物件状況報告書はどこまで書く?必ず書く4項目
執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士売買契約の数日前に、不動産会社から「物件状況報告書」という1枚を渡されます。
会社によっては「告知書」「設備表」とセットで呼ばれる書類です。
雨漏り、シロアリ、給排水の故障、境界の争いなどが並び、それぞれに「有・無・不明」で答えていきます。
この紙を前にして手が止まる方は多く、理由はたいてい同じです。
書けば買主が不安になって値を下げられるのではないか、という心配でしょう。
結論から書きます。
売主がいま知っていることは、全部書いてください。
書いた不具合は契約書に写されて、責任の対象から外れます。
逆に、知っていて書かなかったものだけは、どんな免責の特約を結んでいても売主に残ります。
この記事は、福岡市で自宅や実家を売る方が、この1枚を自分の判断で埋められるようにまとめました。
2. 書かないと、売主は何を問われますか?
3. 必ず書く4項目は何ですか?
4. 迷ったとき、書くか書かないかをどう決めますか?
5. 福岡市で書く前に、取っておく資料はどれですか?
6. 書き終えたら、次は何をしますか?
物件状況報告書には、どこまで書けばよいですか?
売主が知っていることだけです。
業者のように調べ直してから書く義務は、売主にはありません。
床下に潜って基礎を点検したり、専門業者に建物診断を頼んでから提出する必要もないのです。
この書類が聞いているのは「あなたが住んでいた間に何が起きたか」であって、建物の性能診断ではありません。
「不明」で出してよい欄と、出してはいけない欄
相続した実家のように、売主が一度も住んでいない建物では「不明」が並びます。
それ自体は正しい書き方です。
ただし、親から聞いていた話がある欄に「不明」と書くのはだめです。
「10年ほど前に雨漏りして屋根を直したと聞いている」のなら、それは知っていることにあたります。
聞いた話であることを添えて書けば足りるでしょう。
「平成20年ごろ、2階の洋室で雨漏りがあり、父が屋根を補修したと聞いています」。
そのうえで「詳細な範囲と施工業者は不明」と添えておけば十分です。
この書き方なら、嘘にもならず、隠したことにもなりません。
記録が残っていない不具合は、言葉で書く
領収書も保証書も無い直しは、どの家にもあります。
書類が無いことを理由に欄を空けると、「無」と読まれてしまいます。
年がはっきりしないなら「平成の終わりごろ」でかまいません。
伝わっていればよいのは、場所と症状と、直したか直していないかの3つだけ。
この3つがあれば、告知としては成立します。
当社がお預かりするときも、まずこの3つを聞き取ってから紙に落とす順番にしています。
記憶が曖昧なら、当時の工事業者に電話して日付だけ聞き直す手も残っているでしょう。
出典:e-Gov 民法
書かないと、売主は何を問われますか?
引渡しのあとに、契約不適合責任を問われます。
買主は、修繕費の請求、代金の減額、場合によっては契約の解除まで求められる立場にあります。
売ったお金を使ってしまったあとに請求が来るのが、この責任のいちばん厳しいところでしょう。
「免責特約」は、知っていて黙った不具合には効かない
個人が売主のときは、契約書に免責の特約を入れるのが福岡でも一般的です。
条文の形は「建物は現況有姿で引き渡し、売主は契約不適合責任を負わない」。
ところが、この特約には法律で開いている穴が1つあります。
民法572条は、売主が知りながら告げなかった事実については、責任を負わない旨の特約をしていても免れないと定めています。
つまり、告知書に書いた不具合は特約の内側に入り、書かなかった不具合だけが特約の外に残るのです。
免責特約は「全部まとめて免責」ではなく、「正直に書いた人だけが使える免責」だと考えてください。
特約の限界は契約不適合責任の免責特約は有効?現況有姿の限界に詳しく書きました。
隠したまま売れたように見えても、数年後に戻ってくる
雨漏りを告げずに売った売主が訴えられた判決は、いくつも残っています。
裁判になった3件の結論は雨漏りを隠して売却したら|裁判になった3件の結論で読めます。
当社がお客様に申し上げているのは、値引きの額と、やり直しの額が釣り合わないという点です。
博多区の戸建ての売却価格は中央値で4,000万円(87件・2024年第2四半期〜2026年第1四半期)。
給排水の不具合を告げて50万円値引きするのと、隠して引渡し後に減額と工事費を請求されるのでは、後者のほうが重くなります。
必ず書く4項目は何ですか?
