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売却の基本公開 2026.09.24

契約不適合責任はいつまで?個人が売主のときの期間の数え方

野上俊彦執筆・監修:野上俊彦株式会社おもいで不動産 代表取締役/宅地建物取引士
野上俊彦執筆・監修:野上俊彦代表取締役/宅地建物取引士

築30年の家を引き渡したあと、買主から「雨漏りがある」と連絡が来たとします。

このとき売主がいちばん知りたいのは、いつまでこの連絡に応じなければならないのか、というところです。

「引渡しから3か月」と覚えている方が多くいらっしゃいます。

それは法律で決まった期間ではなく、売買契約書で決めた期間の話。

民法の原則は「買主が不適合を知った時から1年以内に通知」で、引渡しの日からは数えません。

この記事は、福岡市で築年数の経った家を売る個人の売主に向けて、期間の数え方と、契約書で期間を区切るときの考え方を整理しました。

免責特約がどこまで有効かという論点は、契約不適合責任の免責特約は有効?で別に書いています。

目次1. 契約不適合責任の期間は、いつから何年ですか?
2. 契約書で期間を短くできますか?
3. 告知書に書くと、期間はどう変わりますか?
4. 福岡市で売るときに、告知書へ書くこと
5. 連絡が来たときに、まずやること

契約不適合責任の期間は、いつから何年ですか?

民法の原則は、買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知することです。

引渡しの日からの1年ではありません。

そして通知の期間とは別に、請求そのものの時効が動いています。

起算点は「知った時」で、引渡しの日ではない

民法第566条は、目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合を定めた条文です。

買主がその不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しなければ、追完の請求・代金の減額・損害賠償・解除ができなくなります。

つまり引渡しから4年後に買主が気づいたなら、その時から1年が動き出します。

「引渡しから1年で終わり」という読み方は、条文の読み違いです。

ただし売主が引渡しの時にその不適合を知っていた場合、この1年の制限は使えません。

重大な過失で知らなかった場合も同じ扱いです。

日付を入れて数えてみましょう。

2026年4月1日に引き渡したとします。

買主が2030年6月に天井のしみに気づいたなら、通知の期限は2031年6月まで。

引渡しから4年以上が過ぎていても、まだ枠の中にあります。

いっぽう契約書に「引渡しから3か月」と書いてあれば、2026年7月1日で終わります。

同じ物件でも、契約書の1行があるかどうかで5年近く変わるわけです。

その1行を自分で書くのが、不動産会社を通さない個人売買です。

通知期間をどう決めるかも含めて、不動産の個人売買の契約書|ひな形に足りない項目に契約書の欄ごとの整理をまとめました。

出典:e-Gov 民法

通知の期間と、請求の時効は別のもの

買主が期間内に通知したあと、請求できる期間は時効で決まります。

民法第166条は、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年としています。

不動産の売買でいえば、外側の枠は引渡しから10年。

1年と5年と10年の3つが同時に動いている、という形。

売主として覚えるのは、契約書で何も決めなければ10年先まで枠が残るということです。

なお通知は「不具合があった」だけでは足りないとされています。

どこがどう契約の内容と違うのか、売主が中身を把握できる程度に示す必要があるためです。

実務では、写真や修理業者の所見を添えた連絡が来ることが多くあります。

逆に「なんとなく調子が悪い」という電話だけでは、通知として成り立ちません。

1年の制限がかからない不適合もある

第566条が対象にしているのは「種類または品質」の不適合だけです。

面積が足りない、他人の権利が付いている、といった数量や権利の不適合はここに入りません。

そちらは1年の通知の枠がなく、時効だけで考えることになります。

境界の越境や登記されていない権利は、この別枠で動くと押さえておいてください。

戸建てや土地では、ここが実際に問題になります。

隣の塀が越境していた、公簿の面積と実測が違った、という話は品質の不適合ではありません。

3か月の特約を置いても、そこは同じようには区切れないということ。

だから土地の売買では、期間の特約より先に測量と境界の確認をお願いしています。

契約書で期間を短くできますか?

個人の売主なら短くできます。

不動産会社が自ら売主になる場合とは、かけられる制限が違うためです。

個人の売主は、宅建業法40条の対象外

宅地建物取引業法の第40条は、宅地建物取引業者が自ら売主になる売買契約についての決まりです。

種類または品質の契約不適合責任について、引渡しの日から2年以上とする特約を除き、民法より買主に不利な特約をしてはならないとされています。

これに反する特約は無効になります。

個人が売主の取引には、この制限がかかりません。

そのため「引渡しから3か月」と決めることも、当事者の合意でできます。

出典:e-Gov 宅地建物取引業法

実務で置かれるのは「引渡しから3か月」

当社が個人の売主からご依頼をいただく築古の戸建てでは、3か月で区切ることが多くあります。

期間だけでなく、対象も絞るのが実務です。

構造上主要な部分、雨漏り、給排水管、シロアリの4つに限る、という形です。

この4つに限れば、経年で傷むものの多くが対象から外れます。

3か月という長さには理由があります。

雨漏りは、まとまった雨が降らないと出ません。

梅雨や台風を1度またぐ長さがあれば、買主も確かめられるという考え方です。

逆に1か月では、住んでみて分かる不具合が出る前に終わってしまいます。

短ければ安心、という単純な話にはなりません。

設備の不具合をどう扱うかは住宅設備が壊れていても不動産は売れる?に書きました。

全部免責にすると、価格に返ってくる

いっさい責任を負わない、という形にすることもできます。

ただし買主は、その不安を購入価格に織り込んで考えます。

結果として、値引きの交渉が入りやすくなるわけです。

期間を3か月に区切って対象を4つに絞るほうが、価格を守りながら終わりを作れます。

どうしても責任を残したくない場合は、買主を業者にする道もあります。

不動産会社が買主になる買取では、現況のまま引き取る形が前提です。

そのぶん価格は仲介の相場より下がるので、天秤にかけて決めることになります。

4つの売り方の違いは売り方の比較にまとめました。

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告知書に書くと、期間はどう変わりますか?

