清掃や苦情の対応を住宅宿泊管理業者に任せるのが法律の決まりです。
その委託契約には、解約するときに何日前までに申し入れるかが書いてあります。
予告期間が1か月なら、最終宿泊日の1か月以上前に連絡しないと、お客様がいない月の委託料を払うことになりかねません。
解約の連絡と一緒に、鍵の返却、宿泊者名簿の引き渡し、備品の持ち出しの有無も確かめておくと、あとで家の中を片づけるときに迷いません。
宿泊者名簿は3年間保存する決まりがあるので、廃業したあとも捨てないでください。
廃業の届出と宿泊税は、どこへいつまでに出す?
届出の民泊は福岡県へ30日以内、旅館業の許可は物件がある区の衛生課へ10日以内に届け出て、福岡市の宿泊税係にも10日以内に廃止を届け出ます。
福岡市内の民泊は、届出が県、旅館業と宿泊税が市という分かれ方をしているので、1か所に出せば済むわけではありません。
届出の民泊は、廃業した日から30日以内に福岡県へ
住宅宿泊事業法では、事業をやめた人は、やめた日から30日以内に都道府県知事に届け出ることになっています。
福岡市内の物件でも、届出先は福岡市ではなく福岡県です。
問い合わせ先は、開業の届出のときと同じ県の生活衛生課です。
オーナーが亡くなった場合は相続人が届け出る決まりで、期限は亡くなったことを知った日から30日以内。
家族が民泊のことを知らないまま相続すると、この届出が抜けたまま家を売りに出すことになりかねません。
旅館業の許可なら、区の衛生課へ10日以内
旅館業法の許可(簡易宿所など)を受けて営業していた場合は、廃止した日から10日以内に届け出ます。
窓口は、許可を申請したときと同じ、物件がある区の衛生課です。
福岡市のページでは、廃止の届出に添える書類は「なし」とされ、用紙1枚で済む手続きです。
ただし、住宅を宿泊施設に用途変更する手続きをしていた家は、住まいとして売るときの扱いを、市の建築の窓口で確かめておいてください。
各区の窓口の場所は、福岡市7区の手続き窓口ガイドで確かめられます。
県・市・区の窓口を1日で回るなら、出かける前に順番を決めておくと二度手間になりません。
福岡市の宿泊税は、廃止の届出と最後の申告がある
福岡市の宿泊税では、宿泊施設の経営を廃止したら、廃止した日から10日以内に市長へ届け出るのが条例の決まりです。
出すのは「経営休止・再開・廃止届出書」で、県への廃業等届出書か旅館業営業廃止届の写しを付けて、法人税務課の宿泊税係へ提出します。
最後の月に預かった宿泊税の申告と納入も残ります。
毎月申告している人は、ふだんと同じく宿泊した月の翌月末日まで。
3か月ごとにまとめる承認を受けている人は、廃止した日から1か月以内に、その日までの分を申告して納めます。
宿泊税の仕組みそのものは空き家を民泊にするにはで書いたので、ここでは最後の手続きだけを挙げました。
出典:福岡市宿泊税条例
家具や備品は、片づけてから売るべき?
住まいとして売るなら片づけ、民泊や賃貸の買主に向けて売るなら残す選択肢もあり、どちらにするかは誰に売るかで決まります。
迷う場合は、片づける前に不動産会社に査定を頼み、両方の売り方を比べてから決めても遅くありません。
住まいとして売るなら、片づけて生活の場に戻す
自分で住む家を探している人は、ベッドが何台も並んだ部屋を見ると、家族で暮らす姿を思い描きにくくなります。
二段ベッドや鍵付きの収納、案内用の掲示物などは、住まいとして売るなら外しておく品です。
片づけに手が回らない場合は、家財を残したまま買い取ってもらう方法もあります。
その進め方は、荷物が多い実家を片付けずに手放す3つの売却ルートにまとめました。
民泊の買主に向けるなら、残す品を書面に残す
同じように民泊や賃貸で使いたい買主には、家具や家電がそろっていることが判断材料になる場合があります。
残すなら、何を置いていくのかを付帯設備表(引き渡す設備と、その状態の一覧)に書き出します。
書かずに残すと、引き渡しのあとで「この家電は動かない」「処分してほしかった」という話になるからです。
民泊のために付けた火災報知器や誘導灯などの消防設備も、残すか外すかを同じ表に書いてください。
玄関に掲げていた届出住宅の標識は、廃業の届出のあとは役目を終えるので、売り出しの前に外しておきます。
民泊に使っていたことは、買主に伝える必要がある?
伝える中心は、民泊に使っていたこと自体よりも、そのために変えた設備や近所からの苦情です。
買主の判断に影響するこうした事実は、売る前に書面で伝えることになります。
伝えずに売ると、引き渡しのあとで契約不適合責任(契約の内容と違うときに売主が負う責任)を問われるおそれがあるためです。
設備の改造と、近所からの苦情
民泊を始めるときに、部屋を細かく仕切った、鍵を付け替えた、消防設備を足したという家は少なくありません。
こうした変更は、住まいとして使う買主には手直しが必要な点になるので、図面や工事の記録と一緒に伝えます。
近所からの苦情も、買主が気にする情報の1つです。
騒音やゴミ出しで苦情を受け、それが続いていたなら、いつ頃どんな内容だったかを書いておきます。
管理業者の報告書に残る苦情の記録を売るときにどう使うかは、民泊の近隣トラブルにまとめました。
近所との関係をどこまで伝えるかの考え方は、近隣トラブルは告知が必要?で書きました。
物件状況報告書に、使い方の経緯を書く
売主が家の状態を書いて買主に渡す書類を、物件状況報告書と呼びます。
民泊に使っていた期間、宿泊施設として受けた届出や許可、やめた時期は、この書類に書いておくと話が早く進みます。
買主が自分でも民泊を考えているなら、過去の届出番号や消防の書類が手元にあることは、確かめる材料になるでしょう。
書き方の目安は、物件状況報告書はどこまで書く?にあります。
民泊のために変えた設備や近所からの苦情の書き方は、民泊に使っていた家の売却と告知で掘り下げました。
売却で使うそのほかの書類は、売却に必要な書類の一覧で確かめてください。
届出が済んだら、売り出しの前に何を確かめる?
届出と片づけが済んだら、売ったあとの手取りと税金の扱いを確かめてから、売り出し価格を決めます。
民泊に使った期間がある家は、売るときに使える税金の特例が変わることがあるため、ここを飛ばすと手取りの見込みが外れます。
民泊に使った期間と、税金の特例
相続した空き家を売るときの3,000万円控除は、相続のときから売るときまで事業や貸付けに使っていないことが条件の1つです。
民泊は宿泊料を受けて人を泊める事業にあたるので、相続した実家で民泊をしていた場合は、この控除の条件から外れる可能性があります。
この点は空き家を民泊にするにはの後半で詳しく書きました。
自分の場合にどうなるかは、税務署か税理士に確かめてください。
手取りの目安は、手取りの試算で控除がある場合とない場合を並べて出せます。
売るか、持つか、貸すかを決めきれないとき
民泊はやめるけれど、まだ売ると決めきれない方もいるはずです。
普通の賃貸に切り替えれば、日数の上限も宿泊税の申告もなくなります。
貸す前に決めておくことは、空き家を貸す前に決めることにまとめました。
売るならいくらになるかを先に知りたい方は、無料査定をご利用ください。
民泊で運用する道と、売る場合との比べ方は、民泊で運用する(福岡市)のページにまとめました。
民泊のまま持ち続けるか、運営したまま売るかも含めて話を整理したい方は、15分の無料相談でお受けしています。