雨漏り、シロアリの害、給排水設備の故障、境界の争いの4つです。
書式は不動産会社ごとに違いますが、この4項目はどの会社の用紙にも入っています。
引渡し後に問題になりやすく、しかも売主しか知らないことが多い項目だからです。
当社の契約不適合責任の期間は、引渡しから3か月を標準にしています。
期間を区切っても、その3か月のあいだに買主から通知が来れば、売主は対応する立場に立ちます。
そして、告知書に書いてあった不具合はこの対応の対象から外れるのです。
期間の数え方は契約不適合責任はいつまで?個人が売主のときの期間の数え方にまとめています。
マンションを売るときに増える欄
区分所有のマンションでは、専有部分の不具合に加えて、建物全体の話が欄に入ります。
上階からの漏水、近隣の騒音や振動、ペットや楽器の規約違反、大規模修繕の予定と修繕積立金の残高。
どれも管理組合の資料や理事会の議事録から分かることで、売主が総会で聞いた話も対象です。
「来年度に大規模修繕があり、一時金の徴収が議題に上がっている」という段階の話でも、知っているなら書いてください。
マンション特有のトラブルの扱いはマンション売却で伝えるべきトラブルは?騒音・管理・事故の確認事項に分けました。
1. 雨漏り — 止まった跡でも書く
いま漏れていなくても、過去に漏れた場所は書いてください。
天井のシミ、押入れの壁紙の浮き、サッシまわりの変色は、買主が内覧で見つけます。
見つけたあとで「報告書には無と書いてある」となるのが、いちばんまずい流れでしょう。
直した雨漏りは、直した事実まで書けば加点に変わります。
2. シロアリ — 消毒した記録ごと書く
福岡は温暖で、戸建ての床下の消毒を定期的に入れている家が珍しくありません。
消毒の履歴があるなら、業者名と年を書いてください。
被害があって駆除した家も、同じように書きます。
当社が扱った物件では、雨漏りとシロアリと床の抜けが同時に出ていた長屋がありました。
所有者は相続した方で、建物の中を見ていませんでした。
そのときも、現状を全部お伝えして、売り方からご相談する形にしています。
3. 給排水 — 詰まり・私設管・浄化槽
台所の排水が流れにくい、トイレがときどき詰まる、といった症状は書く対象です。
福岡市では、ここに2つの固有の論点が乗ります。
1つは、公共下水道に接続されているか、浄化槽か、汲み取りかという区別です。
浄化槽のままだと、買主のローン審査と、将来の解体見積りの両方に影響します。
もう1つは私設管で、他人の敷地を通って配管が入っている家が市内にもあります。
配管図と排水設備図は福岡市道路下水道局で閲覧でき、閲覧そのものは無料です。
この2つは当社が調査の段階で取り寄せますが、売主が「昔、隣と配管でやりとりがあった」と覚えているなら、その記憶のほうが先に要ります。
4. 境界 — 越境と「不明」の書き方
境界標が見当たらない、隣の塀が自分の土地に出ている、隣と言い争ったことがある。
どれも書く対象です。
境界が確定していない土地は、買主が住宅ローンを使えない場合があり、契約で確定を求められることもあるのです。
確定測量を入れると40〜60万円程度かかり、隣地の立会いの調整に1〜3か月を見ておきます。
4,000万円の取引なら測量費は1.5%ほどですが、引渡しの直前に求められると日程のほうが先に壊れます。
だから、境界の不安は紙に書いて、売り出す前に扱いを決めてしまうほうが早いのです。
判断の基準は不動産売却に確定測量は必要?現況測量との違い・判断基準に書いています。
出典:福岡市 固定資産税
迷ったとき、書くか書かないかをどう決めますか?
迷った時点で書いてください。
判断の分かれ目は「買主が知っていたら、この値段で買わなかったか」です。
そこを売主が一人で見積もるのは難しいので、迷いを担当者に話して、紙に残す形を一緒に決めるほうが確実でしょう。
直してから売るか、書いて価格に織り込むか
不具合には、直してから売ったほうが得なものと、そのまま伝えたほうが得なものがあります。
目安は2つです。
- 買主が入居前に必ず直すもの(給湯器、エアコン、網戸)は、伝えて価格で調整するほうが損が小さい
- 内覧の印象を直接下げるもの(雨漏りのシミ、割れたガラス、動かない鍵)は、直すと問い合わせの数が変わる
設備の扱いは住宅設備が壊れていても不動産は売れる?直す前の判断に分けて書きました。
「書いたら売れなくなる」は起きていません
当社が福岡市東区で扱った戸建ては、築50年を超え、約8mの傾斜地で崖条例に該当し、増築を複数回していて未登記という状態でした。
解体と造成で1,000万円を超えることが分かり、当初考えていた解体更地での売却は取りやめています。
条件を隠さずに出したうえで、居住用に限らない買い手に向けて売り出しました。
結果として、不動産に詳しく、物件の事情を理解している買主が賃貸用として購入しています。
条件の悪さを先に出したから、それでよい買主だけが残った、という順番でした。
伝え方の順番そのものは家の不具合は先に伝える?契約不適合責任と伝え方の順番にまとめています。
福岡市で書く前に、取っておく資料はどれですか?
建築確認台帳の記載事項証明、下水道の配管図、公図と地積測量図の3つです。
原則として当社が取り寄せますが、どこに何があるかを知っていると、記憶を掘り起こす手がかりになります。
窓口の一覧は手続き窓口ガイドに区ごとに載せました。
建築確認台帳の記載事項証明(福岡市 住宅都市局 建築指導部)
建物が適法に建てられたかを確認する資料で、手数料は1件数百円程度にとどまります。
検査済証が無いと、買主のローンが通らないことがあるためです。
増築した記憶がある方は、ここで確認申請の有無が分かるのです。
無許可の増築が見つかった場合でも、報告書に書いて売る道は残っています。
古い建物は台帳に記録が残っていない場合もあり、そのときは売り方を変える判断になります。
公図・地積測量図(福岡法務局 本局)
福岡市内の不動産登記は、中央区舞鶴の福岡法務局本局が管轄です。
公図と地積測量図の手数料は450円程度で、郵送請求もできるため来庁は要りません。
地積測量図が無ければ、過去に境界を確定していない土地だと読み取れます。
その場合、報告書の境界の欄は「不明」と書いたうえで、確定するかどうかを売り出し前に決める流れになります。
出典:法務局 登記手続の案内
書き終えたら、次は何をしますか?
書いた内容が契約書と重要事項説明書に写っているかを、契約の前に確かめてください。
報告書に書いただけで契約書に載っていないと、免責の範囲に入らないおそれがあります。
当社がお預かりしている物件では、告知書の記載を契約書の特約欄に転記し、売主と買主の双方に読み合わせをしてから署名いただいています。
売却の全体の流れは売却の流れに、必要書類は必要書類の一覧にまとめました。
いま手元の報告書で迷っている欄があるなら、その欄だけ持って15分の無料相談にお越しください。
どう書けば責任の外に出せるかは、物件ごとに違います。
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