期間そのものは変わりません。

そのかわり、書いた不具合は「契約不適合」に当たらなくなります。

期間の議論に入る前に、対象から外れるという形です。

告知書は、契約の内容そのものを作る書類

契約不適合とは「契約の内容に適合しないこと」を指します。

雨漏りがあると告知書に書き、買主がそれを前提に買ったのなら、その雨漏りは契約の内容に入っています。

だから不適合になりません。

期間を何か月にするかより先に効くのが、この1枚です。

告知書の様式には、決まった項目が並んでいます。

建物なら、雨漏り・シロアリ・給排水管の不具合・傾き・増改築の履歴・火災の履歴。

土地では、土壌の汚染や地中の埋設物、過去にどう使っていたかもたずねられます。

周辺のことでは、騒音や臭気、近隣との申し合わせが項目に入ります。

思い出せない欄をそのまま空けておくのは、いちばん避けたい形です。

分からないと書くか、担当者に相談して書き方を決めてください。

知りながら告げなかったことは、免責できない

民法第572条は、責任を負わない旨の特約をしても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れないとしています。

免責特約を付けても、隠したことは残るという意味。

つまり告知書を薄く書くほど、売主の側が危なくなります。

雨漏りを隠して裁判になった例は雨漏りを隠して売却したらにまとめました。

「分からない」も書いてよい

告知書は、断定できることだけを書く書類ではありません。

「過去に雨漏りがあったが、修理の記録が残っていない」も情報として意味があります。

売主が知っている範囲を、知っている形のまま書いてください。

記憶があいまいなことを言い切ると、そちらが契約の内容になってしまいます。

福岡市で売るときに、告知書へ書くこと

福岡市で築年数の経った家を売るなら、水の履歴を先に確かめてください。

浸水の経験は、買主が住むかどうかの判断に直接関わります。

過去の浸水は、ハザードマップと合わせて見る

不動産の取引では、水害ハザードマップでの物件の位置を説明することが義務づけられています。

福岡市の洪水ハザードマップの対象は、多々良川・宇美川・御笠川・那珂川・樋井川・室見川・瑞梅寺川・雷山川の8河川。

市内のすべての2級河川と準用河川の浸水想定区域が反映されています。

総合ハザードマップで自分の土地を確かめられますし、紙の版は市役所と各区役所で受け取れます。

区域に入っているかどうかと、実際に浸水したことがあるかどうかは別の話。

後者は売主しか知らないので、告知書に書くのは売主の仕事になります。

出典:福岡市 洪水ハザードマップ

書類が残っているかで、書ける範囲が変わる

修繕の履歴は、領収書や工事の見積書が残っていれば具体的に書けます。

いつ、どこを、いくらで直したか。

この3つが書いてあると、買主が判断できるようになります。

売却に向けて集める書類は売却に必要な書類に一覧でまとめました。

出典:国土交通省 水害リスクの説明義務化

期間を決めるのは、売り出す前

期間と対象は、買主が現れてから考えるものではありません。

売り出す前に方針を決めておけば、交渉の場で値段と交換されずに済みます。

方針を決めるのは、媒介契約を結ぶときです。

売却を任せる段階で、期間と対象の考えを担当者と共有しておいてください。

買主が現れてから考えると、価格の交渉と同じ席で話すことになります。

そうなると、値段を守るために期間のほうが譲られがちです。

媒介契約の種類は媒介契約の種類にまとめました。

売り出しから引渡しまでの段取りは売却の流れで見ていただけます。

連絡が来たときに、まずやること

買主から不具合の連絡が来たら、答える前に確かめる順番があります。

その場で認めることも、その場で断ることもしないでください。

確かめるのは3つ

1つめは、契約書に書いた期間と対象に入っているかどうか。

3か月の特約があり、引渡しから半年が経っていれば、そこで終わっている可能性があります。

2つめは、買主がいつそれを知ったか。

特約が無い契約なら、この日付から1年を数えることになります。

3つめは、告知書に書いてあったかどうかです。

書いてあったなら、そもそも契約の内容に入っていた不具合になります。

この3つで、応じる義務があるのかどうかが決まってきます。

記録を残しながら進める

連絡の日付と内容は、メールなど形の残るものでやり取りしてください。

電話だけで進めると、通知がいつ届いたのかが後から分からなくなります。

写真を送ってもらえば、状態と時期の記録にもなります。

答え方にも順番があるのです。

その場で「直します」と言うと、期間の内か外かを見る前に約束が立ってしまいます。

反対に「関係ありません」と切れば、話は裁判の方向へ動くでしょう。

買主の言っていることを否定も肯定もせず、事実だけを集める段階だと考えてください。

判断に迷う段階でしたら、15分無料相談でお聞きください。

売却そのものをこれから考える段階なら、無料査定からご相談いただけます。

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この記事の目次1. 契約不適合責任の期間は、いつから何年ですか?
2. 契約書で期間を短くできますか?
3. 告知書に書くと、期間はどう変わりますか?
4. 福岡市で売るときに、告知書へ書くこと
5. 連絡が来たときに、まずやること
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